『機甲の魔法使い』   作:きしめん丸

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ここまでがプロローグです。
キャラの言動を真似るのって難しいですね…


第三話 終わる平和

とある日、この日は休校ではあったが、グレンの担う2組は授業が遅れていたので2組だけは普通に授業があった。だが…

「うおおおおおおお!? 遅刻!?、遅刻ぅうううううううう!?」

どこかで見たような光景がまたもや学院へと続く道で繰り広げられていた。声の主はもちろんグレンである。

「くそぉ!!なんで休校日にわざわざ授業やらなきゃいけねぇんだよ!?だから働きたくなかったんだチクショー‼無職万ざああああい!!!」

そういいながら表通りを駆けるグレンは一つの違和感に気づいた。

異様に()()()()()

「…っ!?」

通常、この時間帯であればここら辺を通る一般市民がいてもおかしくない。だが、辺りはしんと静まり返っていた。人っ子一人いない。

「いや、これは…」

強力な魔力痕跡を感じる、恐らく人払いの結界であろう。だから一般市民は無意識にこの道を避けているのだろう

(…なぜこんなものが、ここに…?)

グレンにとってこの感覚は一年ぶりであった。得も言えないような不安…だがこのまま、何かしていたらまずいと言った直感、久しく忘れていたそれがもう一度冴え始める

「…なんの用だ?」

グレンは十字路のある一角に睨みをきかせ、問う

「ほう……気づきましたか。たかが第三階梯(トレデ)ごときの三流魔術師だと聞いていましたが、なかなか優れた感覚をお持ちで」

空気が蜃気楼のように揺らぎ、その揺らぎの中から、染み出るように男が出た。ブラウンの癖っ毛が特徴的な、年齢不詳の小男だ

「まずは見事、と褒めておきましょうか、しかし…アナタは何故そちらを向いてるのです?私はこちらですよ?」

「……………別に」

後ろから現れたその男に対してグレンは気まずそうに答えた。

「ええと…ところで一体どこの誰なんですかね?俺、急いでるんですけど」

「そんなことは置いときましょう。アナタはゆっくりと、目的地に行けばいいのです」

「いや、あの…俺時間がなくて…」

「大丈夫です。アナタの目的地は今、変わりました…アナタの新しい目的地は……あの世です」

「─っ!?」

そういい、グレンが虚を突かれた瞬間、小男が呪文の詠唱を始めた

「《穢れよ・爛れよ・─》」

(や、やべ──ッ!?)

小男の魔力が高まっていく、グレンは冷や汗がぶわっと噴き出すが、グレンの技術ではもう対抗呪文(カウンタースペル)は間に合わない。

(しかも、あの呪文は──)

それはとある致命的な威力を持つ魔術の複合呪文だ。それを食らえば…確実に死ぬ。

「──《朽ち果てよ》」

小男の呪文が完成し、その術式の恐るべき力が解放される。

 

「……遅い!というか、アスラも!!」

システィーナは懐中時計を握りつぶしそうな勢いで握り、その手をぷるぷると震わせていた

「アスラ!!なんで来ないのよ!!あいつが遅刻してきたことなんてなかったでしょう!?」

「それにあいつも…!少しは見直してきたのにぃ…!あの馬鹿!」

「でも、珍しいよね…グレン先生、最近ずっと遅刻しないで頑張っていたのに」

「まさか、あいつら今日が休校日だと勘違いしてるわけじゃないでしょうね?もしそうだったら本当に兄弟みたいだわ!」

システィーナは不機嫌そうに頬杖を突きながら

「あはは…システィ…そんなにあの人が恋しいの?」

「バッ…!?何を言ってんのよ!!アスラなんて…まあ尊敬はしてるけど…!まっすぐだし…」

頬を赤らめ、システィーナはルミアにそう伝える

「あれ?システィ、私アスラ君のこと一言も言ってないよ?」

「んぐっ──!?」

一本取られた。苦虫を嚙み潰したかのような渋面になるシスティーナだった。

別にアスラは友達の範囲として見ていたがアスラは、システィーナの弱い面を知っており、更にアスラは厳しい現実に会いながらもまっすぐに進もうとしている。そんな彼の姿に彼女は憧れを覚えており好意を抱いている。友達以上と言えば間違いはないような関係である。

ルミアがその様子にニコニコとしていると

「あ、貴方はどうなのよ……?」

「私?」

「そうよ、貴方って最初からやけにグレン先生のこと気に入ってたじゃない。それに、最近あいつ結構色んな子から話しかけられるじゃない。貴方こそちょっと寂しいんじゃないの?」

「私は…嬉しい、かな?」

「………」

「グレン先生がほんとはすごい人なんだって、皆がわかってくれて…凄く嬉しいの」

その言葉には一切の嫉妬心などは入らず、裏表のない言葉だということがはっきりと分かった。

「………まいったわね…女としての余裕が違う…」

そんな平和な会話をしていると、ガラララ…と扉が開く音がする。

「あ、やっと来たんですか!!どっちだったとしても説教してやりますし、もし先生だったらアスラの100倍は──え?」

入ってきたのはアスラでもグレンでもなく、チンピラ風の男と、ダークコートの男だった。

「あー、ここかー、いや、皆、勉強熱心ゴクロ―サマ!頑張れ若人(わこうど)!」

突如知らない人物が表れ、クラス中が動揺する。

「あーあー、そんな驚くなよ!まあオレ達のこと簡単に言えばテロリストってとこかな!」

「はっ──!?そんな冗談、軽々しく言わないでください!それに守衛さんだっていて貴方たちは入れないはず─」

「冗談じゃねぇーーよ、オレ、学がないからそんな高度な冗談言えないよ~まあここに入ったとたん、弱っちぃ守衛さんぶっ殺して、あの厄介な結界をブッ壊して、そんでお邪魔させていただいたってワケよ。えーと、あーゆーあんだーすたんど?」

その男は軽々しくそう言った。

 

──一方そのころ

「くそぉ!!俺をどうしようってんだ!!」

アスラは駆けていた【フィジカルブースト】を自分に付呪(エンチャント)し、路地裏を駆けていた。

そんなアスラを追いかけるのは…全長10mはくだらない鉱物の巨人だった。そんな目立つ存在にもかかわらず、周囲には人っ子一人いない。超強力な人払い結界が張られているのだろう

「…っ!!」

ヒュゴウッ!と空気を切り裂くような音が背後からする、巨人がそのまるで搭のような太い腕を振った瞬間、建物が倒壊し、ボロボロに崩れた。アスラはそれを間一髪で避けたが足に負傷を受ける

「ぐああっ!」

痛みにより動けなくなる体、そんな弱った得物のようなアスラをつかもうと手を伸ばす巨人。

(畜生ぅ…!!こんなことで…こんなことでぇ…!)

だが一向に体は動かない、巨人がアスラの体を掴みそして包み込もうとする…

アスラがそんな時に浮かべたことはグレン、システィーナ、ルミアとクラスの皆、そして…最愛の妹、ユナであった

(ふざけるな…!!こんな()()…!!認めるかぁ──!!!)

そう()()想った瞬間、彼の意識は──プツンと途切れた。

 

時は進む。話を少し省略しよう。

グレンはあの後も何とか生きており、襲ってきたものをぼこぼこに尊厳を破壊するような格好で放置した。学院を襲ったテロリストはルミアを連れ去った。そしてそれに乗じてシスティーナに手を出そうとしたジン=ガニスは間一髪、間に合ったグレンにぼこぼこにされ、尊厳を破壊するような姿で放置した

そして現在は…

『それ、本当か?』

「冗談でこんなコト言うか。面白くねーよ」

グレンは宝石型の魔導器でセリカと会話していた

「とにかく下手人は天の智慧研究会だ。結界は掌握され、学院は完全に封鎖された。入ることも出ることもできん。人質に取られた生徒は五十人前後、教室に無力化されて閉じ込められている。その内一人は保護、一人は黒幕に連れてかれた。後…詳細はよくわからんがもう一人も天の智慧研究会になんかされたらしい。最悪の場合…!」

「…落ち着け、グレン。それにしても天の智慧研究会か…あのロクでなしの人でなしどもが出張ってくるとはな…」

「敵戦力は確認できたので三人。未確認が二人以上、確認できたうち二人は無力化した。だが、恐らく残りがやばい。」

『お前の固有魔術(オリジナル)でもか?』

「俺の固有魔術(オリジナル)は不意を打ってこそ、だ。さすがにそう何度も引っかかってくれるような馬鹿じゃない」

グレンの固有魔術(オリジナル)──《愚者の世界》はグレンを中心とした円状の結界内における魔術起動の完全封殺。

この対象にはグレンも含み、つまりは遠距離から発動してしまえば、こちらは魔術を使えず、逆に相手は魔術を使えてしまうといった最悪の盤面が完成する。

『そうだな』

「そして、これが一番伝えたいことだったが…俺の予想だ。学院内には裏切り者がいる」

『私も丁度同じことを考えていた』

「あんだけ、高いセキュリティをあんなに鮮やかに突破するにはまず、教授格かそれに準ずる能力の講師だ」

『そうだな、後、私から一つ聞きたいことがある』

『なぜアスラ=アダムスが攫われた?』

グレンはそういわれると頭をポリポリとかき答えた

「んなの分かんねーよ。ルミアの経歴はよくわからんかったけど、あいつに何か特別なもんはないはずだ。」

『そうか…』

「聞きたいことはそれだけか?」

『いや…最後に一つ…死ぬなよグレン』

「……死ぬわけねーだろ…俺が…」

そういうと、グレンはその通信を切った。

「さぁ…さっさとけりつけっぞ。お前はどっかでおとなしくして待ってろ」

グレンはシスティーナを指さしそういうと、システィーナはふるふると首を横に振って言った

「いえ…先生…私も行きます!ルミアを…アスラを助けます!」

「馬鹿いえ、お前一人行ったところで無駄死にするだけだ」

「でも…でも…」

「大人しくしてろ」

そうグレンは突き放すように言うと、システィーナは涙目を浮かべながらもグレンにこう伝えた。

「すいません…先生…魔術は、ロクなものじゃなかった…!こんなもののせいで…ルミアが…」

「…馬鹿が…お前、成長してんじゃねーか」

グレンはそういうとシスティーナの肩に腕を優しく乗せる

「…え?」

「あんときのお前と…俺はガキだった。けど、お前は誰に発破かけられたか、魔術の悪い面も知っても泣かねえようになったな。その生意気な態度はなんとかしないといけねぇけど…

それに、魔術が現実に存在する以上、存在しないことを望むのは現実的じゃない。大切なのはどうすればいいのかを考えること──、お前の親友の受け売りだけどな。やーれやれ、俺もそろそろガキやめねぇとな」

そう語るグレンはいつもの気だるげで皮肉な表情ではなく、普段の態度から想像もつかないほどの穏やかな顔だった。

「さてと、説教はここまでだ。後は俺が動くからそこでじっとしてろ。──二人は俺が()()する」

暗殺、その言葉がグレンから滑らかに出てきた時、システィーナは背筋を凍らせた。だが、すぐに冷静になり…

「分かりました…先生に任せます」

「くは…くははは、お前はたった数日間一緒に暮らしただけの素性もよく分かんねぇ非常勤講師を頼れんのかよ」

声のした方向を見れば、人間としての尊厳が破壊された格好のジンが喋っていた。どうやら【スリープ・サウンド】の効き目が甘かったらしい

「…はい」

システィーナはジンの言ったことに対し、少し動揺しながらもしっかりと首を縦に振った

「…っけ…なんでそんなこと言えっかなー。面白そうだと思ったのにツマンネーワ。だけどな…断言してやる。そいつは絶対、ロクな奴じゃねぇ。もう何人も()ってきた……俺らと同じ外道さ。そういう人間だ。そういう目をしてやがる。オレにはわかるぜ」

グレンは何も言い返せない。それは限りなく肯定に近い沈黙であった,

「それでも─」

システィーナが言おうとした──瞬間、場に魔力の共鳴音が響き渡ったかと思うと、グレンたちを取り囲む空気が波紋のように揺らいだ。

「何──ッ!?」

空間の揺らぎから、無数の何かが出現する。

見れば骸骨が武装している。日本の足で立ち剣や盾などを持ち、こちらに敵意をむき出しにしている

「やっとお出ましだぁ!ナイス!レイクの兄貴!」

グレンとシスティーナはあっという間に十数の骸骨兵に囲まれていた

「くそ、ポーン・ゴーレムかよ!?しかもこいつら竜の牙使って錬成されてやがる!?」

これを起こしたのは召喚【コール・ファミリア】

普通は小動物などを使い魔にできる程度の術だが、これだけのゴーレム、しかも品質の高いものを遠隔連続召喚(リモート・シリアル・コントロール)とはかなり高度なことをやっている

(クソ!?やっぱ親玉はあの程度(ジン・ガニス)の技量なわけねーか!?)

ジン・ガニスも簡略化された【ライトニング・ピアス】の詠唱を一切の精度を落とすことなく行う、かなり優れている魔術師ではあったが親玉──レイクという奴はもっと技量が高いことが伺える。

ポーン・ゴーレムがシスティーナに剣を振りかぶろうとした瞬間、

「ちいっ!?下がってろ白猫!!」

「きゃあっ!?」

グレンが渾身の右ストレートでポーン・ゴーレムを吹き飛ばすが、ポーン・ゴーレムには傷一つついていない。

「こいつら牛乳飲みすぎだろコンチクショウ!?炭酸水でも飲んどけ!!」

竜の牙を素材として使っているのでこのポーン・ゴーレム達は物理的干渉はもちろん、炎熱、冷気、電撃が通用しない。故にこのゴーレム達を倒すにはもっと直接的な魔力干渉をしなければならない。

(【ウェポン・エンチャント】──!!、だめだ唱える隙がねえ!)

「《その剣に光あれ》!!」

システィーナがそう唱えると、グレンの拳が淡く光り、その拳に魔力が付呪(エンチャント)されていた。

「助かる白猫!!」

「うおおおおおおお!!」

グレンは拳でポーン・ゴーレム達の頭部を的確に破壊し無力化していく。しかし──

(くそ!?数が多すぎる。逃げる暇もねえ!!)

正直に言えばこのままここで停滞していれば数に押され負けてしまう。どうするべきかグレンは考えるが──

「《大いなる風よ》!」

システィーナが得意とする突風の呪文、黒魔【ゲイル・ブロウ】が完成し扉前のポーン・ゴーレムを吹き飛ばす。ダメージはないに等しいが退路ができる。

「さっさと逃げるぞ!白猫!」

「はい!」

そうして間一髪、何とか部屋から脱出し、逃げ切れるのであった。

 

ジン・ガニスを処理し廊下へと出てくるポーン・ゴーレムを何とか対処する二人。だが

「クソ…このままじゃジり貧だ。」

「ですね…どうすれば?」

システィーナは息を切らしている。彼女は先ほどから何度も魔術を行使しており、マナ欠乏症が近い。グレンにかかっている【ウェポン・エンチャント】も持続時間はもう長くはない。

「白猫、俺が時間稼ぎをする」

「ッ!!先生!でも!」

「わぁってる。別に死んでお前のことを助けるだとかじゃねぇよ。セリカにも言っちまったしな。俺が言いたいのは、白猫、【ゲイル・ブロウ】を即興で改変してなんとかあの大群を止めれるような術式にしてくれねえか?威力を落として広範囲に、持続時間は長く、なるべく三節以内で、完成したら俺に合図して撃て、そしたら俺が何とかしてやる」

「っ!!で…できません、私にそんな高度なこと…」

「できると思ってるからお前に頼んでんだ。ていうかそれしか勝ち筋が見当たんねぇ」

グレンは信頼した目でシスティーナの方を見る。するとシスティーナは少し思案し…

「分かりました…なんとかやってみます」

「おっしゃ!じゃあ頼むぜ!」

といい、またポーン・ゴーレムを止めに行く

「うおおおおおお!!」

グレンがそう雄たけびを上げながら、システィーナは考えていた。

(やれるの…?本当に私に…?………いややるしかないんだわ、ここでやれなきゃ…みんな死ぬ…私は弱いまま…それは…嫌だ!!)

システィーナは覚悟を決め、詠唱の改変を始める

(《風──静かなる──》うぅん、これじゃ威力が…《嵐─奔放なる──》)

システィーナは弱い、誰よりも気丈に振舞うが、その反面、誰よりも臆病で弱い。だからこそアスラと波長が合ったのだろう。だが、そんな自分を変えたくて、乗り越えたいからこそ、システィーナは思考を止めなかった。

「──!!先生、できた!!」

「! 何節だ!!」

「三節です!!」

システィーナがそういうとグレンはシスティーナの方に戻り始める

「よし!!ぶちかませ!!」

「《拒み阻めよ──・」

グレンとシスティーナの距離が縮まる

「《──嵐の壁よ──・」

跳躍しシスティーナの傍らを転がりながら、グレンは懐から何かを用意する

「《その下肢に安らぎを》──!」

呪文が完成し、システィーナの両手から爆風が吹き荒れる。

名づけるなら黒魔改【ストーム・ウォール】

その風はポーン・ゴーレムの足を少し止めるが、じりじりとこちらに近づいてくる

「だめ!!先生!出力が少し─!!」

「大丈夫だ!!」

そういうとグレンは先ほど取り出した結晶のようなものをピンと親指ではじき空に飛ばす。そしてそれを横に薙いだ左手でつかみ、その掌をパンと両手で合わせる。

「《我は神を斬獲せし者・──」》」

ゆっくりと

「《我は始原の()(つい)を知る者──》」

システィーナは驚愕した

(あの呪文って──まさか!?)

「《()は摂理の円環へと帰還せよ・五素より成りし物は五素に・象と(ことわり)を紡ぐ縁は乖離(かいり)すべし・いざ森羅の万象は須く此処に散滅せよ・─》」

グレンは驚愕するシスティーナの前に躍り出る。

「──遥かなる虚無の果てに》──ッ!」

七節に渡って紡がれた、大呪文が今、完成する

「ええい!ぶっ飛べ、有象無象!黒魔改【イクスティンクション・レイ】──ッ!」

かつての魔導大戦においてセリカ=アルフォネアが邪神の眷属を殺すために使用した術を、グレンは発射した

 

「す…すごい…こんな高等呪文を…」

システィーナの眼前には信じられない光景がある。天井が完全になくなり上階の天井が見え、右手の壁はなくなっており外の光景が見える。そんな規格外の術を使ったのがグレンだということにも驚いていた

「─ご、ほ……っ!」

その時、グレンが血を吐いて倒れる。

「先生!?」

システィーナはグレンのそばに駆け寄り苦手な法衣呪文(ヒーラー・スペル)をかけようとする。

「ははは…ド三流の俺がこんな魔術を使っちまったんだ、マナ欠乏症になんのも当たり…前……だ……」

「先生…?」

グレンはシスティーナの後ろ…すでにもう【イクスティンクション・レイ】よって消え去った壁を見ながら

「白猫…後ろ見てみろ…俺の命運はどうやらここまでだったらしいな…」

「…え?」

システィーナが振り返ってみるとそこには全長10mはくだらないであろう鉱物の塊の巨人がいた。

「…は?これっていったい…!?」

「ははは…さすがにもう勝つすべが分かんねえよ…だから白猫、俺見捨ててさっさと逃げろ…」

グレンは乾いた笑いでシスティーナにそう言う。なるべく慌てないよう優しい言い方で

「…っ!!そんなのできるわけないじゃないですか!!」

「ここでお前が逃げねぇとダメだろ…!!俺はもう一歩も動けねえし、余力のあるお前がさっさと逃げろ…!!」

「でも──!!」

そう言ってる間にも巨人はこちらに右手を伸ばしてくる。もう避けられない速度でこちらに迫りくる。彼我、20メトラ

(ああ、すまねぇな…()()。俺、やっぱ《正義の魔法使い》になれなかったわ…)

グレンは諦め、走馬灯を思い浮かべる。

初めて魔術が使えて、セリカに大喜びで伝えに行った日、初めて自分が魔術で人を助けれた日……初めて…魔術で人を殺した日…そして……最愛の人が殺された、あの日

(ははは…くそみてぇな人生だな…でも悪いことばかりじゃなかったな…セラ、わりいけどそっち行くわ…)

グレンがそう考え、目を閉じると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズバァッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが切れる音、そしてそのまま五秒…十秒経っても意識がある。

不思議に思いグレンは目を開け、巨人の方へ向く

それを見た瞬間、グレンは驚きのあまり、声が出なかった。

それは人を模したような形であった。だが全長15mはあろうその体は、無機質であり背中についている羽のようなものからは紫色の粒子が出ている

その右手には剣が握られているが、その刀身からはまたもや紫色の、しかし中心は白く輝くビームのようなものが出ている。

左手には銃のようなもの…だが現存する銃とは見た目も機構も異なっている。

例えて言うなら機甲の天使、空から舞い降り、巨人の右手を切り裂いた。

「…なんなの…あれ…?」

 

 

 

アスラは追想していた。

 

『あぁ、魔術は凄ぇ役に立つさ…人殺しにな』

 

それはかつて、グレンがシスティーナに言い放った言葉だった。魔術に殺され、狂った彼の人生。それに対する答えはいまだ見つからず。

(確かにそうだ…魔術は人殺しにしか役に立たないかもしれない…けど…それでも…)

一人の《愚者》、アスラ=アダムスは追想する。そして、己の一つの真理にたどり着く

 

(守りたいものがあるから!!!)

 

アスラと機甲の天使は巨人の前に立つ。

一年前の出来事を思い出し、その時、感じた言葉を口に出す──

 

 

「なんで平和を壊さないと気が済まないんだ!!お前らはぁ!!!」

 

一人の少年、アスラ=アダムスはやがて、運命を切り開く剣となる




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