全力疾走っ!青春声援物語 グレイブンロード (挿絵無しVer)   作:匿名423371

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参考にさせていただいた記事→https://note.com/keiba_maskman/n/n3622073461db
まんまなのは秘密


第10話② - 憎らしいアイツはさ、もう手遅れさ

 

 

ソング(マズイマズイマズイ、マズイぞ!!!!!!!!!)

 

 先頭の中京ソングラインは焦っていた

 ゴールまで残り150メートル。自分の勝利を確信したその瞬間に……突如として、右斜め後方から中山シュネルマイスターが猛スピードで迫ってきていたのだった!

 

 …………レースは少し遡り、4コーナー

 中京メイケイエールの暴走によって作り出されたハイペースを、先頭集団は粘り強く追走している。その様子を、シュネルマイスターは後方からじっくり観察していた

 ハイペース展開では最高速を持続させる為の持久力が求められる。先頭集団の選手はそもそも追走が精一杯で、ウマたちがここから更に足を伸ばすのは難しいのではと彼は考えていた

 だが一人だけ、一番人気東京デウラヴォーリネエの背後で虎視眈々と、冷静にスパートをかけるタイミングを伺っている選手がいた

 

 ───中京ソングラインだ。彼女が持久力の高いタイプのウマである事と、後方からの競馬が得意なのは、シュネルにとって周知の事だった。そして、ソングラインはまだラストスパートを使っていない

 シュネルマイスターは、彼女こそが最も一着入線が高い選手とし、マークすることに決めた。最終直線の最中、彼はずっとソングラインの様子を静かに見守っていた

 

シュネ(いやはや、たまげたね。キミがそんなにも強くなっているなんて。小さい頃から見てきた幼馴染としては、誇らしさすら感じるよ)

 

 ここまで中山シュネルマイスターは、ほぼロスなく順調に最後まで脚を運べていた。彼の末脚はほとんど万全に近い状態にあった

 いつでも先頭集団を最高速度でぶち抜ける。だが彼は、自分のスパートのタイミングを…………あえて待った

 

シュネ(……ねぇソング。オレはさぁ、この最終直線でもっと早くから仕掛けることだって出来るんだ)

シュネ(何故そうしないのか、キミはわかるかい?スパートのタイミングを遅らせたほうが、キミは油断するからね!)

 

 シュネルマイスターは、ソングラインが先にスパートを使ってデウラヴォーリネエを抜かし、彼女が先頭に辿り着くそのタイミングまで、自身のラストスパートの発動を待つ決断をした

 

 ゴールまで残り250m。東京デウラヴォーリネエをマークしていたソングラインは、ここが正念場と判断してスパートを発動。デウラヴォーリネエを抜かして先頭へ

 この時点でもまだ、シュネルマイスターは動かない。そのおかげで、ソングラインの意識は完全にデウラヴォーリネエのみに絞られていた

 

シュネ(キミは昔っからしつこいやつだった。一方的にライバル認定してきては、何度だって勝負を仕掛けてくるウザい奴)

シュネ(いつも勝負ごっこに付き合ってたからわかるんだよ。ここで早めに仕掛けていたら、本気のオレを見たキミは今以上に闘志を燃やし、必死に抜かされないようしがみついてくるだろうってね!)

シュネ(だからこそ、あえてソングが勝利を確信して油断する虚を作り、そこにオレの末脚で貫いてやることに決めた!! スパートのタイミングを遅らせても、この距離ならゴール板まで間に合う!!!!)

 

 中京ソングラインのパフォーマンスが最も発揮される瞬間は、誰かと競り合いを行っている時である。“絶対に追い抜かす”という強い競争心を糧に、父親キズナを彷彿させる切れ味の高い末脚を炸裂させるのだ

 だがそれは同時に、“競走相手がいないと本気になれない”ことも意味している。そのことを、シュネルマイスターは身をもって理解していた

 

 ゴールまで残り200m。デウラヴォーリネエを突き放したソングラインは、誰もいない前方の光景を独り占めしていた

 ライバルは全員抜き去った。自分を抜かしにやってくるやつはもういない。自身の勝利への確信と、脳内に分泌される充足感。レースはまだ終わっていないのにも関わらず、ソングラインはこの早い段階でスパートを緩めてしまった。シュネルマイスターの見立て通りになった

 

 年来の幼馴染が犯した不覚を彼は見逃さない。ソングラインが勝利の愉悦で口角が上がるのと同時に、シュネルマイスターは即座に末脚を起爆させ、持ち前の瞬発力ですぐに最高速へと移行した

 

ソング(……っ!?!? シュネルマイスターが速度を上げてきた!?!?)

ソング(マズイマズイマズイ、マズイぞ!!!!!!あの速度なら、アタシのことなんてすぐに追い抜いてしまう!!!!!!!!!)

ソング(……いいやっ!! まだだ!! まだ体はギリ残ってる!!! だからどうにかここから全力で逃げ切れば───)

 

 ソングラインの推察の通り、シュネルマイスターの最高速は、ソングラインのそれより大きく上回る

 慈悲もなく、全力疾走で距離を詰めていくシュネルマイスター。ソングラインは失態を取り返すかのようにして必死に脚を回転させる

 ゴールまで残り50m。宿敵の脚音はすぐそこまで迫っていた

 

ソング(いやだいやだいやだ!!!!!あいつにだけは絶対勝つって決めていたんだ!!!!!)

ソング(動け!!動け!!!!!!もっと速く動いてくれアタシの脚!!!!!!!!!もうちょっとでいいんだ!!!!!!頼む!!!!!!)

ソング「あああああああああああ…………!!!!!!!! くそぉおおおおお!!!!!!!!」

 

 ……金切り声混じりの絶叫と共に、ゴール板を抜けるその刹那

 レース中にこんなこと、あり得ないはず。なら恐らくそれは、幻聴のようなものだっただろうか。ソングラインは、耳元でボソリと、小さな声で囁かれた心地がした

 

 

(あぁ、良かったよ…… キミが、昔と何一つ変わらないまんまで……)

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