東方飛燕草~雑学と妄想多めの、幻想郷の住民だけのまったり日常もの~ 作:ナ月(なつき)
博麗神社。
人間の里ではすっかり妖怪神社としてお馴染みとなっている。
そんな博麗神社だが、妖怪なら誰でも入れるわけじゃない。
「ふしゃー。ガルルル」
「お、落ち着けって。ほ、ほら、見てのとおり怪しいもんじゃない。だから博麗神社に入らせてくれよ」
そこには、博麗神社に不法侵入(参拝自由)しようとしていた天火人ちやりは、思わぬ足止めを食らっていた。
狛犬の高麗野あうんが、頑なに彼女を神社へ通さないのだ。
ちやりはいつ襲いかかられてもいいように、引き腰になっていて、怖くないよと言わんばかりに両手を開き、Tシャツを広げている。
「いや、見るからに怪しいでしょ……」
「そうかぁ……?」
「血生臭いですし」
「それはまぁ、血を吸う妖怪だしなぁ」
「ふしゃー。ガルルル」
「どうどうどう」
必死になだめようとするちやりだったが、あうんは一歩も引かない。
膠着状態が続くかに見えたが……。
「あれっ、ちやりちゃーん。何してるの? 殺るの?」
「あ、お燐。って、なんでお前が神社のほうから来るんだよ」
縁側からとことこと歩いてきた黒猫の火焔猫燐を見て、ちやりは頑なに自分を入れようとしない狛犬を見る。
「お燐さんは、なんかもう常連なので、いいんです」
「えー、こいつだって、大概死体臭いだろー」
「失礼ね。ちゃんと手押し車で運んでるわよ」
ぷりぷりと尻尾を振りながら反論する燐。
死体運びはよくて、吸血はダメ。
ちやりは首を傾げていた。
そんなころ、ついに、ようやく、博麗神社の巫女がやってくる。
「あー? 何よあんたら、雁首そろえてそんなところで」
博麗霊夢。博麗神社の巫女にして、幻想郷の均衡を保つ者。
布面積が微妙に足りていない朱色の巫女服を着て、今は竹箒を持っている。
「あ、霊夢さん。へぇ、どうも」
「どうでもいいけど、なんであんたら私に敬語使うの? なんかむず痒いんだけど」
「饕餮の戦友って聞いてますが」
「ああ、組長の友人って扱いなのね……なんか納得だわ」
霊夢は呆れたように目を背け、投げやりな解答をする。
立場を持つことを疎ましく思うのは、ちやりも同じだ。ちやりは、ますます霊夢に親近感を覚えた。
「で、お邪魔させてもらえませんかねぇ」
「あー、なんか用?」
「宴会するって聞いたんすけど」
「あー、花見酒ね。夜からよ」
「え、花見るのに夜なんすか? 昼間のほうがよく見えるのに……」
「風情ってもんがあんのよ。あんた暇なら準備手伝ってくんない?」
「いいすよ。暇なんで」
のしのしと境内をまたいで石畳を歩いていくちやり。
それを見て、あうんが悲鳴みたいな声を上げる。
「えーっ。霊夢さん、入れちゃっていいんですか?」
「お燐の友達なら大丈夫でしょ。ほら、あんたたち。茣蓙ひくから掃き掃除しなさい」
「えっ、あたいも?」
「当然でしょ」
渋々、人型に戻り、竹箒を手にするお燐。
ちやりもやれやれと首を振って、境内の掃き掃除に望む。
霊夢は茣蓙を取りに納屋に行ってしまった。
仕方なく、ちやりとお燐は慣れない掃き掃除を始める。
「そういや、さとり様は元気?」
「相変わらずよ。地霊殿に引きこもりっぱなし」
「ははぁ。相変わらずだ」
「でも前よりかは外出する頻度が増えたなぁ。あの怨霊騒ぎ以来」
「あー、なんだっけ。宮出口とかいう……」
「そうそう。この神社をぶっ壊したやつ」
がっさがっさと埃を立てながら掃いているが、ひゅるりらと吹く春風に拾われて、花はひらひらと逃げてしまう。ちやりはやる気なさそうに「ああ……」と嘆きの声を上げた。
「今日の宴会には来るのか?」
「誘っといたよ」
「そりゃぁ楽しみだ」
ちやりはウキウキとしながら、掃き掃除の手を早める。早く掃除をしたところで時間が早く進むわけではないのに、気は急く。
「久しぶりに、さとり様に膝枕してもらおう」
楽し気に笑うちやりに、燐も笑顔で返した。
「あ、そこは私の定位置だから」
新たな戦いが始まる予感がした。
※あとがき
またチュパカブラかよって?
ごめんって
好きなんだ、ちやりが(突然の告白)