最強の妹   作:タニコウ

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二週間ブリーフ。他作品の更新とちょいと前の話を修正したり設定を見返してました。
実はこの作品って、突貫工事で作った作品なんですよね。まぁ、1話の前書きを見れば分かると思いますが。なので、ガバが多いんですね(言い訳)。許して…


#12 天野氷華と家族

 

 三人で家族になったあの日から、私は兄から剣術を教わったり呼吸についての指導をして貰っていました。私に初めての痣が発言したのもその時ですね。確か、兄に教わってから一年も経ってなかったと思います。

 日中は、朝に起きてからは朝餉と夕餉を除いて常に山の中を兄の背目掛けて駆け回るか、木刀を握っているかのどちらかでした。たまに、布団を抜け出して無我夢中に木刀を振る余り、少しだけのつもりが夜通し振り続けるなんてこともしました。その時は兄の叱責と鍛練の禁止を言い渡されてしまいましたね。私は本当に刀を振るのが大好きだったので、年相応に駄々を捏ねながら大泣きしました。

 

『仕方ないじゃん。にぃに勝ちたいんだもん』

『これ、氷華。縁壱はお前のことを思って叱ったんじゃよ』

『むぅ……』

『俺に勝てたところで、兄上がいるから最強にはなれない』

『ぐぬぅ……絶対そのあにうえさんの首を取ってやるぅ!』

 

 大泣きして満足したら、今度は不貞腐れて拗ねたりして二人を困らせたりもしていましたね。子どもであるが故のただの負けず嫌いだったのか、あのいつもつまらなそうな顔をしている兄の別の表情をどうしても見たかったからなのかは覚えていません。

 ただ一つ分かることは、毎度大分稚拙な行動をしていましたが、ただ構って欲しかっただけなのです。親に捨てられて孤独を感じ続けていた私に寄り添ってくれた二人が堪らなく好きだったのですから。

 だから、私に戦いの才能がないと言う兄にもっと私を見て欲しかったですし、私が怪我を負う度にお小言を言いながらも私を心配して手当てしてくれる姉とふれあいたかった。そんな、子どもらしい無邪気で我が儘な行動を多く取っていましたね。

 

『氷華、私達から話があるの』

『んー?何、うたねぇ』

『うたが俺達の子どもを授かった』

『私とにぃの!?』

『違う…そうじゃない…』

『私と縁壱のじゃ!』

 

 これは大体私達が一緒の家に暮らすことになって、十年が経過して少し経った頃でしょうか。兄と姉に呼ばれた私は、二人が子どもを天から授かったことを聞かされたのです。当時の私は、そ、その……こ、子作りの方法とか知らなかったですから、二人の報告はまさに青天の霹靂でした。

 愛し合った二人の間に神が子どもを授けるものと教わっていた幼い頃の私は、何で姉には子どもが出来て私には出来ないんだ。どうしたら、子どもは出来るんだ。と、齢十四にして大騒ぎしたのを覚えています。私が二人に子どもの作り方を教わって、羞恥心で黙り込むまで騒ぎ続けていました。

 

『いいか、氷華。日が沈むまでには産婆を連れて戻ってくる。それまで、うたを頼む』

 

 そんなささやかな幸せに溢れた生活は突如終わりを告げました。それは、二人の間に子どもが出来てから八回ほど月が変わり、姉が臨月を迎えた頃の話です。姉に初めての前駆陣痛が訪れた日の翌朝に、兄は産婆を迎えに山を下りていきました。姉を私に託して。

 

『にぃ、遅いね』

『そうじゃな。何もなければいいんだけど』

『うたねぇ、もう寝たら?辛いでしょ』

 

 兄は、日が落ちて夜になっても帰ってきませんでした。姉は、兄が帰ってこず何かあったのかと心配して、布団から抜け出して戸口から離れた土間に腰掛けて、兄が帰るのを待ち続けていました。私も、姉の身体が冷えないようにと姉に密着し、手や足を擦って暖めながら兄の帰りを待っていました。

 

『こんな山奥の小屋に女が二人。これは運がいい』

『なんじゃ?お前さん遭難でもしたのか?』

 

 そして、それは突然現れました。戸口から顔を覗かせて入ってきたのは一人の男の姿をした鬼でした。姉は、入ってきた男に無用心にも近づこうと立ち上がり、ゆっくりと歩いていったんです。

 

『待って、うたねぇ!そいつ人じゃない!』

 

 幸いなことに私の鍛え上げられた五感のお陰でその男が鬼であると気付けました。だから、私は姉に注意を促したのです。

 

『どうしたの、氷華?……ひっ』

『ケヒヒッ……もう遅いっ』

『うたねぇ!』

 ――雪の呼吸 陸の型……

 

 ですが、私の注意は既に遅く、鬼は姉に向かって飛び掛かり、その鋭く尖った爪を振りかざしました。私は兄が不在だったこともあり、すぐ側に用意していた刀を抜いて鬼との距離が二間は離れていますが、上段の構えを取りました。

 

 ……残雪銀華

 

 私は右から左の袈裟斬りと逆袈裟斬り、左から右の一閃と三回刀を振りました。恐らく、鬼の目では私が刀を振ったことを捉えきれないであろう速さでの斬撃は、不可視の飛ぶ斬撃となって鬼の両腕を切り飛ばし、首を刎ねました。

 

『なっ……斬られた、だとっ……』

『首を斬られても喋ってるのか!?』

『うたねぇ、下がってて』

 ――雪の呼吸 壱の型 細雪

 

 どさりと音を立てて鬼は崩れ落ちました。私の聴覚と視覚が鬼の心臓が止まり、死亡したのを確認しました。ですが、首を刎ねたにも関わらず喋っていたことから尋常ではない生命力を持っていると確信した私は、念のために鬼の頭にある脳を刀で突き刺して破壊しました。

 

『うたねぇ、奥に行こう。またこの化生みたいなのが出てくるかもしれない』

 

 鬼が身体ごと一度大きく痙攣して完全に動きを止めたことを確認してから、私は刀を鞘に戻して地に倒れた鬼の死体に背を向けてしまいました。

 

 ――血鬼術 飛血爪

『氷華ッ!』

『えっ……?』

 

 姉が私の身体を掴んで横に放り投げられました。小柄だった私は、妊婦である姉の力でも軽々と飛ばされてしまいました。慌てて、私は空中で周囲を確認します。

 鬼の斬り飛ばされた両腕と首の切り口から血で出来た斬撃が飛んでいき、風を斬りながら先ほど私が居た場所……姉の方へと飛んでいきました。刹那、私の……私達の幸せが壊れる音が響き渡りました。

 

『うっ……あぁっ……』

 

 呻き声のような低い悲鳴を上げて倒れる姉。三本の爪痕が刻まれた腹からは血と、そして小さな内臓と脳漿が飛び散り床を赤に染め上げました。何があったのかと、私が斬った筈の鬼を見ました。私の視線の先で鬼は、私の方を見ながら愉悦で染まった表情を向け、両腕と首を胴体に繋げて立ち上がったのです。

 そう、この時に私が使っていた刀は日輪刀では無いただの鉄で出来た刀だったんです。どんなに威力のある攻撃で、首を刎ねようが脳を壊そうが、それが太陽の光を含んだ攻撃で無ければ鬼には効果がない。当時の私は、そのことを知りませんでした。

 

『うた、ねぇ……?』

『ケヒヒッ!お前のせいだなぁ!お前が俺を斬り続けてればその妊婦はこうならなかっただろうなぁ!お前が油断したから、その女と胎の中にいた子どもも仲良くお陀仏だ!』

 

 そんな言葉を残して鬼は戸口から飛び出して逃げていきました。本来であれば追い掛けて日の出まで殺し続けるのが正しいのでしょう。

 

『私の、せい……?私のせいで、うたねえが……死んだ?』

 

 ですが、私には鬼を追い掛ける余裕などなく、ただ呆然と立ち竦むことしか出来ませんでした。両の手の指先は震え、奥歯が揺れるかのような感覚に襲われました。

 

『ひば、な……氷、華』

『うたねぇ!?』

 

 本来であれば、姉が生きていたことを五感で気付けた筈なのに、感覚まで鈍っていた私は姉の声で意識を戻して、慌てて血の池に沈む姉に駆け寄りました。そして、直接見た姉は幸か不幸か胎児を宿していたからか、胎児が盾になって傷はそこまで深くなく止血さえ出来れば助かりそうな程度の傷でした。

 

『ど、どうすれば……と、取り敢えず止血を……』

 

 ですが、幾ら患部を認識出来るとは言え、当時の私はただの成人前の子ども。当然、治療方法なんて分かる筈もなく、私でも何とか出来た処置は、自分が着ていた着物を脱いで、その着物で血管を圧迫して止血を試みることだけでした。

 

『ごめん、なざい……私のせいで!』

 

 傷口に触れたために苦悶の表情を浮かべる姉に、私はただただ涙を流して謝ることしか出来ませんでした。謝って泣いて、謝り続けながらも私は血が止まるように願いながら傷口を押さえていました。

 

『…………』

『うぇっ……うた、ねぇ?』

 

 突然、私の頬に温かい感触が訪れました。触れた場所から僅かな水気と鉄臭さも感じ取りました。それは、姉の血にまみれた手でした。

 姉は、顔中から冷や汗を流しながらも、無言で口元に笑みを浮かべて私の頬を撫で続けてました。まるで、私は悪くないと言うかのように。

 

『氷華、うたの言う通りだ。お前は悪くない』

 

 実際、その通りだったのでしょう。夜が明ける少し前に、産婆を連れてこないまま兄が帰ってきました。私は泣きながら兄に謝り続けて、何の説明も出来ませんでした。私の代わりに姉の介抱に向かって戻ってきた兄も私を悪くないと言ったのです。

 兄の処置のお陰で、姉は何とか命を繋ぎ止めました。しかし、それも長くは持ちませんでした。二日が経てば高熱に魘され、三日経てば常に苦痛に喘ぐようになりました。そして、丸三日の間苦しんだ末、鬼の襲撃から七日後の朝に姉は亡くなりました。原因は、腹の中に残った胎児の腐敗でした。それが、姉の身体を内側から蝕んだことによるものが死因だったんです。

 

『氷華が生きていて良かった』

 

 だと言うのに、姉を弔った後に兄はそんなことを言って、私の頭を撫でながら私のことを慰めたんです。当時の私は、『非難された方が良かった。お前のせいだって罵られて殴られた方が良かった』だなんて兄に八つ当たりをしましたが、兄の言葉に少し救われたのは確かでした。

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 

「その後、私達を襲った鬼を追ってきた当時の炎柱の紹介で鬼殺隊へ入った。というわけですね」

「……氷華、大丈夫カァー?」

 

 そこで話を終えた氷華は、フーッと長く息を吐き出して、遠くを見つめていた視線を、自分の肩に止まる羽泰へと向ける。羽泰がそんな氷華の顔を気遣わしげに覗き込んで心配するように声を掛ける。

 

「大丈夫です、もう整理はついてますから。二十年も前のことですからね」

「カァーッ!?氷華、オ前十二歳ジャナカッタノカァー?」

「うえっ!?い、今のなしでお願いします!」

「カァーッ!ゴ報告ゥー!ゴ報告ゥー!オ館様ニ、ゴ報告ゥー!」

「ちょ、ちょっと待ってください!羽泰!」

 

 バサバサと音を立てて氷華の肩から飛び立った羽泰を氷華は慌てて追い掛けようと立ち上がった。その時だった、小屋の戸がガラリと音を立てて開き、中から鱗滝が出てきて、駆け出す構えを見せている氷華に向かって声を掛ける。

 

「飯だ。遊んでないで戻ってこい、氷華」

「うえっ…………わ、分かりました」

 

 鱗滝の夕飯の呼び出しに、氷華は羽泰と鱗滝の間で視線を右往左往させた末に、鱗滝の家へと足を向けた。そんな氷華の肩に飛んでいった筈の羽泰が止まり、頭を氷華の頬にクシクシと擦り付ける。

 

「?羽泰、お館様の元へ行ったのでは?」

「カァー、冗談ジャァー!氷華ガ心配ジャカラナァー、ゴ報告ハ今度ニスルゥー!」

 

 氷華の頬に頭を寄せながら羽泰が言う。その言葉に氷華は大きく目を見開いてから、小さく微笑むと羽泰の頭を人差し指で撫でる。

 

「ありがとうございます、羽泰」

「カァー!夕飯ィー!夕飯ィー!楽シミジャァー!」

 

 氷華はぽかんとした表情(かんたん作画)になって、数瞬の後に口を開く。

 

「…………感謝の言葉を返してください」

「カァー!?」

「ふふ、冗談のお返しです」

「ナァーッ!?氷華ガイヂワルジャー!」

 

 氷華は楽しそうに羽泰とじゃれつきながら鱗滝の小屋へと足を進める。その足取りは、羽泰に話し掛ける前よりも軽やかになっていたのだった。

 





戦国コソコソ噂話
「氷華のお兄ちゃんこと縁壱は、最初は氷華に刀の扱い方も呼吸法も教えるつもりはなかったみたいなんだけど、教えなかったら教えなかったで、縁壱が運動がてら軽く(縁壱比)刀を振っているのを見て勝手に真似して大怪我しかけたから仕方なく教えたんだって。縁壱から見ると氷華は才能がないらしい(縁壱の中の兄上と比べて)」

雪の呼吸 壱の型 細雪……鬼に使うことを前提としていない神速の突き。雷の呼吸程ではないが、縁壱お兄ちゃん曰く、少し速いらしい。

雪の呼吸 陸の型 残雪銀華……飛ぶ斬撃を三発繰り出して(アスタリスク)の字が刻まれる。綺麗に正中線に当たったら、斬られた返り血が雪の結晶みたいになる。お兄ちゃん曰く、最初は見切りづらかったけどすぐ慣れたらしい。

この時の雪の呼吸は、対鬼に向いてない呼吸です。どっちかと言うと対人の暗殺向きです。まあ、鬼殺隊に入隊後に修正されたので、今は改善されてますが基本的には同じです。
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