死滅回游…ってよォ~~~………   作:あんまん太郎

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ギアッチョのスケーターの技量とかアニメでの見事なバタフライとか、暗殺者する前は元々スポーツ選手だったのでは?という考察を見て、納得感とすごい切なさを感じました。



こおりタイプ、むしタイプ、でんきタイプ

 

 

 東京第1結界コロニー内。

 放棄された高級ホテルの1階、そのメインホール。

 

「なあ……あの人ってさぁ……」

「なんだ、知り合いか?」

「いや、ちげーんだけどさ……あの人、今年の冬のオリンピックに出てた人じゃね? ほら、スピードスケートで、メダル獲ってた……、競技中はゴーグルとスーツ着てっから最初気づかんかったけど、あのキレ芸で思い出した! インタビュー中に記者にブチギレてたのがすげー印象に残ってんだよなあ」

「知るか」

 

 伏黒恵にコソコソと耳打ちしてきた虎杖悠仁。重要な話かと気を引き締めて耳を傾けたことが間違っていたことを知り、伏黒は溜め息を吐いた。

 

 二人の視線の先には、先ほど遭遇した泳者四人──ふざけた半裸の恰好をした芸人・髙羽史彦と、面識はないが虎杖の同級生だという甘井凛、面識はないがやたら伏黒を気にかけてくる来栖華。

 そして──虎杖曰くプロのスピードスケーターらしいギアッチョが、ぎゃあぎゃあと騒いでいる。

 

 とはいえ基本的に騒いでいるのはギアッチョと髙羽で、それも、髙羽のハチャメチャな術式とギャグをスルー出来ず、律儀にブチギレて(ツッコんで)いるからだ。

 血管が切れそうなほど怒り、今にも暴れ出しそうなギアッチョを甘井が後ろから抑え、いちいち反応して(ツッコンで)くれるギアッチョに気を良くした髙羽がさらにギャグ(煽り)を重ね、来栖はそれを白けた表情で見つめているという……非常にカオスな図が広がっていた。

 

 ちなみに、レジィ・スターや仲間の術師たちとは、ポイントの譲渡を受けてからは早々に別れている。レジィ曰く「俺はあくまで中立」とのことで、羂索の仲間というわけでもないらしく、ポイント譲渡も含めてあっさりと引き下がったのだ。

 去り際の「せいぜい道化として踊ってくれや」という捨て台詞からも、明確な目的があって参戦したというよりは、この戦いの結末を見たいだけの野次馬なのだろう。

 

(奴の言葉を信じるわけじゃないが……少なくとも、今は俺たちの邪魔をしてくることはないはず。非術師は殺さないという縛りも交わせたし、危険度は少ない)

 

 虎杖が早々に100点保持者である日車と接触してルールを追加し、脅迫に近いとはいえ伏黒もレジィ・スターたちのポイントを獲得、さらに五条奪還の要でもある天使は向こうから出向いてきた。

 (津美紀)を助けるため、終わりのない殺し合いが広がる東京第1結界に侵入してからまだ二時間も経過していない段階だ。かなり順調な出だしを切っている。

 

 あとは仙台結界にいる乙骨憂太や東京第2結界にいる秤金次、パンダを待ちつつ、今後の方向性を決めていく必要がある。

 

 来栖と彼女に宿った「天使」の話は深く聞いておきたいし、()()()()()参加したばかりの覚醒型(素人)だというのに過去の術師と対等に戦っていたギアッチョという青年にも、協力を仰げるなら仰いでおきたい。(髙羽もいるけど)

 

「それで。少なくともあんたは、羂索を倒したいと考えている……つまり、一時的な協力者と捉えていいんだな?」

「あ゛あ゛?」

 

 来栖と天使の話は込み入ったものになりそうなので、ひとまず後回しに。

 話がひと段落しているところを見計らって、伏黒は半ギレ状態のギアッチョに話しかけた。虎杖が有名人を目の前にしているような素振りで後ろでそわそわしているが、無視する。

 

「誰が協力するっつったあ~!? てめえらがそのケンジャクって奴と知り合いだっつーからよお、お前らといれば、いずれはあのクソニヤケ面に辿り着く……それが一番効率が良いってだけだ!」

「お、じゃあ協力してくれるってことじゃん! やったな伏黒!」

「てめえ……話聞いてんのかあ?!」

「いやあ、属性持ちが仲間になるって夢あるよなあ~」

「こいつ無敵かァ!?」

 

「良いところに目をつけたな少年! 実はひこうタイプ(来栖)かくとうタイプ(虎杖)も既にいるから、三すくみは完成してるゾ! この中から手持ちを一匹選ぶんじゃ、目指せポケ〇ンマスター!」

「火草水じゃないスタートだとしても特殊すぎません?」

「誰がひこうタイプですか」

「あ、かくとうタイプって俺?」

 

「俺は氷じゃなくて、超低温つってんだろうがあ!! ……にしても、「かくとう」が「ひこう」に弱く、「こおり」に強ぇのはわかる、よーくわかる……飛んでいる相手に格闘技は当たらねえし、一方で瓦割りの要領で氷を割れるイメージがあっからな……だがッ! 「かくとう」タイプが「エスパー」タイプに弱えってのは、どういうことだあ~~~っ!? 体は鍛えているがメンタル面は弱えって言いてえのかあ!? おい? オレはぜーんぜん納得いかねえ……!!」

 

 割り込んできた髙羽、ツッコむ甘井とムッとする来栖、自分を指差す虎杖にあわさってギアッチョの()()()()も始まってしまいぐだぐだになりかけているが、聞いた限りギアッチョの目的は一貫しており、その目的に悪意もない。

 あれだけ暴れながら誰も殺していない(0ポイント)ことも含め、少なくとも今のところは、虎杖のいうように協力者の一人として数えても問題はないかもしれない、と伏黒は考える。

 

(いや、むしろあんだけの大規模な破壊力と範囲を誇る術式持ちだ、どっかに取り込まれて敵に回った時のリスクを考えると、野放しにしておくほうが危険だな。……これで参加して1日目って、髙羽も含めて、覚醒型は規格外ばっかなのか……?)

 

 良くも悪くも停滞する空気。

 姉の救出と、封印された五条の救出への筋道が見えてきたからだろうか。騒がしくもどこか和やかな空気に釣られるようにして、伏黒も緩やかな溜め息を吐き──

 

 リンゴンリンゴンリンゴン!!

 

『泳者による死滅回游へのルール追加が行われました!』

 

 その空気を裂くような鐘が鳴り響いた。

 

 乙骨かもしくは秤たちか。

 期待を込めてコガネを見上げたが、彼らが告げたのは、思わぬ総則の追加であった。

 

『〈総則(ルール)泳者(プレイヤー)は一日に一度、戦闘中を除き、別の結界(コロニー)に転移することができる。ただし転移する結界(コロニー)と場所は、ランダムで決められる』

 

「なんだと!?」

 

 コガネをモニター機能に変更させ、素早くポイントを確認するが、総則を追加したのは100点を保持している鹿紫雲一でもなければ、仙台結界にいる泳者によるものでもない。

 

「オイ伏黒! 変動したのは大阪会場だ!」

「クソ、ポイントの譲渡か……」

 

 日車によって「点数の譲渡」総則が追加されたことで術式剥奪までの猶予を延ばすことができ、強制的に殺し合う必要性がなくなった……が、殺し合いに積極的な者たちはそれを利用して、「殺し合いを活性化させるための総則」を追加することも当然できるわけだ。

 他の会場でもレジィたちのように徒党を組んでいる泳者も少なくはないだろうし、脅迫によっては他者からポイントを無理矢理奪う(強制的に譲渡させる)こともできる。

 だからこそ、この短時間で更なる総則が追加されたのだ。

 

 もちろん連絡手段が取りやすくなるという意味では伏黒たちにとっても利益だが、なによりも殺し合いに積極的な者が動きやすくなる状況は、喜ばしいことではない。

 

 そしてさっそく、それを利用する者が現れる──

 

 

 

 

 

「──!」

 

 全員が感じた、途方もない圧と呪力。

 それはホテルから数キロ離れた先にほとばしり、降り立った。

 

 黒く重たく無数にざわざわとした呪力と、荒々しくも研ぎ澄まされた雷のような呪力。

 

 それに反応し、いち早く動いたのは──

 

「おいガキ! おまえ、ケンジャクってやつは確か虫みてえな呪霊を操るつってたなあ!?」

「え? あーと、俺が出会ったのはその術式の呪霊の一体で、でかいムカデだったけど……確かにこの呪力、アイツの残穢が──ってもういねえ!!」

 

 虎杖が言い終わらないうちに、ギアッチョは素早くホワイト・アルバムを発動させて猫耳のようなスピードスケーターのスーツに身を包むと、そのままホテルを飛び出し、路面を凍らせながら走り去ってしまっていた。

 そのスピードは爆走する車よりも早く、あっという間に凍気の向こう側へ見えなくなってしまう。もはや、敵を追い続けるという怪物じみた執念がギアッチョを動かしていると言ってもいい。

 

『彼を追いかけたほうがいい。甘井凛の術式で多少回復したとはいえ、連戦で全快とはいえないその状態で羂索が解き放った呪霊と、もう一方の泳者を相手取るのは──』

 

「ッ行くぞ、伏黒!」

「分かってる!」

 

 来栖の頬から出現した「天使」の言葉に虎杖が動き、コガネで東京第1結界に現れたその泳者たちを確認し終えた伏黒も追いかける。

 虎杖の場合は、危険な場に飛び込んでいったギアッチョを追う善意もあるだろう。それも踏まえ、二人の本命は、呪霊の方ではない()()()()()()()にあった。

 

 しかし彼らは、突如転移してきた特級呪霊に感化されて活性化した大量の呪霊たちに行く手を阻まれる(足止めを食らう)ことになる。

 

 

 それはつまり──

 

 

 

 

 

 

 

「ギギギ、ガガッ……」

 

 黒沐死。死滅回游の泳者であり、羂索の術式から解放された呪霊。

 仙台結界にてドルゥヴの生存を導入条件にした休眠状態に入っていたものの、総則を利用し、この結界に転移することで休眠状態から疑似的に目覚めたゴキブリ型の特級呪霊である。

 不気味に擬人化させたような多眼の顔に、他の構造はしっかりとした昆虫という醜悪な見た目。場に飛び込んできたギアッチョは「うおッ!」と声を荒げた。

 

「ゴキブリだああ!? クソがっ! ふざけやがって!! こんなばっちいモン操ってたとか、ケンジャクって野郎、頭おかしいんじゃねえのかああ!!?」

 

 そこに、間を置かずして奔る雷鳴。

 

 稲妻は地上まで閃き、一匹と一人のまわりを煌々と照らす。

 

「へえ……あっちよりは楽しめそうかもな。ガッカリさせんなよ」

 

 それは強い呪力を察して降り注いだ、荒々しい強者の足音。

 雷神・鹿紫雲一。

 

 最悪を冠する虫、最強を求める雷神、最低気温を操る青年。

 三者による舞台が幕を開ける。

 

 

 

 




東京第一結界がめっちゃサクサク進んで総則追加しちゃったので、乙骨先輩がドルゥヴ倒す前に、パンダがカッシーに出会う前に、こうなっちゃったって感じで……………。

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