東方飛燕草~雑学と妄想多めの、幻想郷の住民だけのまったり日常もの~   作:ナ月(なつき)

9 / 11
【ちやうん】【ちやりん】天火人ちやりは花見がしたい

 博麗神社。

 人間の里ではすっかり妖怪神社としてお馴染みとなっている。

 そんな博麗神社だが、妖怪なら誰でも入れるわけじゃない。

「ふしゃー。ガルルル」

「お、落ち着けって。ほ、ほら、見てのとおり怪しいもんじゃない。だから博麗神社に入らせてくれよ」

 そこには、博麗神社に不法侵入(参拝自由)しようとしていた天火人ちやりは、思わぬ足止めを食らっていた。

 狛犬の高麗野あうんが、頑なに彼女を神社へ通さないのだ。

 ちやりはいつ襲いかかられてもいいように、引き腰になっていて、怖くないよと言わんばかりに両手を開き、Tシャツを広げている。

「いや、見るからに怪しいでしょ……」

「そうかぁ……?」

「血生臭いですし」

「それはまぁ、血を吸う妖怪だしなぁ」

「ふしゃー。ガルルル」

「どうどうどう」

 必死になだめようとするちやりだったが、あうんは一歩も引かない。

 膠着状態が続くかに見えたが……。

「あれっ、ちやりちゃーん。何してるの? 殺るの?」

「あ、お燐。って、なんでお前が神社のほうから来るんだよ」

 縁側からとことこと歩いてきた黒猫の火焔猫燐を見て、ちやりは頑なに自分を入れようとしない狛犬を見る。

「お燐さんは、なんかもう常連なので、いいんです」

「えー、こいつだって、大概死体臭いだろー」

「失礼ね。ちゃんと手押し車で運んでるわよ」

 ぷりぷりと尻尾を振りながら反論する燐。

 死体運びはよくて、吸血はダメ。

 ちやりは首を傾げていた。

 そんなころ、ついに、ようやく、博麗神社の巫女がやってくる。

「あー? 何よあんたら、雁首そろえてそんなところで」

 博麗霊夢。博麗神社の巫女にして、幻想郷の均衡を保つ者。

 布面積が微妙に足りていない朱色の巫女服を着て、今は竹箒を持っている。

「あ、霊夢さん。へぇ、どうも」

「どうでもいいけど、なんであんたら私に敬語使うの? なんかむず痒いんだけど」

「饕餮の戦友って聞いてますが」

「ああ、組長の友人って扱いなのね……なんか納得だわ」

 霊夢は呆れたように目を背け、投げやりな解答をする。

 立場を持つことを疎ましく思うのは、ちやりも同じだ。ちやりは、ますます霊夢に親近感を覚えた。

「で、お邪魔させてもらえませんかねぇ」

「あー、なんか用?」

「宴会するって聞いたんすけど」

「あー、花見酒ね。夜からよ」

「え、花見るのに夜なんすか? 昼間のほうがよく見えるのに……」

「風情ってもんがあんのよ。あんた暇なら準備手伝ってくんない?」

「いいすよ。暇なんで」

 のしのしと境内をまたいで石畳を歩いていくちやり。

 それを見て、あうんが悲鳴みたいな声を上げる。

「えーっ。霊夢さん、入れちゃっていいんですか?」

「お燐の友達なら大丈夫でしょ。ほら、あんたたち。茣蓙ひくから掃き掃除しなさい」

「えっ、あたいも?」

「当然でしょ」

 渋々、人型に戻り、竹箒を手にするお燐。

 ちやりもやれやれと首を振って、境内の掃き掃除に望む。

 霊夢は茣蓙を取りに納屋に行ってしまった。

 仕方なく、ちやりとお燐は慣れない掃き掃除を始める。

「そういや、さとり様は元気?」

「相変わらずよ。地霊殿に引きこもりっぱなし」

「ははぁ。相変わらずだ」

「でも前よりかは外出する頻度が増えたなぁ。あの怨霊騒ぎ以来」

「あー、なんだっけ。宮出口とかいう……」

「そうそう。この神社をぶっ壊したやつ」

 がっさがっさと埃を立てながら掃いているが、ひゅるりらと吹く春風に拾われて、花はひらひらと逃げてしまう。ちやりはやる気なさそうに「ああ……」と嘆きの声を上げた。

「今日の宴会には来るのか?」

「誘っといたよ」

「そりゃぁ楽しみだ」

 ちやりはウキウキとしながら、掃き掃除の手を早める。早く掃除をしたところで時間が早く進むわけではないのに、気は急く。

「久しぶりに、さとり様に膝枕してもらおう」

 楽し気に笑うちやりに、燐も笑顔で返した。

「あ、そこは私の定位置だから」

 新たな戦いが始まる予感がした。

 




※あとがき
またチュパカブラかよって?
ごめんって
好きなんだ、ちやりが(突然の告白)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。