ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga 作:ichika
「あ、貴方は……!?」
自信を庇うように立つ銀色の巨人に、ジードは何故助けると言った風に尋ねる。
窮地に陥った自分を救ってくれたのはありがたいが、素性を知らぬ相手にこのまま頼っても良いものかと感じているのだろう。
「僕はX、ウルトラマンX、加勢するよ。」
ジードに目配せし、Xは意識を目の前の黒鉄、ダークロプスゼロへと向ける。
自分が来たからにはこれ以上好きにはさせないと。
「見たところゼロさんのコピーみたいだね、ちょっと厄介なことになりそうかな?」
敵の外見から、その機兵が知り合いの力を模した存在であることにアタリを付けたのだろう、Xの構えに一部の隙も無く、全力が漲っていくサマが見て取れた。
『任務ノ障害ヲ、排除スル。』
「喋った……!?」
機械的で無機質な音声が発せられ、まさか喋るとは思ってもみなかったジードが竦み上がる。
まぁ仕方あるまい、先程まで無言かつ冷徹に攻撃してきた相手が、唐突にしゃべり始めれば驚きもするだろう。
だが、Xは僅かに眉を顰めるだけに留め、相手を睨みつける。
その声は、たとえサンプリングされたものであったとしても、Xのよく知るウルトラマンのモノであったから。
「合成音声にしても、その声で向かってくるのは腹立つね。」
仲間を侮辱された様な心地になっているのだろう、Xは戦意を漲らせる。
生かして返すつもりはないと、怒り心頭という様子だった。
「良いよ、壊してあげようじゃないか、行くよッ!!」
構えを取り、Xはダークロプスゼロへと向かっていく。
それを受け、ダークロプスゼロも構えを取り迎え撃つ。
互いに全くの同時に放たれたストレートパンチがぶつかり、火花を散らし、ソニックブームを発生させる。
だが、タフネスが違い過ぎたのだろうか、拮抗する事無く弾かれたのはダークロプスゼロの方だけであった。
「なるほど、ロボットみたいなモノかな、全然痛くないや。」
相手が傀儡だと分かったからか、更に怒りを滾らせながらもXは吐き捨てる。
その姿を模倣しただけでも腹立たしいのに、それが魂を宿さない機兵ならば尚の事。
本物の拳はもっと痛いぞと、強かったぞと。
その怒りをぶつけるかの如く、Xは体勢を立て直そうとするダークロプスゼロに急接近、がら空きの胴に光を纏わせた手刀を叩き込む。
一撃どころではない、両腕を輝かせ、連続で叩き込んでいく。
ダメージを負っても何も感じないはずの機兵が悶える様に身体を捩り、逃れようと後退する。
だが、それを逃さず、Xはその場で跳躍、タックルの様に前方に飛び込み、クロスさせた両腕を叩き込む技、Xフライングチョップをダークロプスゼロの胴に叩き込む。
そのあまりの威力に、ダークロプスゼロは大きく吹っ飛ばされ、受け身を取る事すら叶わず倒れ込む。
「まだまだ!これからだ!!」
体勢を立て直し、追撃を掛けようとするXに対し、何とか起き上がったダークロプスゼロは、ジードを吹っ飛ばしたモノアイからのレーザーを放つ。
「そんなものッ!!」
だが、それを側転や前転、後転を巧みに織り交ぜながらもレーザーを回避し、時折身体を掠めるものがあっても気にも留めずに接近を続けていく。
その鮮やかさ、洗練された動きは、正に華麗の一言に尽きた。
回避しながらも飛び上がり、撃ち掛けられるレーザーの合間を縫ってハンドスラッシュの光弾を顔面目掛けて撃ち掛ける。
正に西部劇で見るようなガンマンの早撃ち勝負にも見えたが、正確に相手を捉えたのはXの方であった。
モノアイを保護していたであろうバイザーが割れ、中身の機械が露出する。
火花を散らし、伝達機能がショートしたか動きが鈍化する。
「これで決める!!」
飛び上がったまま、彼は身体を折りたたんで丸まり、エネルギーをチャージしていく。
身体全体へ光のエネルギーが行き渡った刹那、全身でX字を象るその技を放つ。
「アタッカーXッ!!」
放たれる炎を纏ったエネルギー波がダークロプスゼロに直撃、一瞬の拮抗さえも許さずに爆散させた。
圧倒的、正に実力を見せつける戦いだった。
「す、すごい……!」
自分とは違う身のこなし、技の切れ、威力、その全てが遥か上の次元にあると思わせる戦ぶりに、ジードは呆然と呟く以外無かった。
「大丈夫かい?」
そんなジードへ、敵がいなくなった事を認めたXが歩み寄り、手を差し伸べる。
その所作に、ジードへの敵意は一切なく、ただ純粋に彼を案じる心が伝わってきた。
「あ、ありがとうございます……!助かりました!」
Xの手を取って立ちあがり、救援を感謝する。
あのままでは命は無かったと分かっているからこそ、純粋に謝意だけがあった。
「間に合ってよかった、取り敢えず、このままだと目立つから、一旦戻るよ。」
「は、はい……!」
光の粒子になって人へと戻っていくXを追い、ジードもまたリオの姿へと戻っていった。
人気のない路地裏へと降り立ち、リオとXの変身者、銀髪の青年が向かい合う形となった。
「改めて、僕は戸塚彩加、ウルトラマンとしての名前はX、よろしくね。」
銀髪の青年、戸塚彩加は柔らかく人懐っこい笑みを浮かべながらも名乗った。
そこに警戒心などを感じることは無く、ただ純粋なまでの善の気が伝わって来る様だった。
「リオ、深見リオです……!ウルトラマンジードやってます!さっきは本当にありがとうございました!」
勢いよく頭を下げ、リオもまた名乗り、謝意を伝える。
その姿勢からは、心からの感謝と、礼儀が伝わって来る。
窮地を救ってもらったのだ、礼を尽くして当然であると。
「リオ君だね、僕の事は彩加で良いよ。」
「はいっ、彩加さん……!」
握手を求めて差し出された彩加の右手を、リオは自信の手を上着やズボンで大急ぎで拭ってからしっかりと握る。
そこまでしなくても良いのになぁと、彩加は苦笑しながらもしっかりと握り返す。
友好を示すには、自分もそうであると示す事が一番なのだ。
「ところでリオ君、恐らく僕は、違う宇宙から来たんだ。」
「違う宇宙、ですか……?」
彩加の言葉に、リオはどういうことかと首を傾げる。
別の宇宙とは、一体どういう意味なのかと図りあぐねているのだろう。
そんなリオの様子を察して、彩加は柔らかい笑みを浮かべて提案する。
「だから、と言ってはなんだけど、少し場所を変えて話さないかな?僕の事情も、君の事情も色々話そう。」
「わ、分かりました!僕の家があるんで、来てください!」
その笑みに、リオは顔を赤くしながらも彩加の手を引いて案内を始める。
傍から見ればそれは、顔を真っ赤にしている青年と、苦笑を浮かべながらもついて行く年上の美人という構図だった。
なんとなくではあるが、リオの行動に感じるモノがあったがそれに甘んじ、彩加もまた引かれるがままに後をついて行くのだ。
彼等が立ち去った後に、その場所へ新たな影が姿を現す。
それは、リオが出会った紳士風の男……。
「ウルトラマンX……、第二次大決戦の英雄がなぜ……?」
男は、ウルトラマンXの存在を忌々しく思っているのか、吐き捨てる様に呟く。
歯車が狂い始めたと、思案を巡らせる様子を見せていた。
十数年前に勃発した大決戦の後始末戦、通称第二次大決戦。
そこで激戦を繰り広げたウルトラマンが現れたとなれば……。
「まぁ良い、奴の排除程度、私がこの手で……。」
Xを排除する事を示唆し、男はその場から立ち去っていく。
仕える主の手を煩わせる程ではないと、
それは、これから始まる、新たな波乱の呼び水となるのであった……。
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「着きました、ここが僕の家です。」
そういって連れてこられた場所は、廃ビルの内部であった。
いつ放棄されたかも分からないそのビルは、人の気配も、棲んでいる痕跡さえ見つけられないというありさまだった。
「ここに……?」
本当にこの場所に棲んでいるのかと、彩加は驚きに目を丸くする。
まさか真っ当な生活を送れていないのではないかと、心のどこかで思ったに違いない。
「えぇ、入り口があるんです。」
乱雑に置かれていた荷物や布を退かしながら、通り道を作る。
この奥にその場所があるとでも言いたげだった。
そして、その奥に現れたのは無機質な鉄の扉。」
それはまるで、商業施設や団地にありがちなエレベーターの扉にも見えた。
彼等の目の前で扉が迎え入れるかの様に開かれる。
上がるか下がるかは分からないにせよ、それだけが真新しい状態であるのは、周りと浮いている様にさえ思われた。
「さ、行きましょう。」
「オッケー。」
リオから促され、彩加もまた足を踏み入れる。
2人が中に入った事を確認し、扉がゆっくりと閉じられる。
下降していると感じたのもほんの一瞬のこと、すぐさまそれも収まり、目的地に到達したことを告げる。
扉が開き、彩加達の目の前に広がるのは、先程の廃ビルのそれとは全く異なっていた。
「これは……。」
その光景に、彩加は驚きの声を漏らす。
部屋の中は何やら機材が置かれながらも、生活スペースと化しているのか、ベッドや冷蔵庫、ハンガーラックなどの生活用品と、そして何やら白いヒーローが描かれたポスターやタペストリーがあちらこちらに配置されていた。
なるほど、ここが彼のアジトを兼ねた生活の場なのかと納得する。
ここならば何者にも干渉される事無く過ごせるだろうと。
「ここが僕の家、星雲莊です、なんか、散らかっててすいません……。」
誇らしげに、そして何処か申し訳なさげに歓迎する。
まぁ、客人を迎えるにしても、もう少し片付けておけばよかったと感じるのは家主あるあると言ったところだろう。
それはさておき……。
「星雲莊……、良い名前だね。」
案内感謝すると言った風に、彩加は柔らかい笑みを浮かべながらも感謝を伝える。
その笑みに、またしてもリオは頬を赤らめながらも笑みを浮かべる。
その表情に、彩加はまさかなぁとは思いつつも口には出さない。
認めてしまったらどうすれば良いのか分かったものではないから。
『お帰りなさい、リオ、先程の戦い、お疲れさまでした。』
そんな時だった、部屋の奥から何やら発光する球体が彼等に近付いてくる。
機械的な女性の声で話される内容は、家主であるリオを出迎えるモノであった。
「ただいま、レム、お客さん来てるんだ。」
「彼女は?」
レムと呼ばれた球体を、彩加はまじまじと観察するように眺める。
人工知能かそれともと、正体を把握しようとしているのだ。
『私はレム、この船、星雲莊の管理AIです。』
「管理AI……、この施設を管理してるのは君なんだね。」
レムからの説明に、彩加はAIかと納得する。
意思疎通が出来るならばやりやすいというモノ。
「僕は戸塚彩加、さっき―――――」
『ようこそお越しくださいました、ウルトラマンX、貴方の事は私のデータベースに記載されています。』
「レム……!?」
彩加の自己紹介を遮って放たれた言葉に、リオは驚いた様に声を上げる。
そこまで知っていたのかと、何故知っているのかと。
「驚いた、僕の事、ううん、僕の仲間の事も、師匠の事を知っているんだね。」
『はい、貴方たちの地球で起きた大決戦も、そして、貴方たちが師と仰ぐASTRAYの事も、私を作ったマスターがデータとして入力しています。』
「ふぅん……、良く分かっているね、でも、ちょうどいいや、その情報、あるだけ出せるかな、彼にも知っておいてもらいたいしね。」
レムの説明に、彩加は目の色を変えた。
情報があるという事は、説明の手間を省くことが出来るという事に他ならない。
彼女が何者であるにせよ、それを使わない手はないと判断した様だ。
『構いません、リオ、貴方にも聞いて欲しい事です。』
「わ、分かった、彩加さん、こっちの椅子使ってください。」
飲み物を用意していたリオが、慌てて椅子を持ってきて座ってくれと促した。
至れり尽くせりとはこの事かと、思いながらも、多分これは……。
2人が席に着いた事を認めたか、レムが話を始める。
『まずはリオ、ウルトラマンジードは、全宇宙を支配しようとした覇王、ウルトラマンベリアルの因子を継ぐウルトラマンです、この地球ただ一人のウルトラマンとして、今日まで戦い続けていました。』
「ウルトラマンベリアル……?僕が知らないだけかもだけど、そのウルトラマンは……。」
『嘗て宇宙を支配しようと企んだレイブラッド星人の力を取り込んだ、光の国のウルトラマンです。』
「なるほど……、離反者ってところかな、それにしても、物騒なことするウルトラマンがいたものだね。」
同じウルトラマンでも、その力の方向性にも色々と思惑があるというモノだと。
師であるASTRAY達も光の国から離反したと聞いているから、暴虐を誰彼構わず振るう程でない限り、その信条や行動にケチをつけるべきではないと考えているのだ。
まぁ、聞く限りでは相当危険である可能性も捨てきれないと考えるが、まぁそれは今対処を考えるべきではないと。
『そして、ウルトラマンX、彼はアナザースペースで起こった第二次大決戦に参戦したウルトラマンの一人、ッ戦闘スキルはリオ、貴方の遥か上を行く事でしょう。』
「彼……?えっと、レム、彼女の間違いじゃ……?」
レムの説明に、リオがどういうことかと声を上げる。
その視線は彩加とレムの間を行ったり来たりで、なんだかおもしろい事になっていた。
あぁやっぱりそういう事かと、彩加は自分自身の見た目とリオの勘違いに苦笑したくなるものだ。
「あー……、うん、僕は男だよ、ほら。」
苦笑しつつ、彩加は自分の服の裾をめくり上げる。
「……ッ!!」
真っ赤になって顔を背けるリオだったが、恐る恐る彩加の方へ向き直り、現実を直視する。
めくり上がった服の奥に隠されていたのは、しっかりと鍛え上げられた事が伺える胸筋と腹筋。
同性である男ですら惚れ惚れする様な、逞しい身体がそこにはあった。
「お、男の、人……。」
外見の好みど真ん中であった年上のヒトが、まさかの同性であったことが相当堪えたか、リオはがっくりと項垂れてしまっていた。
「なんか、ごめんね……?」
ハッキリさせなかった自分にも非があると苦笑しつつ、彼は青年の純情を弄んだ事を詫びた。
まぁ、女に間違えられる事が随分と久し振りな気がしていたから、ツッコミを入れにくかったというのも不幸が続いた要因でもあるのだが、それはさておき……。
『しかし、情報によれば貴方方に時空を超える力は無かったはずです、どうしてこの世界に?』
落ち込む主人を放置し、レムは彩加に何故この宇宙にいるのかを問うた。
「怪獣墓場で空間の歪に呑まれちゃってね、一応、僕単体でも宇宙の壁を越えられるはずだけど、まだ完全に体力も戻ってないから暫くは大人しくしないとだね。」
説明しながらも、自身の置かれている状況があまり良くないモノだと判断し、彩加は身の振り方を考える。
尤も、拠点を確保しなければ、その身の振り方とやらもうまく行く筈も無いのだが……。
「良かったら、ここを使ってください。」
ハートブレイクから立ち直ったか、リオがこの星雲莊を使ってくれと進言する。
少し涙目になっている辺り、かなり堪えたようだが彩加は何も言わない事にした。
わざわざ見えてる地雷に、誰が好き好んで突っ込んでいくものかと。
「良いのかい?」
ただ簡素に、彩加はリオに訊ね返す。
別に無理して関わりのない自分に宿を提供することはないと、そう言っていたのだ。
「困った時は助け合いですよ!それに、助けて貰っておいて何もしないのは良くないですから!」
リオの返答に、実に良くできた青年だと彩加は感心する。
助け合いと言えば聞こえは良いが、厄介事を抱え込むと同義だ。
恩を差し引いても、助けると言う選択肢を取れる彼に感心した事は嘘では無い。
「それじゃ、暫く厄介になるよ、よろしくねリオ君。」
「はい!お願いします彩加さん!」
契約成立と言わんばかりに、彩加とリオはしっかりと握手を交わした。
敵対することは無いと、協力しようと誓うように。
「そういうわけだから、レム、彩加さんにこの地球の事を教えてあげてくれないか?」
『もちろんそのつもりです、そしてリオ、貴方は彼に色々と教わるべきです。』
レムの言葉に、リオは表情を硬くする。
それは戦闘面での事なのか、果たしてそれ以外の事なのか……。
無論、今のままで良いとはリオも思ってはいまい。
だが素直に教えてくれと言うのも違うと考えているからこそ、即決出来ないと言うことだ。
『ウルトラマンXは第二次大決戦だけでなく、多くの戦いを経験した戦士です、貴方にとって、学ぶことの多い存在であることは確かです。』
「そんなに大層なものじゃないよ、でも、心意気だけなら教えられるよ、と言っても、僕の師匠からの受け売りだけどね。」
謙遜しながらも、彩加は自分にも出来る事があるとわかっていた。
嘗て師から受けた教え、それを自分なりに取り込んで軸とした生き様と、それを貫く為の信念がある。
それを伝え、若人の迷いにヒントを与えられるのならばと。
「リオ君が望まない限りは押し付けるつもりも無いし、学べとも言わないよ、僕は僕のまま、伝えられる事だけ伝えていくよ。」
無理に頭を下げるなと、リオに対してウィンクしながらもシャワールームの方へ歩いていく。
最後に地球を経ってから、長い事戦い詰めで風呂にも入れてないと、せめて汗くらいは流したいと言うのが、生理的心理でもあったのだ。
その言葉に、リオは何か言いたげながらも見送る事しか出来なかった。
まだ、迷いがあったから。
打ち明ける事さえ出来ない、本当の意味での彼の、彼の根幹にある、その苦悩を……。
次回予告
自分自身を知らぬままに戦う事は出来ない。
だが、知ることが必ずしも幸せとは限らない。
次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga
探求編、力の源
お楽しみに