全力疾走っ!青春声援物語 グレイブンロード (挿絵無しVer)   作:匿名423371

17 / 43
第11話① - 痛いのはまだ、まだ慣れてないからかな

 奥歯を深く噛んで、ひきずった負の感情をどうにか押し殺そうとする

 夜の8時を過ぎた東海道新幹線。NHKマイルが終わり、そのままエールと共に住んでいる名古屋まで移動している道中だった

 大会に出場するためにわざわざ東京まで行ったのに、中京校では明日も変わらず授業がある

 ホント、キッツイスケジュールだ。ゆっくり身体を休めるどころか、感情を落ち着かせる暇さえ与えてくれない

 

「負けちゃい、ましたね……!」

「…………そうだな」

「でもでも、GI2着も相当凄いですよ……!」

「重賞三勝の天才少女サマに言われても」

「いやいや!私はGIレースで一度もバ券内に入ったことないので!!それにほら!私なんていいとこなしですよ!!」

「お前暴走してたしな」

 

 隣に座るメイケイエールはえへへと控えめに笑う。てかコイツ、やけにグイグイ話しかけてくるな。そんなにアタシとしゃべりたいのか

 とはいえ声量は控えめで、なんだか気を使っているようなそぶり。ふと自分の眉間に触れると、皺が深く寄っていたのに気がついた

 それもそうだ。アタシは今、めっっっっちゃくちゃにムカついていたのだった

 

 NHKマイルの一着シュネルマイスターと、二着のアタシの着差はハナ。数値にして1センチあるかどうか。それが公式の結果だ

 だが、本当はそうじゃない。あのハナ差は本当の実力差を反映したものではない。シュネルマイスターは、絶対にもっとやれていた筈だった

 

 ………アイツが最初からガチだったなら、おそらく2バ身差はつけられていただろう

 なのにアイツは、わざわざアタシを油断させるためだけに、本気を出すスパートのタイミングをわざと遅らせていた

 そうだ。彼はアタシを超舐めていたんだっ!!しかも一番悪いのは、舐められるレベルの実力しかない自分自身っ!!その事実がどうしようもなく、悔しいっ!!!

 

 怒りと悔しさがフラッシュバックし、ギリギリと奥歯同士を擦り付ける。アタシのその姿にも臆さず、またエールはアタシに話しかけてきた

 

「知っていますか?今回のNHKマイルの時計、歴代で二番目に早かったみたいですよ……!!!!!!!!」

「………誰かさんがハイペース展開にしたせいでな」

「へへへ……結局12着になっちゃいましたけれど……!!!!私ってまだまだ全然ダメダメですよね……!!!!!!!!」

「…………」

 

 愛想笑いを浮かべながら、アタシの毒突きを呑気に受けとめていく真面目少女

 勘弁してくれよ………お前ってやつは、空気も読めないのか。こりゃ直接言ってやらないとわからないな

 アタシはゆっくりエールの方を睨みながら切り出した

 

「……メイケイエール。ちょっと静かにしてくれないか」

「えっ」

「アタシ、今すごいイラついてるんだ。今お前にも構ってる余裕なんてない」

「あっ………それは大変っ、も、申し訳ございません………」

 

 途端に彼女から愛想笑いが消え、アタシの睨みを避けるよう下を向く

 

「………私また、ソングちゃんにご迷惑を………」

 

 そして訪れる重い沈黙。非常に気まずい空間の出来上がり

 

 ………バカだろアタシ。エールを凹ませてどうしたいんだ

 彼女に当たったところで、何も変わりゃしないというのにさ

 それどころか、彼女との間に壁を作ってしまった。そんな短慮女だから、シュネルにも負けたんじゃないのかっての

 あーもう、こんな自分にはほとほとうんざりだ

 

「………そこは、“ごめん”だけでいいだろ」

「…………」

「あーいや。その…………アタシもちょっと、言いすぎちゃった。ごめんなメイケイエール」

「いえ………」

「…………おしゃべりしたかったんだろ?」

「え?」

「いいぞ、付き合うよ」

「そんな。無理しないで下さい」

「気が変わったんだ。黙りこくってるよりかは、お前と喋ってる方が気分が紛れそうだしな」

「大丈夫ですって。私が喋りたかったわけではないですから」

 

 そうなのか? と、エールの方へと振り向く。真面目少女はなおも俯き、重い表情を浮かべながら呟いた

 

「ただ、苦しそうな表情を浮かべるソングちゃんの力に、なれたらって」

 

 …………お前ってやつは、本当に

 ほんのちょっぴり照れ臭くなったアタシは、エールの頭頂部に手を伸ばし、栗毛の髪の毛を軽くわしゃわしゃ掻き乱した

 

「わ!!!!!!!何するんですか!!!!!!?!?」

「別に〜?なんでも〜?」

 

 驚いてついアタシに顔を向けるメイケイエール

 そうそう。クヨクヨしてる時よりも、断然こっちの方がいい。笑顔ならもっと良かったけどな

 

「アタシのこと考えてくれて嬉しいよ。でもなぁ、あえて話し掛けずにそっとしておくことも、時には必要なことなんだぞ。覚えておきな」

「そういうものなんでしょうか」

「まあな……… でもやっぱ話そうよ、アタシたちのこれからのことをさ。そっちの方が、アタシはいいや」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。