わずかな息を吐きながら自分の額の上に自身の手を乗せているだけにしていた時間が過ぎるも早夕方。目線をわずかに上へと向けている状態で、この部屋の中には眩しく突きさすような真っ赤な夕陽が入り込んでいる。そして、それがこの家の入り口にもなっているドアの方、それと部屋を繋ぐ廊下をも照らしていた。
しかし、その一方でそれらの赤い色がベッドはもちろんのこと、上裸のままいる私の体に届くこともない。わずかにまた瞼を降ろすが、それでも自身の手の甲側が見えていることは変わらず、その薄暗い影になっている光景を見下ろす。
一瞬で体を立ちあがらせると、カーテンを閉める。その瞬間、空をわずかに見るが、その中には確かに端の方でもうすでに暗くなっている範囲も見えた。その部分も夕陽の赤が混じっている物の、それでも薄暗くなっていることは一切隠そうとしない。しばらくすでにカーテンを閉めているがために私の元へとその明るさも暗さも届かない状態で頭をわずかに下げるかのように口を紡いでいる。しかし、それでもカーテンのわずかな隙間から見えている空の光景をわずかな目の範囲のみで私は見つめて、その間ずっと窓同士の枠に手を当てていた。
時間を開けた後にわずかに滑らせることで指を持ち上げ、その結果として関節部分をわずかに膨らませるかのようにする。それから顔を振り返らせることで、床の上とベッドがない壁に出来た赤い夕陽に自身の影を作り出す。
顔をわずかに下げた状態で壁に立てかけてあった剣を手に取りそれを腰へと下げる。それから一度鞘の中から取り出し刃とこすれ合う音を聞く。その音は私が剣を動かしている間だけ聞こえ、それ以外の時に聞こえているのは、朝と同様にしている周囲からわずかに聞こえる外の音のみ。
しばらく赤く染まらない銀色のそれと反射した光が白くなっている光景だけを顔を横に向けることで見つめ続ける。その間、私は顔事視線をそっちへと向けることでただただ見つめているだけにしていた。それも勢いよく鞘の中へと戻すと共に、一直線に外へと向けて歩き出した。
いくつもの彫刻や絵画が並ぶ廊下をまっすぐに進む。それらが並んでいる反対側にはベランダがあり、そことここを隔てているのは等間隔で並んでいる柱のみ。その結果として私が進む道筋にも明るい時と暗い時を交互に繰り返すかのようになっていた。
一方で、それに対し私は何かをするわけでもなく、ただ体をわずかに前のめりにしたまま口を紡いで進む。近くを連中の構成員が通りそうになっている時もあるが、彼らはお互いに顔を向けながら軽く笑うような声を出しているようにしていた。しかし、私と片方の目が会うと一緒に、彼はもう片方へと肩を軽く叩いて合図すると、一斉に腕をわずかに持ち上げるかのような動きと共に両脇へと背中を進行方向側へと向けるような体勢で捌けている。
こちらが一度足を止めながら相手の様子を視界に入れている物の、それで視線が動くことがない状態が数秒間続いた後にまたもう一度歩き出す。その間、サングラスをかけ直して自分の目元を完全に隠す私が通り過ぎてからしばらくの間まで、周囲から音が聞こえてくることはない。
それからも等間隔の早歩きに近いペースで進むこちらに対し、彼らはわずかに息を吐いている音をさせてから何かを話しているようであった。しかし、足に込める力を強めながら歩く速度を上げることで足音を大きく鳴らし、両開きのドアを自身の側に大きく引きながら開けるまでそれ続いた。
そっちでも酒を飲みながら男たちが数人大きな声で話していたと思われる様子を視線だけで一瞥。勝手に閉まる音だけが周囲でしている中で、彼らは私の方へと赤くなった顔を向けるかのようにしている。しかし、それもすぐに終わらせると、こっちへと向けてわずかな挨拶の声を出しながら、グラス片手に近づいてくる男の横を素通りした。
相手はこっちにわずかにおどけた声を向けていたが、壁に寄り掛かりながら顔を下へと向けるだけに。気づけばこの薄暗い赤色のカーペットや黒い壁で作られたこの部屋の中で聞こえている声はだんだんと大きくなっている様子。女のなまめかしい喘ぎ声や男たちの蕩けた声が交じり合う中で、それらではなく、私はわずかに開けた視線で壁へと飾られている銃や刀などの武器の数々や動物のはく製を眺めていた。
「お前も来い」
私の片方の肩を叩きながら話しかけてくる頭の男は、その動きのまま作り物の観葉植物のない方へと回り込むとこちらへと体重を預けるような傾け方で肩を組んでくる。それに対し、こちらは何をするでもなく、ただその場にいるだけにしていた。
ただ、一方でその男は歯を見せて大きさは小さい物の下品さを一切隠さない笑い声を私の方へと聞かせてくる。それからかけてくる体重をわずかに変え続けるかのようにしているのに対し、私は何もせずにその場に立っているだけにしている。周囲では最初にドアを開けた直後と何も変わらないほどの大きさの声で誰もが騒ぎ出していた。
この場所で一切しゃべっていないのは私のみ。近くにいる男に胸を揉まれている女と一瞬目が会ったような気もするが、私の方から顔が向かっている床の方へと視線を向けたがために、それと変わることはない。
「俺らにだって福利厚生はあんだよ」
それだけ言う男は私とは距離を置きながら何度か拍手をしてそこにいる者たちに合図をしているかのようで、それから出発することを何度か大き目な声で言うと言われた側も語尾を伸ばすような音と共に立ち上がり、ズボンを履き直している様子や水を飲んで酔いを少しでもマシにしようとしている者たちが出発の準備をしているようである。
全員が部屋の中を出てから最後に私が後を追うことにしたが、カーペットの上に酒が入っていたと思われる瓶や紙のゴミが打ち捨てられているだけでなく、その中のソースや酒がこぼれて染みを作っていた。それらが床の上に点在している物の、私が首を振り返ることで見ている以外にそれらが変化することもない。
ただ、私も彼らの声が小さくなり始めた矢先に両方の腕を使ってまた入ってきた時と同じドアを閉めることにした。
彼らが普段活動している所とは真逆の場所、夜にもかかわらず飲食店や娯楽施設の看板や店の灯りが数多く色鮮やかに並ぶ道。その左右には何人もの客引きが道行く人々へと呼子をしているだけでなく、店の中へと案内しようとしている物までいる。
左右にある建物には1棟の中でも数多く色も形も異なる看板が数多く取り付けられている他、そこから我先にとでも言いたいかのような音量の音楽が流れているかのようであった。しばらく視線を吸い込まれるかのようにそっちの方を眺めていた私に対し、頭が率いている連中はもうすでに人ゴミの中を進んで行っているようで、私も小走りでその後を追おうとするも、人の波に一度押し戻されてしまいそうになる。その結果、体の向きを横に傾けながら足滑らせるような動きで連中の後を追うことになった。
わずかに息を吐きながら顔を下へと向ける私に対し、頭の男も若い衆たちも客引きの胸が開いているドレスを着た女と接している。それに対し元々連れていた女もそれを引きはがそうとしているようだが、それに対し私はただ顔を斜めへと向けるかのようにすることで視線を彼らから離すのみ。
しかし、それでも周囲から聞こえている幾度も空気を叩くような形で流れている音楽が止まることはない。片方の手を剣の握りに添え、もう片方を空中へと放り投げるような体勢でいる視界の中には今も夜の星があるが、それらのほとんどは左右に並ぶまばゆく色が鮮やかな建物やその看板たちの存在で見えなくなっていた。
人々がまっすぐ立っている私を避けて進むがためにほとんどぶつかることもなく、かといって風が吹いているわけでもないがために、私の体を揺らすものは何もなく、ただ狭い範囲で見えている夜空を眺める以外にすることなどなかった。
なお、それもわずかな間のみ。周囲の喧騒の中でもひときわ鋭く大きな物がするや否や、咄嗟の勢いで視線を向ける。陣営を問わない女性らの声に紛れて男同士がにらみ合い、互いに圧力で押し合うかのようににらみを聞かせていた。
その中の1人は若い衆の中の者であるにもかかわらず、頭は扇子を広げたまま下品に笑っている。その様子を視線だけでしばらく見つめていたが、私の様子には気づいていないよう。一度目を閉じながら顔の向きを変え、そっちの方へと早歩きよりもわずかに遅いほどの速度で近寄る。
しかし、私が声を出そうとした途端に相手側が頭を指差しながら何やら大声を出していたのに気づいて、そこで足を止めるとすぐに進路を変更し、顔を左右に一度ずつのみ振りながら両手を握り締めて頭の前へと立った。
それからすぐに吹き飛んできた若い衆を自身の体で受け止め、体を倒しながら空中で回転することでまだ残る勢いを抑え込もうとするが、それでも止めきれずに道路の上を何度か転がる。しかし、即座に肩膝立ちの体勢になるのとほぼ同時に走り出し、やってきていた敵の鉄砲玉の男を蹴り飛ばす。
走った勢いのままであったがために、相手は道路に頭を打ち付け血を流す。それで出来たわずかな隙で骨を折るほどの力でその胸元を蹴り付け、悲鳴にすらもならない情景反射的な声を聴く。目線だけを使って地面に転がる相手を見ながらその首に剣の先端を突き付けた。そして、その後に周囲を見ると、彼に続こうとしていた物もみな後ろへと下がっていくかのよう。
また、数秒間経った後に頭が大きな笑い声をあげながら私の名前と共に様々な言葉を大きな声で男らに投げつけている。その後にその男の方へと一瞬だけ視線を向けていた。しかし、そこからまた敵たちに視線を戻そうとした瞬間に、息を吸いながら瞼の両方を大きく開く。同時に剣を落としそうなほどに手から力が抜けていたことに気づき、それが地面へと触れる前に拾い直す。
何度も視線を左右に動かすことしか出来ない私だが、それに対しラゼンは今も周囲にいる男たちの人混みの中で彼らを整理しようとしているようであった。
「久しぶりじゃねぇか」
私を見つけるなり声をかけて来たのか人の整理がある程度済んだからこそ声をかけて来たのか。相手は今も片方の手を腰に置き、もう片方の手で青色の髪の毛を掻いているかのよう。しばらく時間が経った後にわずかに落としていた顔を下へと向けながらわずかに笑うかのような表情を見せている。
私の背中側にある飲食店の換気扇から湯気が一気に出始めているようで。それに続いて私が踏んでいた男が血を吐く音を出していたことで、そこから足を降ろす。しかし、それから私の方から何かを話すでもない。ただラゼンから顔事視線を逸らすだけに。
それでも、数秒に一度程の頻度でラゼンの方を見たり相手から視線を逸らしたりを繰り返す。しかし、向こうは今一度私の方から視線を逸らすと、周囲の連中へと何度も散るように声をかけ続けていた。
「ラゼン! 何してんの! 早く行こ!」
ラゼンの振り返っている姿が一瞬だけ見えながらその向こう側にいる、両方の腕を大きく振っている紫色の髪の毛をしている白衣の女と、その周辺にいる人間とは異なる種族の者たちの様子をただ見つめていた。
私の足元に今道路の上に倒れたままになっている男を踏むことで、また口の中から血があふれているのを感じるままになっていた。
読了ありがとうございました。