それは一つの金払いのいい依頼があったことから始まった。
内容は忌み者の討伐。依頼主は仙舟の羅浮。危険手当て込みでもかなり美味い報酬をしている辺り、かなりの遭遇戦か殲滅なのだろう。
「まぁ金とバックがはっきりしてるならいいか」
まさかこの依頼を受けることが、かの「全裸マン」との遭遇になるとは思わなかったが。
▽
『指定エリアに入った味方以外の反応は全て討伐して燃やすこと』
かなり物騒な指示だと思ったが、いざ目の前で再生して飛びかかられると納得した。
一撃、軸脚が地面にめり込むほどの反動がくるが気にせず回し蹴り。
二撃、回した脚も地面に付けて右ストレート。
三撃、小太刀を居合抜きして首を落とす。
「吠えろ、炎羊」
炎の羊が可愛い鳴き声とは裏腹に、掛け声ひとつで辺り一面を白い炎で焼き尽くす。火の粉が飛んでくるが、一切熱を感じず。しかし忌み者は灰も残らず消し飛ばした。
『ぷぃー』
「…いや、確かに言われた合図しましたよ!?でもこれはちょっと権能出し過ぎじゃないですかねえ神様ぁ!」
『ぷぅぅー』
「あっお帰り申した…」
満足した炎の羊が何もなかったかのようにボワっと消えた。一応可愛い見た目をした立派な神様なのだが、いかんせん火力が強すぎて信仰が強くなりすぎた時にうっかり星を丸焼きにしたらしい。
一気に萎んだところをなんか引っ掛けたらくっ付いてきた。それが今の状況である。
今の羊、もとい炎羊様曰く『取り敢えず溢れた分あげるね』感覚だったらしい。火力調整できた今ならともかく、一つミスればこっちが燃えてたので困ります。
それはそれとして、ちょっと焼いたら目立ったらしく通信が飛んできた。お相手は外部依頼担当の管理者だ。
『随分と物騒なものを連れていたとは。悪いお嬢さんだ』
「すみません将軍詐欺は間に合ってますので切りますね」
悲報、管理者の端末を使ったとんでもねえ人が引っかかった。因みに将軍詐欺は実際に幾つか前の依頼で実際にあった事である。
『まぁまぁ。こちらとしては今ので相当助かったからね。こうして君と話ができる時間ができた訳だが』
「…まさかやりすぎました?」
『いい意味でね。軍への被害は無いから安心するといい。ところで──』
「……見つけたぞ…忌み者…!」
「あのすいません本当に味方に被害ないですよね?」
『ん?それに関しては本──待ってくれなんで、いやちょっ』
「おぁーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
雑草の燃え滓しかない平原ど真ん中。
突如現れた火だるまの人形。何故か発動してる存護モザイク。そして通信先で困惑と戸惑いと羞恥と悲鳴が同時に響くsymphony。
───孤独な羞恥心を知らないシルエットが突然地面から這い上がってやってきた。
星核ハンター・刃(全裸の姿)の初エントリーである。
「将軍さん、なんか目の前にカンパニーに犯罪者側で指名手配されてる人がいるんですけどこれも依頼に入りますかねぇ!?」
『星核ハンターが何故…!いやそのまえになんで服が全て消えてるのかなぁ!』
混乱と混乱。おかしいな、通信相手は謀略の腕はピカイチと噂の長命の人なんだけどな。
白く燃えてる股間と琥珀色に輝くアンバランスな視界保護(乳首)、あと多分火傷してた部分が再生してるっぽい生々しい音が同時に目の前からやってくる姿を想像してほしい。
「──全面規制じゃオラァ!」
「邪魔だ!」
『ダメだ全裸と女性が剣技で競り合ってるなんて意味がわからない事を記録するのか』
『将軍!?相手は星核ハン…うわーーーーーーーーー!!!!!』
『襲撃ですかしょ───キャーーーーーーーーー!!!!!』
繋がったままの通信から状況が伝わっているのか、野太い悲鳴と絹を裂くような甲高い悲鳴が追加でお出しされた。
初エンカウントが全裸とは中々レア(生肉だけに)なお相手だ…などとどうでもいい事が思いついたが言わないでおく。言っても理解されないだろう。(大体は服が弾け飛ぶ瞬間に出くわす)
しかしまあ、全裸ハンターは中々にいい太刀筋をしている。こちらも受け流して体勢を崩せるかどうか怪しいとは。神様全年齢ガードが入ってなければ定期的に手合わせを願いたいレベルだ。
目の前を擦過する黒い刃、チラつく琥珀色に、偶に飛び散る血。久々のタイマンで盛り上がってきたその時、ずっと聞こえてる胡乱な通信とは違う声が戦場に増えた。
「そこまでよ、刃ちゃん」
「…離せカフカ。こいつは危険だ、ここで殺す」
「ダメよ。脚本には殺すなんて書いてないわ。【聞いて】、戦いは終わりよ」
「…殺す!」
「あの保護者さんですか早くこの全裸……わぁ…」
「【聞いて】終わりよ。刃ちゃん?【聞いて】、帰るわよ」
「──!」
「……」
「あの、すんません…ウチのお上が…多分干渉したから…」
なんと言う事でしょう。目の前には多分大変な事になってる全裸マンがいる。先程エントリーを果たした女性は恐らくこの全裸を引き取りに来たやべー人なのだろうが、それ以上に目の前の広がる惨劇、或いは恥部が転がった。
『…随分と、立派だね』
「…エリオに文句を言ってもいいわね」
「本当にごめんなさいとしか…」
視界には琥珀色一色になったモザイクが広がっていた。
▽
『ぷぷぅー』
「ってのがこの羊の正体とついでに初めての星核ハンターとの出会いだったね。一応銀狼って子も干渉して来てたらしいけど、それは別の神様が遊んでたみたいでね」
「…ムラクモ、それって本当?」
「将軍さんがぐったりして事情聴取してきたから本当。因みに将軍が状況説明で教えてくれたんだけど、琥珀モザイクの下はね、亀っこ──」
「やめてくれムラクモ。流石にそれ以上は同情する」
「おー、丹恒ストップとは珍しい。じゃあやめよう」
「…あれ?カフカって確か言霊を使って止めてたけど…」
「なの、ムラクモだよ?」
「…うんやめよっかこの話!」