ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga   作:ichika

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探求編
運命に抗いし者


???

 

「う、うぅ……。」

 

意識が混濁する。

何があったか、何がどうなっているのか……。

 

何も分からない。

自分の身体の感覚が、肉体と外界の境目が何処にあるかすら曖昧で……。

 

「――――――」

 

何か言葉を口にしようにも、唇が動かない。

力が抜けていく様な感覚だった。

 

これはまずい、自分の存在を証明出来ていない。

このままでは意識が霧散し、存在自体が消滅するだろう。

 

故に、自身の全身の輪郭をイメージする。

指の先から足の先、爪先から頭頂部に至るまで隅々、光のエネルギーを巡らせ、滾らせる。

 

そうだ、自分は、僕自身がここにいるんだと。

 

「く……!うぅ……!!」

 

そこで、彼の意識は形を取り戻した。

 

目を開き、辺りを見渡し状況を把握せんとする。

 

自分は確か、ワームホールに飲み込まれ、友人達と分断されてしまった。

飲み込まれてからの記憶が曖昧だ。

 

今、彼の目の前、数光年先に銀河の瞬きがあり、恒星から僅かに届く光のエネルギーが、漆黒の宇宙に漂っていた彼を照らしていた。

 

いいや、それだけでは無い。

 

「誰……?」

 

何かが肌を撫ぜる様な感覚に、彼は顔を顰めるばかりだった。

 

何かが、誰かが自分を呼んでいる様な感覚。

その呼び声は強く、強く彼を呼んでいた。

 

 

「呼んでいる……?」

 

一抹の疑念を抱えながらも、彼はその方向へと飛んだ。

 

呼び声の先に、誰かが待っているのだと、そう信じて……。

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

その街は、何処か歪な風景が漂っていた。

一見して何の変哲も無い街並みながらも、曇天が支配する、重苦しい雰囲気が漂っている。

 

そこに住む人に活気はあれど、街は暗い雰囲気。

全てがチグハグな様相を生していた。

 

その街並みを、1台のマウンテンバイクに跨った青年が駆け抜けて行く。

 

ウルフカットの黒髪が風に靡き、心地よい風が彼の頬を撫ぜる。

 

青年はそのまま街を走り、広場の様な場所へ辿り着く。

 

そこでは1台の移動販売の車が停まっており、看板や幟、メニュー表を出して商売を行っていると喧伝していた。

 

その移動販売車の近くにマウンテンバイクを停め、青年は車内に声をかける。

 

「遅くなりました、店長!」

 

青年が声をかけると、中から中年の男性が顔を出し、彼を見やる。

 

「待ってたぞリオ!ちゃっちゃか準備始めてくれよな!」

 

店長と呼ばれた男性は、青年を見るやいなや、エプロンを投げ渡しながら商品の準備を整えていく。

 

「はい!」

 

エプロンをキャッチし、手早く着替えながらも、リオと呼ばれた青年は正面に回り、客の呼び込みを始める。

 

「いらっしゃいませ〜!!降星商店、今日も開店でーす!」

 

道行く人達へ声をかけ、是非とも買い物していってくれと。

 

「あらリオ君、今日もご苦労さまねぇ。」

 

「店が怪獣にヤられた時はどうなる事かと思ったけど、またやってくれて嬉しいよ。」

 

馴染の顔ぶれだろうか、何人かの客がリオや店長に声をかけつつメニューや並んでいる商品を眺めながらも買い物をしていく。

 

怪獣にヤられたという言葉から察するに、この移動販売形式は緊急的な措置であり、本来は別の形で営業していたのだと伺う事が出来た。

 

だが、それでも買い物をする者達にとっては、この店が在る事自体に意味がある。

 

いわば、拠り所の様な場所なのだろう。

 

「いやぁしかし、こういう所でやっても来てくれるたぁ、お客さんには感謝しかねぇぜ。」

 

客の様子を見て、店長は満面の笑みを浮かべながらも安堵の溜息を吐く。

 

彼からしてみれば、店を破壊されただけでなく、今までの商売基盤を破壊されたに等しいのだ。

地域に根付いて商売をしていたならば、その被害は計り知れない物がある。

 

だが、それでも尚、店を求めて来てくれる客がいて、商売が出来ている。

それだけで儲け物で、僥倖だと。

 

「はい!」

 

同じ気持ちだと、リオの表情にも感謝と感激が溢れていた。

 

この穏やかな暮らしがいつまでも続けばいいのにと、そう願うばかりだった。

 

 

―――お前は――――

 

「……ッ!!」

 

そう願った時だった、彼の脳裏にイメージが閃く。

咄嗟に顔を上げ、辺りを見渡すも、何も変わらない風景があるはずだった。

 

だが、それを上書きするかのように、イメージがダブる。

 

街は炎に包まれ、闇が空を覆い尽くす。

その様相は正に地獄、生きとし生けるもの、いや、大地、地球そのものを焼き尽くさんとしていた。

 

―――お前はオレが―――

 

その地獄へ、黒き王は舞い降りる。

黒いボディに走る血の如く赤いライン、吊り上がった双眸。

それは悪魔の様に君臨し、リオを見下ろし――――

 

「おーいリオ?なにぼーっとしてんだ?」

 

唐突に掛けられた声に、リオの意識は現世へ引き戻される。

ハッとした表情で辺りを見渡すも、何も変わりない、普段通りの穏やかな日常の風景……。

 

「あ、す、すみません……。」

 

「もう疲れたのか?若ぇのにだらしねぇぞ!」

 

店長はリオの背中を軽く叩きつつ、業務に戻っていく。

その背を見ながらも、リオは安堵の表情を浮かべて業務に戻ろうとする。

 

その時だった。

 

「失礼、コーヒーを頂けるかな?」

 

リオの背に、男性の声が掛けられる。

振り向くとそこには、黒いスーツに身を包み、杖をつく長身の男の姿が在った。

 

青年実業家の様にきっちりした身なりながらも、何処か陰を感じさせる雰囲気を纏っていた。

 

「君?」

 

「あ、はい!コーヒーですね!お待ちください!」

 

その男を凝視していたことに気付かれたかと、リオは慌ててコーヒーの準備を始める。

インスタント、という程簡易なモノではないが、挽いておいた豆をドリップし、テイクアウト用のカップに淹れて蓋をし、男の下へと持っていく。

 

「お待たせしました!コーヒーです!砂糖とミルクは……。」

 

「あぁ結構、あるがまま、ブラックが好みでね。」

 

リオからコーヒーを受け取った男性は、笑みを浮かべて断りを入れつつ、コーヒーを口にする。

 

「中々上手に淹れているね、素晴らしいよ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

唐突な賛辞に、リオは面食らいつつも謝辞を述べる。

接客業に離れている筈なのに、ぎこちなくなってしまうのは、その男が発する雰囲気がそうさせているのだろう。

 

「君は実に面白いな。」

 

「えっ……?」

 

不意に、男が何かを口にする。

リオが彼を見るも、彼の眼はリオを見ている様で、その遥か後ろを、いいや、正確にはその中を見ている様だった。

 

「いやなに、君は光と闇の狭間にいる、ヒトとして振舞っていながらも、奥底では自分が違うモノであると理解している。」

 

「なに、を……?」

 

思い当たる節があるのか、男の言葉に返す言葉に詰まってしまう。

見透かされている、そう言った不快感を拭い去る事が出来なかったのだ。

 

「ふふふ、失礼、お代を渡しておこう、釣りは結構、取って置き給え。」

 

懐から紙幣を取り出し、男は踵を返し、立ち去ろうとする。

 

その背を、リオは何も言えずに見送ることしか出来なかった。

 

「あぁ、それと、精々危険な事からは離れる事をオススメするよ、深見リオくん?」

 

「なっ……!?」

 

放たれた言葉に、リオは何故自分の名を知っているのかと驚愕し、呼び止めようと動こうとして――――

 

不意に大地が大きく揺れ始める。

 

「な、なんだぁ……!?」

 

地震の様ではあるが、そうではない。

何せ、彼等には見えていたから。

 

地中より、巨大な何かがその姿を現す。

 

黒い体表に金色の爪や牙を持つ怪獣、ブラックキング。

狂暴かつ強力な怪獣として名を馳せていた。

 

「か、怪獣だァァァ!皆、逃げろぉぉ!!」

 

不味い状況だと、店長は声を張り上げて周囲の客や通行人に対して避難を呼びかける。

 

この怪獣が初めての事ではないのだろう、周りの者達も、悲鳴をあげながらも安全な場所を目指して逃げていく。

 

「早く!早く逃げて!!」

 

リオも我に返り、避難を促しながらも辺りを見渡す。

その何処にも、先程の男の姿は無かった。

 

いつの間にと思うが、今はそれどころではない。

彼にはやるべき事があった。

 

「ジーっとしてても、ドーにもならねぇ!!」

 

心を燃やす合言葉と共に、彼は人目に付かない物陰に入る。

 

懐から赤いスキャナーの様なモノを取り出し、腰部ベルトに着いていたホルスターから二つのカプセルを取り出だす。

 

「You Go!!」

 

カプセルの一つが起動され、赤と銀の巨人、ウルトラマンの幻影が彼の右傍らに並び立つ。

 

「I Go!!」

 

もう一つのカプセルもまた起動し、黒き王、ウルトラマンベリアルの幻影が左傍らへ。

 

それと同時に、彼は二つのカプセルを左腰に着けられていたナックルへと装填する。

 

ナックルを左手に持ち、腰のベルトから取り出し構える。

 

「Here We Go!!」

 

スキャナーの持ち手にあったトリガーを押し込み、起動させる。

 

「決めるぜ、覚悟ッ!!」

 

スキャナーにナックルを、正確には装填されたカプセルを読み込ませる。

それは、彼の戦うための姿になるための、変身シーケンスだった。

 

右手に持ったスキャナーを頭上高く掲げ、振り下ろしながらも胸元へ。

スキャナーの中心、クリスタルが、まるでウルトラマンのカラータイマーの様に来るところで、トリガーを押し込む。

 

クリスタルが眩い光を放ち、彼の身体を包んでいく。

 

「ジードッ!!」

 

その名を叫び、彼の体はウルトラマンとしての姿になる。

そこへ、ウルトラマンとベリアルの姿が重なり、そのウルトラマンは姿を現した。

 

『ウルトラマンジード!!プリミティブ!!」

 

その姿、身体を奔る黒いラインを持った赤と銀の体表、鋭い目つきの青い目。

野生味を感じさせるその姿。

 

その名は、ジード、ウルトラマンジード!

 

「来いッ!僕が相手だッ!!」

 

目の前500mほどの位置に相対するブラックキングに対し、ジードは構えを取る。

 

ブラックキングは目障りな奴が出てきたと言わんばかりに咆え、目の前の巨人へ一目散に向かっていく。

 

ジードもそれを受けて駆け出し、間合いに入る寸前で前方へ跳躍、膝蹴りをブラックキングの喉元へ叩き込む。

 

その威力に、ブラックキングは堪らず後退するも、激昂したか咆哮を上げ、その爪で切り裂かんと距離を詰める。

 

着地したジードは後転しつつ間合いを取り、飛び上がって上段からの爪による引き裂く様な攻撃を繰り出す。

 

その野性的な動きに、威力に驚いたか、ブラックキングは爪が当たった頭部を庇いながらも後退してしまう。

 

同時にジードが飛び掛かり、ブラックキングを押し倒しながらもマウントポジションを取って執拗に殴りつける。

 

力の入りにくいところに上手く乗ったからか、ブラックキングは藻掻くもジードを跳ね除ける事が中々出来ずにいた。

 

だが、手がないわけではないようだ、口から火炎を吐き、ジードの胸部を焼き、自身の体から跳ね除けた。

 

相当な威力があったのだろう、ジードは大きく吹っ飛ばされ、近くにあったビルへと叩き付けられる。

 

「ぐぁっ……!うォォォッ!!」

 

痛みに呻くがタフネスは一級品か、ジードはすぐさま立ち上がり、咆える様に声を上げながらも突っ込んでいく。

 

起き上がったブラックキング目掛け飛び掛かり、クロスボンバーを叩き込んでその巨体を地に倒す。

 

同時に飛び込み、ボディプレスを腹に叩き込んで大ダメージを与えた。

 

その威力に、ブラックキングは苦悶の叫びをあげてのたうち回ることしか出来なかった。

 

勝負を決めると、ジードはブラックキングから飛び退きながらも、必殺の構えを取る、

 

「ハァァァッ!!」

 

腕を腹の下辺りで交錯させ、そのまま一気に頭上へ持ち上げる。

刹那、両の腕に赤黒い閃光が奔り、エネルギーチャージが始まる。

 

その腕をゆっくりと広げて行き、更にエネルギーを高め、腕に貯めていく。

そして、下から回し、指を鍵爪の様に曲げた手をクロスさせて放つその技は……。

 

「レッキングバーストォォォッ!!」

 

赤黒い電が奔るエネルギー光線が迸り、ブラックキングへ殺到しぶち当たる。

それは表皮を削り、内側を侵し破砕する。

 

そのあまりの威力に、ブラックキングは苦悶の叫びをあげながらも爆散、大小の肉片へと還った。

 

周囲に静寂が訪れ、ジードが勝利した事を何よりも雄弁に物語っていた。

 

それを認め、ジードは変身を解こうとして――――――

 

 

 

『ダークロプスゼロ!!』

 

 

 

それは唐突に現れる。

遥か上空より黒き巨人が姿を現す。

 

黒と黄土も身体に走る銀のライン、頭部に光る2つのスラッガー、禍々しく輝くモノアイ。

ウルトラマンと同じ様なヒト型でありながらも、纏う雰囲気は無機質で邪悪。

 

その名はダークロプスゼロ。

ASTRAYの友、ウルトラマンゼロの戦闘データを基に作り上げられた戦闘機兵。

 

「お前は……!?」

 

疲労を滲ませながらも警戒態勢を取るジードに対し、太々しく腕を組みながらもダークロプスゼロは睥睨する。

 

こちらから掛る道理はない、突撃でも何でもしてやられてみろという傲岸さが見て取れた。

 

「くっ……!!このォ……ッ!!」

 

挑発に乗せられたか、冷静さを欠いたジードはダークロプスゼロへと突っ込んでいく。

 

掴みかかる様に飛び掛かるも、ダークロプスゼロはその程度かと鼻で笑う様に、僅かに身体を逸らすだけで躱し、振り向く事無くジードの背に裏拳を叩き込む。

 

「うわっ……!?」

 

意識の範囲外からの攻撃に対処できず、つんのめるジードだが倒れ込む事だけは必死にこらえ、反撃しようと振り向く。

だが、それを見越していたか、ダークロプスゼロの前蹴りが腹に突き刺さる。

 

「うわぁぁぁ……ッ!!」

 

あまりの威力に吹っ飛ばされ、背中から地面に叩き付けられる。

先程の闘いの疲労があるからか、ジードの動きは明らかに精彩を欠いていた。

 

立ち上がろうとしても腕に一瞬力が入らなかったか、倒れ込んでしまった。

それは、戦闘において大きな隙に他ならない。

 

ダークロプスゼロのモノアイが光を放ち、レーザーがジードに浴びせかけられる。

 

「あぁぁ……ッ!!」

 

ガードすら間に合わない、胸部にぶち当たった勢いのままジードは地を滑る様に押し付けられ、ダメージを逃すことが出来ずにいた。

 

暫しの照射が終わった時に、ジードに立ち上がる体力は残されていなかった。

カラータイマーが点滅し、これ以上の戦闘が困難である事を如実に示していた。

 

「こ、の……ッ!」

 

何とか抗おうとするも、身体に力が入らず立ち上がる事が出来ない。

そんな彼にトドメを刺そうと、ダークロプスゼロは機械的な動きでゆっくりと近づいていき、指を揃え抜き手の形をとる。

 

間合いに入り、その手刀がジードを捉えようとして――――――

 

 

 

 

 

 

 

「エクスクロスキィィィィック!!」

 

まさにその時だった。

 

空の彼方より急降下してきた銀色の流星が、ダークロプスゼロの頭部に落下の勢いを乗せた飛び蹴りを叩き込んだ。

 

攻撃に移ろうとしていたからか、ダークロプスゼロはガードする事が出来ずに大きく吹っ飛ばされる。

 

その流星はジードを庇う様に降り立ち、ダークロプスゼロに向けて構えた。

それは銀色の巨人、絆を一つに立ち向かう勇気の戦士。

 

「あ、貴方は……!?」

 

「加勢するよ、君は休んでて!」

 

尋ねるジードを背に、彼は目の前の敵に向けて敵意を飛ばす。

お前の相手は自分だと。

 

「お前の相手はこの僕が、ウルトラマンXが相手だ!!」

 

未来を掴むべく走り続けるウルトラマン。

戸塚彩加が変身する、ウルトラマンXだった……。

 

 




次回予告

巡り合うウルトラマン達。
彼等は互いの正体と真意を探り合う。

次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga

交錯する運命

お楽しみに
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