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巨大な試験管が立ち並ぶ最奥。
淡い緑色の発光に以外に一切光源のないその巨大な部屋の中央に、その男は取り巻きの二人と共に佇んでいた。
「ふむ、想定よりも早かったですね。貴方がこの施設の最奥たるこの部屋に辿り着く事は予想がついていましたが、成程。薄汚い地に落ちたカラスが紛れ込んでいたのか。」
張り付けた笑み。その目には嫌悪の感情が宿っていた。
その嫌悪の視線は、俺以外の二人に向けられている。
「人間はかつて神々と近しい存在であった。しかし、科学の進歩につれ、人間はあまりにも弱くなり過ぎた。退化し過ぎた・・・。近年では唯一神を信奉するメシア教が我が国に進出し、民達を神の都合の良い信徒へ変えようと洗脳を施していると聞く。
これは一種の侵略だ。
かつて戦国の世に、外つ国より一神教が伝来し、人々を神を信奉するよう先兵へと仕向けようとした時代があった。その時は国の神々と人々が結託し跳ねのけたが、今の時代に唯一神の教えを跳ねのける程の力を人々は有していない。
メシアの教えは人々の思想を蝕んでいく。
そんな暴挙が許されてよいのか?
否・・・!!」
カッと目を見開き、張り付けた笑顔から一転し憤怒の形相を浮かべた。
「許されてなるものか。断じて許されてなるものか・・・!!
だが、それを人々に訴えた所で、受け入れる訳もない。誰もが今の生活を崩されることを恐れている。その資質がある者でさえも。戦う事を皆恐れている。ならば、誰かが手を染めるしかないのだ。」
『それが悪魔と人間の合一。悪魔人間の研究か。』
業斗の問いに男はニヤリと嗤う。
「そうだ、地に落ちしカラスの罪人よ。人間と悪魔の合一。悪魔の力を宿し、人間の知恵と技術を兼ね備えた究極の人造魔人。メシアの造り出す人造の聖女、救世主に匹敵する生物を生み出すのが我々の目的だ。その様子では、とっくに我々の行動は筒抜けだったようだがな。我々も一枚岩ではない。ガイアの異分子が我々の情報をリークしたんだろうが、全く忌々しい。」
男はフンと鼻を鳴らす。
『貴様らガイアが護国を口にするとはな。片腹痛い。その国の守るべき無辜の民を犠牲にして何が護国か!』
「ならば、護国の要である貴様らヤタガラスのその様はなんだ?外つ国との戦争に負け、占領時にあらゆる組織が解体される中、組織として何とか形は生き残った物の、既にかつての民を守るべき力も失い。
戦争によって大家の有望株達を失い。
最早形骸化したヤタガラスにどうして護国を委ねられる?」
「それでも、無辜の民を犠牲にしていい理由にはなりません。貴方達のやっている事は間違っている。」
ライドウの否定に、男は更に嘲笑を深めた。
「間違っている?笑わせるな、20代目葛葉ライドウ。私達にこうまでさせるに至ったのは全て貴様らの無力がためだ。国内の他のガイア共すら黙らせきれず、メシアの侵攻をただただ見守るしかない貴様らの無能がためだ。護国のためと息巻いておきながら口先だけの愚か者共が。私達が間違っていると罵る資格すら貴様らには無いと知れ!!」
「く・・・。」
『ぬぅ・・・。』
反論できないのか、黙り込んでしまう二人。レスバ弱くね。もっと何かあるだろう。
「私は他のガイア共とは違う。護国の礎になれるのであれば命すらいらぬ。私は必ず力を手に入れやり遂げて見せる。」
「そして、そのためには、彼が、器が必要なのだ。」
歯噛みする二人を他所に狂気的な表情で俺の方に振り向く。
「彼には人造魔人のための器となってもらう。国の悪魔、外つ国の悪魔関係なく殺し回る尋常ではない程の悪魔に対する執念。それを支える強靭な精神、強靭な身体。資質は十分だ。我々が召喚しようとしている悪魔の器にね。彼であれば、きっと精神を悪魔に乗っ取られる事無く、強大な悪魔人間に成りうるだろう。」
勝手に理想をくっちゃべりながら、俺へと近づいてくる。
「貴方にも分る筈です。悪魔に翻弄され続けた貴方には。
えぇ、えぇ。貴方の過去については調べましたとも。非常に辛い思いをなされましたね。同情いたします。だからこそ、私は貴方を勧誘致します。この国はこのまま先を行けば駄目になる。
メシアの天使達が勢力を拡大し、それを防がんと混沌の悪魔達がこの国への侵攻を強める事でしょう。この国は海外勢力の決戦の場になる。何も知らぬ人々は、尊厳を奪われ、更に人々は死に絶えていく。ならば力を得るしかない。人間の力を越え、悪魔すら越える存在に。貴方ならそのような存在になれる。
私の手を取りなさい。貴方を超常の存在にして差し上げましょう・・・!!」
狂気的な表情を無理矢理笑顔を作り出したような、気味の悪い表情を受かべる男。
その男に俺は、
「うるせぇ!!!」
「ぐはああ!!!」
鉄根で横顔を振り払う事で答えた。
吹き飛ばされ、元々の定位置まで吹き飛ばされた男に取り巻き共が慌てて走り出す。
あー、すっきりした。ベラベラベラベラ、煩いったらありゃしねぇ。
思想を話せば、俺からの同情を得られると思ったのか?馬鹿馬鹿しい。
「な、何故・・・!!」
「そんなまさか、みたいな反応するんじゃねーよ。一ミリも同情も共感も沸かねーわ。お前らみたいな殺人集団にはよ。」
「・・・所詮は、貴方もそこの薄汚いカラス共と一緒という訳ですか。手を汚さず、ただ見ているだけの無能共と・・・!!」
は?馬鹿か?こいつら。
「護国がどうとか、そう言った話には興味がてんでないんだよ。お前らは人の尊厳をないがしろにした。何をお題目に上げようが、お前らのやった事はただの人殺しだ。それに変わりないだろうが。
てめーらも、悪魔と同じ悪意そのものだ。同情を武器に、人の事を分かったつもりでその心の隙間に入り込む悪意だ。
大層な理想を掲げながら、やっている事がロクデナシなお前らが俺は気に入らない。だから叩き潰す。
ただそれだけの話だろうが。」
俺は業斗とライドウに目配せする。
「それに、なんだって?ヤタガラスのせいで自分達が手を染めざるを得ない?そっちの方こそちゃんちゃら笑わせるぜ。理想を掲げておきながら、何かにつけ自分達の行動を人のせいにして自分達の責任をあやふやにしているじゃねぇか。」
「・・・何が言いたいんです?」
男の問いに俺は嘲笑を返しながら答えた。
「全てが中途半端だってんだよ。自分の行動に責任が持てない、偽善者にもなれない無法者が。」
ブチリ。何かを千切るような音が部屋に小さく響いた。
男は額の血管から血液を流し、憤怒の形相を浮かべている。
「・・・いいでしょう。貴方の事を勧誘するのは止めだ。
本来なら貴方を生かしたまま、器になって貰いたかったのですが・・・。
貴方の身体は、貴方が死んだ時に頂く事としましょう・・・!!」
ゆらりと。
幽鬼の如く男が立ち上がると、呪詛のような何かを呟き始める。
そして、その呪詛を呟き始めた時と同じくして、取り巻きのガイア教徒達の身体が変質していく。ガイア教徒達の身体はゴキリと野太い音を立てながら膨張し、顔もみるみると人の物から牛頭、馬頭へ。
見上げる程の巨大な悪魔へと変貌を遂げた。
「妖鬼ゴズキ、妖鬼メズキ。地獄の門番足る強力な悪魔。そしてそれらを人の器に入れ人造悪魔の成功した例が彼らです。我々の最高傑作と言えるでしょう。さぁ、人造魔人共。我らに歯向かう愚か者共を叩き潰せ!!」
号令を上げる男の元、人造魔人達は巨大な棍棒と斧をそれぞれ構え始める。
「来るぞ、ライドウ。今のこいつの戯言で尻込んでないだろうな?」
俺のその言葉にライドウはむっとした表情を浮かべる。
「・・・無論です。あの男のしている事に正しい事なぞない。私の信念に揺るぎはないです。」
『うむ、我らは護国の砦として奴らと対峙するまでよ。・・・だが、助かったぞ。礼を言う。』
・・・何に礼を言っているんだか分らんが。
まぁ、決意がぶれてないのなら、それでよし。
さて、
「奴らをぶっ潰す。手を貸せ。ライドウ!業斗!」
「応!!」
『承知!!』
【人造魔人:ゴズキLv32 が一体 出た
人造魔人:メズキLv30 が一体 出た
外道:ガイア教徒Lv25 が一体 出た。】