最強の妹   作:タニコウ

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いやー、今2作同時進行で執筆してるんですけど、マジで時間が足りない。労働が無ければ余裕なんだけどな。くそったれ。

仕方なく、巻きます。飛ばしたところは、いつか閑話で書きます。と言うか、書きたい。


#13 狭霧山その4

 

 最終選別が終わり、およそ三週間もの時間が経った。この間は、氷華が義勇の新しい型の練習を手伝ったり、錆兎と半日に及ぶ打ち合い稽古を行ったりと各自の鍛練を行っていた。他にも、

 

「……(日頃のお礼に)飯を作ってみた」

「鮭大根だな」

「美味しそうですね」

「義勇……多くないか?儂らで食える量ではないぞ」

 

 義勇が誤って鮭大根を大量に作ってしまい、三日間の食事が全て鮭大根になったり、

 

「錆兎、お前は必ず強い剣士になる」

「はい」

「その時に、お前に字が無かったら困るだろう」

「そうなんですか?」

「そうだ、だから……お前はこれから鱗滝の姓を名乗れ」

「……!はい!」

 

 錆兎が鱗滝の養子となったり、因みに、鱗滝は氷華と義勇にも養子になるか聞いたが、二人とも今の姓がいいと断った。それはそれとして、四人は家族になったが。

 

「もう言ってしまいますけど、私には前世の記憶があります。前世では、鬼殺隊の柱を務めていました」

「知ってる」

「……そうか」

「今更だろう」

「……え?それだけ?」

 

 氷華がもうお館様にバレちゃったしと三人に前世のことを話したりと色々なことがあった。そして、三週間が経った現在、鱗滝の小屋に向かって大量の風鈴を着けた菅笠を被った火男の面を被った不審者が歩いてきた。それを少しだけ開けた窓から見ていた義勇、錆兎、氷華は会話を交わす。

 

「何だ、あの不審な火男は」

「……知らん」

「刀を持ってますし、刀鍛治の方では?私の時代でも、火男のお面を着けていらっしゃいましたし」

「成る程な、じゃああの箱の中に俺達の日輪刀があるのか」

「恐らくそうなりますかと」

 

 氷華の返答に、義勇と錆兎の瞳がキラッキラになった。男の子だもの、自分の刀なんて言われたらそんなの誰でも大喜びするだろう。そして、不審者は小屋の前に着くとノックもせずに扉を開けて中に入ってくる。

 

「俺は鋼鐵塚と言う者だ。冨岡義勇と鱗滝錆兎の刀を打った者だ」

「「「…………(入ってきた)」」」

「上がるならさっさと上がれ」

 

 いきなり我が家へ入ってきた鋼鐵塚と名乗った男に、三人は思考が停止し動きを止めた。動きを止めた三人に代わって仕方なく、鱗滝が鋼鐵塚の対応をする。

 数秒後に再起動した三人は、土間に上がった鋼鐵塚の側に座った。それを見た鋼鐵塚は、背中から三つの木箱を取り出して三人の前に置く。

 

「さっきも言った通り、冨岡義勇と鱗滝錆兎の日輪刀は俺が打った。天野氷華の日輪刀は里長自らの手で打たれた。里長は立場故に外に出れないため、俺が代理として持参した」

「里長……って誰だ?偉い人か?」

「それはですね――」

「刀鍛治が集まる里を纏める方だ。柱と同等か、それ以上に重要な方だと言っても過言ではない」

「……凄いな」

「これが日輪刀だ。日輪刀の原料となる砂鉄と鉱石は――」

 

 話が噛み合っていない。いや、正確には鱗滝一門四人が話す一方で、鋼鐵塚が一人でペラペラと喋り倒すせいなのだ。

 

「猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石。陽の光を吸収する鉱石だ――」

「……取り敢えず、鋼鐵塚さんのお話を聞きましょうか」

 

 氷華の言葉に錆兎と義勇は頷き、鱗滝はもういいだろうと部屋の奥へと消えていった。別に面倒臭そうで逃げた訳ではない。そして、鋼鐵塚の長い長い話を聞いた末に、そろそろ終わりそうだと戻ってきた鱗滝が座ると同時に、鋼鐵塚がづいっと三人の前に箱を押しつけて手をうねうねさせながら告げる。

 

「日輪刀は別名色変わりの刀と言う。刀を抜いたものによって色が変わり、自分だけの刀となるんだ。さぁさぁ、三人とも早く刀を抜いてみなぁ」

「自分だけの刀か、良い響きだな!」

「……そうだな」

「では、一斉に抜いてみましょうか」

 

 鋼鐵塚に促されるままに三人が日輪刀を手に取り、鞘から抜いて刀身を露にする。白銀に輝く鈍色の刀身が現れ、三人の根本からずずずっと徐々に色が変わっていく。義勇は川を流れる水のように綺麗な水色。錆兎は、深海のように深い紺色に近い青。

 

「二人は水の呼吸の適性であってたみたいですね」

「そのようだな」

「……流石だな、錆兎」

「義勇もだろ、お前も綺麗な青じゃないか」

「ここまで澄んだ青はなかなか見られない、二人は才能があるんだな。天野氷華、お前はどうだったんだ」

 

 ずいっと火男の面を氷華の眼前に寄せて圧を掛けてから、氷華の刀身を見る鋼鐵塚。氷華の刀身の色は。

 

「白いな」

「……(青じゃないのか、一緒じゃなくて)残念だ」

「やはりそうでしたか、それにしても少し濃くなってますね」

「綺麗な純白だ……この色を儂は見たことが無いな」

 

 鈍色から色素が完全に抜けた、雲や雪のように透き通った純白だった。錆兎は興味深そうに、義勇は一緒じゃないのが気に入らなかったのか少し落ち込み、鱗滝も錆兎と同様に自身の長い鬼殺隊歴で初めて見た色に興味を示している。氷華もまた、自分の記憶と比較してより白くなっているのを確認して笑みを浮かべている。

 そして、ここまでで一言も発さない男が一人。30目前にして、刀が関わると子どもになるこの男。

 

「しろ……白だとぉ?」

「?はい、ご覧の通り白ですね」

「何か悪いことでもあるのか、鋼鐵塚さん」

 

 並々ならぬ様子の鋼鐵塚に、義勇、錆兎、鱗滝の間に緊張感が広がる。当人である氷華は、何か変なことでもあったっけ?と、過去を回想してみたが何も思い付くことはなかったようだ。

 

「逆だ、逆!白刀は戦国の世の柱が使っていた一振を除いて、この500年もの間一度も現れなかった幻の刀だ!」

 

 鋼鐵塚は火男の長い鼻からふしゅーふしゅーと荒い息を吐きながら、氷華の刀に顔を近付けて、もはや頬擦りをするかのように撫で繰り回している。対して、氷華は鋼鐵塚からもたらされた余りの情報量にもはや背中に宇宙を背負っていた。

 

「戦国?500年?幻?え、ここって最低でも500年後ってことですか?」

 

 氷華は、ついに空白の期間の長さに気付くことが出来た。勿論、その知識の薄さは相変わらずだが、これから少しずつ時代の差を埋めていくことだろう。きっと。

 

「鱗滝さん、もしかしてこの500年前の柱って……」

「うむ、間違いないだろう」

「…………」

「まさか、生きて白刀を目にすることが出来るとは……唯一の白刀も行方知らず、当時の柱は一本も刀を折らなかったのか、二本目三本目も見つかっていない。まさに幻の刀。造りも小烏造で使い手も違うとは言え、こうして白刀を見れるとは!」

 

 造りも使い手も一緒である。

 

「何故、お前の刀を俺に打たせてくれなかった!?」

「え……?」

「最初は俺がお前達三人の刀を纏めて打つ手筈だった!なのに、里長がいきなり代わると言ったんだ!むきー!」

「あの……それを私に言われましても、何とも言えないと言いますか……」

 

 鋼鐵塚の独壇場と化しつつある鱗滝の小屋。

 

「あぁ?だったら、刀鍛治を今すぐ里長から俺に戻せ!」

「え……あ、あの……そのぉ……」

 

 鋼鐵塚は氷華の肩に手を置いて揺さぶろうとする。が、

 

「そこまでだ、鋼鐵塚」

 

 鋼鐵塚が氷華に触れる寸前に鱗滝が止めに入る。鋼鐵塚は止められたからか、顔をぐりんと鱗滝の方へと向けて一言。

 

「あぁ!?お前、俺の邪魔をするっての――か?おい、鱗滝!開けろ!!」

 

 鱗滝は鋼鐵塚の言葉を聞き終える前に首根っこを掴むと、荷物と一緒に小屋の外へ放り出した。外へ放り出された鋼鐵塚はぎゃーぎゃーと喚くが、完全に無視をされ扉に閂、窓も閉めきられたことで、渋々と帰っていった。

 

「ありがとうございます、先生」

「構わん。……義勇、錆兎」

 

 鋼鐵塚が去ったことで元の静かな鱗滝家に戻り、鱗滝は錆兎と義勇に黒の布地で出来た鬼殺隊の隊服を渡す。

 

「お前達の隊服だ。今すぐ着替えてこい」

「これが俺達の隊服ですか、分かりました!着替えてきます!」

「……はい」

 

 そう言って、鱗滝から隊服を受け取った二人は、部屋の奥へと消えていった。残されたのは氷華と鱗滝の二人。

 

「あの、先生。私のは?」

「あるにはある。だが、お前にあれを着させる訳にはいかない」

「何故ですか?」

「お前は、布が腿より上までしかない服を着れるのか?」

 

 鱗滝の顔に、氷華の顔がみるみると赤くなる。勢いよく頭を左右にぶんぶんと振って言葉を返す。

 

「無理です!羞恥で死ねますよ、私!まさか、今の鬼殺隊の隊服はそんな恥辱的なんですか!?」

「いや、一部の人間のせいで普通は違う」

「なんですか、その人!狂ってるんですか!?」

「落ち着け」

 

 羞恥と怒りで真っ赤になった氷華を鱗滝は宥める。

 

「……戻りました」

「着てきましたよ、鱗滝さん。そう言えば、氷華の隊服はどうしたんですか?」

「おぉ……似合ってますね。二人とも」

「うむ、立派だな」

 

 黒の詰襟に身を包み、義勇が元から着ていた姉の形見の羽織、錆兎も元から着ていた白の羽織を羽織って姿を表した。そして、それを見た氷華と鱗滝は二人を誉める。

 

「さて、錆兎。お前は今から儂と縫製係の元へ向かうぞ。義勇は氷華と留守を頼む」

 

 そう言って、鱗滝は錆兎を連れて出ていった。とある縫製係、通称ゲスメガネは元水柱と将来の水柱候補の二人と2時間近くお話をしたそうな。泣いて漏らしたらしい、哀れなり。

 




明治コソコソ噂話
「氷華は生粋の妹属性。義勇と錆兎は、最初は頼れる姉みたいだと思ってたけど、だんだん氷華のポンコツっぷりが露呈して、氷華が大人ぶってる子どもにしか見えなくなったらしい。今では無事に鱗滝一門の末妹になったんだってさ」

多分、冨岡さんの最初の刀鍛治って鋼鐵塚さんだったと思うんですね。鱗滝さんが鋼鐵塚さんのこと知ってますし。冨岡さんだったら、鋼鐵塚さんの刀に対して「(弱い)俺には相応しくない(程素晴らしい)刀だ」とか言って怒らせた結果、別の刀鍛治になったりしてそう。と言う、妄想の末に生み出された独自設定です。
里長は、氷華が女の子で強いからですね。里長は女好きだし、氷華の強さはお館様のお墨付きもありますし、里長が打ってもおかしくないなって思いました。
後、刀鍛治の里に刀身の色を纏めた資料くらいはありそうだな。って思ったため、鋼鐵塚さんが過去の氷華の刀の色を知ってる設定も追加しました。何の呼吸かは無惨様が記録を消したので残っておりません。

氷華の前世カミングアウトだけは何がなんでもお盆期間に書きます。これは決定事項です。鮭大根も書きたいな、とは思ってるけど文字数が足りるかどうか。

氷華の隊服は何とかスカートが膝下までになりました。変更前は、絶対領域丸見えの痴女スカートでした。

次回は別作品の方を投稿してから書き始めます。
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