ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga   作:ichika

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力の源

―――くん――――

 

呼んでいる……、優しく温かい声が……。

身体を揺すられ、彼の意識はまどろみの淵から徐々に現へと戻っていく。

 

――――リオ君――――

 

自分を呼ぶ声が聞こえる。

高めの声で、男性とも女性とも取れる、優しい声……。

 

眠気に重くなっていた瞼を開けようとして、ぼやけた視界の先にそれは映り込む。

背中へ流れる様に垂らされた銀の髪、エプロンを着こなす中性的な出で立ち。

 

あぁ、その姿はまるで――――――

 

「お、かあ、さん……?」

 

そう言って、リオの頭は現実をしっかりととらえる事となる。

 

目を開けると、そこには引き攣った表情を浮かべる美人の姿が在った。

その人こそ、リオを揺り起こそうとした人物であり、戸塚彩加というれっきとした男性であった。

 

「そこはせめて、お父さんにして欲しいなァ……。」

 

リオの反応に苦笑いを浮かべながらも、彩加はため息を吐く。

昨日の今日とはいえ、まだ女扱いされるとは思いもしなかったのだろう。

 

そこで一気に、リオの意識は覚醒する。

やってしまったと、眠気も何処かへ吹っ飛んでしまったのだ。

 

「わぁぁ!?さ、彩加さん……!?」

 

起こしてくれた相手が男性で、それも自分を助けてくれた恩人だと分かり、リオは素っ頓狂な声を上げて跳び起きる。

やってしまったと、そ帆表情は軽く青褪めてさえいた。

 

「うん、おはよう、ちょっと驚き過ぎじゃないかな?」

 

そんなリオの様子に窘める事さえ不憫だと感じたか、彩加は苦笑するだけに留め、軽くデコピンだけして完全にリオの眠気を飛ばしてやる。

 

間違いは誰にだってある、気にしないと言えば軽い嘘にはなるが、それでもこの程度で済ませてやるのが妥当であると。

 

「す、すみません……!」

 

「いいよ、気にしてない、さ、起きて顔洗っておいで。」

 

リオをベッドから起こし、洗面所へ向かわせる。

選択でもするつもりなのだろう、シーツやカバーを手際よく剥がし、さっさと洗濯機へと放り込んで行く。

 

リオが洗顔と身だしなみを整え、寝間着から着替えて戻ってきた時には、テーブルには豪勢な朝食が用意されていた。

 

ストックなど何処に在ったのか、きつね色に焼かれた食パンに、コーンスープ、そしてソーセージが添えられたスクランブルエッグにプチトマトが彩りを醸し出すプレート、デザートにどうぞと言わんばかりにはちみつがトッピングされたヨーグルトが、綺麗に並べられていた。

 

「うわぁ……!これ、彩加さんが作ってくれたんですか!?」

 

驚きのあまりに目を見開き、リオは表情を輝かせて尋ねる。

こんなにしっかりとした朝食を作ってくれるなんて思ってもみなかったと。

 

「ありものを使っただけだよ、冷めないうちに食べちゃってね。」

 

大したことはしていないと笑みつつ、彩加はテーブルについて食べようと促す。

 

立っているのも可笑しな話だと、リオも向かい合う形で着席する。

 

「「いただきます。」」

 

しっかりと手を合わせて、2人は食事を始める。

彩加も慣れた手つきで紅茶を入れ、食事を進めていく。

 

「お、美味しいです彩加さん……!こんな美味しい朝ご飯、食べたこと無いです!」

 

感激しながらも、リオは下品でないながらも、凄まじい勢いで平らげていく。

味の好みドンピシャだったのだろう、その表情は喜悦に輝いていた。

 

「それならよかったよ、ゆっくり食べてね。」

 

その様子に、彩加は表情を綻ばせながらも食パンをひと齧り、黙々と食事を摂っていく。

 

暫くそのまま食事を続け、リオは出されたもの全てを綺麗に平らげていた。

 

「御馳走様でした!洗い物やりますね!」

 

「それならお言葉に甘えようかな、その間に掃除だけはしておくよ。」

 

食後の紅茶もそこそこに、2人は分担して家事を行っていく。

 

リオの表情はそれこそ輝いており、ウキウキしながら洗い物を熟していた。

どうやら、相手が同性だと分かっていても、見た目美人と家事をやっているというシチュエーションに舞い上がっているのだろう事が窺えた。

 

それに気付いている彩加は、モチベーションが上がるのならばそれで良いと割り切ったのだろう。

見た目も能力の一つ、使える手札は多いに越したことは無いと。

 

それから暫くして、2人はそれぞれ分担していた家事を終わらせる。

分担したために、彼等の予想以上にスムーズに終わらせる事が出来ていた様だ。

 

「よっし、これで終わりだね。」

 

捨てるものでいっぱいになったゴミ袋の口を縛りつつ、彩加はひと段落着いたと笑みを浮かべる。

 

「彩加さんのお陰ですよ!助かります!」

 

何時も以上にやる気を見せるリオの表情は、まるで褒められた犬の様に喜色満面だった。

年上の美人に良いところ見せたいと、自身より優れた戦士に認められたいと、打算も含まれているようだが、それでも巧く事が運ぶならば正しい欲求なのだろう。

 

『おはようございます、リオ、ウルトラマンX、何時もより早い起床、そして何時もより部屋が綺麗になりましたね。』

 

現れたレムの言葉に、それは言わないでくれとリオは表情を顰めるばかりだった。

折角良いところ見せたかったのにと、だらしない所など見せたくないと。

 

そんな彼の様子に、そんなこと気にしなくてもいいのにと彩加は苦笑する。

別段、私生活が壊滅的だからと言って、友人やそれに準ずる相手ならば、よっぽど迷惑が掛からなければ口出す権利はないと割り切っていた。

 

それはさて置き……。

 

『綺麗に片付いたのです、折角なら手合わせをしてみれば如何でしょう?』

 

「唐突だね、まぁ、僕はいつだって大丈夫だけど。」

 

レムの提案に、彩加はいつでも何処でもやれると、軽く身体を慣らしながら答える。

 

常在戦場が身についているのだろう、先程までの笑みは引っ込み、一人の戦士としての、ウルトラマンXとしての表情がそこにはあった。

 

『リオ、あなたに足りないのは経験です、何時でも勝負を求めるべきです。』

 

「……ッ!」

 

レムの言葉に、リオは表情を硬くする。

勝負を求めるべき、その言葉に反応したという事は、彩加にも見て取れる程だった。

 

なるほど、勝負を、戦闘を求める事に忌避感があるという事かと。

その気持ちは彩加でも一部理解できるというモノだ。

 

自分は無二の親友と共に、師を超えるために戦いを、自身の研鑽を求めてはいる。

それが摸擬戦だろうが実戦だろうが、踏み越えてこそだと考えている節はある。

 

だが、その基準を戦いを忌避している者に押し付けるつもりは毛頭ない。

戦わずに生きてこられたのならば、平凡な人間のままで生きて行けたらと考えなかったと言えばうそになる。

 

しかし、あの日の出会いが、経験が、彼に平凡な人間としての生を否定させた。

 

だからこそ、生き方を選べる立場のリオに、無理強いなど出来る筈も無かった。

 

「リオ君、君は、戦いたくなんてないんだね。」

 

故に、彩加はリオへ、その心の内を問う。

お前はどうしたいのだと、必要性を問うていた。

 

「彩加さん……?」

 

それを答えていいものかと、リオは彩加の顔を見る。

そこに在るのは脅え、答える事で軽蔑されないかという様な、縋る様な眼差しがあった。

 

「ウルトラマンの力を持ってたって、戦いたいかどうかなんて自分で決めたら良いんだよ。」

 

ウルトラマンとして在らねば、自分に価値はないと思っているのだろうと彩加はアタリを付けながらも、義務はないと諭す。

 

目的が、自分が認められたいからという承認欲求から来ている、若しくはヒーローとしての在り方しか価値がないというのであるならば、尚の事戦う必要なんてないのだと。

 

「君が君であるのは、ウルトラマンだからじゃないでしょ?君は、君のままであればいいんだ。」

 

「……ッ!!」

 

自分のままで良いと言ったかと、リオの表情は陰り曇っていく。

自分とは何か、戦うとは何か、自分でも分からないのに、訳知り顔で言うなと。

 

「彩加さんには、分かりませんよ……!」

 

「リオ君……?」

 

苛立って、つい口調が刺々しくなる。

自分の何を知って、何を見てそういうのかと。

 

自分を確立している人間からの言葉ほど、今のリオには何よりも鋭い刃となって突き刺さるのだ。

 

「僕は、何も分からないんだ……ッ!!」

 

分からない事は、分かっている事よりも辛い事なんだと。

 

彩加とレムを睨みながらも、リオはエレベーターに飛び込む様に乗り込み、星雲莊を出て行ってしまった。

 

「……、なるほど、ね……。」

 

彼の様子から何かを察したのだろう、彩加はため息を吐きながらも椅子に腰かける。

自分が分からないから、戦って良いのかすら分からないのだと。

 

『申し訳ありません、X、貴方に、彼を……。』

 

「謝ったりしないで、僕こそ配慮が足りなかったよ。」

 

レムの言葉を遮りながらも、彩加は何かを考え込むような表情を見せる。

 

暫く、沈黙が続いた。

誰も話さない、いいや、話せないのだ。

 

そして、何かを思いついたのだろうか、彩加は席を立った。

 

「レム、僕を彼の近くまで送ってくれるかい?」

 

『分かりました、彼を頼みます。』

 

彼女の言葉に頷き、彩加は開かれたエレベーターの中に足を踏み入れた。

 

この世界で自分がやるべき事はただ一つだと、強く感じて……。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

「はぁ……。」

 

星雲莊を飛び出したリオは、宛もなく街を彷徨い歩いていた。

 

強く言い過ぎてしまっただろうか、いいや自分は間違った事なんて言っていない。

罪悪感と反抗心がせめぎ合い、どうにも釈然としない心持で歩くしかなかった。

 

今日に限って、店の仕事は入っていないし、何処へ行こうにも急に飛び出したようなものだから持ち合わせもない。

かといって、このまま戻るのも何か違うというモノだ。

 

だから、彼は飛び出した先にあった公園に足を踏み入れた。

このまま時間を潰すためにも、彼は公園内をフラフラと歩いていた。

 

そこは何処にでもある自然公園であり、家族連れや子供たちなどで賑わっていた。

何処にでも有り触れた、さりとて平和の象徴たる光景だった。

 

その光景をわき目に、彼はトボトボと歩いていた。

 

「おや、顔色が優れませんねぇ?」

 

そんな時だった、リオを呼び止める声が響く。

誰だと、声が聞こえた方向に目をやると、そこにはベンチに腰掛け、薄い笑みを浮かべる紳士の姿が在った。

 

「貴方は……、昨日の……?」

 

その男に見覚えがあったのだろう、リオは少しだけ警戒するような表情を浮かべる。

 

昨日、店に買い物に来てくれたことには変わりないが、初対面のはずの自分の名を知っていたのだ、警戒はして損は無いだろう。

 

「あぁ、昨日はありがとうリオ君、美味しいコーヒーだったよ。」

 

「それは、どうも……、なんの用ですか……?」

 

薄い笑みを崩さないままの男へ、リオは一体何の用だと問いかける。

名前も知らない相手と和やかに言葉を交わせるほど、彼は鈍ではないのだ。

 

「憶えていてくれて嬉しいよ、用事という程大層なものじゃないさ。」

 

男は、リオの表情を見ながらも笑み、言葉を続ける。

彼が何を感じていようと関係ないと、その笑みからは圧の様なモノが感じられた。

 

「そうですか、僕も聞きたいことがあります。」

 

警戒を解かないまま、リオは探る様に言葉を紡ぐ。

 

「ははは、名乗ってもいないから警戒している様だね。」

 

彼の様子に、男は笑みを深くする。

話しを聞く素振りを見せた事に、彼の思惑通りに事が進んでいると。

 

「私はケイス、ストルム星出身の、しがない彷徨い人さ。」

 

「宇宙人、ですか……。」

 

男、ストルム星人ケイスの言葉に驚きはなかった。

地球人とは違う雰囲気と、その意味深な態度から薄々何かを察していたのだろう。

 

「驚かないのかね?」

 

「えぇ、まぁ……。」

 

腹を探り合う様に、彼等は言葉を交わしていく。

先にアクションを、動揺を見せた方が負けだと、そう言わんばかりに。

 

「ならば、驚く事を教えてあげよう、私は君の事を良く知っている、とね?」

 

意味深な笑みを浮かべながらも、男は言葉を紡いでいく。

リオの事を良く知っていると、まるで親でもあるかのように告げて見せた。

 

何をバカな事をと、リオは内心驚きと困惑を禁じ得ない。

初めて会ったのは昨日の今日の事だ、知りようが無い筈だった。

 

だが……。

 

「何故、という顔をしているね、簡単な事だよ、ウルトラマンジード。」

 

「なッ……!?」

 

今度こそ、リオの目は驚愕に見開かれる。

何故自分がウルトラマンだと知っている、この男は何者だと、混乱が強くなっていくばかりだった。

 

彼の反応を愉しむ様に、ケイスは浮かべていた笑みを更に深い物へと変える。

 

愉快だと、良いザマだと嘲笑う様に……。

 

「何故自分がウルトラマンに変身できるか疑問に思わなかったのか?何故自分がウルトラマンの細胞を持っているのか、考えたことは無かったかな?」

 

「それは……ッ!」

 

ウルトラマンになってから暫く経つが、何故自分がこの力を持っているのか、何故自分がウルトラマンの遺伝子を持っているのか。

それを考えなかったと言えば嘘になる、いいや、考えない様にしていたのかもしれない。

 

気付きたくなかったから。

気付いてしまったら、彼は……。

 

「その答えはただ一つなのだよ、君は―――――」

 

「やめろ……ッ!!」

 

ケイスの言葉を遮る様に、リオは叫ぶ。

その先を言うなと、知りたくもないと。

 

しかしケイスは止まらない。

知りたくなくとも教えてやると、お前の運命は既に決められていると、そう突き付ける様に。

 

「君は私の作った、我が主ウルトラマンベリアルのクローン、ベリアル様の魂を降ろすために作り上げた依り代に過ぎないんだよ。」

 

「やめてくれッ……!!」

 

矢継ぎ早に放たれる言葉に、リオは耳を抑えてでも聞きたくないと耳を塞いだ。

しかし、その言葉は呪詛の様に、指の間をすり抜けて彼を蝕んでいく。

 

「しかし、余計な感情を持ってしまっている様だ、依り代にそんなものは必要ないのだよ。」

 

しかし、ケイスは嘲笑う様に告げる。

お前は感情を持ち過ぎだと。

 

依り代は人形で良い、人間性も価値観も必要ない、ただ稼働出来ればそれで良いと。

 

リオの人間性を、これまでの生を、完全に否定する言葉だった。

 

「その反抗的な目、気に入らないなぁ……、だから―――――」

 

立ち上がりながらも、ケイスは何処からともなくソレを取り出す。

それはリオの使うライザーと全く同じもの。

 

それが意味するところは――――――

 

「依り代は依り代らしく、人形で在るためにも、私が再教育してやろう!!」

 

ケイスの言葉と共に、ライザーから強烈な光が放たれる。

あまりの眩さに、リオは思わず目を逸らしてしまう。

 

その閃光の中で、ケイスは力を解放する。

 

「ベリアル様。」

 

白のカプセル、ウルトラマンベリアルのカプセルが起動され、ナックルに装填される。

 

「マガオロチ。」

 

黒のカプセル、マガオロチの力を宿したカプセルが起動され、もう一方に装填された。

 

それは、彼がその力を使うために与えられたモノ。

ベリアルの力を使う事を赦された証左だった。

 

「これで、エンドマークだ。」

 

『フュージョンライズ!』

 

読み込まれたカプセルの力が、ベリアルとなった彼に吸い込まれていく。

その力を、自身のモノとするために。

 

『ウルトラマンベリアル!マガオロチ!禍々アークベリアル!!』

 

地響きと共に、その怪物は姿を現した。

全身からクリスタルの様に輝くエメラルド色のとげの生えた、醜悪な怪物の姿、その名も禍々アークベリアル。

ウルトラマンベリアルの進化した姿、アークベリアルに、全宇宙を滅ぼしかねない大魔王獣、マガオロチの力が掛け合わさった、災厄の姿だった。

 

『さぁ来るがいい深見リオ!!この力で、貴様を叩き潰してくれる!!』

 

挑発するように、禍々アークベリアルは咆哮を上げ、周囲を破壊していく。

そこには、先程までの平和を享受していた無辜の民も含まれており、倒壊する建物に、あるいは振り回される尻尾に叩き付けられ潰されていった

 

「あぁ……ッ!」

 

そこでやっと正気に戻ったか、リオは目の前で振るわれる暴虐に悲鳴を上げる。

なんてことをするんだと、貴様の目的は自分だろうと。

 

だが、叫んだところで何の意味もない。

その暴虐を止めさせるには、抗うしかないと。

 

「ジードっ……!!」

 

だから、彼もウルトラマンとしての姿へ変身する。

自分が何者で、何のために戦うかも分からないままに……。

 

 




次回予告

自分は何者なのか、自分の意味とは?
分からぬままに、彼は我武者羅に戦うしか出来ない。
それが、ただの暴走である事に気付かぬままに。

次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga

探求編、存在証明

お楽しみに
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