ルパンファミリーのフランケン   作:無悪岩

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8(終)

 数日後、東京のとある中学校にて。真昼間の屋上に、授業をサボったであろう、学ランを着たルパンと次元は2人並んで寝っ転がり、煙草を吸っていた。

 

 

「…で、ルパン。あの嬢ちゃんはどうなったんだ」

 

「今のトコ、ウチに居座ってるけど…。行くところもねえだろうから、しばらくやっかいにならねえか、って聞いたんだっけんどもよぉ。アイツ遠慮してんのか、断りやがったんだ。ツテが無いのに強がりやがってよ。それで、見かねたウチの家政婦のしのぶさんがアイツの親戚を探してくれたんだ」

 

「…で、見つかったのか?」

 

「それが驚くぐらいアッサリ…!しかもフランク博士の弟だ!以前から兄一家が行方不明だってもんで、捜索願いも出していたらしい。おかげですんなり見つかったって言ってたぜ。弟さんも、まさか他所の国にいるだなんて予想してなかったらしく、半ば諦めてたんだとョ」

 

 

 それは良かったなぁ、と手を後ろに組んで、空を眺める次元。仕事のアガりは1銭も無かったが、それでも彼女を助けられたのなら、まぁそれはそれでよいか、と穏やかな気分にさせた。

 フゥ、と息をつくと、仕事のアガりといえば、とひとつ思い出した。

 

 

「そういやぁルパン、お宝って言っていた、あの懐中時計のことなんだが…」

 

「ルパンくん!ここにいたのか」

 

 

 次元が懐中時計について聞こうとするが、屋上の扉が音を立てて開き、同級生の男子がやってきたことによって、遮られた。彼は次元と目が合い、委縮してしまう。

 

 

「…あ。次元、大介…も」

 

「…?俺に何の用だ?」

 

「あ、あぁ。き、キミらにお客さんだよ」

 

 

 客とは。寝たまま上半身を起こし、同級生の後ろに目をやるが、誰もいない。カチコミもしないあたり、次元関係の客でもなさそうだ。次元は万が一に備えて、腰に仕舞ったマグナムに手を伸ばす。すると、同級生の彼の後ろから、聞いたことのあるような声が聞こえた。

 

 

「…授業をサボって、しかも校内で喫煙とは。良いご身分ですねえ」

 

 

 そこには、フリルのついた、可愛らしいワンピースを着た少女がいた。

 見たところ10歳ほどだろうか。なぜこんなガキが中学校にいるんだ、と次元は疑問を抱きつつもマグナムに伸ばした手を離した。

 

 

「案内助かりました、ありがとうございます」

 

「そ、そう。じゃあ俺はこれで!」

 

 

 次元に大層ビビリ、急いで来た道を戻る同級生に、少女は半目で次元を睨んだ。

 

 

「…次元、彼に何をしたんです?」

 

「あぁ?何もしてねえよ。つーか、誰だテメーは」

 

「…いくら何でもそりゃないでしょ」

 

「そういやあ、次元はまだこの姿のフランを見たことなかったなあ」

 

「ナニ!これがあのチビだっつーのか!?」

 

 

 見違えた、ってモンじゃあねえぞと目を丸くする次元と、またチビって言ったな、と怒りを露にするフラン。

 

 

「まぁまぁ次元…。で、わざわざここまで来て、どーしたってんだ?」

 

「実は、今日の夕方の便で、おじさまの所へ向かうことになりました。…数日間、お世話になりました。あなた方に助けていただいたことは、決して忘れません」

 

 

 そう言うと、深々と頭を下げる彼女に、よせやい、ガラでもねえ、と少しだけ照れる2人。

 

 

「…ところで、お前の持ってるお宝の懐中時計。ジョージのヤロウは、なんであんな厳重に仕舞っておいたんだ?」

 

 

 その懐中時計は元々ジョージのデスクの金庫に厳重に保管されていたものだ。しかも、拠点を爆破するとなってからは、本人がしっかりと持っておくほどのもので、ルパンも最初から目を付けていたようなシロモノ。お宝と称するには、フランが生まれた時間を示している、だけでは説明がつかない。

 

 

「あぁ、そりゃな…。嬢ちゃん、どうだった?」

 

「はい。この時計は、ステンレスやチタンといった、既存の金属で造られたものでありません。恐らくまだ世に出回っていない、新元素によって造られたものです」

 

「しんげんそぉ?そんなモンがお宝なのかねぇ…」

 

「人によっちゃぁ、宝石の何倍も価値のあるもんさ。もし拳銃の弾に加工できて、それが戦車の装甲をも貫ける…ってなったら、大事だろ?」

 

 

 新元素と聞いて、ハテナマークを頭に浮かべる次元だったが、ルパンが補足を入れてくれたおかげで大体は理解できた。

 

 

「成程な。ジョージはそれを分かってて、厳重に保管していたと…。ン?じゃあなんでヤツァそれを加工したりしなかったんだ?それこそ、分解でも何でもできただろうに」

 

「さてね…。もしかしたら、それが何でお宝だなんて言われてるのか、分かんなかったんじゃねえの?」

 

 

 そんなことあるかぁ、と次元は否定しそうになったが、ジョージの様子を見た限りでは、そうとも言い切れなかった。そんなもんかねぇ、と一人で納得する。

 

 

「オット、ハナシがそれちまったな。…まぁ、達者でな」

 

「おじさんのトコって、北方の国なんだろ?風邪とか引かねぇよう気ィつけろよな~」

 

 

 次元とルパンはそう言い、ヒラヒラと手を振る。しかしフランの方はまだ何か用があるのか帰ろうとせず、少しまごついた様子で2人に頼み込んだ。

 

 

「あの…それもそうなんですが、もうひとつだけ、わがままを聞いてもらってもいいでしょうか」

 

「俺達は高くつくぜ?」

 

「まぁいいじゃないの次元~。なぁんでえ、言ってみな」

 

「写真を…撮っていただけませんか?」

 

 

 写真と聞いて2人は一瞬何のことだ、と顔を合わせるが、随分可愛らしいわがままだ、と快諾する。

 ルパンと次元は体を起こし、立ち上がる際にルパンはよっこいせ、と呟いたのをフランは聞き逃さず、思わず、おっさんクサとこぼしてしまった。幸い、ルパン達には聞こえていなかったようで、フランはほっと胸を撫でおろす。

 

 

「ちょっと待ってくださいね…タイマーをセットしますから」

 

 

 

 そう言うと扉の裏からカメラと三脚を取り出してセットする。すると、後ろからルパンがカメラを取り上げた。

 

 

「ちょ、ちょっとルパン?」

 

「い~から。ホレ、もっと寄らねえと写んねえだろ?」

 

「オメーは小せぇから、真ン中だぜ」

 

 

 3人はぎゅっ、とカメラに納まるよう身を寄せる。ぐぇ、とフランが軽く潰されそうになるが、構わずルパンはカウントダウンをし、シャッターを切った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「…というのが、私と彼らの出会い、いわゆるファーストコンタクトってヤツなんです」

 

「随分とステキな出会いなのね。まるでおとぎ話みたいだわ…」

 

 

 とある古めの一戸建てのリビングにて。

 メガネをかけ、タンクトップにショートパンツとラフな格好をした銀髪の片目が隠れたミディアムヘアの女性が椅子に逆座りし、楽しそうに昔話を語っていた。机を挟んで反対側に足を組んで上品に座っている、レディースシャツとミニスカートを着こなし、ブロンドの美しい髪をした女性は、彼女の話に耳を傾けていた。

 

 

「そう!本当におとぎ話のようで…。そして私が大学を卒業し、彼らと再び出会ったのも、まさに運命!次元なんかその頃から髭をしっかりたくわえていましてね、今度は私が誰だか分からずに…って、聞いていますか?不二子?」

 

 

 逆座りの姿勢を正そうとせずに、更に昔話を続けようとする彼女に対し、不二子と呼ばれた女性は彼女の後ろの方へと目を向けていた。

 

 

「ええ、聞いているわよ…。で、このおとぎ話は何点だったかしら?ルパン…?」

 

「ゲッ!!ルパン!?」

 

 

 不二子がルパンの名を出すと、銀髪の女性は額に冷や汗を浮かべ、さび付いたロボアームのように鈍い動きでゆっくりと振り向いた。

 そこには、流し台にもたれかかり、買い物の帰りだろうか、いっぱいになった大きなビニール袋を2つ足元に置き、赤いジャケットをまとったルパンがいぶかしげに彼女らへと顔を向けていた。

 近くの椅子には上下を黒の、いつものファッションで固めた次元大介が背中を向けて座っており、背中からでも不機嫌になっているぞ、という気配を感じ取った。

 

 

「あ、あはは…。早かったですね、おかえりなさ…イデッ!」

 

「な~にがおかえりだっつーの!俺らが晩飯の買い出しに行ってる間に、不二子にあることないこと吹き込みやがって!」

 

「三流以下の脚本だな…。もうちょっとなかったのか?」

 

 

 ルパンが軽いチョップを脳天に振り下ろし、制裁を下す。思ったよりも痛そうにしていたので、それを見て次元の溜飲が下がる。

 

 

「…やっぱり。そうじゃないかと思ってたわ」

 

「え、えぇ~…、そんなぁ。最初からわかってたんですかぁ…」

 

「物語調すぎたのよ。あなたのオハナシは…。まさか、フランク・シュタインハートの孫っていうのも、ウソじゃないでしょうね?」

 

 

 不二子の懐疑的な態度に、それまで頭をさすっていた両手を大きく広げて、まさか!と大声で否定した。

 

 

「私の祖父はかの天才フランク・シュタインハート!そして私は正真正銘その孫娘!フラン・シュタインハートなのです!それはウソじゃありません!」

 

「それ"は"ウソじゃない、ねェ…」

 

「…あっ」

 

 

 メガネをクイとあげ、得意そうな顔をして立ち上がるが、即座にルパンに指摘されてしまう。

 

 

「ンなことより、サッサと飯にしようぜ。今日は仕事も上手くいったしなぁ。パァーッとすき焼きだ!」

 

「アラ、いいじゃない。ルパン、早く作ってね。もうおなかペコペコなの」

 

「ヤッタ!お肉大好き!早急にお願いしますね!」

 

「オメーも手伝うんだヨ…!ウソついた罰だ!…アッ、す~ぐ作るから、不二子ちゃんはそこでごゆっくり…」

 

 

 なんで私だけなんだ、次元も手伝えとブー垂れながらも、ルパンと一緒に素直に台所に向かうフラン。

 やれやれといった風に不二子は足を組み替え、ふと壁に目をむけると、そこには。

 

 

「あら…。ふふっ」

 

 

 学校の屋上で撮ったのであろう。かつての3人の白黒の写真が、引き伸ばされて額縁に飾られていた。

 




 ルパン一味としての仕事がしばらく無く、不貞腐れていた私ことフラン・シュタインハートの元へ仕事の連絡が入る。

 相手はルパンではなく…峰不二子!

 珍しいこともあったもんだと話を聞くと、どうやらトリックダイヤと呼ばれる謎の多い宝石を手に入れるため、力を貸してほしいとのこと。

 なんかアヤしいなぁ、と勘繰りつつも、ルパンにも手伝ってもらうの一言で快諾!推しと一緒に仕事できる機会なんて、いくらあっても足りませんからね!

 え…?お宝を盗むんじゃなくて、返す…?ど、どういうこと…!?

 次回【お宝返却大作戦】!

 チャンネルは決まっちゃいましたねぇ。
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