今回はですね、悩みました。試験の説明をする人を誰にするかをね。最初は、あまね様にしようと思ったんですけど、時系列的に今ちょうど五つ子を身籠ってるっぽいんですよ。だから除外せざるを得ず、他の産屋敷家の人はお館様しかいない。だったら柱かってなるんですけど、この時期で原作キャラの柱はパパ獄さんしかいないんですよね。(因みに、氷華がいることで時期がズレてます。有志の方が作られた年表によると、原作では義勇と錆兎の最終選別は11月頃らしいのですが、今は春です。なので、夏に柱になったらしい悲鳴嶋さんはいません)
そう言えば、これもしかして冨岡さんと同期の村田さんはヤバい感じですかね?まあ、何だかんだで村田さんは生き残るでしょう。信じてます。
「ここが藤襲山ですか、綺麗なところですね。趣があります」
「俺達が最後か?少なくとも20人はいるな」
「…………」
藤襲山の麓にある藤の花園にやってきた氷華達三人は辺りを見回しながら、一人は花園の絶景に目を瞪り、一人は受験者の数を数え、一人は無表情で『お花綺麗だなー、あ、蝶がいた。綺麗だな』なんてことを考えていた。
「本当にこんなところに鬼がいるのか?」
「いますよ、錆兎でも分かる筈です。山の方に意識を向けてみて下さい」
ふと付いた錆兎の疑問に氷華が山の上を指差しながら答えた。氷華の答えに錆兎とついでに義勇は目を閉じて気配を探るように集中する。
「いるな、かなりの数がいるんじゃないか?」
「ええ、大体20から30の間くらいでしょうか?到底一つの山にいて良い数ではないですね。食料が足りず、蠱毒のような状態になっている筈です」
「そんなにいたのか、もっともっと鍛えないといけないな。だが、30程度であれば俺と義勇だけで斬れない数ではないだろう」
「そうですね、二人で十分どころか義勇か錆兎のどちらかで全滅させられるでしょう」
「……二つ大きいのがいる」
「流石です、よく分かりましたね義勇。先生から聞いた話では人を数人しか食べてない鬼しかいないと聞いていましたが、恐らく数十人は喰っているであろう鬼が一体だけいますね。もう一つのは人間ですね。そして、数十人喰った程度の鬼では二人の相手にはなりません、安心して下さい。」
「最初にそいつを斬るべきだな」
「そうですね、何時でも殺せますが被害者が出る可能性がある以上、早いに越したことはない筈です。試験が始まると同時に向かいましょう」
「……了解だ」
雑談でもするかのように、最終選別を受ける段階の人間が話す内容を越えた会話を交わす三人。そして、喜べ手鬼。お前が執着して止まない鱗滝の弟子達が、三人とも自らの意志でお前と遊んでくれるみたいだぞ。それも、力の差こそあるが十二鬼月の頸を斬れる柱級と準柱級が三人だ。良かったな、年号が変わる前にそのご自慢の固い頸が取れそうだぞ。
「最終選別に良く来てくれたね、私の可愛い子ども達」
「……っ!?うそ、ですよね……?義勇、錆兎、失礼しますっ……!」
ざわざわと話し声や張り詰められた緊張感が満たす空間で、凛とした声が一瞬で場を支配する。その声に何かを察した氷華は、義勇と錆兎の頭を掴むと勢い良く地面に膝を付く。一連の氷華の行動は正に刹那の内の出来事で義勇と錆兎が気付いた時には地面に膝を付き、頭を下げていた。
「んなっ!?何すんだ、氷華!?」
「静かにして下さい、騒いでいると下手したら首が飛び兼ねませんよっ……!」
錆兎が抗議するような視線と共に出した大声に、氷華は限りなく小さな声で叫ぶと言う奇妙な技を使って錆兎に注意する。錆兎の大声に反応した他の受験者達が氷華達を変なものを見るようにしている。
「今日は私じゃなくて、君たちが主役だ。だから、頭を上げてくれていいんだよ?」
「……はっ。お言葉に甘えさせて頂きます」
頭を下げていた所に聞こえてきた声に返事をしながら氷華は顔を上げ立ち上がる。それに釣られた義勇と錆兎もまた顔を上げ立ち上がる。顔を上げた氷華達が見たのは、まず一人が焔色の髪をした剣士。
「額にある珍妙な紋様の痣……まさか!今回無理を押してここに来られたのは、あの少女が理由なのですか!?それに、彼女の横にいる二人の小僧も常中を身に付けてるのではないですか!?」
「……焔色の髪。煉獄家の人間ですね、多分強さ的に柱でしょう」
「……柱、(俺は彼よりも)弱いな」
「だな。あれが柱か……鱗滝さん程ではないが、俺よりも強い」
「当然ですよ、普通に考えて。だって、私達まだ15にすらなってないんですからね?」
「そんなことよりもあの柱、さっきから俺達……と言うより、氷華のこと見てないか?」
焔色の髪をした剣士を見ながら、氷華達は小さな声で言葉を交わす。氷華は、焔色の髪をした剣士に見られていることを肌で感じながら冷や汗を流して、義勇と錆兎にも聞こえない声で口を開いた。
「…………これ、バレてますよね。彼の祖先とは知り合いどころかかなり親密でしたし、痣の模様は前世と変わりませんから……。いえ、彼は痣そのもののことしか言及してませんし、恐らく私自身のことには気付いていないのでしょう。では、もしかして彼も気付いていない?」
そして氷華は、焔色の髪をした剣士が控えるようにして、前に立たせたもう一人の人物を見る。肩口まで伸びた黒髪、藤の花のような薄い紫色をした瞳、左の目元には爛れた皮膚が特徴の、病的なまでに白い肌を持った青年。
「そうだね、槇寿郎。私の目的は彼女達に会うことだよ。左近次が度々自慢してきてね、どんな子達なのか気になって見に来たんだ。でも、その前にお仕事をしないといけないね」
「承知しました、お館様」
「やはり、彼が鬼殺隊の現当主でしたか。血筋ですかね、私のお館様に良く似ていらっしゃる」
槇寿郎と呼ばれた焔色の髪をした剣士と、お館様と呼ばれた青年の会話に氷華が反応する。だが、氷華の言葉の後ろ半分は、囁き声にも満たない小さな音で錆兎にも義勇にも届くことは無かった。
「あの人が鬼殺隊の頭?随分と体調が悪そうだが、大丈夫なのか?」
「……(左の目元が爛れている、)病か?こんな(大変そうな病気の)人が頭で、(この人が倒れたら)この組織は大丈夫なのか?」
「そうですね、お館様――産屋敷家の方は呪われていると言われています。そのせいで、産屋敷家の者は生まれつき病弱で産屋敷家の一族は例外なく三十を数える前に亡くなってしまうのだそうです。呪いは鬼舞辻無惨が関係しているそうですが、詳しいことは私には分かりません」
「成る程な、だから鬼殺隊の当主を務めてるのか」
「……(病気なのに働かないといけないなんて)憐れだな」
冨岡弁が不敬極まりないことになっているが今は置いておいて、錆兎と義勇は二人して、お館様と呼ばれた青年のことを心配しているようだ。当然、氷華もある程度の事情を知っていたとは言え、五百年前と状況が変わっていないことを認識して少し悲しげな様子を見せた。
「初めまして、私は鬼殺隊当主の産屋敷輝哉。今日は集まってくれてありがとう。今から、炎柱である彼からこの最終選別についての説明をする。頼んだよ、槇寿郎」
「はっ!私が炎柱の煉獄槇寿郎だ!これから最終選別についての説明を行う!一度しか言わないから良く聞いておけ!」
そして、槇寿郎の口から氷華達が鱗滝から聞いた試験内容が語られる。説明を終えた槇寿郎が試験の開始を宣言すると、ぞろぞろと受験者達が藤襲山へと入っていく。
「では、私達も参りましょうか」
「おう、さっさと全ての鬼を斬って残りを鍛練に費やそうぜ」
「……そうだな」
氷華が二人を連れたって、藤襲山へと向かって歩き出した。氷華が山の中に入ろうと輝哉の横を通った時のことだった。
「問題だよ、氷華。日、月、霞、炎、水、雷、風、岩。残り一つは何かな?」
氷華の耳がそんな輝哉の声を捉えた。思わず、足を止める氷華。一瞬の躊躇いの後に氷華が口を開く。
「雪、ですかね?」
その氷華の答えに笑みを浮かべた輝哉は再び口を開く。
「本当に?」
「……本当ですよ」
「…………」
全て分かっているよ、とばかりに氷華の言葉を何も言わずに待つ輝哉。十秒か二十秒か……はたまた数分もの時間が流れたように感じた後、氷華は小さく……それこそ、輝哉にしか聞こえない声で呟いた。
「――ですね」
その答えに笑みを更に深めた輝哉。
「フフッ……どっちも正解だよ。ごめんね、時間を取らせて。さあ、行っておいで」
「……失礼します」
「うん、気を付けて」
「ありがとうございます。錆兎、義勇、行きますよ」
「あ、ああ」
「……了解」
氷華達三人は藤の花園を抜けて山に入ると同時に、姿が一瞬だけブレて残像を残して消え去った。残った輝哉は、今もなお治まらない笑みを指でなぞりながら、隣に控える槇寿郎に声を掛ける。
「槇寿郎」
「何でしょう、お館様」
「伸び悩んでいるのなら、氷華を尋ねるといい。それに、もしかしたら君の奥さんについてもどうにかなるかもしれないよ」
「あの少女がですか?私の実力の矯正はともかく、瑠火の病を治せると?」
「うん、厳密には氷華の知り合いが、だけどね。もしかしたら氷華にならば、彼女も姿を見せてくれるかもしれない。これから、氷華を中心にして私達と鬼舞辻の戦いは大きく動くことになるだろう。槇寿郎も家で調べてみるといい、始まりの呼吸の剣士達についてね。きっと、氷華のことについても分かると思うよ」
「?……お館様が言うのなら、調べてみましょう」
戦国コソコソ噂話
「氷華は当時の炎柱ととても仲が良くて、兄と一緒に鬼殺隊を去ってからも文通を頻繁に行ってた間柄らしいんだ。何でも、当時の炎柱は氷華に想いを寄せていたとかいないとか。そんな訳で、明治にやって来た氷華は恩もあれば縁もある煉獄家が存続していることを知って、心底安心したらしいよ」
この時期のお館様ってフットワーク軽いですし、氷華がいれば来る可能性があるんじゃないかと思いました。そして、護衛として縁壱と縁がある煉獄家の子孫のパパ獄さんを連れて来れば完璧だなと。理由も一応、鱗滝さん経由という筋は通せてるかな、とも思いました。
瑠火さんの生存フラグは立ったけど、回収するかどうかは今も悩み中です。何せ、この年のどこかで亡くなってるらしいですからね。
氷華の呼吸はオリジナルのものになります。まあ、使われることは殆どないでしょう。何故かと言うと、上弦とかに使った瞬間に無惨様が引き籠っちゃうからですね。