すみません。
今は連中の若い衆も含めて誰もトレーニングルームにはいないこともあり、私がベンチプレスを持ち上げるたびに喉も含めた体全身に強い力を入れる大きな声を出す。それは同時に起きるマシンがぶつかる鉄の音にも一切負けないものとなり私の元へも届けられる。しかし、息をつく暇も作らずに一度おろしたのちにまたもう一度それを持ち上げていた。
それを何度か繰り返した先、顎をわずかに持ち上げるような体制で何度も息を繰り返す。しかし、それも数秒間の間のみ。周囲にもう一度汗を振りまきながらまた自身の胸元のさらに上部分に引っかけてあるそれを持ち上げ続けていた。部屋の中では繰り返し機械同士がぶつかり合う音だけがしているうえに、私の視界の端の方に見えている壁一面を覆う鏡にも私の姿以外で動いているものはない。床や天井に赤と黒のタイルが互い違いになるように並んでいる様子や誰も使用していない機械が並んでいる姿のみ。
トレーニングを終えた矢先に、ベンチの上で何度も激しい呼吸を繰り返しながら素肌をさらしたままにしている胸を幾度も上下に動かし続けていた。そして、そのたびに周囲へと汗が垂れ落ちていくのを感じ取る。
呼吸が落ち着いたときに頭をわずかに滑らせることで顎の角度を高くしながら目線も同じくする。天井の様子が見えているものの、そこはぶら下げられた笠のついたランプが薄暗い光を垂らしているのみで、その奥側は先ほどと同様の様子がある。視界の中では私がいる場所がこの部屋の中でも一番奥ではあるがそれ以外の場所でも変化はない。対角線上の角にあるドアの方までまったく同様であった。
一度立ち上がり、髪の毛を大きくおろしたままにしていることもあり、自分の顔の約半分程が隠れている様子を鏡の前へ移動することで見つめる。その一方で、見えている側の顔も、偶然ながら円を描くようなヒビが入っている箇所と重なり合ったがために、周囲の赤色とまじりあっているだけでそれ以外に見える場所などない。
部屋から出たのちに、連中の構成員で遭遇したのは、時を同じくして部屋から出た際にボディーガードから挨拶されている声を聴くことになった頭の姿だけであった。
「おっす待たせたな」
わずかに手を出しながらこっちへと小走りで来るラゼンは羽織っている上着の胸元を大きく開けた格好をしていることもあり、その中の腹筋が割れている様子も一切隠さないままにしている。また、それに対し私はわずかな声を上げるものの、それから数秒間はまっすぐに相手の様子を見ているだけにしていた。
この駅前の広場が人でごった返しているものの建物まではある程度距離があるがために私の周囲で太陽の光を遮るものもなければ、相手が来てからはお互いの間を遮るものも空気の他には何もない。私たちよりも空に近い位置にいる木々ですら、今日は風がないがために葉を落とさない。
相手が私に向けて言葉をかけてきてから数秒間、わずかに頬を持ち上げながら顎を自分の身体へと近づけるかのようにしている私は、自分の剣の持ち手を手のひら側でわずかになでるかのようにその角度を変え続ける。
一度視線をそらしてからわずかな声で相手の問いに答えようとするが、それからは数秒くらいの間はただ何もお互いに言葉を出さない状態が続いて。その間は喉が強く締まるような感覚を味合わされながら唇同士を強く押し付けてその形を潰してた。
しかし、気づけば左から来たラゼンの後ろを歩く通行人の背中が消えてなくなるよりも早く開いてが返事をしてくれている。それだけで私は唇の形を変えてそれら2つを使うことで、頬を押し出すかのようになっていた。その間もラゼンは何かを話しているようで。すぐに目尻の両端がわずかに落としているままに相手の様子を見る。
「なんだよ」
わずかに言葉の最初を持ち上げながら力を入れないこぶしで軽く小突くかのようにしているラゼンは、それとともに体を肩から左右へ揺らす。それを見て、私もその部分を反対側の手で押さえつつ目線を落っことしている。その間、視線も同じ方へと向けながらもう片方の今も剣の上に乗せている手に込めている力を入れなおした。
それから一度目を閉じて顔を下へとむけたから深呼吸。それから脇にも空気を入れるかのようにそこを開ける。また少し時間を開けたのちにラゼンの名を呼んだ。
しかし、それに対して相手は顔を後ろへと振り返らせているようで、そっちにはこっちへと近づいてくる先日の連中がいた。彼らはこの暑さにもかかわらず陽炎が起きていないがために、一切隠れることなく私の視界にも確かにとらえられている。
彼らの1人に軽く肩を小突かれたラゼンはそれを大きめに動かすような反応をしながら両方の手で自身の膝を叩く。さらに、背筋を曲げて軽く姿勢を低くしながら目を細くしている。その状態で何度も笑う声を出しているようであった。そして、それからラゼンもその相手にやり返すかのように私にしていたようなものと同じような形のことをしている。しかし、それでも相手がそれでどうなるわけでもない。
一方で私は、最初は顔を横へと向けるような形でそっちの光景をただ、自分のサングラスのアーチを指で押すことでその位置を整えながら、目線を背中側の地面の方へと向けるだけにして見ていた。それから、親指だけを何度も動かしながら剣の持ち手の段差を繰り返し引っ掻く。一度瞬きしてから唇を何度も動かし続けてその位置を繰り返し変え続けるだけに。
その間、視線はいつの間にか木々によって作り上げられた影が揺れ続けている様子へとひかれていて、周囲には今も人混みが出来上がっているにも関わらず、それらが揺れ続ける音を感じることになっていた。
彼らの仲間を1人ずつ名前とともにラゼンが手を指すような形で教えられたのに続けて、私は軽く頭を下げていく。最初の1人目の所で顔を上げた際に相手がわずかに目を丸くしながら言葉になっていないわずかな声を出している。続けて目線も左右へと数回泳がせたのちにラゼンへと向けているようであった。
しかし、それに対し彼は「いつもこいつは無口なんだ」とだけ言いつつまた別の人の話をしている。辺りからのわずかに風で木々が揺れる音が聞こえてくるのを感じながらまた別の者に先ほどと同様の返事をする。そして、その間も私は自身の平を剣の上に乗せたままにしているのは変えない。
わずかに眉を落としながら一度だけ瞬き。それが終わった後もその範囲を狭くしているのは同様。上の唇を下の物へと押し付けるかのようにしている間、目線をわずかに彼らがいる方とは逆の方の下側へと向ける。
何度も人が歩いたことで薄汚れている様子は彼らがきれいな靴を並べている場所と何も変わらないものの、私が立っている場所は近くに生えている木の根が伸びているのか、タイルにヒビを作りながら湿った土を盛り上げている。ラゼンが先導している仲間たちが「行こうぜ」という声に合わせて進める足取りに私も一番最後についていくように足を動かしたところで、かつて支給された靴の側面が土を擦る。
それで固まっていた物の1つが崩れたようで、塊が周囲へと散り散りになっているようであったが、そのかけらはあまりに小さいがためにそれを見ることはない。しかし、それでもタイルの上に出来上がっていた水分の染みは決して消えることはなかった。しばらく私はその様子だけを見ていた物の、ラゼンが私へと声をかけてきたことで、すぐにわずかな声とともにその後を追う。
それからもう一度後ろを振り向くも、先ほど見ていたものはある程度距離ができたことでどこにあるのか自分でもわからなくなっていた。
もう一度ラゼンらの方を見るも、彼らは人混みの向う側を歩き始めているようで、すぐに私もその後へと追いつこうと強い息を吸いつつも喉を締め上げることにしていた。
読了ありがとうございました。