ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga   作:ichika

6 / 33
師と友と

「すごい……。」

 

目の前で繰り広げられる攻防に、ウルトラマンビクトリー、沙希は食い入る様に見詰めながらも感嘆の声を漏らす。

 

ギンガの暴風雨の様な拳打のラッシュを、ネオスはまるでそよ風でも吹くかのように、何とも無いと言う風に往なしていく。

 

ギンガの技も弛むことない鍛練の生活で研かれ、そのキレは生半可なものではない。

 

だが、ネオスのそれは熟練のモノ。

彼女達の師程では無いにせよ、レベルの差は圧倒的である事は一目瞭然だった。

仮に彼処に立っているのが自分であったとして、勝てるビジョンがまるで見えなかったのだ。

 

とはいえ、一矢報いる程度でも攻撃を与えられたギンガ、彼女の夫の執念には呆れる他ないのも事実だったが……。

 

「相当力出してるなネオスの奴、楽しんでるのが伝わってくるようだ。」

 

彼女と同じように見ていたセブン21は、呆れる様に呟いていた。

 

ネオスとセブン21は相棒同士として、さまざまな任務に出向いた間柄だ、互いの力量など熟知している。

 

そんな彼だからこそ、ネオスが最初から殺さない程度の手加減しかしないでいると気付いていたのだ。

 

「だが、君の旦那もなかなかやるようだな、まさかメビウス、リーカの技をあのレベルで使えるとは思いもしなかった。」

 

「えぇまぁ……、見よう見真似でやりましたけど、まだまだです。」

 

「その調子だと、君も出来るみたいだな、素晴らしいセンスだ。」

 

「努力、ですよ。」

 

苦笑しながらも、沙希は思う。

自分ではセンスがあるとは思ったこともない。

何せ、それ以上の実力を持っている師しか知らなかったのだ。

死に物狂いで、追い付きたいと願ったからこそ鍛練を重ね続けたのだ。

 

それを、センスの一言で済まされたくないという、ちっぽけはプライドがその言葉を出させたのだろう。

 

「努力もセンスの内だよ、彼等もそうだったからね。」

 

彼女の言葉を聞き、パワードは懐かしむように語る。

 

彼の脳裏には、嘗て共に戦った友の姿。

誰よりも強くなろうと、護りたい者を護ろうとして、力を求めていたその姿を。

 

その姿勢に何度救われた事だろうか。

その強さに何度焦がれた事だろうか。

 

友として、彼は、彼等はASTRAYに対して憧れを抱かざるを得なかった。

自分もそう在りたいと、そうなりたいと。

 

「君達は彼等の様になれるし、ならなくても良い、それでも、彼等との思い出は大切にな。」

 

「はい!」

 

グレートの言葉に、沙希は強く頷いていた。

認められたい、強くなりたいという想いが肯定された歓びが見えていた。

 

それはきっと、彩加も、八幡もそうであると言えるのだろうことは、ここにいる誰もが分かっていたのだ。

 

「む、どうやら終わったようだ。」

 

セブン21の声に、全員の視線が集中する。

何戦かしたためか、ボロボロのギンガに肩を貸したネオスが彼等の方へと歩いてくる。

 

「大丈夫かぁ?手加減してなくて悪かったな?」

 

「痛つ……、へ、平気ですよ、先生との修行ほど理不尽じゃなかったんで……。」

 

自身を案ずるネオスの言葉に、八幡は青い顔をしながらも回想する。

 

飛んでくる巨木に突っ込んでくるジープ、雨霰と降り注ぐ光線、それらから逃げ回り、隙を見て攻撃を当てろという、当時の実力からしてみれば理不尽極まりない訓練を思い返しているためだった。

 

それがあったからこその成長、タフさの獲得が叶ったと言われれば、本当に死ななくて良かった、というのが真っ先の感想が出て来ても仕方あるまい。

 

「あー……、アイツ等ならやりかねないな……、なんというか、お前達の強さの根底を見たよ。」

 

ASTRAY達の嘗ての苛烈さを知っているネオスは、その口振りから察したのだろう、苦笑と共に労いの言葉をかけるしか無かった。

 

「お疲れ様だな、ネオスとギンガは暫く休むといい。」

 

戻ってきた2人にグレートは休憩を促しつつ待機していた面子を見やる。

 

 

次は誰が戦うんだ、そう言わんばかりの様子だった。

 

「じゃあ、あたしが行きます。」

 

それに応えたのは、ビクトリーだった。

見ているだけでは始まらない、摸擬戦を見ていて、自分も力を試したくてウズウズしていたのだ。

 

「では、君のお相手はわたしが務めよう。

 

アグレッサーに名乗りをあげたのは、赤きファイターセブン21。

彼もまた、2人の闘いにあてられのだろう、若き力を試したい想いに駆られたのだ。

 

「お願いします、セブン21さん!」

 

「女性を相手にするのは慣れていなくてね、手荒になるがよろしく頼むよ。」

 

戻って来るネオスとギンガと入れ替わりに、2人は訓練用のステージへと飛び乗った。

 

「ルールは先程と同じでいいかな?」

 

「はい!」

 

ルールを再確認しつつ、2人は示し合わせた様に構えを取る。

ビクトリーはムエタイの、セブン21はボクシングスタイルの構え、いつでも動き出せると言わんばかりの様子だ。

 

「全力で来い、ビクトリー!」

 

「行きますッ!!」

 

烈帛した咆哮と共に、ビクトリーが駆け出し、蹴り技主体の技を繰り出していく。

飛び蹴りを避けられたと判れば、次は後ろ回し蹴り、その次は下半身の力のみで跳び、膝蹴りを。

その一連の技は凄烈であり、相手を押し潰さんと迫りくる様だった。

 

そのすべてを、セブン21は機敏とまではいかずとも、的確に、そして余裕を以て回避していく。

疾さはネオスほどではない、だがそれでも、経験に裏打ちされた身の熟しが光っていた。

 

「素晴らしい蹴り技だ、キレも疾さも1級、申し分ないな!」

 

ビクトリーの猛攻を捌きながらも、セブン21は力強い攻撃を仕掛ける。

強烈な払いでビクトリーの体勢を崩し、胸部に強烈なストレートパンチを見舞った。

 

その威力は想像を絶するものであったのだろう、ビクトリーは大きく吹っ飛ばされる。

 

「うわっ……!な、なんて威力ッ……!!」

 

一瞬意識が飛びかけるが、吹っ飛ばされながらもなんとか体勢を立て直したビクトリーは、その力に、技に感嘆に呻く以外無かった。

 

自分達を圧倒的に凌駕するパワーに驚くしかないのだ。

どれ程の鍛錬を積めばいいのか、戦慄する以外無かった。

 

だが、それと同時に高揚感を抑えきれない事も事実だった。

戦士として、自分以上の力を持つ戦士へと挑戦したいという、心から沸き上がる渇望だった。

 

「でもッ!まだこれからっ……!!」

 

だから足掻いてみせる。

自分に打ち克つために、今より先に進むために。

 

蹴り技主体の動きを一旦整え、構えを革める。

 

両の手を平手にし、大きく広げて構える。

 

「ムッ……!その構え!!」

 

見覚えがあったか、セブン21の表情が驚愕と喜悦に彩られる。

そして、強烈な意志を乗せた拳を、ビクトリー目掛けて突き出した。

 

その拳を、彼女はギリギリまで引き付け、受け止めることなく流してその威力を殺した。

 

「やはりコスモス、セシリア嬢の動きだな!!」

 

「見様見真似ですけど、ね……!!」

 

追撃に移られる前に、セブン21の腕を払い、隙を作ろうと動く。

拳を受け止めるのではなく、逸らす事で体勢ごと崩そうとする算段だった。

 

目論見通り、セブン21の身体は拳の勢いのままに流れて行き、それを整える時間も要すると察せられた。

 

その隙を見計らい、ビクトリーは回し蹴りをその背に叩き込まんと動く。

だが……。

 

「見様見真似でもでも大したものだ!だが……!!」

 

鋭い蹴りを、僅かに身を屈めるだけで回避し、その隙に体勢を整える。

確かに、ビクトリーの動きはルーキーの域を抜けた素晴らしいものだ。

キレも速さも一級であるのは間違いないと断言できる。

 

だが足りない。

彼女達の師を、その技を何度も見てきたセブン21を倒すには、到底足りないのだ。

 

「彼女の技ならば、もっと相手の体力を削る立ち回りをするべきだったな!」

 

勝気に逸ったビクトリーの勢いが仇となり、隙となったのを見逃さなかったセブン21は、ビクトリーの懐に飛び込み、ラッシュパンチを繰り出していく。

 

「ぐぅぅぅ……ッ!?」

 

その余りにも強烈なラッシュに、防御することすらままならないビクトリーは、ダメージに呻きながらも、決して膝を折ることをしなかった。

 

猛攻に曝されながらも、それでも待っていたのだ。

機会を、一矢報いるためのチャンスを。

 

「これで、トドメだッ!!」

 

最後の一撃と言わんばかりに、セブン21の右の拳が唸りをあげてビクトリーの胸部へ叩き込まれる。

 

その刹那―――

 

「う、おぉぉぉ……!!」

 

後ろに倒れそうになる勢いを利用し、ビクトリーは左脚を跳ね上げてその拳を払い、そのままの勢いで身体を捻りながらも、回転の勢いを乗せた蹴りを放つ。

 

それはセブン21の首に叩き込まれようとして、寸前で翳した左腕に防がれる。

 

「ぐぅっ……!」

 

受け身を取ることさえ投げ捨てた攻撃だったからか、ビクトリーは背中から地に叩き付けられるのだった。

 

そこで、この勝負は決着だと、誰もが悟る事ができた。

 

「最後の蹴りは、咄嗟とはいえ素晴らしい一撃だった。」

 

防いだとはいえ強烈な一撃だったのだろう、セブン21は微かに残る左腕の痺れに感嘆の言葉を漏らす。

 

たとえ捨て身とはいえ、自分に一撃与えて見せるそのガッツに、彼は嘗ての友を思い返していた。

 

彼らの姿を、眼の前の彼女、見学している彼等に重ねている。

その未来を、宇宙の伝説たる一味に届くその時を、期待しているのだ。

 

「痛っ……、意地が、ありますから、ね。」

 

強く打ち付けた背を擦りながら、ビクトリーは肩で息をするばかりで、立ち上がれそうもなかった。

 

無理もない、ほとんど一方的にヤラれていたのだ、体力の消耗度合いも、セブン21のそれとは比べ物にならないだろう。

 

「その意地こそ、君達の強さの秘訣なのだな、素晴らしいよ。」

 

ビクトリーに手を差し出し、掴まらせて立ち上がらせる。

 

足掻く意志、負けたくないという意地、その全てが彼等の力の根源であると、改めて理解することが出来たと、セブン21は嬉しく思っていた。

 

若い力が、友が見出し鍛えた力が育っていっている。

これほど頼もしく嬉しい事はあるまい。

 

「だからこそ、焦ってはいけない、君達はまだまだ歩き始めたばかりで、まだまだ強くなる。」

 

そしていつかは、あの者達を超える事の出来る戦士となって欲しいと、その心のままに在って欲しいと願っていた。

 

「私達で良ければ、その一助となろう、彼等と、いいや、君達との絆に誓って。」

 

「セブン21さん……、ありがとうございます!」

 

真っ直ぐな言葉と想いに、ビクトリーは身体の痛みなど忘れ、強く大きく頭を垂れた。

 

期待されている、そのために力を貸してくれている。

何よりも、その心遣いがたまらなく嬉しかったのだ。

 

「もう一度、手合わせお願いします!」

 

歓喜に逸る心のままに、彼女はもう一度ファイティングポーズを取る。

何度だって、力を着けるために。

 

「ははは、勿論だとも、何度でもかかって来たまえ!!」

 

「ハイッ!!」

 

構えを取ったセブン21へ、ビクトリーは再び向かっていく。

 

強くなるために、そして、いつかの未来に辿り着くために……。

 




次回予告
訓練を続ける八幡達の下へ、新たなウルトラマンが凶報を持って現れる。
それは、これから巻き起こる騒乱の序章となるのであった。

次回ウルトラマンNewGenerationHero'sSaga
第6話 その名はリブット

お楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。