月光   作:コンテナ店子@コミケ出ます

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第11話「思想犯-2」

 街の反対側の飲み屋街とは真逆に位置している大きなコロシアムを中心とした市街地では、多くの店舗を構えている店はすでに閉まっているようで、その一方で今は屋台がエンジンの音を立てているほかに各種電球等の灯りを取り付け、暖簾に書かれている文字を照らさせることで強調していた。

 

 暗い夜であったとしてもその場所だけは異様に明るい。その建物の様子へと顔を持ち上げながら視線を左右に動かすことで見続ける。電気が消えたり付いたりを繰り返しているネオン管の看板は文字ごとに緑やピンクと蛍光色を私の方へと見せているよう。

 

 そして、この建物に取り付けられている物は看板以上に壁へと取り付けられた大型ビジョンが強く目を引く。自然とそこへと私も視線を吸い上げられていた。そして、私だけではなく、その間に見えた壁に寄り掛かっている男であったり歩いている女であったりもそっちの方を見上げているのを理解できた。

 

 そして、その中では日中に遭遇した連中だけでなく、金色の大きな文字でこのコロシアムを象徴していると思われる煽り文が描かれていた。そして、それが強調されるかのように輝いた後に連中を始めとした選手が1人1人表示される。

 

 さらに、そこにある映像が切り替わるたびにどこかに取り付けられているスピーカーから、低い男の声であの女や獣人を含めた連中の名前を呼んでいる。それだけでない。それと共に映像の背景に出ているエフェクトを象徴するかのような電気や突風が鳴り響いている音がしていた。しかし、その間も私たちの周囲にいる女連れであったり男同士の仲間内で話している様子に一切変化はない。

 

 また、しばらくそのビジョンを眺めていると両方の手を組んでいるラゼンも出ていて、彼が映像の中でアップになっているのと一緒に背景で炎が燃え上がっていた。

 

「どうした?」

 

「いや、いいんだ」

 

 ほんの一瞬だけ言うようなその声だけを出すと共に、少し早歩き気味の勢いでもうすでに入り口へと繋がる階段を上っているラゼンの後を追うかのように一段飛ばしでそこを登った。

 

 

 

 

 

 ラゼンに案内された正面の全てと左右の壁の約7割ほどがガラス張りになっている部屋の中。床におけるカーペットとガラスの境界線よりも少し前者側がまだ残っている辺りで足を止めた私は、わずかな声を出しているラゼンの方へと振り返る。今も明るく薄いオレンジのような温かい灯りを照らしている廊下との境目となるドアの枠に体を寄りかからせ、肘を当てている。

 

 一方で、私は自身の肩だけを相手の方へと向けるような形で見ているまま、ただまっすぐに立つ。今もある程度ラゼンがいる場所と私がいる場所の間には隙間が出来ているがために、周囲の赤いカーペットと白い壁紙、ダークウッドカラーの家具たちが置かれているこの部屋の様子越しに相手のことを見ることになった。

 

「とりあえずここで俺らのこと見ててくれよ」

 

 最初は持ち上げるかのように出していたラゼンだが、途中からそれを止める。その先は大きな声を出すでもなければ、同じような音で私の方にその声を続けるだけに。相手の言葉を待っているわけでもないが、しばらくの間私も相手も話さない間が出来上がっていた。

 

「ずいぶん自信があるんだな」

 

 その一度言葉の途中で止めようとしたがすぐにやめ、続けた声だけを出し、わずかに鼻から息を出しながら笑う声を出す私に対して、ラゼンは目を細めてその両端にしわを作りながら顔を下に向けて額に前腕を当てながら言い訳を並べているようであった。

 

 相手の方を見ている間、自然と外の廊下から入っている光がドア枠の内側と同じ形でカーペットを照らしている光景が出来上がっている。しかし、その中にも確かな形でラゼンの影が出来上がっているのは理解させられる。

 

「まぁな。でも、俺らも俺らなりに頑張ったからよ」

 

 それだけ言うと同時にラゼンはまた先ほどの片方の腰にそちら側の手を乗せつつもう片方側へと自身の体重を預ける態勢で私と視線を一致させる。しかし、それも数秒間の間のみ。すぐに振り返ってこちらの方へと背中を見せた。

 

「俺もこれから試合だから、また呼びに来るわ」

 

 そう言いながら片方の手を挙げながら部屋の外へと言ったラゼンがいなくなりドアも閉められた後もしばらくの間私はその茶色く光が届きにくくなっている方へと視線を向け続けていた。一度瞬きした後に下を見つつ、肩と平行になるようにしていた顔を正面へと向きを戻す。それからわずかに口を紡ぎ直し、足だけを動かすような動きで先へと進む。

 

 その足音だけを最初は聞いていた物の、気づけば数多くの老若男女問わない観客たちの歓声が大きく聞こえている光景と幾度も統一性のない電子音楽が流れ続ける。

 

 流れる音を聞いているだけで最初は自然と目が開いていた物の、上下の両瞼を使ってその範囲を縮める。特に上の方には少し強めに力を入れながらいたが、いつの間にか出されていたモニターにラゼンがいたのに気づくと一緒に目の内側同士にもう一度力を入れ直しつつ顎を引く。

 

 下唇を仕舞うような動きをしながら下を見ている私に対し、そちら側にいる者たちはこの場所からそのほぼすべてを見ることが出来るようになっていた。硬化ガラスとそれらの枠となっている格子の間から見えている観客席に座る者たち。彼らの様子を最初は一瞥するかのように見ていた物の、しばらくすると連中の写真やその名前が書かれたボード等を持っている人たちがそれを上下に小さく動かし続けている様子に目が留まる。

 

 そして、それは1か所だけでなく別の団体としてまとまっている者たちも同様にしているのもそう難しくなく発見できる。そちらでも特定の色に装飾された大型の道具を持っているが、先程の団体とはまた違う者を選択しているようであった。

 

 観客席にいる集団らが一気に盛り上がりをあげた中でも、例の大道具を持っている集団がひときわ大きな黄色い声を上げているようだった。それから、その者たちの目線を顔と目だけで追うことで、片方の鉄格子が大きく開くと共に、そこから喫茶店で横に座っていた女が現れる。

 

 しかし、女は袖が大きく伸びて上側が腕に引っかかっている上に下側も体を動かすたびに左右に揺れてしまっている。その上、背中には大きな機械を背負っているようで、その足取りは左右へとわずかだが蛇のように揺れているようだった。その様子をわずかに息をするかのように見ていた私だが、視線を左右へと動かしそうになりながら瞼をわずかに震わせていた。

 

 さらに、その間も女は両方の手が袖出ていない腕を上へと伸ばしながら振っていて、そのたびに顔を上半身事左右に揺らしている。その上、見られた側も何度も相手の名前を遅い間隔の声で呼び続けているようだった。

 

 さらに、それはもう片方の、女からすれば正面側となる鉄格子が上へと持ち上がったタイミングでも変わることはない。何度も「ありがとー」等と語尾を伸ばす声を出しながら繰り返し投げキッスをしている様子から一切変わりはなかった。

 

 また、それに対し開いた側から現れた者もわざわざ自身の四肢を格納した状態で回転しながらこのステージの中へと現れているようで、激しく床を擦る砂煙が入り口の方から何度も聞こえているようであった。しかし、私はそれがこの場所へと現れるまでの数秒間、目の中の眼球だけを動かしてそっちの方を見るだけにしている。

 

 一方で、当の本人はこのステージへと現れたにもかかわらずしばらく同じ体勢で転がりながら前へと出ていた。その結果、立ち上がる際に数秒間の隙を見せているようで、大きな影のせいでとてもその姿が私の方からでも隠れているとは言えない。悠長に相手へと自身の胸と両方の腕を見せびらかすような真似をしながら、その上両方の目線を上へと逸らすことにより視界から相手をなくしている。さらに、煙の中にいる自分の姿を大きな声で強調しているかのようであった。

 

 彼らを見ている観客たちもそれぞれに2人の名前を等間隔で呼んでいながらこぶしを突き上げているだけで、それ以外には何もしていない。唯一違うのがステージからも観客席からも外れた場所にいる私が、今もわずかに瞼を震わせながら小さく口を開いている様子のみ。その姿が目の前のガラスの格子で囲われた正方形に写っている様子を見ることになるも、そのうちにだんだんとわずかに眉間へとしわを寄せるような動きを少しずつ強めつつ喉を締め付けて行く。続けて、喉の中も力を込めることでだんだんと狭くしていた。

 

 その間も、未だ連中の中の2人は向き合っているだけにしているどころか、同様の状態で今も大きな声で自分の名前を叫びながらわざわざわかりにくい表現で相手を倒すことを宣言。そして、最初に後から現れた巨漢がそれを終わらせると、続けて一番目に現れた女も同じようなことをしているようであった。

 

 ようやくそのお互いの声が終わったころ、辺りが皆示し合わせでもしたかのように静かにしていて、それは観客も同様。先ほどまで大声を出していた物たちが皆静かにしているせいで、私がわずかに足を動かしながら背中を向けて元の方へと戻ろうとしている足音ですらこの部屋全体に響くかのように感じる。自分の顎を触りながらそこで後ろ側を親指の爪で小さく引っ掻くかのようにしている指を前後している間に、大きな銅鑼の音が鳴っていた。

 

 何度も繰り返し聞こえるようなそれがしている間、私が同じ方向を特に意識せずに見ていたが、数回聞こえた後の機械が何度もガチャガチャと大きな音を立てている物を聞いたことにより自然と視線が下の方へと引っ張られている。そこでは機械の巨漢と女がお互いの距離を一気に詰めあうことしかしていない。わずかに顎で下の唇を引くかのように口を開けてしまっている私は、数回細かいペースで瞬きをしていたが、その間にようやく両者ともに走るのをやめる。

 

 足を素早く滑らせるかのようにし、とても自身を隠しているとは言えないわずかな砂煙を立てたのちに女の方から自身の背中で重しとなっていた機械のスイッチを押すと、そこからいくつもの機械が伸びている。しかし、それらはどれも大袈裟に自身の姿を大きく見せるかのように広がることにより、何秒か経っている上に、それが伸びきるところでなぜか女も腰に手を当てながら体重をもう片方へと移動し、そちら側の手で目元にピースサインを作っている。

 

 しかし、その間も巨漢はわざわざ自身の拳を相手に見せつけるような姿勢で相手の動作にいちいち返事をするかのようにしていた。それから何度も入口のモニターで聞こえていたような電子音楽が流れる音とともにドリルとハンマーを一度天井へと向ける。

 

 そして、それと時を同じくして両者ともに先ほどとは異なる大げさな音をまた出していた。それだけではなく、女自身の腕と柔らかそうな汚れすらもない手袋を身に着けているアームでわざわざありもしない腕の筋肉を見せつけるかのような姿勢をする。

 

 それから、大きな声で「いっくよ~」といった後に一瞬隙を作るように後退してから、ようやくまっすぐにドリルを飛ばす。そして、巨漢の方も身体が重いのか、その場で自身の片腕についている装甲でわざわざその攻撃を受け止めていた。結果として、2人の間で何度も高い金属音と赤い火花が立ち上がるだけの時間が続く。

 

 その間、女も巨漢も後者が足をわずかに後ろへと下げているもの以外では一切動こうとしない。特に前者に関しては背中に背負っている装置ですらも同様であった。一方で、今も格子になるかのように切り分けられているガラスの上に立つだけにしている私は髪の毛を追従させる動きで体を回しながら、顔をわずかに床側へと傾け後ろへと歩き始める。それから、強い息を吐きながら空気が潰れる音を聞きき、尻を椅子の上に落とし、その背もたれへと大きく体重を乗せた。

 




読了ありがとうございました。
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