思ったよりも早くこの結果を迎えた。
「首輪って独占欲の表れって言われるけども、あたしはそうは思わないかな。」
「この首輪だって沢山の意味が込められてる。独占欲だったり所有欲だったり。人それぞれの意味があるでしょ?」
「だからあたしは違う意味を込めるよ。」
真っ白な細い手で首輪を持って自分の首に手をかける。
彼女の名はVector。
「Vector…その…ちょっとガバガバすぎないか?」
「そう設計したからね。締め付けるだけが目的じゃないよ。」
青色の首輪。…首輪というよりもリボンが近いのだろうか。
このリボンには見覚えがある。というよりも忘れるはずが無い。
「あたしとお揃いの気分はどう?」
「最高って言ったら?」
「そりゃどうも。でほんとは?」
「先越されたなぁ…って、思ってる。」
「どういう意味?」
「ああちょっとまってね今取り出すから。」
取り出したのは一個の箱。
あの成約の指輪と同じような大きさの箱。
違う事といえば大きさ以外全てが異なった。
「これって?」
「開けて見みる?」
機械的なパーツが何一つ無い指輪。
なんの変哲もないただの指輪。
それなのに彼女は驚いていた。
ただの指輪である事に。
「これって…結婚指輪?」
「君の為のね。」
「これを、あたしに?」
「君の指を測っていた事に気付かなかった?」
「気付いていたけども…それでもここまでは予測しないよ。」
「予測を超えるのが大の得意でね。」
「…ばか。」
「ばかで結構さ。それにここまでばかになったのは…うん俺からばかになったんだな。」
「よくわかってるじゃん。」
プラチナとダイヤでVの文字をかたどった指輪が2本。
一方の側面にはkriss、もう片方にはVector。
「2つ合わせてkriss vector。君になる。」
「あたし色に染まりすぎじゃない?」
「まだまだ濃くなってくるさ。」
ここまで染まった色は果たして何色だろうか。
重ね塗りの黒か。それとも純粋の白か。
それは誰にもわからない。
でもこれは言えるね。
これは未来だよ!!!
そう遠くない、ね。
「新しい指揮官?まぁー…仲良くやろっ。」
これが彼女との初接触だった。
「……指揮官?」
初印象はこうだ。
「かわいい。」
「は?」
俺の名はクリス。英語表記でkriss。
「…気にしないでくれ。」
「…そうしとくよ。」
そして。目の前の人形、もといVectorに一目惚れした。
今思えばこの時からネジが緩み始めたのかもしれない。
不思議な事にそんな重要な事に気づくのは遅かれ早かれ手遅れになってからだが。
「とりあえず、よろしく頼むよ。」
「こちらこそ。指揮官。」
これが彼女との出会いだった。
「邪魔。」
「一瞬で殺してあげるから何の痛みも感じないよ。」
かなり強いわこの娘。鉄血が火炙りにされてる。
「悪いが仕事なんでね!!」
俺も負けじと鉄血の連中に弾丸をぶち込む。
「リロード!」
「カバーする。」
Vectorとスイッチし遮蔽に隠れてリロードする。
俺の50連マガジンはあと3本。
「こっちもリロード。」
「任せろ。」
遮蔽越しにグレネードをポイ。
爆発音と共に衝撃波が突き抜けた。
「状況終了。」
「回収地点をマークした。ヘリが来るまで待って。」
「了解。」
回収地点をカリーナに報告しヘリを越させる。
「それにしても災難だね。まさか遭遇戦になるなんてね。」
「Vector、君が居て良かったよ。」
「あたし?あたしは特に何もしてないけど?」
「君がいなけりゃ死んでたかもしれないからね。」
「指揮官なら一人でも生き残れるでしょ。」
「そうかな〜?」
そんな雑談をしていたら…
「指揮官後ろ!!」
「え?」
後ろから迫ったダイナゲートに気付かなかった。
「C4!?」
腹に爆弾抱えてなけりゃマシだったのに。
「Vector!」
Vectorを庇って爆発音と共に吹き飛ばされた。
「大丈夫か?Vector………」
心配すべきは彼女じゃなかった。
自分の身体に気づいていなかった。
「……あぁ…マジかよ。」
彼女の近くに落ちた手を見てしまった。
人工血液ではなく本物の血を左肩から出す自分の手を。
「動かないで。今処置するから。」
凝固剤で傷跡を無理やり塞ぐ。
冷静沈着に彼女は動き始めた。
「ああクソったれの鉄血め。俺の腕吹き飛ばしやがって…」
「止血は終わった。ヘリが来るまでは耐えるよ。」
どうやら一筋縄では帰らせてくれねえらしい。
「これが犬だったらどれだけ良かったかな!」
「良いから撃って。」
ダイナゲートの群れ。C4抱えて一直線。
「クソったれ!!」
Vectorが放火し俺が爆破する。
「まだまだ来るよ。はいマガジン。」
「ありがとうピン抜いてくれる?」
全弾撃ってマガジン0。
敵はまだまだ来る。
「万事休すだね。」
「撤退しかないか。」
そうして俺は煙幕を張ってVectorを引っ張って全力で逃げた。
後ろに。後ろに。
自陣の方へと撤退した。
ヘリ?そんなもん着陸できる訳が無いだろう。着陸する前に爆散するわ。
血は止まったとはいえ腕一本失ったんだ。貧血気味になって当然だ。
「腕一歩で済んだだけマシかな!」
「こっちは弾切れだよ。」
「ほら俺のマガジン使え。今の俺には使えんからな。」
準備させた部隊が見えてきた。
「ほら指揮官。あと少し。」
「帰ったら緊急修理を回しておくから休みな。」
「それより指揮官は病院に行くべきだね。死んじゃうかもしれないよ。」
「確かにな。」
部隊が近づいてくる。
大きく手を罰にして。
「あれは…何だ?」
突如足元が爆発して空に浮いた。
Vectorは無事だった。
…視界が赤いなぁ…。
俺の体は全然無事じゃねえけどな。
「クソッ…両足ふっ飛ばされたっ…」
地雷まで仕掛けてやがった。
動けねえ。
流石にまずい。出血死コースかも。
「意識ははっきりしてるが…動かねえなぁ…」
ギリギリ生き延びた。
…まだわからんか。
そうして地雷を自分の体を張って除去し安全を確保した。
「救護班!急いで!!」
運ばれて行く俺。ついてくるVector。
緊急手術が始まる。
麻酔を打たれて意識を失った。
結果から言おう。命は繋がったが、左肩から下は無く両足が使えなくなった。
義足義手生活の始まりだ。
「んで…Vector、りんごを剥いてくれるのはありがたいが…流石に6日連続で病室にいるのはバッテリー切れにならないか?それにメンテナンスも行ってないんだろ?」
「いいよ。別に心配されなくともこれはダミーだから本体は既にメンテナンスルームでメンテナンスされてるよ。」
「そうか。ならいいんだ。君が迷惑じゃなければ良いんだ。」
「迷惑なんて言えないよ。」
義手義足が届かないという問題はこのようにして貰うしか無いからこっちが世話を焼かれてる状態だから言われても仕方ない。
「君が背負うことは無いよ。全部俺の不注意でこうなったんだから。」
「その不注意のカバーが
「そうか?まぁそれならそんなカバーできない不注意を起こした俺の責任さ。」
「実際君がいなけりゃそのまま爆死してたかもしれないしね。」
「自分を責めることは無いよ。」
「…あたしが駄目になりそう。」
「仕方がなかったんだって思っておきな。それでも駄目なら…」
ベットから体を起こす。
「一緒に寝て記憶から消しちまいな。」
………どさくさに紛れていけそう。
「…。」
「…。」
「Vector?」
「…ふふっ…わかったよ。」
あれ以外と上手く行ったわ。
わーい!
「…意外と狭いね。」
「まぁ一人用だからね。」
まってめっちゃいい匂いするなにこれしゅごいふわふわするー
(俺添い寝までは予想してなかったわ…)
「じゃあ…おやすみ。」
「おやすむぎゅ」
???
(やわらかい。)
すごくいい匂いもす…あれ待って酸素が入ってこない死ぬぅ!?