Blue Archive Evolution 青春を抱く双翼の星 作:ゲーマーN
――ブラックマーケット・中心街*1
ドカアァァァァン!!!
轟音。銀行の出入り口とは反対側の壁が吹き飛ぶ。砕け散る壁の破片と粉塵を浴びながら、覆面を被った5人の少女が飛び出してきた。覆面水着団――彼女たちは爆発で作り出した『裏口』から銀行の外へと脱出すると、そのまま一目散に走り去っていく。
彼女たちの背中を追うように、武装したオートマタが次々と建物から現れる。しかし、彼らが着地するや否や、再び火柱が上がった。
「備えあれば憂いなしだね」
「はい! あとは逃げるだけですね」
「ひぃん……まさかこんなに早く侵入がバレるなんて……」
「とにかく、急いでここから逃げないとねー」
なんとか銀行を脱出し、安堵の息をつく覆面水着団。その足は、ブラックマーケットの外を目指してさらに進んでいく。幸い、今のところ追手の姿は見当たらない。このまま何事もなく脱出できれば、一先ず逃走は成功と言えるだろう。
しかし――彼女たちの行く手を阻むかのように、横滑りで停車した装甲車両が道を塞ぐ。車体には、自らの力を誇示するかのように『KAISER PMC』の社名が刻印されている。
ダダダダダダダダッ!
扉が開くと、武装したオートマタが4人現れた。手には
「ま、また来たわよ!?」
「……どうやら、簡単に逃がしてはくれないみたいだねー」
殿を務める
尤も、覆面水着団の側もやられてばかりではない。大型
「
「ええ、
一方、残る3人は怯むことなく反撃を継続。
タァン!
生まれた視界不良の隙を逃さず、5人はブラックマーケットの外へ向けて再び走り出す。後方からは次々と銃撃が飛んでくるが、彼女たちは一切足を止めない。戦闘不能に陥った1人を除いた3人のオートマタが、執拗にその背中を追いかけてくる。
◇ ◇ ◇
戦闘区域から少し離れたビルの上で、空崎ヒナは双眼鏡越しに戦場の状況をつぶさに確認していた。その隣には右腕たる行政官――天雨アコが控えており、事細かに状況を報告している。
「……流石は小鳥遊ホシノ。先生の指揮を得られない状況下では正直厳しいと思ったけど、この調子なら問題なく包囲網を突破できそうね」
「で、ですがヒナ委員長。このままではいずれ……」
「問題ない、今回は私たちの出る幕ではない。借りを返すのは次の戦い。それに……」
双眼鏡を覗き込んだまま、ヒナは淡々と答える。言葉自体は素っ気ないものの、その口調には確かな信頼が滲んでいた。それが自分以外に向けられたものであることに、アコは内心で激しい嫉妬を覚える。
「ここで倒れてしまうのであれば、彼女たちも所詮、その程度の器だったということ――ほら、次が来たわ」
ヒナの視線の先では、数台の装甲車両が先回りして彼女たちを待ちかまえていた。タイヤを軋ませて停車すると、中から警備部隊のオートマタたちが姿を現す。
その数は10を超える。しかも、それぞれが生産数の少ない高性能銃器で武装していた。あれを少数で突破するのは、ゲヘナ風紀委員会の精鋭部隊でも困難だろう。けれど、小鳥遊ホシノ――ひいてはアビドス生徒会ならば。
「(……これくらいの窮地、自分たちの力だけで切り抜けてみせなさい)」
◇ ◇ ◇
「くっ……また……!」
「外に行くなら、このまま左の道に……!」
「ひぃん……ダ、ダメみたい……」
三叉路の交差点で、右方向の道は複数の装甲車両に、左方向の道は無数のオートマタにそれぞれ塞がれてしまい、5人の少女たちは足を止めざるを得ない状況に陥っていた。
逃げ道を塞ぐ敵勢力の数があまりにも多すぎるのだ。この包囲網を抜けるのは、今の自分たちでは不可能。どうすれば、と周囲を見回す中で……
「みんな、裏通りを抜けるよー!」
「はい……!」
騒ぎを聞きつけた一般市民が窓や屋上から顔を覗かせ、興味深そうに逃走劇を眺めている。中には慌てて逃げていく者もいたが……いずれにせよ、ここで足を止めるわけにはいかない。
「なんや、お祭りか!?」
「変な取り合わせね~」
「なんの騒ぎだい? うるさいったらありゃしない」
後方から迫るオートマタたちも、なお諦める気配を見せない。彼らは指示を受けたかのように隊列を再編成し、着実に距離を詰めてくる。一般人などお構いなしに銃弾をばら撒き、周囲の建物の壁には無数の弾痕が刻まれていく。
「ひょえ~~っ……!」
「な、なんやねん、いったい!?」
このまま逃走を続けても埒が明かないと判断した
ダダダダダダダッ! ダダダダダダダッ!!
弾丸の嵐が容赦なく降り注ぐ。遮蔽物のない裏路地では身をかわす余裕すらない。2人は盾を構えて防御に徹しながら、足元へ手榴弾を転がすように放り投げた。
ドカアァァン!! 爆音と爆風、そして爆炎がオートマタたちを吹き飛ばす。その隙に再び反転した2人は路地を駆け抜け、大通りへと飛び出す。さらに、追撃を遅らせるべくもう一つ手榴弾を放り投げる。
「――クリア」
「流石にきついですね……」
鋭い視線で周囲を確認する
包囲網を突破できないまま次第に追い詰められていく現状に……
「……周囲の情報を得られないのが痛いね」
「それは……ですが逆探知の可能性を考えると、迂闊に通信を行うのも――」
ブロロロ……!
「っ……何台持ち出してるのよ!?」
三度、進路を塞ぐように現れた10台を超える装甲車両の群れに、
既に路地から大通りへ飛び出しているため、引き返すことはできない。かといって、正面突破を図るにはあまりにもリスクが高い。このままでは進むべき道を切り拓く術がない――そう考えた矢先だった。
「うへぇ~……まさか、私にコレを使わせることになるとはね……」*2
「!?」
「
◇ ◇ ◇
「リーダー……助けに行かなくていいんでしょうか……」
「ああ、必要ない。小鳥遊ホシノはまだ切り札を温存している」
ヒナとアコとは別のビルの上。スコープ越しに戦況を見つめる5人の少女たち。その中で、巨大なガンケースを背負い、首にマフラーかシュマグらしきものを巻いた少女に、顔の下半分をマスクで覆ったリーダーらしき少女が応える。
「ヒヨリも覚えているだろう? 2年前のあの日、アリウス分校を蹂躙した蒼い雷を……」
「はい……忘れられるわけがないです……」
ヒヨリと呼ばれた少女が震える声で答える。2年前のアリウス戦役――ゲヘナ最強と名高い《暴君》空崎ヒナと共に、アリウス分校を蹂躙した小鳥遊ホシノ。彼女が振るった超常の力は、今もなお鮮烈に記憶へ刻まれている。
圧倒的な力を前に、当時の最高戦力は成す術もなく敗れ去り、他の生徒たちの戦意をも喪失させた。ただの一撃で戦局を決定付ける絶技――それこそが《暁のホルス》の切札だった。
「今回の作戦は、ティーパーティー直属の特殊部隊『アリウススクワッド』の任務ではなく、大人を憎悪するアリウス分校の残党の暴走として処理される」
「ティーパーティー直属……というよりは、サオリの直属みたいなものだけどね」
「……わ、私はアツコ様の護衛ですけど……」
黒いマスクと耳に付けた大量のピアス、首や手首に巻かれた包帯が特徴の少女――
アリウススクワッドは
「……恩人とはいえ、表立って助けるわけにはいかない。窮屈な思いをさせてすまないな」
「ううん、大丈夫。サッちゃんこそ……あまり無理しないでね」
「……ああ」
サオリは静かに頷き、自らの武器を点検する。その姿は確かに兵士そのものだが、どこか哀愁を漂わせていた。今はまだ助けに入る必要はないが、いずれ「悪い大人」がこの戦場に介入してくるだろう。その時に備え、アリウススクワッドは待機を続けている。
黙然と状況を見守るスクワッドの5人。その視線の先には、包囲網を突破せんと必死に奮闘する恩人とその仲間たちの姿があった。
◇ ◇ ◇
「我が深淵にて煌めく嵐と雷の神よ、瞳に宿りて砂漠を翔ける一陣の風となれ……!!」
太陽と月を両目に持つ天空の神、ホルス。元々、ホルスには同名でありながら神格や役割の異なる二柱が存在していた。一柱はラーの息子、もう一柱はオシリスとイシスの息子であり、やがてこれらが同一視され習合されたとされる。また、これ以外にも様々な神との習合が見られる。
■■■■の神々の中で最も古く、最も偉大で、最も多様化した神。その神秘の性質は《習合》という形で具現する。ホルスの瞳に蒼が宿り、
「奔れ、憤怒の雷槍!!」
風が渦巻き、蒼雷が閃く。
アビドス最高の神秘を媒介に放たれる蒼雷の聖槍。竜巻と迅雷を纏う弾丸は装甲車両を貫き、建物の壁を穿ち、アスファルトの大地を砕き、オートマタたちへと襲いかかる。それはまさに、神の御業としか表現しようがない神話の光景だった。
「な、なによ……これ……?」
「……これが、
現実離れした光景を前に、自らの先輩の表向きの姿しか知らない
やがて嵐が過ぎ去ると、彼女たちを包囲していたオートマタ軍団は完全に沈黙していた。動くものは、何一つとして残っていない。
「さ……行こうか」
普段はだらしない姿ばかり見せているホシノだが――彼女もまた、アビドス高等学校の生徒会長としての自覚と矜持を持っている。今まであまり見せたことのないその一面が、セリカの心を強く惹き付け、自然と尊敬の念を抱かせていた。
システムアナウンス:
ホシノが、新EXスキル『憤怒の雷槍』を習得しました。
『憤怒の雷槍』がEXスキルに登録されました。
TIPS:
憤怒の雷槍。
■■■■■の権能を用いた
元ネタは『英雄伝説 軌跡』シリーズより『ケビン・グラハム』のSクラフト『魔槍ロア』。
TIPS:
刑部ステラ。
環星党さんのブルアカ二次創作『ブルーアーカイブ 双翼のレクイエム』の登場人物。
トリニティ総合学園1年生。シスターフッド兼アリウススクワッドのメンバー。この世界では、秤アツコの護衛としてアリウススクワッドに所属しているらしいが……?