あの首輪は誰のため?   作:ARCHANGE

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Ep.2

「クリス。」

 

「その衣装は…懐かしいな。言っても一年前くらいだけどね。」

 

純白のドレス。花嫁がそこにはいた。一年前だというのに記憶はあの日の事を全て鮮明に覚えている。

 

「それにしてもどうしたんだ?ウェディングドレスまで持ち出して。」

 

「ただ着てみたかっただけだよ。特に意味なんか無い。」

 

「相変わらずびっくりするほど綺麗だよ。」

 

額縁に飾った写真をみる。黒い色のタキシードに真っ白なウェディング。そこには新婚夫婦の様に振る舞う二人の姿が映っていた。

 

「Vector。白無垢でも来てみるか?」

 

「そんなの今残ってるのかどうかすら分かってないよ?」

 

「そうか…たしかに無くなってる事もあるのか…」

 

「ったく左腕があって良かった。お陰でこうして…」

 

「「君の頭を撫でれる」でしょ?」

 

「もう慣れたか。」

 

「まぁね。ずっと一緒にいてくれるって約束してくれたからね。」

 

「ずっと一緒だ。どこまでも俺は着いていくよ。」

 

「あたしはまだまだ足りないからね。色々と。」

 

「君色に染まる。足りないなら俺が補うよ。支え合っていかなきゃね。」

 

「でも、あたし以外の色は全部上書きしてあげる。」

 

「いつかあたしの色だけ映るようになるまで重ね塗りしてあげる。」

 

「君以外の色は塗れないよ。塗ってもすぐに落ちるさ。」

 


 

「…死ぬかと思った。」

 

「でもよく寝れたでしょ?」

 

「まあね。それは認めるよ。」

 

「素直に認めたらいいのに。」

 

「気道を防ぐのはおやめになって?」

 

「それは…気を付けるよ。その割には暴れなかったけど?」

 

「暴れられる腕も足も無いからね。」

 

「……そうだったね。」

 

「そんな哀しい顔をするんじゃないよ。それにそろそろ届くハズだから。」

 

「あの義手と義足?」

 

「ああ。なんかやけに高かったけどもまぁ高性能ならそれで良いや。」

 

「……ここから動けねえから取りに行けねえや。」

 

「あたしが取ってくるよ。」

 

「助かるよ。」

 

「これくらいやるよ。」

 

 

「あたしが取ったも同然の足と手なんだし。」

 

 

そう言って彼女は病室を出ていった。

 

「俺が悪いんだけどなぁ…。完璧にしまい込んじゃった。」

 

すぐに彼女は義足と義手を持ってきた。

 

「これ結構重たくない?」

 

「まぁ使ってたら慣れるだろ。」

 

そうして手を借りつつ起き上がる。

片手じゃ難しいんだよね…起き上がるの。

 

「…あれこれ鉄血製じゃね?」

 

「どっからどう見ても鉄血製の義手だね。」

 

「じゃあこれは?」

 

「…さぁ?見てわかる事は…ブースターがついてる事かな?」

 

「どおりで300万も飛ぶわけだ…」

 

「これ300万もしたの?」

 

「両方合わせてね。」

 

義手を装着する。

 

「軽いな…それに使用感が本物の腕と何ら変わらないな…感覚で言えば痺れて痛覚が機能しなくなった状態。」

 

「それ結構大変じゃない?」

 

「まぁそのうち慣れるさ。」

 

そうして義手を動かしてみる。使用感は腕があった頃と何も変わらない。

 

「問題ないね。何もエラーを吐く様子も無いし適合してる。それに神経系とリンクしてるから反応速度も変わらない。なんならちょっと早くなったか?」

 

「足…はこれつけて大丈夫かな…」

 

「さぁ?トライアンドエラーしか無いね。」

 

そうして義足を両足接続する。

 

「あれ?意外と軽い?」

 

つけてみた感想はこうだった。

 

「全然動けるよコレ。」

 

「それなら良かったんじゃない?」

 

ベットから降りてリハビリをする。

 

「感覚が無いのが不思議だなぁ…浮いてる感じがする。」

 

大量のスプリングと支える部品で脚に負担が殆どない。まるで…水中に浮かんでいるように…

 

「指揮官?どうかした?」

 

「この義足元の足より良いまであるかも。」

 

「そんなに?」

 

軽く飛んでみた。

 

「うぉっ!?」

 

そしたら天井スレスレまで上がった。やばい、これ絶対に義足初心者が使うような義足じゃ無いだろ。

てか300万で買った俺もバカだな。

 

「使いやすくはないが慣れたらかなり強力な武器になるだろう。」

 

「まだ…戦うの?その身体で?」

 

「戦わないと生き残れ無い。この仕事に着いている以上俺は戦場で戦う以外に出来ることはないよ。」

 

「それに、俺にはそれしかできないから。」

 

これといった趣味も無い。人間の形をしているだけの戦術人形と何ら変わらないかもしれない。むしろ彼女らの方が幾分か人間に近いかもしれない。

 

「本当に人間らしい事がまともに出来ない、出来損ないの人間が俺だよ。」

 

「むしろ、君ら戦術人形の方が人間に近いかもね。ハハッ。乾いた笑いしか出ねえや。」

 

他愛もない会話すらできないポンコツでごめんよ。

 

「Vectっ……

 

俺はこの日、機械と生物の髄力の違いを思い知った。

自分の意思を無き者として扱われる感覚。

無理やり舌を口にねじ込まれ何の抵抗も出来ずに蹂躙される。

 

『…………れぇ…』

 

口と口で銀色の糸を引く。

 

「人間らしい事、できたね。」

 

「Vector…」

 

「どう?人間らしい事をした感想は?」

 

「エロすぎる。」(人間らしい事した。)

 

「本音と建前が逆じゃない?両方とも本音かもしれないけど。」

 

びっくりするほどエロかった。すまんなこういうダメ人間で。

 

「…人間らしい煩悩はあるじゃん。」

 

「たしかに、煩悩があるのは人間らしいか。」

 

人間と煩悩は切っても切れない関係にある。人類の発展もここまで滅びかけてるのも全て煩悩がこうさせた。

 

「指揮官は、どうしてあたしが好きなの?」

 

「へぶッ!?」

 

水を飲んでいたら突然そんな質問が飛んできたもんで吹き出した。てか変なとこ入った痛い。

 

「ケホケホ…ちょ…いきなりだねぇ!?」

 

「ただ気になったからだけど?」

 

この娘…結構強いな…精神的にも…

 

「理由なんて大層な物は何も無いよ。ただの一目惚れさ。」

 

「面と向かって言うと結構恥ずかしいなコレ!?」

 

「人並みに感情はあるじゃん。」

 

「それは君にも言える事だ。」

 

ベットに腰掛ける。…思ったよりも疲れるなこの義足……

 

「それに…こうして人に頼らないと生きていけない」

 

「それも人間の証だね。」

 

「確かに人の証か…。」

 

人間ではあるみたいだ。彼女がそういう事を証明しようとしてるからね。

 

「それじゃ戻ろうか?」

 

「そうだね。みんながいるところに」

 

「ベットに。」

 

「ごっ!?」

 

首トンって…こんな感じかぁ………

 

 




Vectorむずいなぁ…
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