Blue Archive Evolution 青春を抱く双翼の星   作:ゲーマーN

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C-1-1-3 一番星のアウトロー

 ――銀行*1

 

「お待たせいたしました、お客様」

 

「なにが『お待たせしました』よ! 本当に待ったわよ! 6時間も! ここで!!」

 

 6時間以上銀行の中で待たされていた陸八魔アルは、銀行員の白々しい言葉にビキビキと青筋を立てて怒りをぶちまける。

 先生の指揮や、想定以上のアビドスの戦力により敗北を期したアルたち便利屋68は、しかし依頼主が超大物であるため手を引くわけにもいかず、今度こそアビドスを打ち破るための戦力を雇うべく銀行へ融資を申し込みに来たのだが……。

 

「融資の審査に、なんで半日もかかるの!? 別にうちより先に人もいなさそうだったのに! 私の連れは待ちくたびれて、そこのソファーで寝ちゃってるし!」

 

「私どもの内々の事情でして、ご了承ください」

 

 銀行員は涼しい顔で頭を下げる。6時間。それほどの長い時間、アルは待たされた。それなのに銀行側からは詫びの一言もなく、口調だけは丁寧で、見るからに自分たちを舐めた態度が彼女の怒りをさらに加速させる。

 

「……ところで、アル様。あなたはそのような態度を取れる状況ではないと思うのですが?」

 

「あ、うう……」

 

「当行の助けが必要なら、辛抱強くお待ちいただくことも大事かと」

 

 そんなアルの態度を見かねて、銀行員が冷ややかな声を放つ。確かに、アルは怒りのあまり、自分たちが置かれている状況を完全に失念していた。もしも融資が通らなければ、本当に為す術を失ってしまう。その現実を正面から突きつけられたアルは、言い返す言葉が何も見つからず、口から空気と共に意味を成さない声を漏らす。

 

「……あ、それとお連れの方ですが、そちらでお休みになられては困ります。セキュリティ。あの浮浪者……いえ、お客様を起こして差し上げなさい」

 

 パチンッと銀行員が指を鳴らすと、奥から数人の警備員が歩いてくる。

 

「ほら、起きた起きた!」

 

「むにゃ……。うはっ!? なになに!?」

 

「……!!」

 

「ああっ……す、すみませんっ、居眠りしてすみません!!」

 

 スタンガンを押し付けられた便利屋一同は、ビクリと身体を震わせ、飛び上がるように目を覚ました。寝起きで意識が朦朧としていたハルカがハッと我に返り、咄嗟に謝罪を口にする。

 銀行の暴挙にアルは歯を食いしばり、悔しそうに俯く。今はただ耐えるしかない。ここで怒りに身を委ねては、本当に銀行の助けを得られないままになってしまう。それだけは避けなければならないと、自分に言い聞かせる。

 

「さて、では一緒にご確認を。お名前は……陸八魔アル様。ゲヘナ学園の2年生ですね。現在、便利屋68の社長、ですか……この便利屋は、ペーパーカンパニーではありませんか? 書類上では、財政が破綻していますが?」

 

「ちゃ、ちゃんと稼いでるわよ! まだ依頼料を回収できてないだけで……」

 

「それと、従業員は社長を含めて4名のみですが、室長に課長、そして平社員……肩書の無駄遣いでは? 会社ごっこでもしているのですか?」

 

「そ、それは……か、肩書があったほうが仕事の依頼を……」

 

「あとですね、必要以上に事務所の賃貸料が高いです。財政状況に合った物件を見つけたいただかないと」

 

「ちゃ、ちゃんとしたオフィスのほうが……仕事の依頼を……」

 

 まさに正論。続け様に正論を浴びせてくる銀行員に、アルの言葉尻はどんどん弱くなり、ついには黙り込んでしまう。便利屋68の財政に余裕がないのは紛れもない事実だ。その状況で無駄に高いオフィスを借りているのだから、『ごっこ遊び』などと言われても仕方がない。銀行員の指摘はどれも的を射ており、言い返す余地は少しもなかった。

 

「アル様。これでは、融資は難しいですね」

 

「えっ、えーっ!?」

 

「まずは、より堅実な職に就いてみてはいかがでしょうか。日雇いや期間工など、手っ取り早く始められるものもありますが」

 

「は? はああ!?」

 

 銀行の審査は通らず、部下を馬鹿にされ、終いには職の斡旋を勧められる。あまりに屈辱的な仕打ちにアルは目を大きく見開き、再び頭が沸騰しそうなほど怒りの感情が込み上げてきた。

 

「(ムカつく……もう大暴れして、銀行のお金を持ち出しちゃおうかしら?)」

 

 頭に血が上るあまり、そんな考えも頭をよぎったが……ギリギリのところで冷静さを取り戻したアルは、その考えをすぐに振り払った。確かに銀行からお金を奪うこと自体は可能だろうが、その先はどうだろうか?

 

「(……いや、それはダメね。ここからお金を持ち出せたとしても、ブラックマーケットから抜け出すのは至難の業。あちこちにマーケットガードがいるし……でも、もしかすると、実は大したことない連中かもしれない。私たち4人なら、全員叩きのめして逃げ切れそうな気も……)」

 

 そう、仮にお金を持ち出せたとしても、そのあとに待っているのは決死の逃走劇だ。逃げきれる可能性もゼロではないかもしれないが、そんな分の悪い賭けに大切な仲間たちを付き合わせるわけにはいかない。それで治安機関に捕まれば……想像するだけで、背筋にゾクリと寒気が走る。

 

「(……はぁ、やっぱ無理。ブラックマーケットを敵に回すなんて、そんな勇気ないわ……っ、なによこれ、情けない……キヴォトス一のアウトローになるって心に決めたのに。私は……)」*2

 

 何を言われても言い返せず、されるがまま。自分の理想と現実の差に絶望し、アルは俯き、床に視線を落とす。その姿が、学生証の証明写真に映っている1年生の頃の自分と重なる。

 髪を短く切り揃え、眼鏡をかけ、いかにも物静かな優等生めいた姿をした過去の自分。契約上は何も問題ないと、法律には反していないと、悪い大人に言いくるめられ、不当な扱いをされたというのに、ただ黙って、俯いて、涙を流すしかできなかった頃の自分。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「ど、どうしてこんなことに……」

 

「どうしてもこうしても、人を簡単に信じるのが悪い」

 

「週90時間の労働で沢山お給料が貰えるって……」

 

「こんな物騒な自治区で、まともな仕事があると思ってるほうがどうかしてるぜ」

 

「ハハッ、そんな頭でよく生きてられたな。ちったぁ考えろよ!」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「(融資だのなんだの……こんなつまらないことばかりに悩まされて……私が望んでいるのはこれじゃない……何事にも恐れず、何事にも縛られない、ハードボイルドなアウトロー……そうなりたかったのに……)」

 

 唇を強く噛み、目尻から涙が溢れないように必死に堪える。しかし、そんなアルの内心を知る由もなく、そもそも微塵も興味のない銀行員は、まるで止めを刺すかのように畳みかけてくる。

 

「……様、アル様!」

 

「わ、わわっ!? は、はいっ!? ……えっと、何か言った?」

 

「融資の承認は下りませんでした。お力になれず申し訳ありません」

 

「え、ええっ!? ちょ、ちょっと待ってよ!!」

 

 アルは焦りの声を上げるが、当然ながら銀行の答えは変わらない。結局、融資は降りず。何の成果も得られずに、失意のまま銀行を後にすることになる……はずだった。

 

「な、何事ですか? 停電!? い、一体誰が!? パソコンの電源も落ちてるじゃないか!」

 

 突然、オフィス内の電灯がパッと消え、辺りが真っ暗になる。停電によりパニックになった銀行員や警備員たちは、バタバタと慌ててオフィス内のブレーカーを上げようとするが……。

 

 ダダダダダダダッ! ダダダダダダダッ!!

 

「銃声っ!?」

 

 その時、AR(アサルトライフル)と思しき銃声が銀行内に響き渡った。暗闇で視界は覚束ないが、足音と銃声の数からして、複数の人物が銀行内に押し入って来ているのはすぐに分かった。

 

「うわっ! ああああっ!」

 

「うわああっ!」

 

 続いて、SG(ショットガン)の銃声が連続で轟く。この暗闇の中で的確に警備員を狙い撃ちしている。間違いない、かなりの実力者だ。そんな腕利きの襲撃者たちがAR(アサルトライフル)の連射と同時に突入してきた。

 

 暗闇の中、次々と銀行員が撃たれて倒れていく。そして、オフィス内で銃声の反響が鳴りやむと同時に、突然パッと照明が復活した。明るい光に目がくらみつつも、襲撃者たちの姿を確認したアルは驚愕に目を見開く。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「お、お金は……?」

 

「んなもん最初からあるわけねーだろ! バカじゃねーの!」

 

「お金の前に、まずは自分の心配をしたらどうだ?」

 

「この建物は、我々が占拠してるんだからな!」

 

「風紀委員会が助けに来てくれると思ってんなら諦め――」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「全員その場に伏せなさい! 持っている武器は捨てて!」*3

 

「言うこと聞かないと、痛い目に遭いますよ☆」

 

「あ、あはは……みなさん、怪我しちゃいけないので……伏せてくださいね……」

 

 ドドン! と姿を現したのは、様々な覆面を身に着けた9人の集団。その中でも、一際目立つ強盗団の首領と思しき紙袋の少女――ではなく、Ⅰの覆面を被った少女にアルは目を奪われる。

 

「『大人しく降伏しなさい。少しでも長生きしたいのならね』」

 

 過去の記憶と、今、目の前の現実が一つになる。忘れるはずもない。あの時と全く同じ台詞を言い放った覆面の少女。その声、その姿。アルの記憶から一瞬にして1年生の頃の出来事が蘇る。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「な、なにしやがんだテメェ!」

 

「おい、さっさと奴らに連絡しろ! ったく、あいつら寝てんじゃねえよなあ!?」

 

「応援なら誰も来ないわよ。下にいた連中なら、全員倒してきたもの」

 

「なんだと!?」

 

「あ、あれだけの人数を、たった一人で……!?」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「お、お姉様……!?」

 

 憧憬の対象を目の前にして、アルは無意識の内に呟いていた。その呟きは、パニックに陥っている多くの人々には届いていないだろう。だが、彼女――サナの耳にはハッキリと聞こえていた。

 

「……しーっ」

 

 アルにだけ見えるように、サナは人差し指を唇に当ててウインクをする。その仕草に、アルは心臓が止まりそうなほどドキリと胸が高鳴るのを感じた。憧れのアウトローに自分の存在が認知されている。その事実はアルの胸をかつてないほど熱くさせていた。

 

「非常事態発生! 非常事態発生!」

 

「うへ~無駄無駄~」

 

「外部に通報する警備システムの電源は落とした」

 

「あはは。これ以上、変なことをしたら……」

 

 Ⅱの覆面を被った少女は、すぐ傍の壁を自らの拳で勢いよく殴りつける。ズドォォンッ! と人の拳が生み出したとは思えない凄まじい轟音と衝撃が辺りに響き渡り、その壁はまるで隕石でも落ちたかのように粉々に粉砕された。

 

「こうなるよ☆」

 

「ひ、ひいっ!」

 

「ほら、そこ!! 伏せてってば! 下手に動くとあの世行きだよ!?」

 

「それとも、地獄に行きたい? それなら、私に任せて……」

 

 Ⅱの覆面少女が本気であるのは誰の目から見ても明らかだった。外部に通報しようとしていた銀行員は、彼女の脅しに震え上がり、大人しく両手を上げてその場にへたり込む。目視できる範囲にいる全員が床に伏せたのを確認すると、銀行強盗団の首領は、改めて銀行内の人々に告げた。

 

「皆さん、お願いだからジッとしててください……あうう……」

 

 銀行強盗団たちは迅速に行動を開始する。今回、この銀行を襲撃した目的を達成するために。

 

「うへ~ここまでは計画通り! 次のステップに進もうー! リーダーのファウストさん! 指示を願う!」

 

「えっ!? えっ!? ファウストって、わ、私ですか? リーダーですか? 私が!?」

 

「リーダーです! ボスです! ちなみに私は……覆面水着団のクリスティーナだお♧」

 

「うわ、なにそれ!? いつから覆面水着団なんて名前になったの!? それにダサすぎだし!」

 

 覆面の女子高生たちに祭り上げられた覆面水着団のリーダー・ファウストは、「あわわ……」と混乱し目を回しそうになる。しかし、他の覆面たちはそんな彼女を一切容赦せず持ち上げ、銀行強盗を次のステップへと強引に導いていく。

 

「うへ、ファウストさんは怒ると怖いんだよー? 言うこと聞かないと怒られるぞー?」

 

「あう……リーダーになっちゃいました……これじゃあ、トリニティの名に泥を塗る羽目に……」

 

 一方、一連の流れを遮蔽物の陰から覗いていた便利屋の浅黄ムツキと鬼方カヨコは、覆面水着団の構成員に見覚えがあるのに気が付き、お互い顔を見合わせていた。

 

「あれ……あいつら……」

 

「あ……アビドス……?」

 

 アビドス高等学校。つい昨日、便利屋の仕事で銃火を交えたばかりの相手。それが、どうして銀行強盗などしているのか? その疑問を胸に抱いたまま、ムツキとカヨコは静かに動向を窺う。

 

「だよね、アビドスの子たちじゃん。知らない顔もいるけど。……ここで何やってるんだろ? それも覆面なんかしちゃって」

 

「ねっ、狙いは私たちでしょうかっ!? それなら返り討ちにしちゃいましょうか!?」

 

「いや、ターゲットは私たちじゃないみたい……あの子たち、どういうつもり? まさか、ここを?」

 

「もー、アルちゃんはなにしてるのさ」

 

 銀行の中で1人、自分たちから離れたところにいるアルの方にムツキは視線を向ける。

 

「監視カメラの死角、警備員の動線、銀行内の構造、すべて頭に入ってる。無駄な抵抗はしないこと。さあ、そこのあなた、このバッグに入れて。少し前に到着した現金輸送車の……」

 

「わっ、わかりました! なんでも差し上げます! 現金でも、債権でも、金塊でも、いくらでも持ってってくださいっ!!」

 

「そ、そうじゃなくて……集金記録を……」

 

「どっ、どうぞ! これでもかと詰めました! どうか命だけは!!」

 

「あ……う、うーん……」

 

 自らに銃を押し付ける2の覆面の指示に従い、先ほど到着したばかりの現金輸送車の中身をバッグに詰め込む銀行員。憧れの人の仲間たちの勇姿を目の当たりにして、アルはまるでヒーローを目の前にした幼い子供のように両方の瞳をキラキラと輝かせる。

 

「(さ、流石はお姉様!! ブラックマーケットの銀行を襲うなんて!)」

 

 頭がどうにかなりそうだった。銀行強盗なんて、それこそ漫画や映画の中でしか見たことがない犯罪行為だ。それをこれほどまでに鮮やかに、しかもスマートに行うだなんて。覆面水着団。彼女たちこそ、まさにアルが今まで憧れてきたアウトローそのものだった。

 

「(どう逃げるつもりかしら? いや、それ以前に、こんな大胆な計画を立てちゃうなんて! 滅茶苦茶手際いいし、超プロフェッショナル。まるでこのためだけに生まれてきたみたい。ものの5分でやってのけたわ!)」

 

 興奮が止まらない。彼女たちが次に何をするのか、気になって仕方がない。期待に胸が膨らみ、まるで酩酊したようにふわふわとした不思議な気分になっていく。

 

「(かっ、カッコイイ……! シビれるっ! これぞまさに真のアウトロー! うわあ……涙出そう!)」

 

 謎の覆面集団に憧れの眼差しを向けるアルを、カヨコとムツキは呆れたような目で見つめる。

 

「全然気付いてないみたいだけど……」

 

「むしろ目なんか輝かせちゃって」

 

「はあ……」

 

 便利屋最後の一人、伊草ハルカが恐る恐るといった調子で、ため息をつくカヨコに問いかける。

 

「わ、私たちはここで待機でしょうか?」

 

「……あの子たちを助ける理由も、銀行に助太刀する理由もない。それに社長が今あんな状態だから……とりあえず隠れていよう」

 

「は、はい……」

 

 一先ず、事の成り行きを見守ることにした便利屋一同。そうしている間にも、覆面水着団は自分たちの目的を完遂させる。パンパンに中身の入ったボストンバッグを担ぎ上げた2号へと赤い覆面の4号が問いかける。

 

「あの、シロ……い、いや、ブルー先輩! ブツは手に入った?」

 

「あ、う、うん。確保した」

 

 何とも微妙な反応を返すブルー。その反応に疑問を抱かなかったわけでもないが、目的のブツを回収したのならば、これ以上の長居は無用だ。1号の覆面が仲間の覆面たちに指示を出す。

 

「それじゃ逃げるよー! 全員撤収!」

 

「任務の遂行完了。撤退する」

 

「あはは。大したことなかったね」

 

「それじゃ、まったねー!」

 

「オ・ルヴォワール……うふふ、次の集金を楽しみにしててね☆」

 

「アディオ~ス☆」

 

「け、怪我人はいないようですし……すみませんでした、さよならっ!!」

 

 ヒューン! と空を流れる星のように撤退していく覆面水着団。その背中を、アルは熱のこもった視線で見送る。いつの日か、自分も彼女たちのようなアウトローに! と心に誓いながら。

 

「や、奴らを捕らえろ!! 道路を封鎖! マーケットガードに通報だ! 1人も逃すな!!」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「それじゃ、この辺りで自分たちは別れるとしようかな」

 

「えっ?」

 

 包囲を抜け、市街地に辿り着いたところで、0の覆面少女――ハルが不意にそう告げる。突然の言葉にヒフミとアズサ、ホシノ以外のアビドス生4人とハクノは驚きの声を上げたが、ⅠとⅡの覆面で自らの顔を覆う聖園姉妹は当然のようにハルの両隣に並び立つ。

 

「うん、そうね。この辺りなら時間稼ぎもしやすいだろうし」

 

「3人の共同作業だね☆」

 

「じ、時間稼ぎ? そんなことしなくても……」

 

「そ、そうです。このまま、全員でブラックマーケットの外まで逃げてしまえば……」

 

 セリカとノノミの言う通り、このまま全員で逃げ切れば、何事もなくブラックマーケットから脱出できるだろう。しかし、そんな彼女たちの言葉にもハルは動じることなく、軽く首を左右に振るだけだった。

 

「ううん、念の為にここらで追っ手の足止めをしておいた方がいいよ」

 

「それなら、私も……」

 

「ねえ、シロコちゃんはこれを持ってないでしょ?」

 

「懐中時計……?」

 

『ま、まさかそれは……!』

 

 そう言いながら、サナが胸元から取り出したのは金色の懐中時計のような形をした正体不明の機械だった。アビドスの生徒たちはともかく、キヴォトスの外から来たハクノは、それが何なのか分からず、不思議そうに首を傾げる。

 

「ええ、テトラガーデン社が独自に開発した次世代の戦術サポートシステムの1つ。第5世代戦術サポートシステム、Player’s Link And Navigation Assistant――通称『P.L.A.N.A』だよ」

 

「P.L.A.N.A……」

 

 その名前には聞き覚えがある。確か、先日のシャーレ奪還作戦に参加した4人の生徒たちもその名を口にしていたはずだ。アロナの話では、このシステムは連邦生徒会も独自に研究を進めているとかどうとか……。

 

「私たちが本気で戦うには、味方がこれの所有者同士であるのが最低条件なのよ」

 

「というわけで、すぐに追いつくから先に行ってて!」

 

 その言葉を皮切りに、無銘生徒会の3人は他の仲間たちに背を向け、進んできた道を逆走し、敵の包囲網の中に飛び込んでいった。

*1
【推奨BGM:Funky Road】ブルーアーカイブより

*2
【推奨BGM:雨の日の真実】英雄伝説 碧の軌跡より

*3
【推奨BGM:Feeling Danger Nearby】英雄伝説 空の軌跡FCより




TIPS:
一番星のアウトロー。
この世界において陸八魔アルがアウトローに深い憧れを抱くようになった理由の一つ。
法と契約を武器に、合法的に生徒から搾取するブラック企業を、聖園サナが《無法》と《暴力》を以て蹂躙する姿に何よりも心を強く惹かれた。
後に再会する機会があり、アルは憧憬の対象であるサナのことを「お姉様」と慕っている。
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