ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga   作:ichika

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光の国へ

 

時は流れ、約束の日がやってきた。

 

出立が決まった日から、八幡達は自身が所有していた店の権利や財産を、義弟である川崎大志へと譲る手続きをしたり、これまで事情を知らなかった両親や義妹へ説明したりと、慌ただしい日々を送っていた。

 

事情を知らなかった両親達は、本当に驚いた様であったが、それでも、彼等が決めた事ならばと快く送り出してくれる手筈となった。

 

そして、見送りには来れないが、各地に散らばった友たちへ、ウルトラマンとして行く事を伝えてもいた。

 

ある者はやはりかと納得し、ある者は唐突過ぎると激昂しながらも、それでも、最終的には行ってきてくれと、今生の別れになるかもしれないのに、許してくれたのだ。

 

「この地球とも、お別れかなぁ……。」

 

店を閉めた深夜、いつぞやの夜の様に八幡は灯りの消えた店先に立ち、感慨深げに呟いていた。

 

何度かは別の惑星に行った事もあるが、それでも帰る場所があるが故の遠征にも似た心地だった。

 

だけど、今回の旅はこれまでとは異なっている。

それは、故郷からの旅立ち、二度と戻れぬかもしれない片道切符になる旅だ。

 

人として生まれて30年を過ごした地に、思い入れも一入だったからこそ、郷愁を感じるのも無理はないだろう。

 

「大志、この店と地球、どっちも護ってくれよ。」

 

だから、大切な故郷と場所を託すために、彼は隣に来ていた青みかかった短髪の青年に語りかける。

 

「勿論だよ、義兄さん。」

 

それを受けて、青年、比企谷八幡の義弟である川崎大志は任せてくれと頷く。

 

彼もまた、ウルトラマンとしての力を託され、これまで地球や多くの生命を救ってきた。

 

今回の旅に、彼は同行することは無い。

彼は人として、完全にやりきるまで地球にいたいと願っているから。

 

だから、故郷を護ると言う役目を託され、見送る側に立ったのだ。

 

「沙希、気をつけてね、ちゃんと帰ってきな。」

 

「ありがとう優美子、約束は出来ないけど、ね。」

 

その傍らで、沙希は金髪の女性と包容を交わしていた。

金髪の女性、彼女は川崎優美子、旧姓三浦。

 

かつての戦いでウルトラマンとして戦い、今は大志の妻となって喫茶店営業に携わっている。

 

彼女もまた、人として生きる事を第一に、見送る側となる。

まだまだやりたいことがあるからと、待っていると。

 

沙希と優美子は義姉妹として関わる中で友情を育み、今では一番の親友同士と呼び合える程になっていた。

だから、これでお別れとは言ってくれるなと、優美子は再び会える事を切望し、沙希もそうであって欲しいと思っていた。

 

語らずとも、八幡と大志も同じ心持ちであることに違いはない。

彼ら家族は、そう在りたいと願っていたから。

 

「気をつけてね、たまに帰ってきてくれないと寂しいんだから。」

 

「分かってるよ小町、必ず帰ってくるからね。」

 

夫だけを送り出す形になる小町は、彩加にちゃんと帰ってきてくれと伝えた。

彼女もまた、この星に残って人としての営みを続けるつもりだ。

 

ウルトラマンとして生きることのみが、ASTRAYの意思を継ぐ事ではない。

彼らが出来なかった人としての営みを、自分達がやり遂げると、それを誇りに持っているからこその留守番という事なのだ。

 

だから、自分達は待つだけだ。

先に進みたいという家族を止めることなど、出来やしなかった。

 

「時間だ、行くぞ。」

 

一夏の姿を借りるゼロが、彼らに向けて時が来たことを告げる。

 

これより、遥か彼方の大宇宙へと旅に出る。

それを言われずとも、皆が分かっていたことだった。

 

静かに、八幡達はゼロへ頷き返す。

 

「それじゃ、行ってくる。」

 

「うん、行ってらっしゃい、先生達に会えたらよろしくね。」

 

これから旅に出る友へ、大和は涙を堪えながらも、かつての恩師に会えたならば、自分達の事を伝えてくれる様に頼む。

 

自分達は人、彼等はウルトラマン。

もう二度と、あの日の様に道が交わる事はない。

 

だからせめて、人でありウルトラマンである八幡達に想いだけでも届けて欲しいと。

 

「あぁ、俺の友達も一生懸命生きたって、あの人達に伝えるよ。」

 

これから何年先になるかもわからないが、それでも、絆は永遠だと、今の彼は信じていたから。

 

いつかの彼等のように、八幡達は懐からそれぞれの変身ツールを取り出す。

 

ギンガスパークが、ビクトリーランサーが、エクスデバイザーが、ゼロアイがそれぞれ煌めき、四人の姿を人からウルトラマンのそれへと変えていく。

 

夜の街に、ゼロ、ギンガ、ビクトリー、そして、Xが立つ。

戦うためではない、ただ、これからも進み続けるための変身だった。

 

「ウルティメイトイージス!」

 

ゼロの掛け声と共に左腕のブレスが輝き、異界を渡る鎧、ウルティメイトイージスが装着されていく。

 

時が来た。

 

見上げる家族と友に、彼等はしっかりと頷き返す。

それが、言葉なき別れの挨拶だったのだ。

 

『行ってらっしゃい!!』

 

泣き笑いの顔で、潤んだ声で、彼等は八幡達を送り出す。

気持ち良く、彼らが往ける様に。

 

最後に頷き返し、四体のウルトラマンは音もなく、微かな星が見える空へと飛び立っていく。

 

それを、人として生きる彼等は見えなくなるまで見送り続けた。

 

かつての想いを乗せ、いつかの未来を想い描いて……。

 

 

 

―――――――

 

 

「イージスの回廊を開く、はぐれるんじゃねぇぞ。」

 

宇宙へと出た四体のウルトラマンの1人、ゼロは自身の力を使って次元を超越する回廊を開く。

 

この力は、異界を渡る力であり、同じ宇宙のみならず、別次元の宇宙にも行くことの出来る力だ。

 

ゼロが回廊を開く準備をしている最中、八幡達は自身の背後を振り返る。

 

蒼く煌めく命の惑星、地球。

彼等の故郷であり、これから別れを告げる星……。

 

最後に一目、この光を目に焼き付けたいと、3人はその光景を見続けた。

 

「さらば地球よ……、俺達の故郷……、またいつの日か。」

 

感傷も哀愁も抱こう、だが、それを抱えて彼等は歩いていくと決めた。

人としての生を、そこで得た経験を、これからの旅の中で活かすのだと。

 

「もう良いか?行くぞ。」

 

彼等の背に、ゼロは声を投げ掛ける。

彼等の心情を憚る事はしようが、それでも任務があるのだ、優先すべき事は進むことだ。

 

「はい、ありがとうございます!」

 

もう十分だと、八幡達は頷き返した。

振り切ることなどしない、それでも進むのだと。

 

ゼロもそれに頷き返し、開かれた回廊へと飛び込む。

彼を追い、八幡達3人もまた身を投じる。

 

宇宙で、別の惑星で戦う際にゼロに連れられて入った事は数度あるが、それでも慣れる事はない。

 

何せそこは次元の狭間、いかに通路を作っているとはいえ、地球規模で言うなれば獣道やオフロードのそれだ。

気を抜けば何かの拍子に弾かれる様に別の宇宙へ漂着する事は間違いない。

 

そうなれば、ゼロに助けに来て貰わねば脱出など出来よう筈もない。

故にそうならぬように、必死に飛ぶ以外に無いのだ。

 

どれ程飛んだ頃だろうか、変わらぬ風景の中に、一筋の光が射し込む。

 

それは、回廊の終着、目的地にたどり着いた事を示す兆しだった。

 

光の中に突っ込み、視界が白く染まる。

視界がクリアになった瞬間、彼等の目に飛び込んでくる景色があった。

 

「こ、ここは……!?」

 

宇宙空間に佇む、エメラルドに煌めく巨大な惑星の姿がそこにあった。

 

その光景はこれまで見てきたどの景色よりも浮世離れしており、まるで宝石であると錯覚する程に美しかった。

 

「どういう了見だ一夏……!?何でこの星に……!?」

 

目を奪われる八幡達を他所に、ゼロは驚愕にうち震える。

何故ここなのだと、どういう考えのもとで来させたのかと、本当に理解が出来ないと言わんばかりの様子だった。

 

「ど、どうしたんですかゼロさん……!?」

 

一体何をそこまで驚いているのかと、Xに変身する彩加が仰け反りながらも尋ねる。

知っている風でありながら、どこかに忌避しているような色が見て取れたのだろう、彼からしてみれば驚く以外に無いのだ。

 

それは、八幡と沙希も同じなのだろう、ゼロを訝しむ様な表情で見ていた。

 

その驚きの正体を、その根元を知らぬ彼等だからこその反応だった。

これがもし、一夏以外のASTRAYメンバーであるなら、ASTRAYを深く知るウルトラマンであったなら、ゼロと全く同じ反応をした事だろう。

 

何せ、そこは……

 

「ここは、M78星雲ウルトラの星、ASTRAYを裏切った星だ。」

 

「「「……っ!?」」」

 

憤りと共に放たれたゼロの言葉に、八幡達は息を飲む。

 

かつて、一夏達と共に在った修行の日々の中で単語だけは聞いた事があり、師との因縁が深いと推察出来た星、それが目の前にある。

 

何故師がこの星に行く様に示したのか、その真意はまるで不明。

だが、ここ以外に今行くべき場所はない。

何せ、いくら師を探そうと思えど、彼らがいる惑星への導は無いのだ。

 

いや、ゼロならば知っているだろうが、彼等も大人しく捕捉される筈が無いのだから……。

 

「行こう、八幡、彩加。」

 

その困惑を打ち払う様に、女は度胸と言うかのように、沙希は決意を固めた瞳で宣う。

 

ここで立ち止まっていては何も変わらないのも事実、ならば、道はひとつだと。

 

「おう!」

 

「勿論だよ!」

 

みなまで言うなと、八幡と彩加は勇んで応じる。

彼等はもうすでに、腹が決まっていると言うように。

 

「……、分かった、案内するぜ。」

 

それを受け、それならば良いと納得したか、ゼロは先導する様に星へと向かっていく。

 

彼等もまた、ゼロの後を追って星に向かって飛翔する。

 

星が近付き、遂には大気圏突入時の摩擦が彼等を包む。

暫しの抵抗を感じた後に、様々な建造物や地表が彼等の目に飛び込んでくる。

 

そのどれもが光輝き、それこそ地球の風景とは違う、どこか未来を見ているかのような景観に、3人は息を飲む以外に無かった。

 

「この先のスペースポートへ行く、そこが窓口だ。」

 

堅い表情のままで、ゼロはある施設へと進路を定める。

彼にとっては生まれた土地とはいえ、心象の良くない場所でもある、油断はしない、と言う現れでもあった。

 

そしてしばらく飛んでいる内に、スペースポートらしき建造物に到着したようだ、降下し着地するゼロに倣い、3人もまた着地する。

 

「ここが光の国……、何て綺麗な……。」

 

お上りさんよろしく、キョロキョロと辺りを見渡す彼等の背後より、人数で言えば1人分の足音が近付いてくる。

 

それに気付き、4人はその音の主を確かめるべく振り返る。

 

「ようこそ光の国へ、長旅ご苦労だったな。」

 

「……ッ!あ、貴方は……!?」

 

目の前にいる人物、いや、この場合はウルトラマンと呼ぶ事が適切であろう、その姿に八幡は目を見開いた。

 

特徴的な頭部のツノ、深紅の身体、太陽のごとき輝きをその身に纏うウルトラマン、その名は……。

 

「ウルトラマン、タロウ……!!」

 

「久しぶりだな、八幡、沙希、彩加、こうして会える事が何よりも喜ばしい事だ。」

 

八幡の言葉に、タロウと呼ばれたウルトラマンは微笑みを湛え、彼等を歓迎する意思を見せた。

 

ウルトラマンタロウ。

光の国、宇宙警備隊に所属する光の戦士。

かつて、八幡達の地球で勃発した、ダーク・ルギエルの動乱では八幡、ギンガに力を貸したウルトラマンの1人でもあった。

 

「お久しぶりです!まさか、貴方に会えるなんて……!」

 

「君達がルギエルを倒してくれたお陰で我々はスパークドールズから解放されたのだ、改めて礼を言わせてくれ。」

 

ギンガとタロウは握手を交わし、再会を喜んでいた。

 

戦友、とは違うのだろうが、それでも力を貸し、解放したと言う間柄なのだから、再会出来た事は純粋に嬉しいのだろう。

 

「ケッ、俺はアンタと一夏に謀られたってコトかよ、コイツらになんかするならタダじゃおかねぇ。」

 

それを面白くない様な、苛立っている様な様子で見ていたゼロは、タロウを軽く睨み付ける。

 

その様子から、かつて嫌な事でもあったのかと察することは、沙希と彩加にも容易い事だった。

 

「ゼロ、君にも苦労をかける、一夏の提案だったのだ。」

 

「へーへー、で?俺に駄賃はねぇのかよ?」

 

労いの言葉をかけるタロウだったが、ゼロはまともに取り合う気は無いのだろう、目には見えないが、確かな断絶がそこにはあった。

 

見返りがなければ、如何に親友の頼みであるとはいえ関わりたくない場所になど来るものかと。

 

「この座標に飛べ、そこで彼らが待っている、先に合流すると良い。」

 

「アイツら、また移動したんだな?ったく……、お忙しい連中だこって。」

 

それについて思うことはあるだろうが、ギブアンドテイクが鉄則と、タロウは渋面を崩さないままに端末をゼロに手渡す。

 

彼等とは誰か、など八幡達には考えるまでもなかった。

 

それを言うのも野暮と言うものではあるが、今は師に逢うよりも、目の前にあるやるべき事をすべきだと。

 

「つー訳で、俺は1度連中に会ってくるぜ、色々やることになるだろうが、頑張れよ。」

 

「はい!ありがとうございます、ゼロさん。」

 

マントを羽織り直したゼロに、連れてきてくれて嬉しかったと伝える彩加。

自分たちだけでは来れなかったと、道を拓いてくれた事に心から感謝していたのだ。

 

「おう、あ、そうだ、俺の力を預けとく、次元を越える力だ、上手く使ってくれよな。」

 

言うが早いか、ゼロは自身の力を光に変換、ウルティメイトゼロのカードを生み出し、彩加の手に渡した。

 

「またな、もう一回り、いやもっと強くなってアイツらに会いに行け。」

 

「「「はい!」」」

 

期待してるぜと告げ、3人の心からの笑みを背に受けて、ゼロはまた広大無辺の宇宙へと身を走らせた。

 

八幡達は、それが見えなくなるまで頭を下げ続けた。

それが礼儀だと。

 

「さて、見苦しいものを見せてしまったな、本題に入らせて貰っても良いだろうか?」

 

「はい、どうしてあたし達をここに?」

 

軽く咳払いをし、タロウは彼等をこの星に呼んだ理由を話始める。

 

それは、沙希達も気になっていたところだ。

一夏からここに飛べ、とは言われていたのだが、理由がわからない。

 

宇宙規模の危機とやらも、この星で起きている気配はまるで無いのだから余計にそう感じるのだ。

 

「なに、君達に任務に就いて貰う前に、ちょっとした顔合わせをして貰いたいと言う、一夏達からの心遣いだ、無論、私も、彼等もそれに同意している。」

 

「顔合わせ、ってコトはあの人達に……!?」

 

会わせたい相手に合点がいったか、八幡は表情を輝かせる。

まさか、自分に力を貸してくれたあの戦士達が会いたいと言ってくれているのかと。

 

「着いてきてくれ、コロセウムで彼等も待っている。」

 

「「「はい!」」」

 

タロウに案内され、彼等はまた進んでいく。

その先で待つ、光の戦士達との邂逅を心待にしながらも……。

 

 




次回予告
光の国に辿り着いたギンガ達の前に、嘗て力を貸し与えてくれた戦士達が姿を現す。
互いの力を確かめるため、彼等は拳を交えるのだ。

次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga
第4話 光の戦士たち

お楽しみに
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