Blue Archive Evolution 青春を抱く双翼の星   作:ゲーマーN

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C-1-1-9 Inevitable Struggle

 ――アビドス市街地*1

 

「さっさと諦めて、学校渡しちゃいなよぉ~!」

 

「そんな訳にはいきません!」

 

 固有武器のリトルマシンガンV。その名の通り、MG(マシンガン)に分類される大型銃。『リトル』という名前とは裏腹に、その重量は本体だけでも18Kgにもなる。それを軽々と振り回す姿からは、十六夜ノノミのスペックの凄まじさを窺い知ることができるだろう。

 然もありなん。アビドス自治区の過酷な環境で鍛え抜かれた肉体と、補給もままならない状況で幾度もの戦闘を潜り抜けてきた戦闘センスは伊達ではない。

 

「くふふ~……カヨコちゃん、今だよ!」

 

「えっ!?」

 

「……ナイス、ムツキ」

 

 ノノミの気が逸れた隙を突き、カヨコは一気に間合いを詰めた。右足での後ろ回し蹴りから、続けざまに一発、二発、三発と弾丸を撃ち放つ。ノノミもMG(マシンガン)の銃身で応戦するが、ジリジリと後退を余儀なくされる。接近戦の技量では、明らかにカヨコが上回っていた。

 以前の戦いでノノミの危険性を身に沁みて理解していたカヨコは、真っ先にノノミを潰すべく、自ら(相手)得意(苦手)とする間合いに相手を引きずり込んだのだ。

 

「うあっ……!!」

 

 至近距離からの連射で畳みかけられ、ノノミは完全に防戦一方だ。持ち手とガングリップを両手でしっかりと握り込み、銃身を身体の前に構えて防御に徹するしかなかった。尤も、その状況を見過ごすような仲間たちではない。

 

「ノノミ先輩から離れなさいっ!!」

 

 セリカは、ノノミが接近戦に巻き込まれている間に位置関係を調整しており、射撃の邪魔にならないように彼女を援護できる距離に陣取っていた。ここぞとばかりにAR(アサルトライフル)を乱射する。

 しかし……

 

「嘘でしょ!?」

 

 視界の外、死角からの攻撃にもかかわらず、カヨコはまるで見えているかのように正確に射撃を回避してのけた。そればかりか、セリカに向かって手榴弾を放り投げる。ドカァン!! 手榴弾はセリカの近くで爆発し、周囲に粉塵と破片を撒き散らす。

 

『セリカちゃん!?』

 

「セリカ!!」

 

「大丈夫、心配しないで!」

 

 通信機越しにアヤネの声が響く中、セリカが粉塵の中から顔を出す。爆発で多少のダメージを受けたものの、そこまで深刻なものではない。安堵の息を漏らすシロコの目の前を、タァン! と一条の閃光が通り過ぎる。

 

「!」

 

「うふふっ、次は当てるわよ」

 

 思わずそちらに目を向けると、そこにはSR(スナイパーライフル)を構えるアルの姿があった。アルは楽しげに微笑むと、スコープ越しにシロコに照準を合わせる。その狙いは正確で、シロコの額の中心を確実に捉えていた。

 

「それは通さないよ!」

 

 盾をかざし、ユメはシロコを守るように摺り足で前進する。彼女のHG(ハンドガン)から放たれる弾丸は、アルの狙いを狂わせるには十分な威力を持っていた。銃口の矛先が逸れた刹那、その一瞬の隙を逃さず、シロコは危うげなく体勢を立て直す。

 

「次はこっち……!」

 

 シロコは迎撃の弾丸を回避しつつ、アルとの距離を縮めていく。アルの武器はSR(スナイパーライフル)、至近距離での撃ち合いなら、AR(アサルトライフル)を使うシロコに分がある。とはいえ、自らの弱点を把握していないアルではない。その程度は対策済みだ。共有する感覚を通し(・・・・・・・・・)、仲間の1人に指示を出す。

 

「C4」

 

 ドカアアァァァァン!!

 

 爆風に吹き飛ばされたシロコは、何度も地面を激しく転がりながら、必死に体勢を立て直そうとする。しかし、ようやく転がる勢いが収まり、顔を上げたシロコの目の前には――

 

「クレイモア」

 

 ドカアアァァァァン!!

 

 連続爆破。第一の爆破により敵が吹き飛ぶ距離すらも計算に入れ、本命となる第二の爆破で確実に止めを刺す。便利屋の平社員・伊草ハルカが得意とする、爆破による連続攻撃だった。

 本来であれば、今の連続爆破でシロコは戦闘不能に陥っていただろう。如何に頑丈な肉体を持つキヴォトス人とはいえ、これほどの至近距離で爆破されては耐えられるはずもない。故にこそ、アルたちの計算を狂わせたのはシロコではなく、別の人物だった。

 

「……ふぅ、間一髪だね」

 

 砂埃が舞い上がり、アルたちがシロコを仕留めたと確信した直後、粉塵を突き破って一つの影が飛び出した。言うまでもなく、その正体は梔子ユメだ。彼女は盾を前に構え、爆発を正面から防ぎ止めたのである。

 元々、争い事がそこまで得意ではない彼女だが、防御の一点においては彼女の右に出る者はそうそういない。特に仲間を守るための盾としての役割を果たす時、彼女の真価は発揮される。

 

『……押されてますね』

 

「(……ただ連携の練度が高いというだけでは説明が付かない点がある)」

 

 戦闘の推移を見守っていたハクノは便利屋に違和感を覚えていた。彼女たちの実力はアビドスの生徒たちとそれほど大きくかけ離れてはいないだろう。しかし、戦闘経験の差か、或いは両陣営の間に単純な実力差ではない何かがあるのか、僅かに連携の練度が高すぎるように感じたのだ。

 まるで……互いの意識感覚をリアルタイムで共有しているかのような。そして、似たような話をつい最近聞いた覚えがあった。

 

「……!! そうか、戦術リンク……!」

 

「流石は先生ね。……そう、私たちの強みは連携にある。それをさらに引き上げる戦術リンクがあれば、龍に翼を得たる如し。どんな依頼も必ず成功させてみせる、それが便利屋68よ!」

 

 戦術リンクの強みとは何か? それは『情報共有』にある。お互いの位置や状態、敵の情報や戦況、それに加え、より詳細で正確な『行動』までもリンクして共有できる。それによって、咄嗟の機転による連携もスムーズに行えるようになる。

 突出した『個』にこそ敵わないものの、連携を強みとする便利屋68にとって、個々の力量を大きく超えた高度な連携すらも実現可能とする戦術リンクは、何よりも強力な武器だった。

 

「(……確かに、戦術リンクがもたらす恩恵は絶大だ。どんな状況下でもお互いの行動を把握して最大限に連携できる……まさに戦場における『革命』と言ってもいい)」

 

 アビドスと便利屋68、双方の練度を比べれば間違いなく便利屋に軍配が上がるだろう。しかし、それを差し引いても便利屋の優位性は戦術リンクの一点に集約される。彼女たちの実力も相まって戦況はやや便利屋側に傾いており、アビドス側は厳しい状況にあると言わざるを得ない。

 このままなし崩し的に追い詰められることだけは避けなければならない。そう考えたハクノは、即座にアビドスの生徒たちに指示を出す。

 

「なら、それを前提に策を組めばいい! ノノミ、まずは地雷処理! 地面に弾幕を張って!」

 

「お任せください!」

 

 ノノミはMG(マシンガン)を扇状に薙ぎ払うように撃ち放ち、弾丸を地面にばら撒く。路上に仕掛けられた爆弾は次々と爆発し、爆風と砂埃が舞い上がる。彼女の迅速な対応により、敵が張り巡らせた罠は無力化された。これで比較的安全な移動経路を確保できたが、まだ油断はできない。

 

「ユメが先頭! シロコとセリカは両翼を固めて! 4人全員で一気に敵陣へ突撃だ!」

 

 砂漠の槍(デザートランス)――盾役1人を矢面に立て、残りの3人を後詰として配置し、先頭の1人が敵の攻撃を集めて味方を守る陣形。盾役が敵の注意を引き付けることで、後詰の3人が攻撃に専念でき、結果的に効率的な戦闘が可能となる。常に1人が敵の攻撃に晒されるリスクもあるが、高い防御力と耐久能力を誇るユメであれば、この陣形での戦闘にも十分に耐えられるだろう。

 ユメが前方に立ち、シロコとセリカが両翼となり、アビドス側は隊列を組んで突撃を開始する。

 

「はぁああぁっ!!」

 

「くうっ……!!」

 

 先頭を進むユメは、敵からの集中砲火をその盾でしっかりと受け止め、全身に響く衝撃に耐えながらも一歩ずつ前進する。弾丸が次々と盾に当たる音が鳴り響くが、ユメは決して足を止めることなく、後続のシロコたちが攻撃に集中できるよう隙を与えないように進み続けた。

 ――激突。敵前衛のハルカに身体ごとぶつかり、勢いのままに弾き飛ばす。しかし、ハルカもタダでは転ばない。盾で殴り飛ばされながらも、すかさずSG(ショットガン)の銃口をユメに向け狙いを定める。

 

 ダンッ!

 

 そして、ハルカは引き金を引いた。爆音と共に撃ち出された弾丸がユメに――

 

 カァン! タァン! タァン! タァン!

 

 ――命中する直前、ユメの盾が間一髪で割り込み、全ての弾丸を防いだ。続いて、間合いをゼロにまで詰めたユメが逆にハルカの胴体に銃撃を叩き込み、彼女の華奢な身体を吹き飛ばす。

 

「ハルカちゃん!?」

 

「あんたの相手はこっちよ!」

 

 仲間の被弾に動揺したムツキに、セリカが素早く仕掛ける。両手で愛銃を構え、ムツキに向かって発砲しつつ距離を詰めた。ムツキは咄嗟に身を引くが、セリカの攻撃は執拗で逃走するのを許さない。状況を立て直す余裕すら与えず、彼女は一気に圧力をかけていく。

 

「これ以上好きにはさせない!」

 

「急に動きが変わった!?」

 

 正面から迫ってくるシロコに向けてカヨコは銃弾を放つも、シロコは鋭く横に身を翻す。その背後には、固有武器『リトルマシンガンV』を構えたノノミが静かに待機していた。

 

「……っ!?」

 

「大人しくしてください!」

 

 MG(マシンガン)の掃射がカヨコを襲い、回避が間に合わず被弾してしまう。辛うじて被弾を最小限に抑えたものの、そのダメージは決して軽いものではなかった。どうにかノノミの元へ迫ろうとするが、彼女の弾幕は分厚く、とても近づけそうにない。

 

「戦術リンクが有効に働くのは集団戦……それなら、4対4から1対1を4つにすればいい!」

 

 敵味方が入り乱れる混戦において絶大な効果を発揮する戦術リンクだが、裏を返せば、1対1の戦闘では然程役に立たないというのが欠点である。敢えて集団行動の利点を捨て、4人を個別に戦わせることで、その欠点を突く――それが、ハクノの狙いだった。

 果たして、目論見は見事的中し、戦況はアビドス側に有利に傾いた。前衛の守りを失い、無防備となったアルへ向かって、シロコが一直線に駆け抜ける。

 

「社長!?」

 

「アルちゃん!?」

 

 カヨコとムツキが思わず叫ぶ。このままではアルが危ないことは理解していたものの、2人も自分たちに攻撃を仕掛けてくるノノミとセリカに対処するだけで精一杯だった。

 

「誰が相手でも私たちは自分の信念を曲げはしない! 観念して負けを認めなさい!」

 

「それは無理!!」

 

 互いの頭部に銃口を突き付け、シロコとアルは同時に引き金を引いた。両者ともに敵の弾丸を避けようともしない。一切の躊躇いなく弾丸が発射された。

 パァン!! 頭部を撃ち抜かれる刹那、2人はそれぞれ左右に飛び退き、改めて銃を向け合う。

 

「……悪かったわ」

 

「!」

 

「だけど、私たちにも意地がある。……ねえ、この勝負の行く末はどうなると思うかしら?」

 

「そんなの決まってる」

 

「ふふっ、確かに決まってるわね」

 

「「私たちが勝つ!」」

 

 互いに勝利宣言をし、2人は再び同時に引き金を引いた。銃弾は互いの頬を掠めていき――

 

 ヒュオオオオーーー!!

 

 突然、すべてを台無しにする音が鳴り響いた。反射的に空を見上げた一同が目にしたのは、自分たちに降り注ぐ弾頭の雨だった。鋭い音を立てて迫るそれに、場の空気が一瞬凍りつく。各々が身を守るべく動き出すが、その速度は遅すぎた。次の瞬間、衝撃が全てを――

 

 

 

「――神秘再現、コード名『アビ・エシュフ』」

 

 

 

 ――全てを飲み込む。但し、それは生徒たちを、ではなく、降り注ぐ弾頭を、だ。彼女たちの頭上を薙ぎ払うように放たれた閃光が、全ての弾頭を光の中に跡形もなく消し飛ばしたのだ。

 

「……え?」

 

「何が起きたの!?」

 

「今の声は……まさか」

 

 呆然とする生徒たちの前に舞い降りたのは青い光に全身を覆われた1人の少女。彼女の背中には光の翼が残滓のように残り、それすらも空気に溶けるように消えていく。*2

 

「全弾撃墜、被害はなさそうだね」

 

「流石はハルね、あの数の弾頭を全部纏めて撃ち落とすなんて……」

 

「あははっ☆ これくらいなら私たちにもできるけどね」

 

 その少女――蒼井ハルの左右に、天使の翼を羽ばたかせる少女が2人降り立つ。金字で大きくⅠとⅡが刺繍された漆黒の制服に身を包む彼女たちの名は聖園サナと聖園ミカ。朝から留守にしていた3人の少女たちが、天上より舞い降りた。

 

「――まったく。本当に何を考えているのかな……ゲヘナ学園の風紀委員会はさぁ……」

*1
【推奨BGM:Inevitable Struggle】英雄伝説 零の軌跡より

*2
【推奨BGM:執行者】英雄伝説 空の軌跡SCより




TIPS:
神秘再現『アビ・エシュフ』。
実は、パヴァーヌ2章のエリドゥ接続状態の『アビ・エシュフ』を完全再現しています。
弾丸すら到達前に撃墜するアクティブ防護システムと思われる防御システムと、死角の攻撃をも回避する未来予知に近い回避能力、そして学園最高戦力級以上の超火力を兼ね備えた、蒼井ハルの正真正銘の切り札のひとつ。【校境なき生徒会】に先駆け初登場です。
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