ノットネゴシエイト・サマナー   作:Nピーマン

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ワンサイドゲーム&邂逅

 

「野郎どもぉ、奴らはマガツヒをたらふく持ってやがるゾォ!!残さず喰らいつくせぇ!!」

 

ピシャーチャの号令の元、俺らを喰らおうと押し寄せる悪鬼の大群。つかさず俺は破魔の小秘石で対応する。

だが、前列の数体を浄化したに留まり、その他はしぶとく耐えて生き残ってやがる。

チッ、流石に大群相手じゃ焼石に水か。破魔の小秘石がいくつあっても足りやしない。

ともなれば、こちらもいくらかの損害も考慮した戦いをするしかないか。

 

俺は肉薄してきたガキの大口にバールの先を突っ込み、そのまま持ち上げてメリーゴーランドの如く相手を巻き込みながら、仲魔の二体に号令を放つ。

 

「モー・ショボー!範囲魔法で悪魔共を牽制!牽制して相手との距離が取れたら、補助魔法で俺たちの能力強化に徹しろ!

エンジェルは後方でひたすら破魔属性魔法を撃ち続けろ。俺たちが傷付いたら範囲回復魔法でリカバリーだ。」

 

「キャハハ、分かった〜。『マハザン』!」

 

「了解しました。『マハンマ』!」

 

二体とも号令通り攻撃魔法で悪鬼の大群へ攻撃を繰り出す。攻撃魔法によって悪鬼の大群の悪魔どもは消し飛び、または浄化しているが、まだ前列の悪鬼どもの一部を消し飛ばしたに過ぎない。

が、これで少しは相手との距離が空いた。

 

「いくよー、『スクカジャ』!」

 

俺に向けてモー・ショボーが補助魔法をかける。

身体が軽い。恐らく回避や攻撃の命中を補正する魔法か。こりゃあいい。

前列で魔法で仕留めきれず、取りこぼした悪魔が俺に襲いかかってくるが、するりと攻撃を避ける事が出来る。

おまけに狙いにくい頭を確実に叩き割る事が出来る。補助魔法さまさまだ。

再度攻撃魔法を放ち、仕留められなかった悪魔を俺が殺す。

この攻防で悪鬼の大群の前列はほぼ壊滅した。

 

前列が壊滅したにも関わらず、未だ俺らを仕留めきれないのに痺れを切らしているのか、ピシャーチャは悪鬼達に新たな号令を飛ばす。

 

「チィィ!小賢しいぃ!野郎どもォォ!その鬱陶しい天使と鳥を狙えぇ!!殺せば途端に瓦解するぞぉ!!呪詛を飛ばせぇ!!」

 

号令と共に悪鬼どもは蠢きながら何かをしはじめた。

ある悪魔はひたすらに呪禁のような何かを呟き始め、ある悪魔は何かに祈るような仕草を、ある悪魔ひたすらに恨み辛みを呟きし始める。

そうしている内に異界全体から大群に向けて、大量の赤い虚な物質、マガツヒが集結する。

 

大量のマガツヒは悪鬼達によって、次第にドス黒く、禍々しい呪詛の塊へと変貌を遂げていく。

 

マッドなような癖して、意外と冷静らしい。

腐っても異界の主という訳か。

恐らく、呪詛はエンジェルのような天使にとって弱点だ。

 

破魔魔法を放つ者がいなくなれば、俺の秘石のみに頼る状況になってしまう。秘石の残量も少ないし、状況が逆転する可能性・・・。

と言うより、あれだな。

この攻撃を許せば単純に全滅する可能性がある。

あの呪詛の規模は恐らく全体への物だ。

 

野郎、マガツヒを喰らうとか言っておきながら俺たちを塵にする気満々じゃねぇか。目的が殺す事に一点集中してやがる。

やっぱりどこまで行っても所詮はマッド思考の悪魔か。

 

さて、どうすっかなぁ。

マガツヒは既に集結してる。

一匹、二匹殺した所で止まりゃしないだろう。

魔反鏡だったらある程度持っていたんだが、一体一体使う暇もない。

 

ともなれば、手段は一つしかない。

貴重品だが言ってる場合じゃ無いし、しゃあねぇか。

 

『マハムドオン』

 

こうしている内に悪鬼どもが集結させた強力な呪詛が放たれた。

俺たちに向けて放たれるは呪詛の奔流。

生きとし生けるもの全てを蝕み、腐敗させる呪詛が襲いかかる。

 

「ひぇぇ、ソーイチロー!これ、ダメな奴じゃ・・・!」

 

「ひぃ、呪殺、私、溶けてしまいます!」

 

各々何か宣っているが、それを俺は無視してそれを掲げる。

 

掲げた途端、呪詛の奔流が俺の目の前で綺麗な放物線を描きながら霧散していく。それはモー・ショボーやエンジェルも同様であり、呪詛は彼女らを避けるようにして、やがて霧散した。

 

「な、何ィィィイ!馬鹿ナァア!?何故呪殺が効かないィィイ!?」

 

「テトラジャの石って言うらしいな。これ。あらゆる呪詛を払うってんで高額で霊能者から買い取ったんだが。効果覿面だったな。」

 

効果を使い果たしたテトラジャの石は塵となる。

 

「モー・ショボー、エンジェル。いつまでへたり込んでいる?戦闘は終わっていないぞ。引き続き攻撃魔法を放て。機を見てモー・ショボーは俺に再度補助魔法を掛け直せ。」

 

「え、あ、うん。分かった!」

 

「わ、分かりました!」

 

 

「いいか、こいつらを一匹も逃すな。人間を舐め腐った事を地獄の底まで後悔させてやる。」

 

 

 

 

その日、私はとある事件の調査に赴いていた。

ここ最近、その地域に限り十人以上の失踪者が出ているという。あまりにも多い数の失踪者と痕跡、残留しているマガツヒから悪魔関連の事件であると断定。ヤタガラス上層部は私に事件の調査及び事件解決を依頼した。

 

悪魔関連の事件は久々だ。

先代から引き継いでから、大した実績を上げるわけでもなく、木端悪魔との戦闘のみをこなす毎日。そのせいか付けられたのはお飾りの当代という、他候補達からの陰湿極まりない陰口。

それは、先代から引き継いだ名を汚されている事に他ならず、同時に私の自尊心を大いに傷つけた。

 

故に、この事件を解決すれば、皆の見る目が変わる。お飾りの当代などと口ずさむ事もされなくなる。

 

当代として恥のない、立派に勤めを果たして見せる。

 

そう、意気込んでいたのだが。

 

おかしい。

 

私は呟いた。

件の地域へと足を踏み入れ、失踪事件の犯人の悪魔の物と思わしき異界に入ってみれば、そこは夥しい数の外道族の悪魔の死骸が転がっていた。

 

ある悪魔は鈍器のような何かで頭を叩き割られ、

ある悪魔は破魔で浄化され断片のみが床に転がっており、

ある悪魔は衝撃属性で切り裂かれたような傷を負って死んでいる。

 

この状況下で分かることは、既に何者かが入り込んで異界を制圧しに掛かっているという事。

 

だが、一体誰が?

 

ガイア教?

ガイア教は弱肉強食主義。誰が死のうとそれは自分が弱かったからという完全実力主義故、解決に動くとは考えにくい。何より奴らが破魔属性の攻撃を使うとは考えづらい。

 

ではメシア教か?

異教の人々のためにわざわざテンプルナイトが動くだろうか?それに奴等の姿は非常に目立つ。報告にないのはおかしい。

 

ならば、そのいずれでもない第三勢力。

詳細は一切不明。異界に入り込む理由も不明。

 

 

分からないことが募るのみだが、私は首を振る。

いずれにせよ、今は任務に集中すべきだ。

油断は死に直結する。

異界を制圧している者がどうであれ、もし国に背く敵であれば討つ。それだけだ。

 

 

足を踏み入れれば、更に悪魔の死骸が数を増す。

ほぼマガツヒへと変貌を遂げている悪魔を見ると、既に件の侵入者が入り込んで幾ばくか時間が経過している事が伺える。

 

私の小さな付き人からは『気をつけろ』と声がかかった。

 

異界の通路の奥から、ペタペタと足音が忙しなく聞こえてくるかと思えば、ガキの集団が酷く焦ったように、何かから逃げ出すように走って来るではないか。

 

 

「ひぃぃぃ!!クソ、やってらんねぇぜ。あんな化け物相手にしてられるかぁ!!何が楽して人を食えるだ!!ピシャーチャの野郎、話が違うじゃねぇか!!」

 

「・・・!?何だてめぇ!あいつの仲間か、クソったれ!!ヤケだ、てめぇもろとも道連れだぁ!!!」

 

どうやら、件の犯人の一味らしい。

私は有無も言わずに刀を振るい、襲って来るガキ達を一刀両断した。

 

 

「クソ、なんだってんだ・・・。この異界に、サマナーが二人だと?!とんだ欠陥だらけじゃねぇ・・・かぁ・・・!!」

 

 

恨み言を放ちながら絶命するガキ達を他所に、刀に残ったマガツヒを払い納刀する。

悪魔達の最期の言葉に疑問を覚えるも、更に奥に足を踏み入れていく。

徐々に、奥の通路から悪魔達の戦闘音や悲鳴が聞こえてきた。

 

 

『ヒィィィィ、ば、バケモンがあああ!!俺様の部下共の殆どを、ち、塵に還しやがってェ!!来るんじゃねぇぇぇ!!』

 

 

異界の主か何かか。悪魔の悲鳴が聞こえる部屋に私は刀を構えながら入り込む。

 

 

すると、そこには、大量の、まさに大群とも言える悪鬼達が地に伏し、今正にその首魁であろうピシャーチャにトドメを刺さんと得物を振り上げる血とマガツヒに濡れた男が立っていた。

 

「これは、一体・・・。」

 

思わず声を出してしまう。

凄惨な場面だが、それ以上に、この光景を生み出したのが目の前の男である事に驚愕を隠せない。一般人の私服に、手に持っている得物はただのバール。どう見ても一般人の中でもアウトローに位置するような者にしか見えなかったのだから。

 

 

「あ?誰だアンタ。危ないから離れた方がいいぞ。」

 

 

今からこいつを殺すから。

 

 

そう告げて、ピシャーチャを手に持っているバールで殴り始める。

横へ薙ぎ、縦へ叩き、斜めから斬るように殴り、間髪入れず無言で殴り続ける。

最早悲鳴を上げる事も許さない程の殴打。

周りに飛び散る肉片やマガツヒ。

その凄惨な光景に、思わず嘔吐いてしまう。

 

暫く経ち、

 

 

「ぎ、ギィィィィィイ・・・・。もう、嫌だ。た、助けてくれ・・・。」

 

 

所々、マガツヒへ変質し始めたピシャーチャは命乞いを、助命を懇願し始める。

 

男は「そうか、じゃあな。」とそれだけ言うと、手に持っていた破魔の秘石を当て容赦無く押し当て、ピシャーチャを浄化した。

 

悲鳴を上げながら浄化されるピシャーチャを確認したのち、バールに残った血糊、マガツヒを払う。

 

そして、

 

「何だ、アンタら。まだいたのか。さっさと出た方がいい。主がいなくなったんだ。もう少しでこの異界は閉じちまうぞ。」

 

 

そう、何気なくそう言ったのだ。

 

 

 

「貴方は、何者ですか。」

 

 

背を向けて異界の外へ繋がる出口を目指す、二体の仲魔を連れて出る男は確かにこう言った。

 

 

「吉井宗一郎。ただのデビルサマナーだ。」

 

 

と。

 

 

 




道中・・・。

「あ?なんだこいつら。俺が道中殺した奴じゃねぇな。死因も違う。なんだ、あの群れから逃げた奴らか?うわ、恥ず。一匹も逃すなって豪語したのに逃しちまってたのか。」

「えぇ。道中殺した悪魔から大群の悪魔の顔まで覚えてるとか。引くわー。」

「正しく完璧なまでのジェノサイダー、ですね。」
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