全力疾走っ!青春声援物語 グレイブンロード (挿絵無しVer) 作:匿名423371
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「ソングちゃんとシュネルマイスターさんって、どんな関係なんですか?」
東京レース場の選手控え室。パドックが終わった後の、NHKマイル出走までの待機時間。勝負服のままぐびぐび水筒の中身を飲んでいたら、エールからそんな質問が飛んできた
さっきのパドックでシュネルとバチバチだったからな。そりゃ気になるか
「昔からの幼馴染……というより腐れ縁だな」
「腐れ縁……あ!!!!!!私知ってますよ!!!!!!!!!」
「何をだよ」
「腐れ縁ってアレですよね!!!!!!!!!嫌よ嫌よも好きのうちっていうツンデレカッ………」
「違うわ!!」
我慢できずエールの発言を途中で遮ってしまった。なにと勘違いしているんだメイケイエール!
「こっちが切りたくてもなかなか縁が切れない良くない関係って意味だ。腐れ縁って言葉に良い意味はないよ。てか、さっきの喧嘩見てよく好意的に捉えられるな」
「そうなんですかね……!!!!!てっきり素直になれない関係なのだと!!!!!!!」
「素直になった結果がアレだぞ?安易に色恋と結びつけるな!!」
アタシもなんだかんだ恋バナ好きだから、異性とのちょっとしたやり取りをすぐ恋愛に繋げたがるのはわかるけどさあ……あんな奴、アタシの方から願い下げだ。絶対無い 100パー無い 死んでもゴメンだね
……でもせっかくの機会だ。どうせこの時間は暇だ。エールに昔の思い出を、軽く話してやるのも悪くないかもしれない
レースが始まるまでの待機時間は、本来選手とトレーナーが最終調整の話し合いに使うべき時間である。しかしあいにく様、アタシたちはトレーナーのいない野良である。だから出走時間になるまで、無駄に雑談の時間にして使うしかなかった
「アイツとの出会いは、アタシが地元の幼稚園を入学した少し後だったな。福島の天栄ってところに住んでたんだけど、いきなりアイツが海外から引越してきたんだよ」
「シュネルさんって、確かドイツ出身なんですよね!!!!!!!!」
「そうそう、産まれはな。祖国では小さな頃から優等生だの駿足だのと呼ばれていたんだって、よく自慢していたな」
アタシは福島にある、天栄村っていう町に生まれたんだ。天栄村には、広々と走れる大きな平野があって、そこで育ったウマはみんなレースでもよく走るもんだから、天栄村は遥か昔から“第二の競専”と呼ばれていたそうだった
その話を何処かで聞きつけたのか、ドイツのいいとこの貴族らしいシュネルの家族は引っ越してきた。アイツとの関係はそこからだ
引っ越してきたシュネルがウマだってことを知って、アタシから競走勝負を仕掛けたんだ。当時、地元の脚自慢はアタシしかいなかったからな
でもアイツ、アタシよりも滅茶苦茶強くてさ、全く敵わなかったんだ
「悔しかったんだ。世間知らずって笑われているような感じがして、本当に悔しかった」
その上アイツ、結構やな奴でさ。勝負に負けたことをよく揶揄ってきたんだ。やれ努力が足りないだの、やれ才能がないだの……
むかついたアタシは、アイツにどうにか一矢報いたくて、事あるごとに何度もアイツに勝負を仕掛けた。でも、ついに一度も勝つことはなかった……
「……ソングちゃんって、その時から負けず嫌いだったんですね!!!!!!!」
「そうなのかもな ……よくよく考えると、皮肉な話だよなぁ」
「皮肉、ですか?」
「あぁ」
だって、シュネルのことを憎っくき宿敵だと思っているのに、そのアイツ自身に自分の性格が影響されてしまっているんだぞ?アイツに出会う前は、アタシは別に負けず嫌いというわけでもなかったからな
それが余計にムカついていたのかもしれない。アイツの姿を乗り越えなきゃ、勝利によってアイツのしがらみと訣別しなきゃ、本当の自分としての第一歩を踏み出せないような気がして……
なんて御託を並べてしまったが、単にアイツを恨めかしく思っているだけなのかもしれないな。とにかくアタシは、シュネルマイスターに打ち勝たなくては、気が済まなくなってしまっていた