『機甲の魔法使い』   作:きしめん丸

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拙い文章ですが読んでいただけるだけでうれしいです。
そして、プロローグまでは見ていただければ嬉しいです


第一章 プロローグ
第一話 運命の少年


聖歴1852年、アルザーノ帝国にて二人の少年と少女が手をつないで死地を駆けていた。少年は10代半ば、少女はまだ10にも行かないような幼子であった。

少年はツンツンとした寝癖のような短い黒髪だったが、少女の方は長い銀髪であり、まるで高名な彫刻家が一生をかけて作ったかのような可憐な少女であった

だが、二人とも見る者を魅惑するような美しい紫色の目を持っていた

「ユナ!!まだ走れるか!」

「はぁっ…はぁっ…うん、まだいけるよお兄ちゃん」

「畜生ぉ!なんだって帝都がこんなことにぃ!!!」

少年はそう叫びながら迫りくる謎の人間たちから逃げていた。彼我の距離は60メトラほどあったがそいつらはすさまじい速度で迫りこのまま走っていれば、少年たちに追いついてしまうだろう。

少年はどこか覚悟を決めたような目で少女の方に

「ユナ、このままじゃ俺たちは追いつかれちまう…だから兄ちゃんが足止めするからユナは早く安全なところに逃げるんだ。」

「無理だよお兄ちゃん!そんなことしたらお兄ちゃんが!」

「大丈夫だ、ユナ!兄ちゃんだって魔術は扱えるんだ!!この程度のやつらに!!」

少年はそういうと自身の体に付呪(エンチャント)していた【フィジカルブースト】を解除し謎の人間の方に振り返った。謎の人間は数えきれないほど多く、少年も無理なことを言ったのは分かっていた。だが、

「ユナ!!早くいけ!!!」

少女は不安そうに少年の方を振り返ったが、少年は少しだけ少女に微笑み、もう一度大群の方を睨んだ。

「ぐッ…!!《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》!!」

少年はそう呪文を叫ぶと指先から紫電が迸り、大群に当たった。だが大群は一向に止まる様子を見せずにこちらになだれ込んでくる。

当然だ。威力の低い初等呪文の【ショックボルト】がこの人の力を越えた大群に通用するわけがなく、なおかつ少年は【フィジカルブースト】を長期間使用していたことによって既に彼の魔力は枯渇していた。

「…!!くそぉおおおおおおお!!!!!」

自棄になりながら呪文を撃ちまくり、そして…

「がはぁっ!!!」

少年は吐血し、膝をついた。マナ欠乏症だ。少年は動けなくなりそこに波濤のように迫りくる謎の人間の大群。

(…ユナのやつ…逃げ切れたかな…兄ちゃんのことはいいから…幸せに生きてくれ…)

少年は死の間際であるにもかかわらず不思議と落ち着いていた。

少年は眠るかのように目をつむり大地に仰向けになって寝そべった…そして迫りくる大群は少年の方に襲いかかろうと、その凶手を少年に向けようとした瞬間…

 

ドゴォォォン!!

 

と近くで大気を切り裂くような音が上げられた。

何事かと思い少年は目を開けると、死地にはふさわしくないほど綺麗な大空が少年を包み込んでいた。

謎の人間の大群と少年の近くの建物はきれいに吹き飛んでいた。そんなことができるのは魔術以外にあり得ないだろう。少年は寝そべったまま呆然としていると

「大丈夫か!!そこの坊主!!」

と帝国宮廷魔導士団の礼服を着た女性がこちらに近づいてくる。

「ああ…大丈夫…ではないですけど、それより妹は!?」

「ごめんな、それに関しては分かんないよ、坊主はさっさと安全な場所に行きな、若い魔術師の卵には死んでもらいたくない」

「分かり…ました。」

少年は妹…ユナのことを心配しながら安全な所へと向かった。幸い、その魔術師がここらの謎の人間を倒してくれたおかげで道に敵はあまりいなかった。

帝都の光景はひどいものであった。建物が焼け、そこら中で爆発となんらかの魔術による衝撃の音が響いていた

その中を少年はゆっくりと、しかし着実に避難場所に向かっていった。

避難場所につき時間は経ち、疲労も回復してきたころ避難場所にユナがいないかを少年は見て回った。だが

「ユナが…いない…?」

帝都は広い、だから別の避難場所にいるかもしれない。が少年は一抹の不安を覚えていた。少年は近くの人に尋ねた。だが帰ってくる言葉は等しく

「ごめんなぁ、知らないよ」「ユナちゃんのことは見かけてないねぇ…」「それよりも軍の体制はどうなってんだ!!これは特務分室のやつがやったことなんだろ!!!ざっけんなよ!!」

そんな言葉ばかりだった。

ここで待っていればユナも来るかもしれない。だが得も言われぬ謎の不安が少年を襲い

「ユナ…!ユナぁ!!!!!」

と叫び、避難場所から走り去ってしまった。

少年は駆ける。少女が逃げ出した方向に向かって、疲労も忘れ駆ける。

(確か、ユナはこの辺で!)

少年は倒壊した建物を見渡しながらユナを探す。その周辺を走り回っていると、あるとき…

ヌチャ…と気持ちの悪い音が足元からした。よく見ると、少し乾いた血のようだ

少年は慌て、その血の辿っている方をみた。

──少年は未来永劫後悔するであろう。自分が行った決断を。そして、自分が《愚者》であると自覚するであろう。

少年は血をたどった方を見る、

それは美しい少女であった。長く麗しい銀髪を持ちその肢体は絹のように柔らかいしかし、上半身と下半身が完全に分断されており、建物の崩壊に巻き込まれたのであろう

まるで芸術品かと思うような()()の目は完全に光を失っていた。

それを見た瞬間、少年は蹲り…

「くぅっ…あ…あぁっ…!!!あああ!!!うああああああああああああああああああ!!!!」

その少女を抱き涙を流し、後悔、困惑、悲しみ、切なさ、様々な感情を混ぜながら叫ぶ。そしてその中で最もあらわにしていた感情は、

「なんでッ!!!なんで!!!こんなの!!こんな!!!!!うぁぁぁああああああ!!!!!!」

 

 

怒りであった。

 

 

この物語は若くして全てをなくした一人の少年、アスラ=アダムスの断章である。

 

聖歴1853年、アルザーノ帝国、フェジテにて一人で住むには少し広い家で少年は目覚める。

歯を磨き、昨日の晩飯の残り物を食べ、()()()()()()()()()()()の制服を着る。

少年はあの時の記憶を鮮明に思い出す。思い出すだけで吐き気を催すような記憶を。だが、思い出さなければ、いつか忘れてしまう。それだけは嫌だった

「そろそろ一年…か…」

少年はにこやかな笑顔をしながら

「ユナ…いってくる」

 

アスラの家はフェジテの表通り沿いにあり、学院への道はそう遠くはない。

(確か、今日は非常勤講師の先生が来るんだよな…、ヒューイ先生の授業、俺にはわかりづらいから基礎から教えてくれたらうれしいな、早く…軍に入って…()()()()()…)

アスラは早朝故に閑散とした道を歩いていると

「チクショー!!!あの女、時計ズラシやがったなぁ!?」

と後ろから猛スピードで謎の男が走ってきており、今、まさにぶつかろうとしていた。

「うえっ!?」

「どけそこのガキィィィ!!!!」

だがアスラの回避行動は間に合わず、その謎の男に轢かれてしまった。そのまま謎の男は走り去り、遠くに消えてしまった

「っ~~!痛ぇな…なにすんだよ、あいつ!!」

当たったところが悪くあまりの痛さに地面に蹲って悶絶していると、

「あはは…大丈夫?アスラ君」

「まったく…ほんとになんなのよ、あの男」

アスラに話しかけてくれたのは二人の少女であった、魔術学院で同じクラスである、ルミア=ティンジェルとシスティーナ=フィーベルであった。

ルミアは柔らかなミディアムの金髪の可憐な少女であり、システィーナはきれいに整った銀髪のロングヘアで、凛々しさを感じる様な少女である。

アスラはすぐに立ち上がり、傷ついたとこに唾をかけながら

「こんぐらい大丈夫だよ、ルミア、システィーナ、それよりあいつのこと知ってんのかよ」

「私も知らないわよ、あんなやつ」

「私も知らない…かな」

互いに顔を見合わせながらそう答える

「そうか…まあいいか、さっさと行こうぜ!もう8時半だ!!遅れるぞ!!」

そういいながら、時計を二人に見せる。時計の針は8時半をさしていた。

「…あれ?もしかしてアスラ君()時計間違えてる?」

「…え?」

システィーナは呆れたような表情を見せながら時計をアスラに突きつける。その時計の針は8()()を指していた

「まだ8時よ、40分もあるじゃない」

 

アルザーノ帝国魔術学院、

400年以上の歴史を持つ魔術学院であり、時の女王、アリシア三世の提唱によってつくられた、国営の魔術師育成学校だ。

時代の最先端を行くような教育を施し、帝国の高名な魔術師の大半はこの魔術学院を所属している、故に意識高く、気品あるこの学院で遅刻などしたらどうなると思うか?ましてや()()が遅刻したら?

「…遅い!」

魔術学院の最奥、魔術学士二年次生二組の教室でシスティーナは憤っていた。

先ほどの答えだが、もちろん軽蔑である。

「確かに…ちょっと遅いね…」

「まったくもう!遅刻するだなんて絶対ロクでもない講師だわ!!」

「うーん…何かあったのかもしれないしもうちょっと待ってみようよ…」

ちなみに事前にこの教室の人間は、魔術師と最高位である第七階梯(セブンデ)の称号を持つ魔術師、セリカ=アルフォネア教授から『今日はこのクラスに、ヒューイの後任を務める非常勤講師がやってくる』『まぁ、なかなか優秀なやつだよ』と伝えられている

それに期待し、胸を膨らませていた学徒どもも…

「マジで…?」「優秀な先生って…セリカ=アルフォネア教授が言ってたよね…?」「……ふん…」

このありさまである。

「この学院の教授としての初日がこんな大遅刻をかますだなんて逆に伝説だわ…」

「まあまあシスティ…理由があって遅れてるだけかもしれないし、まだ評価をつけるには早い…と思うよ…?」

ルミアは先生の不安をしながら自習をしている。同じくシスティーナも自習している。

そんな新たな講師に生徒全員が不安感を覚える中、

「システィーナ!新しい先生ってどんな人かな!」

アスラは少し場違いなことを言いながら、システィーナに問いかける。

「ふん!きっととんでもないロクでなしよ!」

「そうかなぁ?学者肌の人間って結構そういう変なところあるし、もしかしたら新しい先生そういうタイプしんないよ」

「それはそれとして、よ。()()()()なる魔術を学ぶこの学院でこんな大遅刻、魔術を冒涜しているとしか思えないわ!」

システィーナは胸をたたきながらそう豪語した

「そうかなぁ…」

(魔術って…そんな崇高なもんなのかなぁ…)

そう話しているうちに授業も半ばになってきた頃…

「あー、メンゴメンゴ、遅れたわー」

やっと、その件の非常勤講師がやってきた。魔術学院史に残る大遅刻である

「やっと来たわね!ちょっと貴方!いったいどういことなの!?貴方にこの学院の講師としての自覚は─」

説教をくれようとシスティーナは声のした方向に振り返ると──絶句した

「あ、あ、あああ──貴方は──ッ!?」

「あーっ!?あんときぶつかってきたやつ!!」

アスラとシスティーナは息ぴったりにそういった

「仲良しだな…てめーら…」ぼそりと呟く

「ていうかなんで遅刻したんだよ!!全然時間に余裕あっただろ!」

「そんなの、そっちの白髪のやつに言われて、時間に余裕があるって気づいて…で、それでベンチで二度寝としゃれこもうと思ったら、本格的な居眠りになっちまって…に決まってるだろ」

男はさも当然のごとくそう言い放った

「「想像以上にダメな理由だ!?」」またも息ぴったりに言う二人

「ていうか私は白髪じゃなくて銀髪です!!」

「あーわりぃわりぃ。ということで、えー、非常勤講師のグレン=レーダスです。本日から一カ月間、短い間ではございますが、生徒諸君の勉学の手助け…」

全く謝ってる素振りを見せず淡々と自己紹介を始めていくグレン

だがそんなグレンにシスティーナは食いかかる。

「挨拶はいいから、授業始めてください」

ここまでいいとこなしのロクでなしの講師であるグレンだが、クラスが期待していないと言えば嘘になる。

なぜならあのセリカ=アルフォネアが『まぁ優秀』と評価しているのだから講師としての腕は高いに違いないと、だが…

 

自 習

 

大きな黒板にでかでかと書かれた字はクラス中を困惑させた

「え…じ、じしゅ…え?」

そしてそんなクラスの思いを意に介さずグレンは

「えー、本日の一限目は、自習としまーす」 「…ということで」

と言い、グレンは神速で教卓に突っ伏し、十秒もたたないうちに「Zzz…Zzz…」といびきが聞こえ始めた。

「ちょおっと待てぇええええ──ッ!?」

教科書を手に取り、グレンに突撃するシスティーナ、一応それを止めようとするアスラ、そして教卓に突っ伏し寝るグレンの表情は幸せそのものであった。




お気づきの方もいると思いますがアスラの境遇などは『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の主人公、シン・アスカを意識して書いています。私にとって天涯孤独の主人公と言えば彼だったので書いてる内になんとなく似てしまったんだと思います
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