全力疾走っ!青春声援物語 グレイブンロード (挿絵無しVer) 作:匿名423371
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「おいおい何のつもりだメイケイエール………」
ショッピングモールの入り口で待ち合わせをしていたアタシは、その異質な姿を見て、片方の口角を不自然に吊り上げてしまった
「ソングラインちゃああああああああん!!!!!!!!!」
ここが人通りの多い街中であることを意にも留めず、アタシの名前を叫びながらまっすぐ向かってくる元気いっぱいの少女
彼女はなんと、明らかに場違いな英国風のロリータドレスを纏ってやってきたのだった!!
「なななな、なんだその服装は!?!?!?これから舞踏会にでも行くのか!?!?!?」
「何言っているんですかあああああ!!!!!私、この日のために思いっきりおめかししてきちゃいましたああああああ!!!!!!!!!!!!」
“何言っているんだ”はコチラのセリフだっ!一緒にモールをみて回るだけの予定だったろ!?
「ソングちゃんの服装はイマドキ?な雰囲気で良いですね!!!!!!」
「そりゃ、そりゃあなぁ………」
彼女はアタシの服装がもの珍しいようでまじまじと見てくる。アタシはというと、お出かけ用のいつものカジュアルなコーデをチョイスしていた
ライトブルーのデニムショートパンツに、白いTシャツの上からグリーンのカーディガン。足元にはお出かけに最適なウォーキングシューズを履いていた
「うぬぅ………」
苦悶するアタシは、エールのお姫様みたいな格好を見て、唸り声を上げてしまう
フリフリの裾はエールの動きに合わせて軽やかに揺れる。エールの世間知らずはソダシから事前に聞いていたが………流石にこれは想定外だった。世間からズレにズレまくったこの暴走お嬢様をどうするべきか………
「じゃあ早速カフェの方に………」
「………行かない」
「うぇっ………え?」
痺れを切らしたアタシは、カフェの方角へ進もうとするエールの左腕を無意識に掴んでいた。手首には薄いベージュの高そうな腕時計がつけられており、エールの健康的な肌と同化して見える。慎ましくも奥深しい金持ち特有の気品と、おそらくこれを贈ったであろう名競嶺二さんの父親としての愛情を感じ取れる
裕福なのは結構。地元の友達にもお嬢様っ子はいた。でもそいつの方が、エールより数倍一般常識を理解していた
それになにより………もうそろそろ、周りの人の目が何より痛くて限界だっ!
「そのドレスじゃ浮くに決まってるだろうメイケイエール!!予定変更だ!!!服買いに行くぞ!!!!」
「えぇえええええ!?!?!?!?」
ここがアタシ行きつけのモールでよかった……!
痺れを切らしたアタシは、お嬢様の腕を掴んで強引にひっぱった
「ちょっ、ちょっとおおおおお!!!!!!どこに連れて行くんですかああああああああ!!!!!!!」
「黙ってついてこいメイケイエール!!!!」
早速アタシたち二人は、近場にあったユニクロに入店。一刻も早くエールの舞踏会みたいなドレスを脱がせたかったアタシは、店頭にあったレディースのアイテムをなるべく疾くピックする。多めに取ったそれらをエールに押し付け、試着室の中へとぶちこんだ。閉めたカーテンの隙間から顔を出し、アタシはエールに命令する
「今すぐこれに着替えろ。服代はアタシが払っとくから」
「えっ着替えるんですか!!!?!?!?!?」
「そうだよ当たり前だろ!!!ここはシンデレラ城じゃないんだぞ!!!?」
不満と困惑が入り混じった表情のメイケイエール。何が起こったのか、どうしてアタシがいきなりこんなことをするのか一切わかってないって感じだ
「この日のために私、初めて一人でドレス着替えたんですよ!!!!?!?!?!?いつもソダシちゃんに着るの手伝って頂いているから!!!!!!!!!」
「は、はぁ………?」
つまり、この場違いなドレスは気合いを入れたお出かけ用の服装なのだと………? いやいやいや。ズレてるぞお前………
てか、ソダシがいたら、手伝うどころかドレス着るの止めてたろうよ……… エールなりの真っ直ぐな好意のつもりだろうが、流石にそれを尊重させることができない。認識を正さないと。ムッとしているエールに耳打ちする
「あのなぁエール、冷静に周りをよく見てみろ。ここでそんな派手なドレス着てるの、お前だけだったろ………」
「………!!!!!!!!!」
アタシが耳打ちするのと同時に、カーテンを少し開いて外の光景を見せてみる。するとエールは、ようやくハッとした表情を見せてくれた
「ごめんなさい!!!!!!!!!爆速で着替えます!!!!!!!!!!」
「頼んだぞ」
その一言の後、アタシはふぅとため息をつきながら、カーテンを静かに閉める。着替えるエールを待つために、近くにあった備え付けの椅子に腰掛けた
………うーん。早速試着室の中からめちゃくちゃドタドタ音がする。大慌てで着替えようとしているのか
アタシは再度立ち上がり、カーテンの隙間から中のエールの様子を伺う。ドレスを脱ぐのに苦戦しているみたい。手伝えるなら手伝いたかったが、エールの着ているドレスの構造なんて知らないし、試着室の中は狭いからなぁ
「ゆっくりでいいからな」
「あっ、はい!!!!!!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!!!!!!」
しっかし、ここまでの世間知らずは生まれてきて初めてだ。地元の友達の一人にお嬢様がいて、小学校に入るまで箱入り娘だったそうだが、彼女は全然普通だった。お嬢様だろうが、お出かけにドレスを着ていくべきではないって普通は……
………いいや、少なくともその子は、友人たちに恵まれていたっけ
「着替え終わりました!!!!!!!!!」
シャー!と、思い切りカーテンが開かれる音が鳴る。着替えの途中で気が晴れたのか、不満そうな顔はどこかへ消えていた
彼女が着替えた、胸の部分に謎英語と謎絵がデザインされた、よくある感じの桃色Tシャツ。下はベージュのボトムスで、色合いは結構いい感じだ。胸がデカすぎて胸元の柄がパツパツになっているのは………突っ込まないでおこう
「まあ、ドレスよりかはマシだな。こっちの方が動きやすいだろ」
「ジャージみたいで動きやすいでえええええええす!!!!!!!!」
「それが普段着ってものなんだぞ〜?」
そして勝手にニコニコになってるエール。早くも満足そうな様子だ。やっぱり笑顔のエールが一番良いな
普段なら時間をかけていろんな服を試着する。しかし今回の目的はいち早くドレスを脱がせることだったし、エールがあんまりファッションに頓着しないのなら、もうこれらを買ってしまうのも………
「どうでしょう!!!!!!!!!!」
「………?」
「この服装、私に似合ってますか!!!!!!!!!!!!!!」
腰に手を置き胸張って、バカデカい声で問いかけるメイケイエール
アタシは飾らず、本心を口にした
「………言っちゃなんだが、超絶ダサい。アウターも羽織らず上半身ピンクの柄Tだけとか、小学生しか着ないだろ」
「これソングちゃんが選んだ服装ですよね!!!?!?!?!?!?」
エールの迫真のツッコミに、アタシはおかしくって失笑してしまった
「ごめんって。てか、しょうがないだろぉ? 一刻も早くエールのドレス脱がせたかったんだから」
「むぅー………! TPOを弁えなかった私にも非がありますが、買うのでしたらちゃんと自分に似合う服装が良いです!!!!!!!」
「お。予定変えてショッピングでもするか?」
彼女が意欲的なら、今日一日はイチからファッションを教える日にしても、良いのかもしれないな。アタシはエールにニヤリと笑ってみせた
どうせ時間はたんまりあるんだ。今日はエールをいろんなところに連れて行ける
「ちょっと歩くけど、ここのモールにアタシ行きつけのアパレルがあるんだ。行ってみないか?」
「行きつけですか!!!!!!!!!ちょうどソングちゃんのその服を買ったお店が気になっていたところです!!!!!!!!」
いままで知らなかったのなら、仕方がない
これから新しく知れば良いのさ
アタシが全部、教えてあげれば良いだけだからな