ノットネゴシエイト・サマナー   作:Nピーマン

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ノットネゴシエイト・サマナー

 

物心ついた頃には、羽虫のようで、とても虫の大きさではない、かといって動物とは異なる虚な何か。それを認識する事が出来ていた。

虚な何かは年を経る事でより清明に認識するようになり、それらはやがて視えるようになった俺に牙を剥いた。

俺はいつの間にか霊能者のような存在になっていたらしい。

しかし、霊能者と言えるほど特別な能力に恵まれている訳でもなく、ただそれに触れたり、言語を理解し、会話出来る程度。能力としてはそれだけだ。それ以外はどうしようもなく凡人である。

 

だが、それでも異能には違いない。異能を持つ人は霊に取り込まれやすいと、つい最近知り合った霊能者の人に聞いた事がある。

俺が認識しているそれらが霊なのか、それとも別の何かなのかは知らないが、確かなのは、例に漏れず俺もそれらの標的である。という事だ。

言葉が通じようとも、通じ合えるとは限らないのは人もそれらも同じ。

現代社会を生きる中で大凡負わないであろう裂傷や身体のあらゆる骨を折る怪我をいくつも負いながらも、逃げ仰せて、隙を見て初めて人外のそれをぶち殺すに至った。18にして、殺しの処女卒業を果たしたのだ。

 

そのぶち殺した霊の一匹がこう言っていたっけ。

「マガツヒ袋の分際で」と。

マガツヒ。その言葉の意味は分からなかったが、一つだけ理解できた事がある。

 

こいつらは俺たち人をただの餌だと思ってやがる。

 

ひたすらに、傲慢であった。

自分達が、まるで上位者であるかのように振る舞い、そして人をただの餌としか認識していない虚な存在に怒りよりも笑いが込み上げてきた。

更に、俺が可視化出来ていた霊達が、人の世で伝説として語られている化け物共、所謂悪魔という存在である事を知った後、その化け物共の傲慢さについぞ笑いが決壊した。

ただただ、俺は嘲笑する。

 

だって仕方ないだろう。

人間の認知、想像や信仰によってようやっとその虚な存在を得られている程度の分際で。それらを糧として生を保つ事が叶っている分際で、勝手に優劣を決め、人を下に見て上位者であると驕っていやがるのだ。

 

ひとしきり笑い、スンと真顔になる。

俺は自分が殺した悪魔の残骸を見た。すでに赤い何かに変質し、空を舞っている。

 

俺たち人間とは死に方は異なるが、いずれ土へと、あるいは塵へと還るのは人間も悪魔も同じだ。

死は平等に訪れるのだ。

 

人を襲えば、自分自身もまたそれらに追われる事になる。

 

そして、同じ末路を辿るという事を、自分の墓穴を掘らねばならぬ事をどうも悪魔達は忘れているらしい。

 

だから人を襲う、それらの悉くに知らしめてやるとしよう。

 

自分達は上位者なのではない。死という平等があるただの一生物なのだと。

 

その身を持ってして。

 

 

 

 

 

そして、現在。

俺は人気のない路地裏で木端悪魔と対峙していた。

と言っても相手の悪魔は虫の息だが。

なんて事はない。

ただ、得体の知れない物が出る。とか言う噂話を元に足を伸ばしたら、物陰から襲ってきた。それを返り討ちにした。それだけだ。

 

俺は手に持っていたバールのような物を振り上げる。

 

「ひぃ、待っ、待って!待ってよぉ。殺さないで・・・。」

 

俺を襲ってきた悪魔の少女は命乞いをしてくる。

 

「襲ってきたのはお前の方だろう。良かったな、お目当てのマガツヒとやらにお前自身がなれるんだ。」

 

「そんなの望んで無いよ〜!えーん。お兄さんは悪魔を殺して平気なの!?」

 

「割と平気だぞ?」

 

「え?」

 

「え?」

 

何、その反応。

 

「え、普通戸惑う所なんじゃないの。」

 

いや、だってさぁ。

 

「相手は殺しにかかって来るんだよ。なら、こっちも殺す気で行かないとさ。人だったら、殺すと法律に触れるけど、悪魔だったら法律に触れない訳だろう?だったら、思う存分にやっちゃえ〇産出来る訳じゃん?」

 

「悪魔差別だー!!」

 

やかましい。これは区別だ。そもそもお前ら俺らを餌として見てる節があるだろうが。

何が『悪魔にも人権を』だ。何処に向けて叫んでやがる。

 

・・・・何か白けてきた。

襲ってきた悪魔と言えども、外見はただの羽が生えただけの民族衣装に身を包んだ少女。殺すには忍びないのは確かだ。

 

・・・油断すれば脳みそ吸われそうな予感がするが。

 

「で、どうしたい?殺して欲しくないんだろう?」

 

「・・・それは悪魔会話による交渉?」

 

悪魔会話、聞いた事があるな。

確か、悪魔に物を要求するために、自分の生命力や自分の所有物を交換するっていう交渉の事か。

 

「この状況下で交渉とは良く言えたものだな?」

 

俺はバールをチラリと見せつける。

対等な立ち位置にいてこそ成り立つのが交渉だろう。場は白けたが、ここに誰がいて、誰かが俺達の顛末を見ている訳でもない。色々な倫理触れようがこいつは悪魔。このまま殺してやってもいいのだ。

 

「わー、わー!!嘘、嘘よ!!だからその痛いのを見せつけないでー!」

 

「なら後10秒待ってやる。何を持ってこの場を収めるか言ってみろ。」

 

はい、よーいスタート。と言うと悪魔は途端に慌てだす。

 

「え、え?急に言われても分らないよー!!ま、魔石いる?」

 

ふざけてんのか?そんなん悪魔の残骸から腐る程拾っているわ。骨折や裂傷もある程度回復してくれる便利な物だけどな。

 

「はい、後5秒。」

 

俺はバールを振り上げる準備をし始める。

秒数は残り少ない。自棄を起こして襲い始める可能性があるからな。

 

「えーと、えーと、傷薬、チャクラドロップ、うぅぅ。」

 

おろおろしながら涙ぐむ悪魔の少女。

残念、それらは既に悪魔共からカツアゲして持っている。

 

さぁ、懺悔する時間だ。祈れ。

悪魔に祈る神なぞいるかは知らんがな。

 

 

「3、2、1」

 

 

0。

 

 

という前だったか。

 

 

「お、お兄さんの仲魔になる!!」

 

ピタリと、バールで悪魔の少女の顔面を叩き割る前に止める。

仲魔、悪魔を自分の同胞、仲間として引き入れる事が出来るとは前に何処かで聞いた事があるが。同胞、つまり悪魔と人間、その立場を対等とした物か。

 

ふむ・・・。

 

 

「いいだろう。今日からお前は俺の仲魔だ。」

 

 

俺はバールを引っ込ませた。

 

 

「うぅ、助かった。助かったよぅ・・・。」

 

 

へなへなと擬音が付くような様相で地面にへたりつく悪魔の少女。

 

 

「最初っから襲わなきゃ良かった。それだけの話だろう。」

 

「うぅ、ただの人間から精気をちょっぴり貰うつもりだったのに。」

 

目論見はどうあれ、襲って来る奴らは片っ端から殺すから。

ともあれ、仲魔になったからにはその傷をどうにかせんとな。

俺は悪魔の少女に、それらを投げ渡す。

 

「それで体力でも回復しとけ。」

 

「これって・・・・!!宝玉、チャクラポッド!?」

 

「ああ、そうだが?」

 

「え、これ、結構な貴重品じゃ・・・?」

 

またもやおろおろし出す。悪魔少女。

確かにうん。宝玉とかチャクラポッドは貴重だ。

体力も全快するし、魔力とやらを大幅に回復してくれる薬は、ある程度の悪魔を殺し、奪わないと手に入れられない。だが、怪我を負ったまま連れまわすのは趣味じゃない。

 

「次の悪魔の出現スポットへ向かうんだ。早く使っちまえ。」

 

「う、うん。というか、切り替え早いね。」

 

「もう殺し合うって仲でもないのだろう?それとも騙し討ちでもするか?」

 

「う、ううん!?じゃあ遠慮なく使うね・・・?」

 

言われたとおりに使う悪魔少女。

みるみる内に、身体の傷が修繕されていく。

・・・思ったんだが、ボロボロの服まで回復するのはどう言った仕組みなんだ?

 

「キャハハ!!すごーい、身体がすっごく楽になったー。」

 

それは何より。さて。

 

「互いに自己紹介としよう。俺は、吉井宗一郎。なんてことない。お前ら悪魔と話と暴力での対話が出来る程度の存在だ。」

 

「私は凶鳥モー・ショボー。よろしくね。サマナー!!」

 

モー・ショボー。確か、モンゴルに伝わる少女の怪異だったか?

何でまた日本に海外の怪異が、いや色んな海外文化やミームに汚染された日本だからこそか。

というか、サマナーか。酷く違和感だ。

 

「どうしたの?」

 

「いや、サマナーっていうのがどうも違和感あってな。俺は悪魔召喚士でもなんでもないぞ。」

 

なんなら、悪魔を召喚・送還するような技術もない。

 

「んー、そっかー。そう言えばソーイチロー、COMP持ってなさそうだったしね。」

 

COMP、それが悪魔召喚士に必要な物か。

現状特に必要ない物ではあるが、今後悪魔共を相手取るなら、こいつらの手もある程度は必要になるだろうし、手に入れて損はないか。

 

「そのCOMPとやらを手に入れるにはどうしたらいいか、分かるか?」

 

「うーん、そうだなぁ。ある程度大きい異界だったら、もしかしたら落ちてるかも。」

 

落ちているか。詰まる所、前の所有者がいる。遺品みたいな物か。

 

「遺品に触れても何も問題はないか?」

 

「それ、悪魔を殺し回っているソーイチローが言う?」

 

・・・それもそうか?今更遺品に触った所でどうかなるって訳でもないか。

 

「うわ、納得しちゃったよ。今の怒られると思ったのに。」

 

「いや、事実だしな。」

 

なら、早速その異界とやらへと赴く事としよう。

 

 

 

 

 

「因みに悪魔の出現が噂されている場所をスマホの地図に書き記しているんだが、現在地がここで。一番近い異界は何処だか分るか?」

 

「えぇ、こわ。どんだけ悪魔を殺したいの。ジェノサイダーじゃん。」

 

 

否定はせんよ。襲って来た限りではあるがな。

 

 

 




【人間:ジェノサイダーが 一体 出た!!】
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