ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga   作:ichika

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僕の名前

 

変身を終え、地に降り立ったXが目の前に聳える魔獣に向けて構える。

 

体格差は勿論勘定済み、故にすぐさま飛び上がり、滞空して迎え撃つ算段のようだ。

 

「僕が相手をするよ、掛かって来いっ!!」

 

挑発と共に、Xは手招きをする。

自分に釘付けにせんと、後ろにいる彼には触れさせないと、そう誓いながら。

 

『ウルトラマンXゥゥゥゥ!!』

 

禍々アークベリアルが怒りに吼える。

邪魔された事も腹立たしい上に、またしても戦いを挑んでくる。

 

目的はお前ではない、だが、邪魔をするならば容赦などしないと。

咆哮と共に、禍々アークベリアルの巨体が駆けだし、Xを掴もうとその腕を伸ばす。

 

しかし、滞空していたXはさらに高く飛び上がる事でその腕を回避、ハンドスラッシュの光弾を嫌がらせの様に撃ち掛ける。

ダメージなどない、ただ牽制と気を逸らす為の攻撃だった。

 

鬱陶しそうに腕を振り、羽虫を振り払わんと禍々アークベリアルが動く。

だが、その隙にXは間合いから離れ、次の攻撃へと移っていた。

 

『サイバーゼットン、ロードします!』

 

電子音声が響き、Xの身体にホログラムの様なノイズが走り、胸部と両腕部に装甲が装着されていく。

 

『ゼットンアーマー、アクティブ!!』

 

宇宙恐竜ゼットンの力をサイバー化し、装着するアーマー《ゼットンアーマー》。

 

「ゼットン光弾!!」

 

突き出した腕から、ゼットンの火炎球を再現した技、ゼットン光弾が放たれる。

腕を振るった直後の硬直を狙われたからか、禍々アークベリアルは火球に顔面を焼かれる。

 

『ぬううっ……!?』

 

熱さを払おうと頭を振り、禍々アークベリアルは吠えながらも腕を伸ばしXを狙う。

それを認め、Xは腕を垂直に立て、テレポートを使用する。

 

『なにぃ……!?』

 

振るわれた腕が宙を切る。

驚愕する巨獣の背後にXが現れ、すぐに攻撃態勢に入る。

 

「もう一発!」

 

Xが突き出した腕から光弾が放たれ、巨獣の背に着弾、盛大な火花を散らす。

 

予想外の攻撃だったのだろう、禍々アークベリアルは悲鳴にも似た咆哮をあげながらもつんのめり、蹈鞴を踏むようにバランスを取ろうとしていた。

 

しかしそれは大きすぎる隙でしかない。

体勢を崩した禍々アークベリアルへ、Xは追撃の手を緩めない。

 

「そこだッ!!」

 

その背後に向けて、流星が振るが如く鋭い勢いと共に急転直下、頭頂部にXクロスキックを叩き込んだ。

 

『ぐぉぉぉっ!?』

 

崩れた体勢では堪える事すら難しかったのか、禍々アークベリアルは顔面から地に叩きつけられた。

 

あまりにも大きすぎる身体が叩きつけられ、足元を強烈な地響きが襲った。

 

その力、その威力、並の鍛錬では身に着けられない力を持っているなど、遠巻きに見ているリオからもよく分かった。

 

だが、彼には未だ分からない。

なんでそうまでして力を着けるのか。

 

その力で、何をするのかと。

道を見つけられていない彼には、目の前の光景をただ呆然と見ているしか出来なかった。

 

『お、のれぇ……!!忌々しい奴めぇ……!!』

 

なんとか起き上がり、禍々アークベリアルは怒りに吼えた。

忌々しいと、果たさねばならぬ使命を邪魔するXに対して、怒りに燃えていた。

 

『貴様はここでぇ……!!コロスぅぅぅぅ!!!』

 

ケイスの声は、最早理性など感じ取れないほどの怒りにまみれていた。

その怒りを全てにぶつけるつもりか、いくつもの光弾を生み出し、それを周囲に対して無差別に放とうとする。

 

「やめろっ!!」

 

八つ当たりの様な攻撃だと感じ取り、Xはハンドスラッシュの光弾を幾つも撃ちかけ相殺する。

破れかぶれかそれとも計算づくか、相殺しきれない光弾が周囲を襲った。

 

「いい加減に!しろっ!!」

 

バリアウォールを展開し、自分の背後にある物は辛うじて守れる。

だが、逸れた光弾の幾つかが周囲に着弾し、盛大な火柱を上げる。

 

街の窮状に歯噛みし、これ以上の被害は出せないとXは焦りを見せる。

 

バリアウォールを解除し、上空へと飛ぶ。

身を屈めてエネルギーをチャージする。

 

「アタッカーX!!」

 

Xは上空から必殺技の一つ、アタッカーXを放つ。

その威力はダークロプスゼロを一撃で撃滅した実績を持つ。

 

凄まじいエネルギーを持ったそれは撃ち出され、そのまま一直線に禍々アークベリアルを撃ちぬくものと思われた。

 

『なぁめるなぁァァァッ!!』

 

しかし、禍々アークベリアルは口内にエネルギーをチャージ、向かってくるアタッカーXに向かって放った。

数瞬の間もなく激突し、強烈な閃光を巻き散らす。

 

『―――――――!!』

 

最早声ですらない咆哮と共にエネルギー波の勢いが強まり、アタッカーXを一気に押し返していく。

 

「まさか……ッ!?」

 

避けるか防ぐかを逡巡してしまったか、対応が一瞬遅れてしまう。

その一瞬で、エネルギー波はすぐ目の前まで迫っていた。

 

「くぅぅっ……!!」

 

バリアを張る事すら間に合わない、咄嗟に両腕をクロスさせ防御の体勢を取る。

直後、Xに閃光がぶち当たる。

 

身体を上手く捻り、直撃時間を減らす事でダメージを最小限に留める。

だがその捻りが弾く力を生み出し、Xは大きく吹っ飛ばされ、地に叩き付けられた。

 

「うぁァッ……!!」

 

「彩加さん……ッ!!」

 

未だダメージが回復しきっていないリオは、悶えるXの名を叫ぶことしか出来ない。

 

自分は見ている事しか出来ないのかと、戦うしかないと分かっていても、痛みも相まってあと一歩が踏み出せなかった。

 

『――――――!!』

 

理性が消えたか、禍々アークベリアルの咆哮は最早獣のそれと変わらない。

舌なめずりするように、Xへと視線を向け、再びエネルギーチャージを始める。

 

「……ッ!」

 

危険を知らせるためにも叫ばなければならない。

でも、何故だか言葉が出ない。

 

怖いのか?

 

自答するも、それよりも早く禍々アークベリアルの咢より閃光が放たれる。

 

「……ッ!!」

 

息を呑むリオの目の前で、Xは何とか膝を付いて置き、バリアウオールを展開、迫りくる閃光を防ぐ。

強度と威力が拮抗しているからか、周囲には激しいソニックブームが襲い来る。

 

それは周囲のビルを襲い、軋ませていく。

リオは何とか手近な柵に捕まって飛ばされないようにと必死に踏ん張る。

 

しかし、それでもリオの居るビルも危ういかと思わせるほどだ。

 

それがどれ程続くのかと思われた時だった、風切り音と破壊音に混じって、何やら悲鳴のような声がリオの耳に届いた。

 

「え……?」

 

その声に聞き覚えがあったか、リオは飛ばされないように必死に踏ん張りながらも身を乗り出し、街を見る。

 

あちこち火の手が上がっており、遠目には人が逃げていくサマも見受けられる。

しかし、その悲鳴は、如何にウルトラマンの力を持つリオにも届かない。

 

ではどこからと、耳を澄まし目を凝らす。

街を見渡しやや下方を見た時、それを見つけた。

 

「あ……ッ!!」

 

その先にいる人影に、リオは目を見開き絶句する。

 

視線の先には、電信柱に捕まっている男性が、飛ばされそうになっている少年の腕を必死に掴んでいる光景があった。

 

その内の一人、男性の方にリオは見覚えがあった。

 

「店長……!?」

 

彼はリオがバイトする店の店長その人だった。

店を近くに出していたから逃げ遅れたであろうことは察することが出来た。

 

「頑張れーーーッ!!手を離すなよーーーッ!!」

 

伸ばした手に必死に捕まる子供の手を、彼は自分が飛ばされそうになっている事も厭わずに掴み続ける。

危うい状況であるのは変わらないのに、それでも彼は幼い命を救おうと懸命だった。

 

しかし、その意志を無視するように、無情にも電信柱が根元から剥離していく。

 

「うわぁぁ……ッ!?」

 

子供を自身の方に抱き寄せながらも、店長はソニックブームに飛ばされていく。

このままでは、勢いのままに何処かに叩きつけられてしまうことは明白だった。

 

だから―――――

 

「――ッ!!」

 

咄嗟に身体が動いていた。

手すりの外に身体を躍らせ、壁を蹴って加速、一気に2人へと飛び掛かっていく。

 

間に合うか、など考える暇もない、ただ只管に、この手が届けと速度を上げる。

その想いが見事通じたか、彼の身体は飛ばされていきそうな2人に追い付き、その身体を受け止める。

 

勢いを殺す間もなく地面が近づいてくる。

何とか着地のダメージが少なくなるように踏ん張り、両の脚でブレーキをかける様に滑っていく。

 

禍々アークベリアルの居る方向とは逆の方面へ数十メートル滑ったところで、何とか停止する。

ひと息つく間もなく、リオは腕の中にいる店長と少年を見やる。

 

大きな怪我はないか、生きているかと確認する。

 

「え……、あれ……?」

 

「ど、どうなって……?」

 

飛ばされる感覚が無くなった事に、少年と店長は辺りを見渡すことしか出来なかった。

もう駄目だと、諦めていたからこそ、理解が追い付いていないのだろう。

 

「2人とも、大丈夫!?」

 

意識がある事に安堵しつつも、大丈夫かと声を掛ける。

助けられたと、その表情と声色は柔らかいものだった。

 

「り、リオか……!?え、俺飛ばされて……!?」

 

リオがいる事を認め、混乱しながらも自分が直前までどうなっていたかを思い返す

確かに身体が浮いて、飛ばされていく感覚があったのに……?

 

「間に合ってよかった!早くここから逃げてください!」

 

2人を何とか立たせ、早く逃げろと急かす。

目の前で誰かが死ぬなど、彼でなくても見たくないのだから。

 

「逃げろったって、それならお前も……!!」

 

助けられたからこそ、こんな危ない場所から逃げるのならばリオも一緒だと、子供を逃がす事は大事だが、それでもだ。

 

だけど……。

 

「僕は、まだ行けません……、きっと、やらなくちゃいけない何かが、あるんです。」

 

何故だか、ここから離れてはいけないと、彼は強く感じていた。

その答えは、まだ見つかってはいないけど……。

 

「やるったって、お前……!」

 

事情は分からないながらも、何かを感じ取ったのだろう、店長の男は訝しみながらも引き留めようとする。

好奇心は猫も殺すという諺がある様に、興味本位でこの危険地帯に残るのは看過できない。

 

なんとか言葉を絞り出そうとした、その時―――――

 

 

 

 

「助けてくれてありがとう!」

 

店長の腕に抱えられていた少年が、笑顔でリオにお礼を言う。

心の底からの謝辞、命を救ってもらった感謝が、その言葉には何よりも籠められていた。

 

「あ―――――」

 

その言葉は、リオの心に沁みわたっていく。

今まで、ウルトラマンとして戦っている時でも、ありがとうと言われた事なんてなかったから。

 

誰に認められなくても、戦うしかないから戦うのだと、そう思い込んで追い詰められていた。

 

少年と店長を見やる。

店長はリオを心の底から案じて、少年は心の底からの感謝を示していた。

 

あぁ、それで良いのか。

自分は、この為に、護るものがあるから戦えたのかと。

 

そう理解した途端に、胸の奥につっかえていた何かが、スッと消えていくように感じた。

 

だから、もう迷う必要は無かった。

 

「うん、どういたしまして、気を付けて逃げるんだよ。」

 

少年に笑いかける。

安心させる様に、自分の方こそありがとうと伝える様に。

 

「店長、この子をお願いします。」

 

「分かったよ……!明日もシフト入ってるんだ、必ず出て来いよ!!」

 

店長に少年を託す。

リオの言葉に、店長は一瞬の逡巡の末に少年の手を引いた。

 

明日もシフトが入っているとの言葉には、必ず生きて帰って来いという意志が何よりも秘められていた。

 

「はい!」

 

その言葉に力強く答えて、リオは走っていく2人の背を見送った。

 

彼等の姿が見えなくなったところで、リオは背後を振り返る。

その先ではウルトラマンXが、今もまだ禍々アークベリアルの侵攻を防いでいた。

 

そうか、彼もそうなんだ。

 

命が消えるのが嫌で、だから見ず知らずの自分を助けて、縁も所縁もないこの街を必死に護ってくれているのだと、リオはやっと理解することが出来た。

 

それが、彼が戦う理由なんだと。

 

「僕は護りたい……!この街を、僕の大切な人たちを!!」

 

この街が好きだから、一人の人間と扱ってくれる人がいるから。

戦う理由がそれで良いじゃないかと、だから、自分が何者でも良いと。

 

作られた命であったとしても、他者に何か思惑があったとしても、自分のこの想いだけは変わることは無いと。

 

「ジーっとしてても、ドーにもならないッ!!」

 

今でを受け止め、前を向く彼の手には、ライザーが輝きを放っていた。

 

「You Go!!」

 

ウルトラマンンのカプセルを起動させ、ナックルに装填する。

 

「I Go!!」

 

ベリアルのカプセルを起動させ装填する。

 

「Here We Go!!」

 

ライザーを起動し、ナックルを読み込ませる。

 

「ジーーーードッ!!」

 

トリガーを押し込み、彼の身体はウルトラマンとしての姿へと変わっていく。

 

今までの様な義務感からではなく、ただ純粋に護りたいといる想いからの変身だった。

 

強烈な意志と共に地に降り立ち、すぐさま必殺の光線のモーションへと入る。

 

「レッキングバーストォォォッ!!」

 

十字に組んだ腕から強烈なこうせんが迸り、攻撃を続けていた禍々アークベリアルの胸部に直撃、その巨体を大きく吹っ飛ばした。

 

「リオ君……ッ!」

 

何とか体勢を立て直したXが、駆け寄ってくるジードに歓喜の声を上げる。

もう大丈夫なのかと、意味は見つけたのかと。

 

「お待たせしました、彩加さん!」

 

Xに手を貸して立ち上がらせながらも、彼は宣言する。

自身の名を、その意味を。

 

「僕は、ジード!この街を護る、ウルトラマンです!!」

 

自分は誰でもない、深見リオであり、ウルトラマンジードであると。

この街を護り、生きる人々を護りたいから戦うのだと。

 

「もう、大丈夫なんだね?」

 

優しく笑みを浮かべながらも、Xが問う。

答えは得たかと、戦う理由を掴めたのかと。

 

「はい、いけます!」

 

力強く答え、ジードは構えを取る。

戦うことで、それを示してみせる、と。

 

ならば何も言うまいと、Xもまた強く頷き並び立つ。

 

「それじゃあ、行くよ!!」

 

「はいっ!!」

 

Xも構えとり、2体のウルトラマンは目の前に聳える悪魔へ向かっていく。

自分のいる街を、護る為に。




次回予告

最高の明日を掴むために。
道なき道でも、1人きりでは出会えなかった温もりが、強く導いてくれるのだ。

次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga

彼の未来

お楽しみに
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