東方飛燕草~雑学と妄想多めの、幻想郷の住民だけのまったり日常もの~ 作:ナ月(なつき)
人間の里。
よく晴れた昼時の里には、多くの人が行き交っていた。
「ふん、ふん♪」
「走るな。転ぶぞ」
そんな中を、着物姿でステップを踏むお転婆な少女と、ポケットに手を突っ込んで歩く少女がひとり。蓬莱山輝夜と、藤原妹紅。
かつて殺して殺され合う仲だったふたりだが、悠久の時を生きる不老不死の彼女たちはその行為にも飽きることがあり、今日は何だかんだ、一緒にお茶をすることになった。
「今日も引率ありがとう。てゐたちは何か言ってた?」
「何も。黙って連れてきたわけだし」
「いけない人~」
「もう人じゃない」
くすくすと笑う輝夜に、あきれ顔の妹紅。
不老不死というのは、言うほど理想的なものでも、優れたものでもない。生と死の境界線がなくなるのだ。死ななくなるということは、すなわち生きなくなることと同じ。ただそこに存在するだけの概念になり果てる。
そんな境遇であるにもかかわらず。
「甘味処、甘味処~♪」
輝夜は、楽しそうに毎日を年頃の少女のように楽しんでいる。ように見える。
妹紅はどこか、無気力に生きている。輝夜と殺し合っているときは生を実感し、イキイキとしているのだが、何をしてもされても死なない人間というのは、どうしたって警戒心が弱まる。
今だって、ポケットに手を突っ込んで歩いて、仮に転んだとしても死なないので、まぁいいかという心情でいるのだ。
「だから、走ると転ぶぞ、輝夜」
「まぁ、どの口が言っているのかしら」
輝夜はカラスの濡れ羽のような光沢をもつ絹のような長い黒髪をひらひらと弄びながら、妹紅のほうを見てくすりと笑う。
殺し合う仲なのに、体をいたわっていることが、彼女にとってはちゃんちゃらおかしいのだろう。
「わ、混んでる」
やがてふたりは通い慣れた団子屋に着いた。屋根のある室内にも椅子が置いてあるが、店外にもいくつか席が用意されている。今日は大盛況らしく、屋外のひとつの席しか空いていなかった。
「こしあん、みたらし、三色、ごまだれ、きなこ、海苔醤油をふたつずつくださいな」
注文し、どっさりと団子を貰い、ちょこんと椅子に座る輝夜。その隣に、妹紅はどかりと、両手を椅子につけて座る。
やがて店の人が慌ただしくやってきて、ふたりの間にひとつ湯呑を置いていった。
「あら、お茶がひとつしかないわ」
「忙しそうだしな。間違えたんだろ」
「貰ってこようか?」
「足りるだろ」
他愛ない会話を交わしながら、ふたりは団子を食べる。
団子を食べ、茶を飲み、世間話に頬を緩めながら、ふたりの時間が、ゆっくりと流れていった。
妹紅に「足りるだろ」って言って欲しかっただけのワンシーン
誰かここだけ切り抜いて四コマ作ってくれないかな…