ルパンと次元、フランケンの3人は部屋から出た後、地下を目指していた。瘦せ細ったフランケンを、最初はどちらかが背負うか、せめて駆け足程度で進もうと提案したが、当の本人がそれを断り、なんなら2人と同じかそれ以上の速さで廊下を走っている。
「お前…部屋ン中でトレーニングでもしてたのか!?やけに早えじゃねえか!」
「そんなことはどうでもいいでしょう!次元!それよりルパン、地下にある兵器は、我々が回収できるほどの量じゃありませんよ!?どうやって盗む気なんです!それに予告状にあった、お宝とは…!」
「そこんトコは大丈夫だっつ~の。し~っかり考えてあるの…サ!…おおっと、ここだここだ」
「ルパン?ここはお父さんの部屋ですよ。急ぎましょう」
ルパンがとある部屋の前で足を止め、それに続き2人も足を止めた。
この拠点が爆発するまでどれくらい残されているか分からないうえに、ここにジョージが戻ってきているかもしれない。そう考えると、ここで足を止めるのは絶対に得策ではない。
それをおかまいなしに部屋の扉を開き、大胆にも部屋に真正面から侵入…というより、入室と表現した方がよいほど、堂々と入っていった。
「だぁ~じょぶだっつーの。ったく、お前は
「なんですって!!!」
「デケぇ声上げるなチビ。今頃お前の親父は、おトモダチと地下倉庫で仲良くお話し中だ…」
「だからそのチビって言うのヤメロ!!」
次元に再びチビと呼ばれ、頬を膨らませ声を荒げるフランケン。
父に友人と呼べるような関係の人間は、今の一度も見たことは無い。それに、この2人は絶対に何か揶揄している。と、すれば。
「そうか、兵器の取引相手…!事前にこの拠点の破棄を知らされていた連中の一部が、その前に買収しに来た…というトコロですか…」
「ア・タ・リ…!その告知に俺もちょ~っとばかし手を貸したからなあ。今頃アポ無しでお得意サマに突撃されてるだろうよ。んで、お留守中にお宝を頂戴させてもらう、ってワケ…」
そう言ってズカズカと部屋中を散策するルパン。それに続き、次元はその辺にあった椅子に腰をかけ、フランケンは父の部屋になにがあるのかと、じろじろと部屋の隅々まで観察していた。
やがてジョージの仕事机だろうか。それにルパンが目を付け、引き出しを開けてみると。
「あったぜ…コイツだ」
引き出しを開けると、ゴツイ金庫が顔を表した。
見つけたか、と次元が近寄り、フランケンも何があったんだ、と近寄って顔をのぞかせる。それと同時に、カチリ、と音を立てて金庫の鍵が開いた。
「えっ、もう開錠したんですか?」
「ヌフフフ、俺にとっちゃこれぐらい、ど~ってコトないってモンよ」
「御託はいい、さっさと開けろよ。ったく、俺にお宝が何なのか教えず、ここまで勿体ぶりやがって」
「まぁそう言うなって次元~。さぁて、御開帳と…アラ?」
「ン?」
「どうしたんだ?オイ」
嬉々として金庫を開けるが、ルパンの反応がオカシイ。ごそごそと金庫の中を漁るようなしぐさをした後、冷や汗を垂らしながら顔を上げ、2人の方を向くと。
「ワ、悪ぃ、無え」
「ナニ!無いだと!!ふざけやがって!!」
次元がルパンに掴みかかり、がくんがくんと首を揺らす。
「俺は反対したっつーのに、お前のゴリ押しだけで決めやがって!それでお宝は無いだと!?フザケンのも大概にしろ!」
「ワ!ワ!ワ!お、落ち着けって次元…!どうせジョージのやつが自分で持ってるに決まってる…!俺の首もキマっちゃってる…!!嬢ちゃん、見てないで助けてって…!」
「…アッ。じ、次元。その辺にしておきましょ。死んじゃいますって」
フランケンが次元を止めようと肩を掴む。
推定小学低学年と男子中学生では到底止められるわけがないし、次元も本気でやっているわけではない。すぐに次元は手を放してくれるだろう、とルパンが思ったつかの間。
「いでででで!!!お前何しやがった!!!」
次元が苦痛の叫びをあげ、肩にかかったフランケンの手を振りほどき、あまりの痛さで咄嗟にリボルバーの銃口を彼女に向けた。
「次元!よせ!おい嬢ちゃん、お前なにしたんだ?」
「な、何をって…あなたがなんとかしろって言ったんですよ…」
「油断するなルパン!このチビ、俺の肩を砕こうとしやがった!」
肩を砕く。次元からその言葉を聞いて、自分の耳を疑った。
目の前のフランケンは当然素手で何も持ち合わせていない。人間の肩を砕きかねないほどの握力を備えていれば、また話は変わってくるが、とてもそうには見えない。なにがなんだか、と困惑しているルパンらをよそに、フランケンは自分の掌を見つめ、手を握ったり開いたりを繰り返している。やがて、あぁ、と何かを納得したようだ。
「す、すみません。調整をミスりました」
「調整ぃ~?」
次元がオウムのように言葉を繰り返すと、見せた方が早い、とフランケンはいきなりダボダボのTシャツとジーパン。そしていつの間にかつけていた手袋を脱いだ。
それに何をしてるんだ、と慌てて止めようとするルパンと、警戒を解かない次元。すると、そこには少女のハダカではなく、やけにゴツいプロテクターと、その下には配線か何かが細かく通っているインナーが見えた。
「な、なんだあそりゃ」
「介護用アシストスーツ…。寝たきりになった老人や、怪我で満足に動けなくなった人を世話する用の、いわゆるパワードスーツの試作機です。見ての通り、私は貧弱な体をしてますから…。生活に影響が出ない程度にとどめていたんですが…」
「咄嗟のことだったんで、本気で止めにかかるために調整をミスった、ってワケね…」
「成程、お前があれだけ早く走れたカラクリはそれか…!」
「ダボついた服は、それを隠すためでもあったのか…」
リボルバーを仕舞い、いちちと肩をさする次元に、すみません、と謝罪するフランケン。それとは別に、冷静に分析するルパン。
ルパンと次元のじゃれ合いを、彼女は本気で捉えてしまった故に起こってしまった事故だった。
それに、わざわざ隠す必要があるのか。誰からそのスーツを隠しているのか。そもそも隠すぐらいなら作る必要もないのでは。腕を組んで考えに耽るルパンを次元が呼び戻し、これからどうするか尋ねる。その間に、フランケンは脱いだ服を着なおし、手袋も再び装着した。
「で、ルパンよ。これからどうするんだ」
「…地下へ行くぜ。そんで兵器とジョージが持ってるお宝と、ダブルで頂戴する。恐らく地下へ集まってる今が最大のチャンスだ。行くぞ、次元、嬢ちゃん」
「アイヨ…!」
「りょ、了解です」
部屋を出る2人に続こうとするルパンだが、棚に飾られていた2枚の写真が目に留まった。
赤ん坊と、それを抱き寄せる母親と思われる女性。そして女性の反対側の部分にも人が写っているのだろうが、その部分は破られているという、奇妙な写真だ。
顔を寄せてじっくりと観察していると、次元から催促される。さっと写真を懐に仕舞うと、急いで2人の後を追った。