月光   作:コンテナ店子@コミケ出ます

3 / 14
第3話「パレード-1」

 辺りにはいくつもの有刺鉄線が絡み合っている様子や、大砲の球によって出来上がった大きな穴で、凹凸となった場所に出来た水溜まりが黒ずんでいる様子がある。それ以外に周囲で風景として見えているのは、葉はもちろんのこと枝すらも無残な姿になった木々や茶色の土の上に石が埋まっているくらいの物。

 

 それ以外には地面の上で顔から眼玉を垂らしたままにしている者や腕を明後日の方へと曲げたままになっている者、他にも頭がえぐれているにもかかわらずまだ命を残している者など。彼らが多数の死体と共に地面に転がっていた。

 

 一方で、私はその中でも自身の足元に近い位置にいる者を足だけを使ってのける。たまたまだが、その人物はまだ生きているようだが、横へと追いやる動きに一切抵抗することはない。その間のみこっちも歩みを止めていたが、自身の道が確保されたのちに視界を首事持ち上げて前へと進み始めた。

 

 それに対し、空の方を見上げると、そこから大砲の弾が飛んできていた。その高い音が生存者のうめき声の中に紛れていても私の耳でも確かに捉えられている。そちらの方へと顔事視線を向ける。それからわずかな間ではある物の、私はしばらくの間だけ目を細めつつそっちを見つめていた。

 

「あの、隊長」

 

 私の後ろから聞こえるわずかな声。最初の一言を出してからその次が出るまでの間数秒間の間が出来ている。それに対し、こちらは視界の向きを変えることもなければ何かを答えることもしない。脇を開けながら息をゆっくりと吐くことで周囲の冷たい空気を感じ取った。

 

「どいてろ」

 

 ただそれだけ言いながら、近くにある枯れ果てた木へと向けて自身の背中に背負った剣を握り締める。そこから強く喉を締め上げつつそこを足場にして大きく飛び上がる。結果として木は粉々になっている物の、即座に地上へと近づいていた弾の元へとたどり着き、そのままそれを足で蹴飛ばす。

 

 結果として相手の道筋を変化させると、発射元の大砲の元へと着弾。爆破すると共に大量の人の影が砂煙と共に浮かび上がり、それらは自身の胴体の一部を周囲へと分散しているようであった。

 

 それから、一度地面に着地すると、地雷が爆発するよりも先に走り出し、塹壕の中から出て来ていた兵隊たちの元へと接近。大きな声を上げながらそこにいる相手らが次々に発砲してくるが、それらが全て私の進みの障害にならないことを確認するとそのまままっすぐに進む。

 

 敵が今も銃を構えて居たままにしているのに対し、その中でも最も近くにいた人間の首を剣で切り裂く。一度足を止めると、その者はただ重力に従うこと以外には首から一斉に血を噴き出すことしか出来ない。そのまま地面へと倒れていた。

 

 そこから噴き出している血がかかっているが、それに対して私は何もせずに周囲で足を後ろへと下げている男たちが背中も後ろへと傾けるかのようにしている様子だけを見ている。こちらが一度地を払うために剣を横へと薙ぎ払うと、それと共に周囲では一斉に大きな声が出ていた。

 

 ただ、それに対し私は視線をゆっくりと動かしているだけに。それから足をゆっくりと回すと、次々に彼らの首に一筋の傷を作り出してそこからわずかな血が出始めたのを確認しては次へ、また次へを繰り返す。数人ほど切り終えたところで最初の1人目が地面へと倒れた音がする。

 

 それに続けて叫び声をあげながら銃を構えている音がしたのに合わせて一度地面に突いた片足を軸として進行方向を変えるとことでその持ち主を標的として殺す。それから先は彼らの中でも反射神経の高い存在から順番に殺すことになった。

 

 肩で何度も息をしながら周囲の敵軍の一隊が全て殺し終えた光景を眺めている。私の体にも血が幾度も降り注いだようで、返り血の生温かい感覚が自然と伝わっていた。それに対し、指で頬を撫でるかのようにして、肌に付いたもののみ取り除く。

 

 そうしている間に相当に小さい歩幅のみで私の元へと近づいてきている部下たちがあった。私が制服に血を多く付けているのに対し、彼らにはその様子はない。相手の方へと首の向きだけを変えて見つめる。その瞬間、彼らは歩みを進めていた物を一斉にして止めているまま動かない。それに対しこちらは、ただ相手らの様子を見つめているのみで、髪の毛も両腕も落とすだけにしている。

 

 全員が一斉に私の方へと視線を向けていることを確認後に、ただ一度だけ「行くぞ」とだけ伝えてから前へと進みだす。それに対して彼らはわずかな声を出すこともなく、一度息を吐く音が不規則な形で聞こえてきた後に進むことなった。

 

 

 

 

 塹壕の中では私の剣撃によって放たれる風圧で飛び散る血や臓器を防いでいる物の、それでも限度があり、私の方へとそれが飛ぶ。しかし、その勢いと共に、すでに後ろの方で亡骸となった者たちへとたむろしているネズミやハエが大きな音を立てて慌てふためいているようであった。

 

 それに対し私は一度も振り返ることもなく、ただ倒れた者の上を踏みしめて進む。さらに、端の方で膝を持ち上げながら足がすくんで座り込んでいる者へも、上からの一撃の突きで首を貫く。次々と痙攣した動きと共に血を噴き出す。しかし、それも私が先へと進むことですぐに視界からは見えなくなっていた。

 

 しかし、塹壕の中でも低くなっている箇所に先日の雨で溜まった水が今だ深く残っている場所があり、そこの上で死体が今もいくつか浮かんでいる様子が私の目にも見えている。その水面直前の所で私は足を止める。それは前後に揺れることもないため自身の足を止めていれば触れることもないが、逆にそこで埋まっている石は私の靴の先端よりも低く、とても進行の阻害にはならない。

 

 一方で、水面の方を見るも、この場所も他所と同様に濁っていてとてもその中身を確認することはできない。しかし、それでも私はしばらくの間その表面を見続けていた。

 

 それが終わったのちにその中へと足を進める。だんだんと底が下り坂になっているようで、私の体や服が少しずつ冷たくなっていくのを感じる。靴や制服の中にもいとも簡単に水は染み込んでいるようであった。

 

 ただ、それに対して、2体浮かんでいる死体らは私に何かをするわけでもなければ、私の進行とぶつかるとその動きに合わせ体が回転するかのように動くのみ。それと共に傷口から血が溢れているようで、少しずつ広げっていくかのようになっていた。

 

 一方で私は彼らも視界から消え次第何もせずにそのまままっすぐに進んで行くだけにする。水に触れていた間は物の数分にもならない程で、装備品が水を吸ったことでずいぶん体が重くなったが、それでも先度までと変わらずまた角を曲がって現れた敵軍の兵士が踵を返すのを追う。

 

 周囲へと水を飛ばしながら進みきることで、それが彼らの亡骸へも付いている。しかし、それを拭うこともないため、血と混じるかその場でドームのような形状になることで残ったままになっていた。

 

 

 

 はしごを使い塹壕の中から出て来た私を見るや否や、一斉にこちらの方へと視線を向けているようで、体が動く音が私の方にまで聞こえてくるほどであった。それに対し、未だ濡れたままの体や服は水滴を多くこぼれている身でまっすぐに進むと、彼らは一斉に道を開けるように後ろへと下がって行った。

 

「あっ、あの……」

 

 部下の中の1人がこちらへと向けてわずかな声を出していた。さらに、声が小さいだけでなく、相当な早口であったがために、聞き逃してしまう可能性もある。しかし、それでも私は一度足を止め彼らの方へと視線を向けることとした。

 

「全員殺した」

 

 それだけ言う後はしばらくの時間彼らをただ見ているだけになる。ただ、相手も全員しばらく何も言わないことで周囲では何の音もない時間が経過する。風も吹いているが、それで揺れるものなど私の長い髪の毛の他にはない。塹壕が掘られている箇所の向こうも私たちの塹壕から歩いて来た際に見ていた光景と何も変わりのない世界だけが広がっていた。

 

 そして、茶色い土と死体とゴミとなった物たちだけで支配された荒野の中を歩く。私の体からはその間にも次から次へと水滴がこぼれ落ちる。その場所に規則性などなく、服であったり指であったり、武器の先端や髪の毛。私を構成する全てから滴り続ける。しかし、その冷たさを感じる肌ですらも、それを拭うことはしなかった。

 




読了ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。