月光   作:コンテナ店子@コミケ出ます

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今回からVS蛟龍が主役の小説を投稿します。
コミケの準備もあるので途中で止まるかもしれませんがやれる範囲でやっていきます。


第1話「雨とカプチーノ」

 息をわずかに吐くも、そこすらも体温と同様に熱くなっていることもあって、とても体のほてりを冷ますことはない。それに対し、私の辺りを次々と囲っていきつつある他の門下生たちは次々に剣を私の方へと構えてくる。気づけば、私の視界のほとんどは彼らでふさがれ、その向こうで見ていた人たちの様子はほぼほぼすべてなくなっていた。

 

 小さく息をもう一度吐きながら顔を下へと向け、そこで目と口を一度紡ぎ直す。それからさらに一度目を閉じて、それから顔を正面へと向ける。腰を落としてから足を開いてそこで砂利を滑らせる。その音すらも周囲に響くかのような感覚すらもした。ただ、それに対して周囲の男たちはわずかに体を反らしていたり、息を飲み込むかのようにしている。しかし、それも1秒ほどで元の体勢へと戻しているようであった。

 

 一方で、私は相手たちの様子を見送ることにした。空気のわずかな動きで後ろにいる連中も同じくらいの時に同じような反応をしているのを感知していたが、それも同様。ただ、サングラスがわずかに鼻の上を滑ることで視界が完全に開いている場所が広がる。

 

 また、私が姿勢を低くしていることもあり、周囲で見えている範囲の中から曇ったことで灰色に近い色をしている空の様子は入らなくなり、道場の壁や建物の様子しか見えなくなっていた。そのままただ私は剣に片方の手を当てるのみ、それ以外では一切体を動かさない。唇同士もただくっつけているだけにした。

 

 門下生らの中の1人が大きな声を上げながら私の方へと大きく後ろへと剣を振りながら突撃してきたところでその隙間から何度も聞こえる砂利の音がほんのわずかながらも少しずつ確かに大きくなっていくのを感じる。一瞬だけ顎を自分の側へと近づけるかのような動きをしたのちに私は一気に抜刀した。

 

 弾き飛ばした剣が地面の上へと突かれるよりも先に次々と他の門下生が全く異なる構えで私の方へと攻めてくる。しかしその中の一番槍として私に来たものの横を素早く避けると、その背中と自分の物を重ね合わせることで回り込み、そこから相手の腕を掴んで近くにいた他の者へと投げつけるようにする。その勢いのままに、しゃがんで姿勢が低くなっている所から顔だけを起こすことで髪の毛が上へと持ち上がるのだけを感じる。

 

 続けてしゃがんだ姿勢から勢いよく立ち上がり次に私へと短剣を突いて来た男の腕を脇に抱えると、小さく息を吸いながら、後ろから続いて剣を振り下ろす相手の攻撃を最初の男の体で防ぐ。素早く腰を低くした状態で次の相手の元へと近づくと、自身の手で敵の前に砂煙を巻き起こし、その隙に剣で叩きつける。

 

 それから横から切りかかってきた男を体の向きをかけるような動きで回避した後に、手首を素早い手刀で叩き潰す。その後ろから来た者も相手の得物と自身の物を合わせて力で押し返した。それでそっちにいたまた他の相手もなぎ倒す。

 

 一度肩を開いた態勢で息を何度か繰り返している私に対して、何人もいた門下生はもうすでに残り少なくなっているがために、私はただ肩でする息を繰り返すことでそれを整えながらそっちの方を見つめているだけにしていた。

 

 ただ、師範が「そこまでだ」と言いながら一度だけ両手を合わせる音を立てながらこちらに向けて近づいてきたところでわずかに背中を丸めていた姿勢から元に戻り、そこから髪の毛を軽く整えつつ声の主へと視線を向ける。ただ、それは立った状態から顔の向きをわずかに変えるだけにしておき、目線の角度も使うことでようやく視界に入れることにしていた。

 

 それに対して向こうも私の方を見ることはなく、倒れたままになっていた他の門下生へと手を差し伸べているようであった。彼らへと軽く声をかけてはその返事を聞いているようで、私はしばらく視線を下へと向けていた。その後に、ただまっすぐ下を見るような物へと変える。

 

 わずかに唇を紡ぐように両方のそれに力を入れる。結果としてその両方が潰れるかのようになっている。続けて顎を引く形にしていると、自然と周囲の門下生や師範が次々と道場の中へと戻っていく姿が視界に入る。彼らはみな私の横を素通りしていく。互いに明るい声で話している間、お互いに視線をぶつけあっているようで、その中には等間隔のリズムで笑い声をあげるかのようなものまであった。

 

「師匠、お言葉ですが、正直これでは何も得られるものがないです」

 

 息を止めてしまうような感覚と共に、わずかに持ち上がっていた唇の先端をへこませるかのような動きをさせる。それから顎を持ち上げながら一度瞬きして視線を話す2人がいる方に向ける。しかし、それに対して私の背中側の中でもより遠い位置を歩いている師範は一瞬だけ振り返り聞いて来た門下生の方を見ている。

 

 その間は話していないのもあって、私は目線を横へと向けていた物から反らして軽く瞬き。瞳孔を中央へと合わせていた。ただ、その間も足音で自然と門下生が追い付くことで師範も私から離れていくかのようにしているのを感じ取らされることに。

 

「こんなものは形式だ」

 

 まだ言葉が終わるよりも早く、私はそっちの方には漆喰と瓦だけで出来た塀が庭の向こうにあるだけの方へと歩いていくことしか出来ない。気づけば髪が一瞬だけふわりと持ち上がるような動きをしている髪の毛の重さだけを味わいながらまっすぐに進む。それに対して周囲では砂利を踏みしめている自分自身の足音以外には何も感じない時間だけが過ぎ去っていた。

 

 歩いた先にあった池の様子を立ったままのぞき込む。水面に映っているのは私の他には今も曇ったままになって灰色の部分も見えている暗い空と池の向こう側にある塀の様子だけ。その前者の方には太陽が向こう側にあるのか、わずかな光が雲同士の間からこぼれているかのようで、その中には色が薄い箇所が点在。ただ、それが水面から反射しているようではあるが、私の目線を避けさせるほどにはならない。

 

 一方で、私の足元のコケであったり近くに植わっている松、大きく上へと切り立つ岩などの様子が映ることもなければ、わずかに水面が動いていることで、中に何かがいるかのようであったが、それの正体を見ることはない。

 

 ただ両方の目の先端を下へと落とし、そこを動かすほどではない物の強く息を吸う。しかし、それのせいで両方の脇に力が入ってしまいそうになり、結果として自身の体が締め付けられてしまうかのようであった。

 

「終わったか」

 

 その声がした瞬間、また髪の毛の重さを感じる物の、それは反射的に上半身を振り返らせた時。それによって髪の毛も大きく動いたのだった。

 

 相手は首を私の方へと見せつけるかのように顎を上へと向けながら片方の手の握りこぶしをもう片方の手で包み、後者に強い力を入れている。さらに、上へと向けたそれを回すようにしながら元へと戻すような動きをすると、口元の先端をどちらも上へと持ち上げるかのような動きをしていた。

 

 一方で、私は振り返らせた後に体をそのままにしていたが、音は聞こえない物の、ラゼンの後ろにいる門下生らが縁側で雑談している様子やそのさらに奥で素振りをしている様子を見るだけで、私は相手からも自然と視線をそらしてしまう。

 

「これで邪魔者がいなくなったわけだ」

 

 そう言いながらもう一度開いた手と握った拳を叩きつけ合うラゼンに対して、私はわずかに体を動かすことで腰に下げている剣が揺れるのだけを感じる。それからもう一度池の方を見ると、そっちに写っているはずの私はラゼンが現れた際に少し前に出たことで見えている範囲がかなり少なり、結果として頭の八割ほどだけが写ることとなっていた。

 

 しかし、気づけば肩を掴まれることによって前へと強くひかれた結果、顔が完全に前を向く直前の所で池から私がなくなるのを見る。

 

「こっからが本番だろ」

 

 両肩を強くつかみながらおでこを前に出すラゼンがじっとこっちの方を見ている様子と視線がぶつかる。一度瞬きをすることで視線を横へと逸らす私だが、その瞬間に肩へと置かれた手の力が急に強くなり、それでもう一度相手の方を見ることになる。

 

 一方で、語尾を少しだけ持ち上げるような、そこ以外でも強く抑揚を付けながら文字ごとに音を切っていく話し方をしているラゼンは、それの後にはまた私の方をただ見ているだけにしていた。それ以外には本当に何もしていないかのようである。

 

 そんな相手に対し一度だけ生唾を飲み込み、それから顎を一度だけ落としてから改めて見るような動きをすることになった。

 

「……そうだな」

 

 しばらく口を紡いだ後に、言葉の途中でそれを止めるような話し方をした。私の言葉を聞いたラゼンは一度だけ「よっしゃ」と掛け声を出すと背中をわずかに丸めながら握りこぶしを作っている。それからすぐに来た道を戻ると共に、手に付けた装置から次々とトンファ―を展開していた。その様子を私はただまっすぐに見つめているつもりであったが、だんだんと鼻から息を吐いている。

 

 しばらく頬をわずかに前側へと膨らませながらも肩を落としてラゼンの背中を見つめていたが、相手の方から一度振り返って私のことを手も使って呼び込んでいるのに気づく。一方でこっちはただ一度だけ顔を下へと向けるような動きと共にそれを起こして相手の方へと小走りで近づいていく。

 

 その動きをしている間、自然な動きでもう一度道場の方にいる他の門下生たちの様子を見ることになるが、それはほんの一瞬だけ。今も先ほどと何ら変わらずにいる彼らの様子は自然と視界の中で霞んで行く。それは徐々に足を動かす速さを緩めている間も一切変わりはない。

 

 トンファーの電源を今一度確認しているラゼンに対し、私は先ほどまで姿勢を低くはせずにも相手の様子を捉えるために片手を相手の方へと伸ばしながらももう片方の手で、未だ鞘の中へと閉まったままの剣を握る。それによって、金属同士がぶつかり合う音でさえも、私の心臓にまで響き、体を伝う汗ですらも、そのむずがゆさを感じるほどであった。




読了ありがとうございました。
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