今はただ、君に感謝を(建前)高評価も感想もっとください!なんでもしますから!(強欲な壺)
「おい虫野郎! ケンジャクはどこにいやがるッ!!」
「ナゼ、何故、邪魔ヲ、スルッ!?」
「質問を質問で返すなァァっ!! 疑問文は疑問文で答えろとゴキブリの世界じゃそう教えてんのかあ!?」
ギアッチョは吠えながら、黒沐死が操るゴキブリの群れを凍り付かせていく。
しかし黒沐死にとって、
理由は、その人口密集度とゴミ排出量。ゴキブリの生息数は温暖な沖縄を優に超え、発生リスクも全国平均の3倍以上を誇る。
「腹ガ空イテイル、鉄ノ味ヲッ! ワタシニ!!」
彼の呼びかけにより瞬く間に黒い奔流がぐるぐると竜巻のように舞い上がり、
(俺の超低温の前じゃあゴキブリなんざ敵にもなんねーが、とにかく量が多いのがめんどくせーなァ!!)
減る気配のないゴキブリたちに、ギアッチョは盛大に舌打ちをこぼした。
(チッ、あの虫頭じゃケンジャクの居所を聞き出すのは期待できそうにねェな。……このゴキブリどもに侵入されても堪らねえし、無駄にエネルギーを使っちまう前に、もう本体を殺っちまうかァ~?)
飛び交うゴキブリにうっかり侵入されないよう、首の裏にある呼吸口は凍らせている。
もちろん空気は
吐いた呼気も凍らせる必要が生じるため、酸素などの解凍と二酸化炭素などの凍結を目まぐるしく行わなければならず、そもそも空気を凍らせること自体も含めて呪力をかなり消耗するため、長続きできる技ではないのだ。
黒沐死への尋問を諦め、駆除の方向に思考を切り替えたところで──
「──よお」
「!」
不意に、雷鳴。
「てめえらだけで始めてんなよ!」
不快な羽音の奥から聞こえてきた紫電が、虫たちを焼き殺しながらギアッチョに真正面からぶつかった。
電気をまとう拳撃が叩き込まれ、
一方で、叩き込んできた相手──雷神・鹿紫雲はその端正な表情に「あ?」と疑問府を浮かべていた。
「硬ェな、しかも……」
拳を真っ直ぐ叩き込んできた鹿紫雲の拳が、みるみる凍っていく。
さすがのギアッチョも雷速には対応できないが、すべてを凍り付かせる超低温の前には関係のないことだ。
「呪力を込めただけのモンかと思ったが……そのスーツ、
拳が氷漬けになっていくというのに、鹿紫雲はいたって冷静にその過程を見下ろしていた。
基本的に氷は電気を通しにくい性質を持っている。ギアッチョは
「誰だてめえ!? 邪魔だ!」
ギアッチョが素早く身を翻し、強烈なキックを叩き込もうとする。が、
「チ、チチ、血ィッ!!」
黒い奔流を隠れ蓑にして近づいてきていた黒沐死が、その手に持った『爛生刀』をギアッチョと鹿紫雲めがけて振り下ろしてきた。
「雑魚はどいてろ!」
鹿紫雲の電気を纏った圧倒的な呪力放出。それが黒沐死の腹を突き破り──
「虫にも「雑魚」って適用されんのかあァ〜!? つうか最初に考えた奴は、こっちの都合で低級扱いされる小魚を可哀想だと思わねえのかよッ!!」
──誰に怒っているか分からないギアッチョの超低温が、『爛生刀』の刀身の動きを止める。
攻撃が成功した際に卵を産みつけることができる死と生を分かつ魔剣も、その卵すら凍って死滅してしまえばただの鈍器である。
周囲を飛び交う同胞たちも次々と焼き焦げて塵と化し、凍らされて結晶に散っていく。
仙台結界にいて
それは間違いであったのだと、漸く知る。
「ナゼ、ナゼッ!」
荒ぶる雷と氷に翻弄される特級呪霊は、三度疑問を吐き出す。
更なる天敵たちに向けて。
それに応じるように、大気を裂く高温の雷撃とマイナスなど軽く上回る超低温とが、思考させる間もなく黒沐死を穿った。
「血肉! マダッ、食ベテナ──」
「うっぜえ! とっとと冬眠してろォ!」
満身創痍の黒沐死に触れたギアッチョがその身体を急速冷凍させ、黒沐死の背後に回り込んだ鹿紫雲による強烈なサマーソルトキックが、氷のオブジェと化した黒沐死を粉々に破砕し、電気を弾けさせた。
『
「ったりめえだろ、
過冷却した時点で
出現したギアッチョのコガネが軽快に告げるが、ギアッチョは点数はおろか消滅する黒沐死にも支配から解け散り散りになっていくゴキブリにも目を向けない。
凍らせていた呼吸の穴を解き、そちらに使用していたエネルギーすべてを冷却能力に回す──そうして、戦意を滾らせて飛び込んできた鹿紫雲の如意を受け止めた。
「チッ!」
電気のような圧力は静電気程度しか感じないものの、一撃一撃の技は非常に重い。
スーツに衝撃が届ききる前に、如意を凍らせて
超低温は、強力な能力ではあるものの、完璧な防御というわけではない。
それは、瞬間冷凍とはいえ
温度を下げることで熱運動を鈍くし、最終的に分子の運動エネルギーすら止めてしまう──しかしそれは、時を止めるように一瞬でまるごとすべてを凍らせるわけではなく、自分を起点としたその地点から冷やしていくというもの。
だからこそ、たとえば至近距離から強烈なラッシュを食らえば装甲にヒビくらいは入るだろうし、銃弾を受ければのけぞることもあるだろう。
最低温度においてすべての物質は運動をやめるが、それに到達するまでの衝撃を殺すことまではできないのだ。
さらに、「あ?」とギアッチョは目を眇めた。
凍らせたはずの鹿紫雲の腕が、もとに戻っている。
(あいつ……
フル稼働しすぎた家電が熱を持つように、電流を流した際に損失となった抵抗分が熱に変換されるのを利用したのだろう。
「便利だなあ電気ってのはよお!!」
「照れ殺しか? 褒められるのはもう慣れてるんでなッ!!」
凍らせた如意棒ごと鹿紫雲を放り投げ、荒廃した建物に叩きつけた。
如意棒から手を放し身を捻って器用に回避した鹿紫雲は、その如意棒を足場にして跳躍すると、ギアッチョの脳天めがけてかかとおとしを繰り出す。
「無駄だつってんだろうがあ!!」
雷速を伴う相手の動きが見えなくとも、衝撃自体は殺し切れずとも。そうなるまえに凍結させて、凍死させてしまえば何も問題はない。
庇った腕の装甲に重い足蹴りを食らいながらも、ホワイト・アルバムは怯むことなく超低温を発動し続け、鹿紫雲の脚を凍らせる。
「チッ、めんどくせーな!」
足が凍り尽きる前に鹿紫雲が身を翻し、素早く距離を取っていく。
深追いはしないあたり、戦闘狂いに見えて冷静な判断はできるようだ。
「つうかよお、なんでてめえは俺に突っかかってくんだあ!? そんなに点数が欲しいなら譲ってやるよお!」
「雑魚の点なんかいらねーよ。戦いてえから戦う、そんだけだ」
「答えになってねえんだよ! クソっ、クソッ!! 呪術師ってのはどいつもこいつも頭がイカれてんのかあ!? 超ムカつくぜえ~ッ!!」
ギアッチョの怒りを無視し、鹿紫雲はニヒルな笑みを浮かべる。
「……だがそうだな、認めてやるよ、お前は強いってな」
「あ? 喧嘩売ってきたくせになンだてめェ? 急に命乞いか?」
「その逆だ。
「お膳立てだあ?」
空気がパチッ、と爆ぜる気配。
瞬間、低く唸るような雷鳴が轟いた。
それは、鹿紫雲からではない。
ハッとギアッチョが見上げる間もなく、上空に立ち込めていた
「なッ!」
明滅する視界。
一瞬の稲妻によって、周囲の廃墟が真昼のように白く浮かび上がる。
黒沐死が手繰る、呪力によって強化されたゴキブリによる猛烈な嵐。
それは空気を温め、上昇気流を生み出していた。
そうして上昇する水蒸気はギアッチョの能力で
そして落雷とは、マイナスの電荷がプラスの電荷に流れる放電の事象。
電気と同質の呪力特性を持ち、自らの呪力を電荷分離することを可能とする鹿紫雲は、マイナス電荷を地面方向に放電しつつ、偏らせて蓄えたプラス電荷により、自身に落雷を誘導させたのだ!
それが、どういうことか──
「音量上げろォ! 生前葬だ!!」
「──!」
重く激しい音楽のように雷は轟き、空気を揺さぶる。
大量の電撃を放ちながら、超低温に向かって真っすぐに疾駆する!
圧倒的な呪力放出。
アスファルトが溶け落ち、煙が上がり、風が凪いだ。
理数科目万年赤点Fラン文系には、この戦いを描写させるのは無理があったのでは?ボブは訝しんだ。(なんでも許してくださいなんでもしますから)
次回で、「本編」は最終回となります。