今原作が手元にない状態なので何か不都合があったら感想で言及しといてください
アスラは支給された服を着用し、地下から出て少し散歩に出かけようとした。地下から出るのはかなり簡単であり、何故か通れた厳重な結界をもう一度素通りして、地上につながる重い扉を開ける。そのまま中庭へと出て出口の方へ向かおうとする
水たまりに自身の姿を映し
(似合ってるかな。これ)
と己の姿を確認する。スーツのような制服はアスラの雰囲気と案外あっており大人しくアンニュイな印象を思わせる。
昼休みはもう終わっているが彼はこれから競技に出ることはないので特に問題はないだろうと考えた。
(まあ…皆から心配はされるだろうな…)
そのまま学院から出ようとすると、そのとき奇妙な集団がこちらへと話しかけてきた。
「貴様、アスラ=アダムスだな」
その集団は全員が体の急所を守る軽甲冑を身にまとっており、緋色に染め上げられた陣羽織を羽織り、腰には
「アンタら、まさか──!」
「王室親衛隊だ。貴様を国家反逆罪の容疑で処刑する」
「一応聞いとくけど…なんでだ…」
「我々は女王陛下の代弁者、このことは女王陛下の意志だ。貴様に開示義務はない。逆らわなければ、楽な方法で処刑させてやろう」
王室親衛隊に話は通じず、一方的にそちらの意見を押し通そうとしてきた。彼我の戦力は歴然、だが、相手はこちらを舐めている。それならば
「分かった。アンタらについていく──ふんっ!」
手を挙げるふりをして隊長格の男に一発掌底をかます。そして、一瞬で
「こいつ…!!殺せ!!我らは女王陛下の意志そのもの!!!女王陛下の意志に逆らうものは処刑せよ──!!!」
隊長格の男がそう叫ぶとアスラの行く手に数人の兵たちが立ちはだかる。
さっきのは兵たちがこちらを舐めてたから一発入れられたが、次はそうとはいかないし訓練された兵たちに魔術戦で勝てる道理はない。
「《狂える風よ・今ここにて・吹き荒れろ》!!」
アスラはグレンから教わった呪文の即興改変を【ゲイル・ブロウ】を用いて使った。
この改変の効果は自身を中心とした目くらまし程度の竜巻を発生させることだ。即興なので魔力の消費も多く出力も低いので威力は若干ビビらせる程度でしかないが、その隙をついて学院の外へと逃げ出そうとした
そのまま強化された身体能力でアスラは学院を隔てる塀を越えた。
「はぁっ…はぁっ…チクショウ…」
必死に路地裏を駆け抜け何とか少し休める場所へとやってきた
「はぁ…《我が姿見・覆い隠せよ・光の精》」
自身の姿を光の屈折により見にくくする【ライト・インヴィジブル】を己にかけ小休止する。
「先生の手も借りれないし…マジでどうすればいいんだ…」
恐らくルミアの方も何かまずいことになっておりそっちの対応に先生は手一杯だろう。
【機甲の天使】がなければ一般魔術学生と同程度の力しかない俺が単独でこの状況を切り抜けるのはかなり難しい。
「俺は…」
グレン先生のように経験はなく、ルミアのように強靭な精神もなく、システィーナのように魔術の才覚が優れているわけでもない。
あるのはネメシスを操縦する技術だけ
悩み──それは人を停滞させる言葉、次のステージに進めなかったときに出てくる言葉。
みんな、大小それぞれ悩みを抱えている。それを乗り越えれば人として成長できるもんだよ。だけど、俺は1年前からずっとこの大きな悩みを乗り越えられないでいる。俺に力さえあれば。と
だからネメシスが来たのかもしれない。だが、その力は
(でも…俺はみんなと一緒に居たい)
皆成長していっているのに俺だけ借り物の力でいきがってもいいのかと思った。
『過去にとらわれたままいじいじしてる先生は俺は嫌だ!』
少し前…俺が言ったことを思い出す。
(虫が良すぎるよな…)
…………皆本当に悩みを乗り越えているのだろうか。一生かかっても解けない悩み…きっと抱えているものも多いんじゃないか。一日で解決できそうな問題も一生ひきづってる人もいる。俺だって多分恐らく抱えてると思う………
だが、この世界は問題なく進んでいる。それは「一旦何も考えず、進み続けてみる」という行動を取ってる人が多いからじゃないか
(悩みに結論付けるのは…もうちょっとだけ後伸ばしでもいいかな。先生)
少年は悩みに目を背け
(この選択が…正しいかどうかは分かんないけど、今はこうしなきゃ…何も守れやしない)
地面が揺れる。大気が震える。
己の指輪が激しく光り、その内包されたエネルギーが熱く迸るのを感じる。
「そうか…俺たちはつながってたんだな…この指輪で」
指輪を
気が付けば目の前には無機質な機械の手をこちらに差し出している
「もう少し、乗せてくれよ。ネメシス!」
その名はアスラ=アダムス、ネメシスを駆る運命の少年だ。
【機甲の天使】の起動にセリカ=アルフォネアは気づいた。とてつもない強大な魔力のようなものが、ピリピリと肌で感じられる
(なんて馬鹿なことを…!)
当然である。帝国の最重要機密である【機甲の天使】…それが完全に公の場に出そうなこと、先日は何とか隠し通せたが今回ばかりは言い訳も不可能だろう。
隠蔽の魔術はできるだけ貼ってはいるが、勘のいいものならその存在に気づくことも少なからずあるだろう。
「ったく…半世紀も生きてない小僧はこれだから……!」
セリカもつい、声に出してしまうが
(そういう無茶なことをするところ…あいつの生徒から聞いたけど本当にグレンそっくりだな…!)
と、心の中でつぶやくのだった。
【機甲の天使】に乗り、そのコックピット席に座るアスラ
「よく見れば…ネメシスの
「機体内部のエンジン出力調整と共に
慣れた手つきで機体のOSをいじくりまわし、自身の使いやすいようにする。
「──システムオールグリーン。《翔べ!ネメシス》」
そういうとネメシスは背中のブースターを起動し再び天へ舞い上がる
先ほどより軽快に動き空を舞うネメシスは猛スピードで王室親衛隊が集まってる場所へと向かう
(ルミアのことは
王室親衛隊のエリート、アルダー・ベイスは悩んでいた。
彼は魔導工学を専攻しており、その実力と知識を認められ王室親衛隊に入った。女王のことも心底尊敬しており天職だと思った
だが、彼は【機甲の天使】ネメシスを知ってしまった。それは彼の魔導工学魂を心の底から燃え上がらせてしまった
(【機甲の天使】が本当にいるなら…その目で見たい!!!そして戦いたい!!)
しかし、彼は【機甲の天使】の存在を抹殺する立場。女王の意志を尊重するのは王室親衛隊として当然…だが…彼は疑問を抱いていた。今回の抹殺対象である少女…
本当に急だったので彼も驚いた。ご丁寧に写像画もつけられている。
(本当に良いのか…?彼女を殺しても…)
彼は根っから女王陛下を尊敬している。だが、こんな幼気な、何の罪もなさそうな少女が本当に国家反逆を起こしたのかと疑問に思っている
だが、時はきた。そんなことを考えているうちに彼はその少女とそれを守っている青年を追い詰めた
「悪いが、あなたには…死んでもらう」
彼のことは知っている。彼の位階にそぐわない強さと
彼が背中で少女を守った瞬間
『やめろおおおおお!!!』
その瞬間、体が二、三十メトラ吹き飛ばされた。今までに感じたこともないような衝撃、建物も吹っ飛ばされ、ここら一帯が更地になってしまいそうな衝撃
なるべく市民に迷惑をかけぬよう、人のいない土地を選び幸いにも死傷者はいなそうだ。
(だが、この感覚は…!!)
『もうやめろ、王室親衛隊。戦闘行為を直ちに停止し王女の処刑をなかったことにしろ!』
(ネメシス…!)
まさかその存在が実在したとは…夢や幻、せん妄の類の術かと思ったが、それも違う。本当にそこにネメシスはいる
今の衝撃はただ、ネメシスが地上に降りる際の推進機の"吹かし"だけで起きたことだ。そのエネルギー、恐ろしいと彼は思うが…
(過剰なエネルギーの逃がし方がへたっぴに思えるな…まだ完璧には操れていない…)
「【機甲の天使】の乗り手…文献や童話で見た際は目も見開くような大男が乗っていると見ましたが、それがまさか貴方のような年端も行かぬ少年だとは今も信じきれませんですよ…アスラ=アダムス?」
アルダーは高位魔術の使用を試みる。今の喋っている隙に距離を取り、魔術触媒を懐から取り出し、詠唱する。
「《金色の雷獣よ─》」
選んだ呪文は一人で大軍にも対抗できるB級軍用
周囲に電撃のフィールドを展開し、無差別広域殲滅を行う呪文。通常は唱えるだけでも超一流とされるB級軍用魔術だが、アルダーはそれを貴重な魔術触媒を用いることで三節まで短縮することが出来た。虎の子の物だが、今ここで使わない以外にどこで使うか、迷わずその触媒を使って行使する。
『くっ…!!ルミア…!』
(やはりだ…乗り手は人を殺せない。甘いやつだ)
半ば賭けだったが、ネメシスを盾にし広域殲滅呪文を唱えたことは正解だった。乗り手が瞬時に人を殺せるような精神を持つ人間だったら、今のうちに殺されて終わりだが乗り手は資料で見た通りただの学生。人を殺すのに抵抗感を抱いている。それなら唱える隙くらいはできる。
そして、【インフェルノ・フレア】などの他のB級魔術でもないのも正解だ。確かに【インフェルノ・フレア】だったらネメシスの装甲にキズはつけられる可能性はあるし、万が一乗り手のいる場所にピンポイントでクリーンヒットすれば殺せる可能性もある。だが、それは低い確率だ。傷をつけたところで、マナ・バイオリズムがカオス状態に入った隙をあの男に狩られればこちらは殲滅される、しかも任務の遂行もできない。
結果的には即座に防ぐ方法がない広域殲滅呪文を唱えたことが正解だった。
(私が殺されようと、女王の意志は遂行される─!)
「《地を疾く駆けよ》──!」
「──時の頚木より・解放されたし》─!」
勝ちを確信した瞬間、あちらの男から別の呪文を唱える声が聞こえた
(【タイム・アクセラレイト】─!?馬鹿な─!)
【タイム・アクセラレイト】──自身に流れる時間を加速させることによって、一定時間爆発的に加速することが出来る軍用魔術であるが、術の効果が切れると同時に加速した分、減速してしまうデメリットもある。それゆえあまり使われることがない。だが、あの男は軍時代の持ち前の感と一節目を唱えた瞬間の判断で【タイム・アクセラレイト】を用いてこちらの詠唱を妨害しに来た。
(末恐ろしい相手だ…詠唱が間に合わない─!)
「《瞬》ッ!」
男はすぐさま【プラズマ・フィールド】を中断し【ラピッド・ストリーム】による建物を使った立体機動を始める。
(【タイム・アクセラレイト】はあくまで疑似的に速度を高めているようにする術…術者そのもの身体能力を上がらずこちらが機動力上は有利)
この間に、殺害対象はネメシスによって守られており、味方の援軍による殺害を期待するのは不可能。ひとまず男は退避を選択し、相手が油断する瞬間を待つことにしようとする。だが、
(お前の命はここで貰う!!)
【タイム・アクセラレイト】後の反動によってあの男はひどく鈍重になっている。
「《雷光よ》─!!」
『《大気の壁よ》─!!!』
限界まで省略された【ライトニング・ピアス】であの男を貫かんとするアルダーだが、ネメシスから発せられた呪文、その効果によりあの男に風穴があくことはなかった
(くそ…ネメシスの魔術強化能力か──!!)
アスラが唱えた防御呪文、【エア・スクリーン】が【ライトニング・ピアス】を通さない。アスラの学生レベルの腕で、防ぐことは到底できなかっただろうが、ネメシスの効果により実現できてしまった
「退避!!……なんだっ!?」
アルダーは、殺せなかったことを確認しそのまま壁を駆け退避しようと思ったが、目の前には淡い光を放つ壁のようなものがあった。
(魔術の類…!いや、ネメシスの──!!)
よく見るとその光の壁が発生地点をみると、ネメシスの背部にあった箱のような物体がその光の壁を出していた。、
「もうやめに…しよーぜ!!!!」
その言葉を聞いた瞬間、アルダーの意識は完全に飛んだ
「はぁ……強すぎだろ…こいつ…」
『それだけルミアが重要ってことですよね』
「…ったく…こんなかわいい少女追いかけまわして…王室親衛隊様はロリコンかっつーの」
「あはは…とりあえず…一旦は危機を乗り越えたってことでいいんですよね…?」
「まぁそう考えたいけどな…
先ほどの敵は中々に優れた者だった。状況判断力、身体能力、魔術の知識、腕。実際にアスラがいなかったら死んでいた可能性もあるだろう。
「というよりアスラお前…まーた勝手に呼び出したのかよ…」
『まぁ…みんなを守らなくちゃって思ったら…そんな感じになって…照れ臭いですけど』
「…それが学院にばれたら俺減給まったなしだぞ!?」
減給どころかクビの可能性も現在発生中である
「ただでさえ俺金ねぇのに!!」
『それに関してはほんとになんかすんません…後日とかに美味い料理振舞うんで』
「覚えとけよそれ!…まあとりあえずだな、今の状況はこんな感じだ─」
一段落ついたところでグレンはこの騒動をどう解決するか、アスラに話し始めた。
今更なんですが台詞入れるときに空白入れた方がいいですかね…?