ひろがるスカイ!プリキュア〜救けて勝つヒーロー〜   作:伽華 竜魅

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ちびたXtreme様、そらまめ24様、誤字報告ありがとうございます!





橙色の鳥は空を眺めて夢を見る

 

 

 

 

翌日の早朝。

今日も早起きはしたものの、自主練には行かずに僕は部屋で昨日の夜にヨヨさんから貰ったケースの中身を確認していた。

その中には一通の手紙と一冊のノートもあり、僕は手紙を手に取り静かに読んでいた。

 

「………ッ」

 

その内容を読んで僕は思わず手を力んでしまい、同時に胸の中は暖かくなっていた。

 

「……ありがとうございます…! 」

 

そして感謝の言葉を小さく口ずさみ、その手紙は大切に折り畳んで机にしまった。

感謝の思い、安心感などがこみ上げてくる……とりあえずケースの蓋を閉じてから取っ手を掴み、ケースを持って下のリビングへ向かった。

リビングに着けば、お茶を飲んでいるヨヨさんと制服を着ているましろさんがいた。

 

「おはようございます」

 

「あ、おはよ~出久くん」

 

だけどソラさんはいないみたいだった。

それを気にしているのに気づいたのか、ヨヨさんは「今日は学校休む」と言ってきた。

理由を聞けば、昨日の夜のアレから一睡もせずに起きてエルちゃんの傍にいたみたいだ。

 

「…? そのケースはどうしたの?」

 

「あ、昨日ヨヨさんが僕宛てにある物を用意してくれたんだ。これから一応性能を試そうとしたんだけど……ソラさんが心配だし後にするよ 」

 

僕がそういうとましろさんは「ソラちゃんのことお願いね!」と言ってバックを持って学校へ向かった。そんなましろさんを見送り、離れていったのを確認してから、僕は真剣な表情でヨヨさんに振り向いた。

 

「……ヨヨさん、今すぐじゃなくて構いません。頼みたいことが——」

 

そのケースを届けた人に会いたい(・・・・・・・・・・・・・・・)そうでしょう?」

 

「——……はい」

 

やっぱり考えてることは丸わかりか……ヨヨさんは承諾してくれて、僕はお礼を言ってから再び2階へ上がっていった。

元々はそのままいつもの場所に行こうとしたけど、ソラさんが心配だ。

 

 

 

コンコンコンッと扉をノックしたけど、ソラさんから返事がない。

声をかけても反応がないし……あまりよくないけど、床に倒れていてもしていたら大変だ。

僕はそっと扉を開けて中を覗いた。

 

「える~」

 

「あ、エルちゃん……?」

 

するときっと扉の傍にいたのだろう。

エルちゃんが僕の足の間を通って来た。

思わず驚いたけど、すぐに手で口を押えてソラさんの部屋に視線を戻した。

そこには、エルちゃんの揺りかごの傍で、座ったまま寝落ちしているソラさんがいた。

エルちゃんも1人で廊下は危険だ。

とりあえず僕は音を立てないようにしながら速足でソラさんのベットの毛布を取り出し、眠っているソラさんにそっと被せた。

それを終えてから急いでエルちゃんを追い、再び廊下に出た。

するといつの間にいたのか、扉のすぐ真横にツバサくんが立っていた。

 

「出久さん、僕の話を聞いてくれますか?」

 

「……うん。いいよ」

 

ツバサくんが勇気を振り絞ったような表情で僕を見てそう言ってきた。

きっと昨晩に話せなかった、ここに滞在している理由だろう。

 

 

——◆——

 

 

時刻はお昼過ぎ。

 

「……ん、んぅ?」

 

エルを夜通しで見守っていたが、朝方には寝落ちしてしまっていたソラは目を覚ました。

顔をふと上げるとパサッと後ろから落ちる音がソラに耳に入り、その音に釣られて振り向けば毛布が落ちていた。

 

「私、いつの間に……?」

 

そして顔をエル用の揺りかごがあるが、そこに眠っていたはずのエルはどこにもいない。

ソラは悪い予感をし、慌てながら扉をバンッ!と勢いよく開けて廊下に出た。

 

「シッ!」

 

しかしその扉の真横にいたツバサが咄嗟に静止するようにジェスチャーをしてきた。

ソラはなぜかと疑問を抱くが、その理由はツバサの目線の先を自身も見たことで理解した。

 

「えるぅ〜……」 

 

壁に手を添え、自分の足で立とうとしているエルがいたからだ。

エルは一度手を壁から離し、そのまま足だけで立とうとするもバランスを崩して倒れかける。

ソラは思わず声を出すもエルはすぐに壁に手を添えてバランスを保ち、ソラはそれを見てホッとした。

そして2人はそのまま手を握り必死な表情で見守っていた。

 

「える…!」

 

「「…ッ!!」」

 

そしてエルは壁に手を付けずに、バランスを保ちながら自身で立つことに成功した。

 

「えるっ?」

 

「「はっ!!?」」

 

エルが立つことが出来たことに喜んでいたが、すぐにバランスを崩し倒れそうになる。

ソラとツバサはそれに焦り、滑り込むようにエルの背中を支えて、廊下にぶつかることなく受け止めることができた。

 

「はぁ……」

 

エルが無事なことにツバサはホッとしていると、ソラは涙を流しながらエルを抱っこし、優しく抱きしめた。

 

「頑張ったね! …諦めなかったね! …偉いね!!」

 

「えるぅ〜!」

 

「うん…! うん!」

 

ソラはエルを沢山褒め、エルも褒められて嬉しそうに喜んでいた。

それを見たツバサは、いつの間にかソラの後ろに来ていたヨヨと目が合い、それから再びツバサはソラを見た。

 

「ソラさん」

 

「…?」

 

「…一緒に来てもらえませんか?」

 

そう言ってツバサは立ち上がり、ソラも後ろにいたヨヨにエルを預けて、着替えるために一度部屋に戻った。

 

 

 

ソラの着替えが終わり、4人は奥の今まで鍵がかかっており入れなかった部屋にやって来た。

その部屋は本が大量に置いてあり、飛行機の模型が天井からぶら下がったり、机の上にも置いてあり、熱心に勉強した後も残っていた。

 

「ずっと鍵が掛かっていたから、てっきり空き部屋なのかと……」

 

「私が用意した、ツバサさんの研究室よ」

 

「研究…?」

 

ソラが椅子に座りながら部屋を見渡している間に、ツバサは棚にしまわれている本を一冊取り出し、ソラに見せた。

 

「航空力学」

 

「航空…?」

 

「ソラさん、飛行機は知ってる?」

 

「え? は、はい。テレビで見ただけですが……」

 

ツバサが本の中身をソラに見せ、ヨヨとツバサは2人でソラに説明を始めた。

 

「その飛行機を飛ばすための学問が航空力学よ。風の向き、強さ、翼の角度」

 

「こちらの世界の人達が、空を飛ぶために長い時間を掛けて編み上げた学問です」

 

あまりに難しい内容にソラは頭を掻きながらも話はちゃんと聞き、本の内容も見ていた。

 

「それを僕は1年かけて勉強してきました。スカイランドに帰らなかったのは、そのためです」

 

「どうしてそんな勉強を…?」

 

ソラが質問すると、ツバサは真剣な表情で見つめ返し「本当のことを言っても笑わないでください」と約束を頼み、それに対しソラもよっぽど大事なことだと察し、強く頷いた。

ツバサは窓際へ移動するとそのまま窓越しで空を少しの間眺め、そして呟いた。

 

「——空を飛びたいんです」

 

そこからツバサはポツポツと語り始めた。

 

「僕たちプニバード族は『世にも珍しい空を飛べない鳥』だってことは知っていますよね……」

 

「はい…大昔『人間に変身する力と引き換えに飛ぶ力を失った』と……」

 

ツバサは再び語り始める。

ある日、ツバサは父と共に遊覧鳥に乗り王都に向かう際中、突然の突風に襲われ、ツバサは遊覧鳥から落ちてしまい、そのまま落下してしまった。

ツバサは必死に自身の羽を羽ばたかせて飛ぼうとするも、プニバード族は飛べない鳥である以上、飛ぶことは叶わない。

だが父はそんなツバサを助けるためにその身一つで波状飛行をし、足でツバサを掴んでから風に乗り翼を羽ばたかせて空を飛んだ。

それによって無事ツバサは救われ、同時に空を飛ぶという夢が芽生えたのだ。

 

そのことを同じプニバード族に話すも信じてもらえず逆に笑われ、父に直接問いただしてもハッキリと答えてはくれなかった。

ツバサはそれでも諦めきれず、飛ぶ練習に励んだ。

しかしそれでも飛ぶことは叶わず、嵐が訪れた日にはその強い風に乗れば行けるのではと思い挑戦した。だが結果は失敗に終わり、落ちてしまったことで偶然にもソラシド市に流れ込んだのだ。

 

「でも無駄じゃなかった…落っこちたおかげで僕はこの世界で空を飛ぶ学問に出会った…! それを学んで、風の流れを正しく読めば僕も空が飛べるかも——」

 

ツバサは希望に満ちたような表情と共に語り続けながらソラを見た途端声が途切れた。

その理由はソラの肩が震えていたからだ。

それを見たツバサは笑われていると思い、表情が暗くなり俯いた。

 

「……やっぱり笑っちゃいますよね…だから言いたくなかったんだ…だからずっと、ただの鳥の振りを——」

 

「カ〜ッコいいィ!!」

 

「——…へっ?」

 

だがツバサの思っていたこととは裏腹に、ソラは目を輝かせながらがヒーロー手帳と『ミラージュペン』を取り出し、ツバサに詰め寄りながら書き始めた。

 

「一度やると心に決めたことは絶対に諦めない! それがヒーロー!」

 

「笑わないの…?」

 

「笑いません! だって私はヒーローになりたい。ツバサくんは空を飛びたい! 道は違うけど、私達同じじゃないですか! 誤解しちゃってごめんなさい!」

 

ツバサは思わず笑わないのかと問い、ソラはそれにハッキリと答え、逆にその勢いを乗せたまま謝罪をし、そして顔を赤面しながらも手を差し伸ばした。

 

「お友達に…なってください!」

 

ツバサはそれに少しポカーンとしているが、差し出されたソラの手に自身の手を伸ばしその手を握った。握り返し、友達になってくれたことにソラは喜び、ツバサも表情が明るくなった。

だがそこでソラはふと気づいた。

 

「そういえば…出久さんは知っているんですか?」

 

「あ、うん…ソラさんに話す前に先に話したんです。そしたらソラさんと同じように笑わず、むしろ応援してくれました」

 

「そうだったんですね……その出久さんは…?」

 

出久がいない事だ。

出久はソラが起きる前に既に先ほど話したツバサのことを聞いており、出久もまた笑うことはなくツバサを応援したのだ。

そんな本人がいないことにソラは不思議がっているが、ヨヨが「トレーニングに行ってると思うわ。アレも含めてね」と言いだし、トレーニングに行ったのは理解した2人だが、アレの意味だけは理解できずにいた。

 

 

——◆——

 

 

同時刻、ソラシド市が見渡せる場所。

出久はもはやそこが自主練場所のように来ていた。

そんな出久は私服を着ていない。今彼がその身に纏うのは新しい戦闘服(コスチューム)だった。

同時に彼の手には一冊のノートが握られており、出久はそのノートに記載されている内容を読んでいた。そしてノートの表紙は黒ペンで書かれたであろう文字があり、その文字は——

 

 

『歴代継承者"個性" 緑谷少年ノート FIGHT!』

 

 

——と書かれていた。

 

 

 

 




無事ツバサくんの過去などの語りシーンが掛けました。
めっちゃ時間かかった……ここに出久を入れるかどうかが一番悩んだ。
でもケースの件もあるし……よしこうしよう!ってなったのが今回の内容デェス。
さて、次回にはラストに出た出久のアレがわかると思います!(手かそうしたい!)




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