「至高の魔弾」賞最終日――
「先輩!〆切まであと5分です!」
「うおぉぉぉ!あともうちょっとあともうちょっと……出来た!!」
「ハイ!提出します!!」
一昨日のトラブルから昼夜を徹し、なんとか完成までこぎつけて大会本部に提出を完了した。荷電粒子砲は大きくスケールダウンを余儀なくされたが、かえって携行武器としては綺麗に収まったような印象だ。
「みんなお疲れ様……結果発表まで休むことにしよう……」
ウタハは全員を労う。あれ以来ムギホとキズナも作業に協力してくれたものの、極限まで神経をすり減らしたエンジニア部と銃砲科の5人は疲労困憊だ。
「何か買ってきてあげるから、一息ついたらみんなちゃんと食べてね」
私は見守ることしかできなかったので、ここからはアフターサポートに回ることにした。疲労に喘ぐエンジニア部を見るのは一度や二度ではないが、今回のくたびれ方はまた一段と激しく見えた。
「『至高の魔弾』賞、結果発表ーーッ!!!」
数時間後、結果発表セレモニーが始まった。私たちはエンジニア部の作業場のモニターの前で見守る。仮眠をとっていたメンバーも続々と起こされて画面の前に集結する。
「さあて、どうなったかな?」
「入賞してるといいね」
「できることはやった、悔いはないさ」
ウタハは晴れやかな顔で画面に臨む。もっとも、その目はまだ眠そうではあったが……
「ホムラちゃん大丈夫ー?」
「は、はい……なんとか……」
ホムラは疲労と緊張で顔面蒼白だ。同じ1年生でもマイスター2人は慣れっこなのか平然としているが、ここまで大規模な大会の発表となると初めての人間には辛いものがあるのだろう。
「あっそろそろ発表だよ」
司会が結果の書かれたメモを受け取って読み上げる。10位、9位、8位と発表されていくが、私たちの名前は無い。
「いやぁ、緊張しますね!」
「結果発表はいつもドキドキする」
コトリとヒビキも表には出さずとも緊張してはいるようだ。しかしその目には自分たちの作品の出来への自信が窺える。
「それでは3位の発表です!『至高の魔弾』賞3位は……」
「エンジニア部×プレローマ高専銃砲科合作、荷電粒子砲『流星ちゃん』!!」
「うわーーっ!!3位だーーっ!!」
読み上げられると共に、一気にみんな脱力する。だが入賞の安堵よりも3位止まりという結果に対する悔しさが垣間見える。
「講評コメントですが、『荷電粒子砲というコンセプトに対して、サイズ、威力、安定性共にバランスの取れた出来で完成度は高く感じた、しかしところどころ急ごしらえと思われる部分が明らかで、細部への美しさを欠いた作品だった』とのことです!」
「くそーう、上手く誤魔化したつもりだったのになー、やっぱバレちゃうかーっ」
ヒトミはあからさまに不機嫌になる。やはり堂々と美しさの欠陥を告げられたのが堪えたようだ。
「まあまあみんな、トラブルを乗り越えてよく完成まで持っていってくれた!改めてお疲れ様!」
ウタハがフォローする。そうだ、せっかくなら成し遂げたことを誇るべきだろう。
「お疲れ様でーす、3位おめでとうございます!」
扉を開けてユウカが入ってくる。ゲーム開発部のときもそうだったが、わざわざ称えに来てくれて嬉しい限りだ。
「ああ、ユウカ、いつもありがとう」
「いえいえどうも、それはそれとしてウタハ先輩、一昨日の件について、報告書の方よろしくお願いしますね」
「あっすまない、すぐ書くから……」
ユウカも別にただ労いに来たわけでは無かったようだ。ウタハは当然の宣告に項垂れる。
「先生、今回もお疲れ様です」
「うん、ユウカもお疲れ」
「はい、それで、これは個人的なお願いなんですが、一昨日、最後までお茶、できませんでしたよね……」
「ああそのこと?それじゃあまた今度埋め合わせしてあげるよ」
「はい!ありがとうございます!」
ユウカは嬉しそうに返事をする。機嫌を損ねていなくて何よりだ。
「ムギホさん、キズナさんも、お疲れ様でした」
「どうもどうも、こちらこそお疲れ様です」
「これも何かの縁だと思うので、モモトークの交換を……」
「ええ、構いませんよ、今後とも是非、仲良くしてくださいませ……」
しれっと外交が行われる。もっとも、プレローマの2人にとってはこれも予定の範疇だった可能性は大いにあるだろうが……
「それでは失礼しました」
ユウカは次の慰労行脚に向けて作業場を後にする。私も大人としての役割を果たすことにしよう。
「よーしみんな!今日は打ち上げだ!私がご馳走するよ!」
わ~いと歓喜の声が上がる。みんなで食卓を囲む声が更ける夜に響き渡ることになった。
■
「よーし2人とも乗ったな、出発するぞ」
ブゥゥゥン
「いやーっ楽しかったね!ホムラちゃんはどうだった?」
「楽しかったです!エンジニア部の皆さんもすごかったですね、私も頑張ります!」
「うんうん、ホムラちゃんがやる気になってくれて先輩は嬉しいぞーっ!」
「ところで……ホムラちゃん、これなーんだ?」
「ん?USBメモリですか?中身、何入ってるんですか?」
「ヘヘヘ、エンジニア部が持ってる機械の設計データと顧客情報、ちょーっと拝借してきちゃった」
「ええっ!?本当ですか!?というかいつの間に……」
「知らないの?今回の出張の『裏』任務が、このデータ盗ってくることだよ?」
「う、嘘ですよね!?そんな産業スパイじみたこと、安全科が許しませんよね!?」
「そりゃ私たちの所から盗られるのは安全科は許さないけど、余所から盗ってくる分には何も言わないよ?」
「ええ……せ、生産科長は知ってるんですか?」
「当たり前じゃん、というかムギホちゃんと副座長は目を逸らすための囮だよ?シャーレの先生がいるとは思ってなかったけど、なんだかんだ気を引いてくれて助かったね」
「ちょ、ちょっと信じられません……あんなに仲良さそうにしてたのに……」
「まぁ
「先輩がなんで学科長やってるのか、分かったような気がします……」
■
「先生、少しお時間よろしいですか?」
大会が終わった翌日、キズナが話しかけてきた。
「あれ?キズナ?みんな一緒に帰ったんじゃ無かったの?」
「ああ、私は自分の単車があるので、1人で帰ります」
そうなんだ、と納得して用事を聞き返す。
「そうそう、先生、今度の聴聞会、またよろしくお願いしますね」
「聴聞会?何それ?」
あれ?連絡行ってないんですか?と首を傾げる。どうやら情報が行き違いになっているらしかった。
「それならこの場でお伝えしておくことにしますね……まあまた連絡行くと思うので、適度に確認しておいてください」
しかし次の瞬間放たれた情報は、うん、分かったよ、などと生返事を返したことを後悔させるような情報だったのだ……
「近々、連邦生徒会とプレローマ高専の間で、元防衛室長、不知火カヤの身柄の引き渡しが行われます。先生には、引き渡し現場の立ち会いと連邦生徒会及びプレローマ高専でそれぞれ行われる聴聞会と査問会に出席をお願いします」
私は思ってもみない人物の名前に、暫し驚愕の表情を崩せなかった。
「では、私はこれで失礼します」
キズナは私の表情を知っていたかのように微笑みを浮かべた後、その場を後にするのであった……
次回予告
身柄引き渡しが決まった元防衛室長不知火カヤ
彼女を見届けるため、先生はプレローマ自治区へ足を踏み入れる
そこに現れたのはカイザーの影だった!
カイザー、安全科、審査会
3者の思惑がプレローマの地下で交錯する時
不知火カヤは何を思い、どこに歩みを進めるのか?
次回 primary branch 1 「一番星1つ、望む者と背ける者」
鋭意執筆中!
【Student's Profile】
神谷ヒトミ(モチーフ:かみのけ座)
プレローマ高専3年生 銃砲科
年齢 17歳
身長 159cm
誕生日 6月18日(黄金比 0.618...:1)
(ヘイローモチーフ:黒眼銀河)
趣味 銃設計、美術鑑賞
固有武器 無慈悲な夜の女王(M2重機関銃)
捧ホムラ(モチーフ:さいだん座)
プレローマ高専1年生 銃砲科
年齢 15歳
身長 154cm
誕生日 1月15日(どんど焼き、旧正月)
(ヘイローモチーフ:アカエイ星雲)
趣味 キャンプ、たき火
固有武器 ドラゴンブレス(スオミKP/-31短機関銃+ROKS-2火炎放射器)
早乙女ムギホ(モチーフ:おとめ座)
プレローマ高専3年生 生産科
年齢 17歳
身長 156cm
誕生日 3月8日(国際女性デー)
(ヘイローモチーフ:M104ソンブレロ銀河)
趣味 工場設計、家庭菜園
固有武器 エア・ウー・エア(ウィンチェスターM1897ライオットグレード散弾銃)
魚住キズナ(モチーフ:うお座)
プレローマ高専4年生 副座長(機甲科)
年齢 18歳
身長 152cm
誕生日 3月21日(春分の日)
(ヘイローモチーフ:渦巻銀河M74)
趣味 スノーボード、ツーリング
固有武器 メイルシュトローム(M20 75mm無反動砲、ベスパ150TAP)
お読みいただきありがとうございます。
この小説はもともと不知火カヤを知ったときに、この人ネットであんまりな扱いを受けすぎだろ、と思って、何とか活躍させられるシナリオは無いだろうか?と考えたのが始まりです。
最終的にオリジナル生徒とかオリジナル学園が生えてきてしまったので、せっかくだから形にしようと思って書き始めました。
次回から本当の本編です。よろしくお願いします。