ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga 作:ichika
「うぅっ……!!」
光線の撃ち合いに敗れたジードは変身を解かれ、リオの姿となって地面に叩き付けられた。
あまりのダメージに呻く事すら出来ないのだろう、指一つさえ動かせないほどだった。
無理もない、ノーガードで攻撃を叩き込み、相手からの攻撃を至近距離で受ければグロッキーにもなろうものだ。
寧ろ、変身解除で済んだだけ御の字というものだ。
『ぐぅぅ……!この私を、ここまで傷つけるとはぁ……!』
対して禍々アークベリアルは傷こそ負っているものの、それでも継戦出来ると言わんばかりに立っていた。
目の前に横たわるリオを見下ろしながらも、忌々し気に咆えるばかりだった。
無駄な抵抗をした挙句、自分にも軽くないダメージを与えたのだ、心底苛立っているという事が手に取るように分かった。
致し方あるまい、創造主である自分に反抗するなど腹立たしい事この上ない。
諾々と従っていればいいと、彼は感じているに違いない。
『だがその傷では動けまい……!今ここで、貴様をォォォ……!!』
だからこそ、今目の前に倒れる小僧を殺すと、当初の目的など何処へと言わんばかりに拳を振るいあげる。
その先に、彼が求めているものが永劫に失われようとも、関係ないと言わんばかりに……。
拳が振り下ろされる、その刹那―――――――
『サイバーゴモラ、ロードします!』
電子音声が鳴り響き、リオを庇う様に、禍々アークベリアルの目の前にそれは立ちふさがる。
巨大な爪と重厚な鎧を纏ったその姿、それは怯むことなく拳を真っ向から受け止め拮抗する。
『なにぃぃっ……!?』
『ゴモラアーマー、アクティブ!』
「やらせは、しないッ!!」
ケイスの驚愕に答えるように、ゴモラアーマーを纏うXが吼える。
やらせはしないと、護って見せると。
体格差をものともせずに、Xは力を籠めて押し返していく。
パワーに特化しているゴモラアーマーの力在りきとはいえ、それでも信じがたいほどの出力だった。
「ウォォッ!サイバー超震動波!!」
裂帛した気合と共に、Xはゴモラアーマーのエネルギーをスパークさせ、禍々アークベリアルへと叩き付けた。
『ぐォォォ……ッ!?』
予想外の攻撃だったからか、その攻撃に耐え切れずに、禍々アークベリアルの巨体が弾き飛ばされ宙を舞う。
後方へと大きく吹っ飛ばされ、ほぼ一町分滞空し、引力に引かれて地に叩き付けられた。
『がぁぁぁ……ッ!?』
想定以上のダメージを負ったか、禍々アークベリアルのフュージョンが解かれ、粒子となって消えて行った。
それを認め、今のうちにとXも変身を解き、倒れるリオの下へ駆け寄った。
「リオ君!しっかり!!」
揺さぶりながらも呼びかけられる彩加の声にも答えない。
最悪の事態を想定し、彩加は呼吸と心音の確認をすぐに行う。
弱弱しいながらも呼吸はしっかりと行われており、心音はしっかりと脈打っていた。
程度はともかくとして、何とか生きていると判断し、彩加は安堵のため息を吐く。
だが、このまま留まり続けるのは悪手だと、彼は気絶するリオを担いで一目散に撤退する。
近くには、先程吹っ飛ばした敵がいると分かってはいる、追撃を賭けるべきなのだろうが、今は体勢を整える方が先決だと、戦術的撤退を選択したのだ。
護らなければならないモノを、決して見誤らないために……。
―――――――――――――――
―――――――――――――――
「レム!」
星雲莊に戻った彩加は、語調荒く叫びながらも担いでいたリオをベッドに横たえる。
ダメージが思った以上に深刻なのだろう、その表情は切羽詰まっている様子だった。
出来る事なら自身の力で癒してやりたいところだが、ピュリファイウェーブはそこまで万能ではない。
だからこそ、アジトかつ異星の技術で作られたこの星雲莊ならば、回復手段の一つや二つ備えているだろうという望みをかけていたのだ。
『そのまま寝かせていてください、回復術式を実行します。』
平坦ながらも、普段よりも口調のテンポが速く、そして何処か焦りを滲ませたような声で、レムは寝かせたままでいろと指示を出す。
その刹那、ベッドサイドに何やら機材の様なモノが出現し、淡い光をリオに向けて照射する。
レムの言葉通り、リオの身体のいたるところにあった傷が徐々に修復されていく。
まるで、親友であるギンガやビクトリーが使う回復技によく似ているなと、彩加は何処か感心したように見ていることしか出来なかった。
ほどなくして、リオは先程までの何処か痛みを堪えるような険しい表情ではなく、穏やかな吐息を立て始める。
何とか大事は回避したと、彩加は今度こそ安どのため息を吐いた。
「だけど……。」
だがしかし、心は晴れない。
その理由は至極単純、先程までのリオの戦いが原因だった。
何があったかは分からないが、それでもあの戦い方に理性など感じる取ることは出来なかった。
野生、本能のままに暴力を叩き付けている、しかも怒りに任せて、だ。
怒りを用いて戦う事自体は、彩加も特に否定することは無い。
怒りを理性でコントロールし、相手に正確に叩き込めれば、それは十分な武器となる。
だが、ジードにそれを感じることは出来ない。
ただなりふり構わず、防御さえかなぐり捨てた、いわば捨て身の状態だ。
そんな状態を、命を捨てるような行為を認める事など、彩加には到底出来なかった。
それではウルトラマンを、戦士を名乗る事など出来ないと。
「彼に、どうっやって伝えるべきかな……。」
何を以て自覚させればいいのかと、何を伝えるべきかと、彩加は思案する。
彼に必要なものは何か、それを見つけ出せてはいなかった。
「うぅ……ッ。」
その時だった、うめき声をあげてリオの意識が覚醒する。
痛みに身体を捩りながらも、身体を起こそうとしていた。
「目が覚めたんだね、リオ君!」
リオの身を案じ、彩加は安堵の笑みを浮かべながらも話しかける。
何はともあれ無事でよかった、命あっての物種だと、そういっている様だった。
「彩加、さん……?」
彼の顔を見て、自分が生きている事を実感したかリオは安堵のため息をついて、そして……。
「……ッ!」
自分が何をしたか、何があったかを思い出したか、リオは表情を硬くして顔を背ける。
目など合わせることが出来ない、分かってくれるはずないと拒絶しておいて、どの面下げて、と……。
だから、彼は自分の不甲斐無さと、言葉に表しきれぬ感情を抱えたまま、彼は俯く以外無かった。
「リオ君……。」
その表情に、彩加は彼のぶち当たる壁を見た。
分からないと、消化しきれない感情があると、その目が何よりも強く訴えている様だった。
その目に、彼は思い当たる節があった。
嘗ての自分、誰にも分かってもらえないと、仮面を被ってそう在るべしと振舞っていた頃の自分に、今の彼はよく似ている気がした。
似ている、とはいえ置かれている状況は彼の方が深刻である事は、火を見るより明らかだった。
そんな状態の彼に、自分が出来る事があるとするならば……。
「レム。」
『なんでしょうか、X?』
静かに、だが何よりも強い確信をもって、彩加はレムに声を掛ける。
その想いを感じ取ったか、レムも静かに返す。
彼女も解ったのだ、今、為すべき事を。
「少し、僕とリオ君を外へ、少し歩いてくるよ。」
リオを起こし、手を引いて起動したエレベーターへ彼を連れ込んだ。
少し出かけると、言葉の上ではそう言っていた。
「リオ君、少し外の空気を吸いに行こうか、ちょっと話したい事もあるしね。」
「……。」
彩加の言葉に、リオは顔をそむけたまま無言を貫く。
肯定も否定もしない、放っておいてくれとも助けてくれともいわない、どっちつかずの様相だった。
だが、彩加はそれを無言の肯定と見做し、追及することは無かった。
故に、そのままレムに目配せする。
その瞬間に、エレベーターの扉が閉まり、彼等は地上へと送り出された。
「ここは……?」
それは何処かのビルの屋上、街を一望できる、特に高い場所だった。
何故ここに連れて来たのだと、リオは彩加を見る。
何の目的があってここに連れてきた、こうしている間にも、ストルム星人ケイスがまた暴れ始めるかもしれない。
ジッとしていられないと、彼は焦りを隠す事無く彩加を見た。
それを受けて、彩加はただ頷き、目の前に広がる光景を見る。
釣られてリオも、その方向へと目を向ける。
そこに広がるのは、怪獣被害を受けた街の光景。
至る所でビルが崩れ、黒煙と共に火が上がっている様子も見て取れた。
そして、ウルトラマンである彼等には同時に見えてしまう。
地上では、巻き込まれた住人達が、その災禍から逃れようと、必死に抗っていた。
それは、あの戦いに巻き込まれた人間がいたという証左に他ならない。
今、冷静になって状況を俯瞰したリオは、苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
気付いてしまったのだ、自分が戦っていた足下にいる人たちの事を。
それを忘れて力を振るってしまった事を……。
「こんな、事を見せて……、僕に何をしろって言うんです……?」
絞り出す様に、リオは彩加に問う。
目を背けたいのに、そんなこと無いと否定したいのに突き付けてくる。
その意味を教えて欲しいと、自分は何をすればいいと、答えを求めている様だった。
何のために戦うかも分からない、自分が何のために存在するかも分からない。
そんな自分が、果たして生きていても良いのか分からないのに、何をするべきなのかなど、分かる筈も無かった。
「見たままだよ、戦う事には責任が付き纏う、ってやつだ。」
それに対して、彩加は冷淡に、事実を突きつける。
力を持つ者は望む望まないに関わらず、周りに大いなる影響を与えてしまうモノだ。
この街の惨状も、力を持つ者が争ったが故なのだと、そう伝えたいのだろう。
「君が何で戦うのかなんて、僕は知ったこっちゃないけど、ね。」
そして、それを加味して尚、リオが何を目的として戦うのかと、そう問うているのだ。
責任をすべて投げ捨てても、それでも果たすべきものがあるのならば尊重しよう。
だが、その信念さえないのであるならば、それはただの暴力装置でしかない、と。
その事を念頭に置いた上で、彩加は一歩踏み込む。
それが、事態解決の鍵であると、そう信じて。
「だから聴くよ、君は、誰なんだい?」
「……ッ!!」
その問いに、その真意に、リオは応える事が出来なかった。
自分の名を、その存在の意味を、示すことが出来なかった。
彼はこうも思っている。
ベリアルの遺伝子を持ち、あまつさえクローンであると言われた自分が、生きていて良いというのか、と……。
「貴方に、何が分かるっていうんです……!?」
その迷いと苛立ちが自棄を起こさせるには充分に過ぎた。
頭に血が昇ったリオは、その衝動に任せて彩加に殴りかかる。
ただ我武者羅に、技法など度外視で殴りかかっていく。
その全てを、彩加はステップだけで回避し、防御の体勢すら取らない。
衝動に任せた攻撃など、防がずともよいと。
「僕には何もないんだ……!家族も!仲間もいない!!」
怒りに任せて、攻撃を続けながらもリオは叫ぶ。
自分には何もない、あるのは力だけだと。
それさえも与えられたものなのだとするならば、自分の存在とは……。
拳から哀しみが伝わって来る。
自分が分からない、生きていて良いのかも分からない、存在の意義が分からない。
その拳を向ける先を、その意味を見つけられない苦しさがそこにはあった。
「それでも……!それでもウルトラマンなら、戦う事しか出来ないなら、そうするしかないんだ……!僕が……!僕がやるしか……!!」
自分がやるしかないと、本当の願いを見つけられないからウルトラマンンの力を使っているのだと。
それが、本当の望みではないと、気付いていながらも。
「それで何が出来るの?何が残るの?」
そんな事で力を使ったとて、残されるのは暴力が振るわれたという結果だけ。
目的のない力が周りに与える影響など、恐怖以外の何物でもない。
それは、嘗て自分達が倒してきた敵と何も変わる事など無いと、彩加は知っていた。
「何故頼らない、なんで手を伸ばさない!」
嵐の様なラッシュを潜り抜け、彩加はリオの腹へ強烈なボディブロゥを叩き込む。
「かはッ……!?」
その威力に防御すら取る事が出来なかったリオはモロにダメージを喰らい、膝を折ってしまう。
呼吸が乱れ整わない、息を吸うにも痛みが走る。
暫くは動けないと、誰の目にも明らかであった。
「自分で出来る事も、やれることもちっぽけなものだよ、それに……。」
しゃがみ込むリオに、彩加も目を合わせて問いかける。
自分一人で出来る事なんて、それほど多くないと、そう伝えたかったのだろう。
「君は本当に一人なのかい?」
「え……?」
その言葉に、リオはどういう事だと声を漏らす。
その意味を図りかねた、そういわんばかりの表情だった。
「悩むと良い、君自身を探す事も、時には必要だよ。」
その意味を見つけるのは自分自身だと、彩加は諭す様に告げる。
そうやって見つけたものにこそ意味があると、姿勢で示していた。
「君の名前を教えて。」
拳をリオの左胸に当てながらも彼は問う。
お前は誰だと、誰で在りたいか、と……。
「僕、は――――――」
答えようとした刹那、地響きが彼等を襲う。
振り返り、街の方を見る彼等の視界に、それは飛び込んでくる。
『――――――!!』
最早獣とも怨嗟ともつかぬ叫びをあげながらも、禍々アークベリアルの巨体はその姿を現した。
だが、その様子は何処か以上だった。
先程以上の闇と邪気を巻き散らしながらも、辺りを手当たり次第に破壊し始めた。
「ストルム星人ケイスッ……!!」
それになっている者の名を叫ぶながらも立ち上がろうとするが、リオの身体は言う事を聞かない。
あの一撃によるダメージが尾を引いていると察する事が出来た。
「リオ君はここに居て、あの化け物は僕がやるよ。」
「彩加さんっ……!!」
背を向け、変身のプロセスに入った彩加へ、待ってくれと声を投げる。
それに構わず、彩加はXへと変身、目の前に聳える悪魔と対峙する。
ここで自分が仕留めてやると、その気迫が感じ取れた。
この戦いが、背後にいる彼への、何かのきっかけになればと……。
次回予告
自分がここにいる意味とは?
戦う目的とは?
その答えは、いつも必ず自分のそばに
次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga
僕の名前
お楽しみに