空と夢と星と青春   作:イメージの裏切り

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影無き嵐、一つ

 力尽きた「ネメアの獅子」の前で、スバルは不敵に立ち塞がる。私たちを始末する、という宣言の通りに、小銃の弾を込め直して戦闘の準備をする。

 

「スバルさん……本当にやるんですか?」

 

 緊迫した空間で口火を切ったのはカヤだった。

 

「ええ、そうですよ」

「そんな……」

 

 けんもほろろなスバルの返答にカヤは言葉を失ってしまう。

 

「まずは自分の心配をするべきじゃないですかね?あなた今丸腰ですよ」

「……っ!!」

 

 今この場に、武装した人物はスバル1人だ。これもおそらく、計画の内だろう。いざという時に、制圧させやすくするため……。

 

「それでも……!私はあなたを止めますよ!この場に……あなたと真っ向からやりあえるのは、先生の他には私しかいないんてすから!」

 

 カヤはキッと目を剥いてスバルを睨みつけ、無手での戦いを挑もうとする。

 

「へぇ……舐められましたね」

 

 スバルは少しばかり名残惜しそうな目をした……その直後──

 

 

 

 ガシッ

 

 瞬きする間もなくカヤの懐に入り込んで掴みかかると、大きく腕を振りかぶって──

 

 

 

 バキャアッ!!!

 

「──あぐあっ!!」

 

 顔面に一発拳をお見舞いする。声にならない声がカヤの口元から零れ出ると、次の瞬間にはスバルは再び拳を構え──

 

 

 

 ドゴォアッ!!!

 

「──おごぉっ!!」

 

 腹部にも一撃を加える。急所に二発も殴打を食らったカヤは力なく倒れ込む。スバルに掴まれた手も離されて、冷たい床にドサリと捨て置かれる。

 

「カヤ!!……っ!!」

 

 スバルは瞬時に私の目の前に現れ、銃剣を突きつける。カヤの方へ視線だけくれると、背中を丸め、顔と腹を押さえて呻き声をあげている。胃液が逆流したのか、その声には苦しそうな咳が混じる。

 

「スバル、これは本当に君がしたかったことなのかい?」

「愚問ですね、やるべき事をやる。それだけのことに望みをかける意味はありません。私は責任を果たすだけ……」

「スバル、君はこれ程のことに責任を負う必要はないよ」

「それは違いますよ、先生。これは審査会の決定、()()()で決めたことなのです。それ故に私たちはやる事の責任を()()()で分け合ったのです。私だけが重荷を背負った訳ではありません」

 

 スバルの目は蒼白ながらも底が見えない程に深い。決断は強固なようだ。

 

「先生、覚悟を決めてください」

「ふふふ……そうだね、私も『大人のカード』を切らないとね」

「!?」

 

 私はポケットに手を入れ、「大人のカード」を取り出す。放たれた光にスバルは一旦飛び退いて姿勢を立て直す。

 

「スバル、私は、君を全力で止めるよ」

「……」

 

 私はカードを天高く掲げる。嬉しいことに、それに応えてくれた生徒たちが私の周りに現れる。

 

「ほう……」

 

 スバルは背を伸ばして、目の前の生徒たちの姿を一覧する。

 

「6人ですか……」

 

 戦う相手を見切ったかのように呟くと、リボルバーを取り出して弾を込め直す。そして私に呼びかける。

 

「先生!始める前に、何か言っておくことはありますか!私にはありますよ!」

「聞くよ!スバル!」

 

 そう応えると、スバルは少したじろいだ後に言い放つ。

 

「私は!羨ましいですよ!行きたい場所がある人が!」

「君にも行けるよ!」

「そうではないのですよ!先生!私は、まだ行くべき場所を見つけていない!」

 

 スバルはカヤを一瞥すると、再び叫ぶ。

 

「行きたい場所に行こうとして、辿り着けなかったなんて幸せなことですよ!私はまだ自分の行きたい所に足を出すことすらできない!」

「でも、君はここまで迷わず来たじゃないか!」

「違います!私は、教えられた場所と、その道のりを、ただ覚えて歩いただけです!」

「……」

「本当に行きたい場所、自分が見つけた星のある所を知っている人を!私は羨ましく思いますよ!あなたも!カヤさんも!」

 

 そう言うとスバルはリボルバーを収め、自動小銃と銃剣を手に取る。

 

「じゃあ私も言っていいかな!?」

 

 スバルはこちらを睨みつける。

 

「君は!ちゃんと行きたい所を見つけられる!大丈夫さ!何も1人で見つける必要は無い!」

「……」

「何度見失っても!何度見間違えても!必ず見つけられる!保証するよ!」

「……っ!」

「それが!大人としての責任だからね!」

 

 スバルは大きく歯ぎしりすると、戦いの開幕を宣言する。

 

「そんなことは出来ない!無責任なことを言うなあっ!!身の程を!弁えろおっ!──Γνωθι Σαυτον(汝自身を知れぇっ)!!!──

 

 

 

 

 

「じゃあ……始めよう……」

 

 

 

 

 

 ズダダダダダッッッ!!ズガガガガガッッッ!!!

 

 合図と共にスバルに向けて銃が乱射される。しかしスバルはそれを見切ったと言うように、最小限の動きで躱していく。涼しい表情が象徴するように当然の展開のようだ。

 

 ズキュゥゥ──ーン!──キインッ!!

 

 ライフルの狙撃さえ、分かりきっていたように銃剣で受け止められる。生半可なやり方では通じなさそうだ。

 

「それなら、これなんてどうかな?」

 

 私が1つの指示を飛ばすと、曲射による砲撃の幕がスバルに向けて降りる。すぐに爆炎と共に煙が舞い上がる。

 

「やったか!?」

 

 ──なんてフラグが物語るように、噴煙から1本の尾をひいて影が上空に飛び出してくる。影はくるくると回転しながら私たちの上を取ると、姿を現して小銃の狙いを定める。

 

 スタタタタタタッッッ!!

 

 スバルの放った銃撃に一瞬みんな防御の態勢をとる。だがスバルはその隙を見逃さず、膝を曲げて空中を蹴る。

 

「──まずは、次の矢を折りますか」

 

 その一言と共に姿を消したかと思うと、一番後ろに控えていた砲撃手の背後に不意に現れ──

 

 スタタタタタタッ!

 

 ──銃撃を見舞う。そして完全に不意を突かれて倒れ伏した砲撃手にリボルバーを構え──

 

「1人目」

 

 ──トドメの1発を決める。私たちはすぐに反撃に出るも、反応の遅れを見抜いたのか、スバルはまた一瞬で移動し、影だけを残す。

 

「次は……一番手練れっぽい人かな?」

 

 再びぬるりと1人の背後に現れる、だが──

 

 ガキインッ!!

 

「!?」

 

 流石に全員に通用する道理は無いだろう。背後を取られた生徒はストックで後ろに攻撃すると、スバルは奇襲を止めて銃剣で受ける。

 

「今だ!閃光弾!!」

 

 後ろから放たれた閃光弾が直撃する。それに呼応するようにスバルを捕縛しにかかるが……

 

 パシッ!パンパァン!!

 

 半端な体術は通じないとばかりに、スバルは伸ばされた手を弾き返す。そしてその手を掴み返すと、体を(ねじ)って頭上に上がり、頭を足蹴にして跳躍する!

 

 ヒュピッ──!

 スタタタタタタァン!!

 

 閃光弾を投げ終えて銃を構え直した隙に懐に潜り込み、小銃を放つ。そうして姿勢を崩した所に──

 

「2人目」

 

 ──リボルバーを放つ。だがこのままでは終わらせない!

 

「ドローン!」

 

 指示と同時に攻撃ドローンが放たれる!今度はこちらが背後を取った形だ。だが……

 

 ドガアァン!!

 

 スバルは地面に大きく足を突き立てると、歪んで曲がった金属の床を跳ね上げてドローンを遮蔽する。なかなかに無茶苦茶だ。

 

「狙撃いっ!」

 

 パアァン!!──スウォッ!!

 

 追撃をかけるもそれも見切られる。弾道は雲を突き抜けたように手応えが無い。不味い流れだ。

 

 チャキン!──ヌッ!

 

 排莢中の狙撃手の目の前にスバルが現れる。すると狙撃手が身動(みじろ)ぎする間も無い内に黒い閃光が走る!

 

 ザンッ!ザンザンッ!!スパパパァン!!

 

 閃光の軌跡にあった黒と金の銃身は見事に切り刻まれる。驚きに目を奪われた隙を突くようにスバルは狙撃手の後ろに現れ──

 

 スタタタタタタァーン!……

 

「3人目」

 

 ──リボルバーの轟音と共に私たちの半分を制圧してのけた。

 

「くっ……」

 

 今まで支援に回っていた生徒も自らハンドガンを取って前に出ようと試みるが……それを見透かしたようにスバルは銃口の前に一瞬で移動してくる……その瞬間──

 

 ドガアァッッッ!!

 

 ──下顎に強烈なアッパーカットを決める。そして急所を殴られてよろめいた生徒に、スバルは無慈悲にリボルバーを向ける。

 

「4人目」

 

 後方部隊をその二つ名の示す通り、まさしく「影無き嵐」のように蹂躙すると、鈍い眼光がゆらりと前衛の2人に注意を向ける。私は安易にカウンターを食らわないように警戒を促すが、「嵐」はそれならばと言わんばかりに銃声を轟かせる。

 

「躱して!」

 

 残りの2人は左右に分かれて弾幕を回避する。その動きに合わせてスバルは銃撃を止めて視界から姿を消す。

 

 ヌウッ!

 

 1人の背後に再び姿を現す。それを察知した本人はすぐに振り向くも、襟元を掴まれてしまう。だが──

 

「諦めないで!」

「……っっ!!」

 

 ジャキッ!ガガガガガガッ!!

 

 喰らいつくように二丁拳銃をスバルの胴に押し当てて発砲する。この戦い始まって初めてまともにスバルへの攻撃が成功する、が……

 

「くっ……舐めるなぁ!!」

 

 ガシッ!ブオォン!

 

 スバルはすぐに持ち直すと相手の背中に腕を回し、思いっ切り体を反って投げる!

 

 ドガアァァァン!!

 

 綺麗にフロントスープレックスが決まり、仰向けに倒れた相手に──

 

「5人目」

 

 ──トドメを刺す。

 

「……最後の1人ですね……、フンッ!」

 

 スバルは左手に持っていた銃剣を投げつける。

 

「!?」──カアンッ!

 

 投げつけられた側は一瞬驚くも、素早く銃身を振って弾く。その僅かな時間の間に、スバルはマグナムを1発分リロードする。

 

「では仕合いましょう──」

 

 瞬間移動を決めるスバルに神経が尖らされる。その甲斐あってか、真正面から現れて膝蹴りを放ったスバルを──

 

 パァン!

 

 ──銃を構えていない方の手で受け止める。弾かれた脚は掴まれないよう引き戻された後、ローキックに派生する。それを跳躍して躱し、振り上げた脚で(かかと)落としを放つ。ゴスリと鈍い音がする

 も、直撃はせず腕で防御される。

 

 ──スタタタタタァーン!

 ──ズバババババァーン!

 

 至近距離のまま両者ともに銃撃に移行するが、同時に体術からの制圧も試みられる。弾かれて転がった銃剣が拾い上げられると、切っ先が本来の主人に向けられる。

 

 ブンッ!キインッ!!カン!チャキン!キン!

 

 鋭利な輝きに怯むことなく小銃の銃身で刃物が(さば)かれる。やはり付き合いの長い武器故なのか、白兵戦の経験値故か、スバルの方に一日の長があるようだ。

 

 キンッ!チャキ!ズバババババン!

 

 だがこちらも負けじと銃剣を捌いた隙に銃撃をお見舞いする。スバルは素早く体を捩って避けると、小銃を腰だめに据えて発砲の構えをとる。互いにすぐに手が届きそうな間合いで、渾身の一撃を放とうとする……が──!

 

 ズオンッ!!

 

 スバルは突如フリーになった脚を振り上げてハイキックを繰り出す!咄嗟(とっさ)にそれを察知して腕でガードしようとするが……、

 

 ドガアァン!!

 

 破壊力を受け止めきれず、一撃を顔で受けてしまった。それでも衝撃を受け流しつつ仕切り直すため、飛び退いて体勢を整えようとするが、再び視線を上げたときには既に、「チャージ」が完了したとでも言うように、オーラを纏ったスバルが佇んでいた。

 

「……」

 

 スバルはグリップを握り直して、おもむろに瞳を覗かせる。そして小さく息を吸って、EXスキル(必殺技)を宣言する。

 

 

 

「さあ……、『影無き嵐』がやってくるぞ!」

 

 

 

 その一言と共に姿を消す。前か、後ろか、足元か、スバルが現れる場所を予想する。獲物を確実に仕留めるため、急所を見せてしまっている方向、それを予測する。どこか?完全に不意を突くなら?直感的に1つの可能性を思いついた私は、ひとりでに声をあげる。

 

「上だ!!」

 

 上方を見やると、(ひね)りを加えつつ回転して跳躍していたスバルが銃口を私の生徒の方へ向けていた。

 

 ──スターン!

 

 銃声が鳴り終わらないうちにスバルは再び跳躍し──

 

 ──シュッシュッ!シュパシュパシュパッ!!

 ──スタタタタタタァーン!!

 

 三次元的に対象の周りを飛び回りつつ銃撃を加える。もはや目で追える領域を外れ、一陣の風と化したスバルの攻撃はまさに「嵐」、急所を押さえて致命打を防ぐことはできたが……、

 

 ──シュバババババババババッッッ!!!

 ──スタタタタタタタタタタッッッ!!!

 

 夜の帳に吹き荒れる雨風は防ぎきれず、少しずつ消耗が積み重なる。そして僅かにも猛攻に押し負けたその瞬間──

 

「6人目」

 

 背後に現れたスバルのリボルバーが火を吹く。そして薄暗い空間に、再び静寂が戻ってくる。

 

 

 

 

 

「……スバル──うぐっ!!」

「もうあなただけだ、誰も残っていない……」

 

 瞬時に私の前に現れたスバルは、私の喉笛を一掴みにして宙へ持ち上げる。その手を振り解こうと掴み返すも、上手く力が入らない。

 

「……スバル……君は……」

 

 私は懸命に声をかけるが、彼女は虚ろな目で遠くを眺めるだけだった。もう全てが終わるかとでも言うように……。

 

「……君は……本当にこのままでいいのかい?」

「……」

「今日1日……いろいろあったじゃない……」

「……それで?それだけで私が何か変わったとでも?」

 

 スバルの口ぶりは極めて悔しそうだ。それは星を見つけられないこと以上に──

 

「私は、あなたが思うほど出来は良くない……」

 

 私の言葉に応えられないことを悔やんでいるようだ。

 

「君は、もう十分進めているよ……十分、自分の意思で歩いていけてるよ……」

「そんなこと……ありませんよ……」

 

 スバルは私の言葉を拒むように、私の首を掴む手に力を込める。

 

「うぐうっっ!……大丈夫、君が歩いている姿は、ちゃんと見ることが出来たからね……」

「そんな……そんなことは!」

 

 闇雲に反論しようとする口を、ガシッと掴む音が塞ぐ。その音の主は、必死にスバルの脚にしがみついていた。

 

「スバルさん!もう止めてください!」

 

 殴られて潰されてしまった顔で止めたのは──

 

「カヤさん……」

「どうしてですか?あなたは、あなたはあんなに私を励ましてくれたじゃないですか……あがあっ!」

 

「違う、あれはただ、気まぐれに憐れみを向けただけ……」

「それでも!約束してくれたじゃないですか──うぐぁあ゙っっ!」

 

「違う!」

「一緒にお礼参りに行ごゔっで──お゙ごあ゙っっ!!」

 

「違う!!」

 

 何度も踏みつけられて、顔から出るものを全て流してなお、カヤは声をかけ続ける。

 

「──お願いです……あなたが……初めてだったんです……」

 

「違う……私は……そんな……心から想った訳じゃ……」

 

「だから……いくらでも痛めつけていいですから……」

 

「やめてください……」

 

「あなたの言う事なら……何でもしますから……」

 

「やめてくださいよ……」

 

 2人のために、ほんの少しだけ、足元を照らそうと思う。

 

「スバル……君はね、ちゃんと自分の意思を持てているよ」

「先生!それは!」

「幻なんかじゃないさ……例え仮初めだとしても、君はカヤのことを想って、言葉にして、行動に移したんだ……少しでも感情のままに動ければ、それだけで証明さ……」

「……っ!」

「星はね、すぐに見つけられなくても大丈夫……見つけても見失ったり、見ていた星が行きたい星じゃなかったり……そんなこと山ほどだよ……」

「でも……」

「だからね……今は焦らなくても大丈夫だから……」

「……」

 

 言葉の向かう先が無くなり、私の首を吊る腕の力が緩んだ。その余裕を無駄にしないために、私はゆっくりと手を伸ばす──

 

 

 

 

 

 >スバルは、ずっと独りだったのだろう

 

 >君は自由だとばかりに闇の中へ放り出されたのだ

 

 >光はか細く、足場もおぼつかない中での不安は、当然だ

 

 >そんな中では、視野さえも暗くなる

 

 >だからスバルはずっと気付かないでいたのだ

 

 >隣にいる人を

 

 >一緒に星を見る人を

 

 >独り闇の中では、自分の星は見つからないかもしれないが

 

 >誰かの見る星のそばになら

 

 >きっと視界の中に、自分の星を収めるだろう

 

 >すぐにその時は来ないかもしれない、だが必ず来る

 

 >それを見逃さないためには

 

 >彼女が独りではないということを示す必要があるだろう

 

 >どうすべきだろうか?

 

 ・目を合わせる

 ・頭を撫でる

 ・抱き締める

 

 

 

 

 

 ﹀

 ﹀

 ﹀

 ﹀

 ﹀

 

 

 

 

 ▶目を合わせる

 ・頭を撫でる

 ・抱き締める

 

 >「……あぁ」

 

 >久しぶりに目が合った

 

 >だがそれだけで良かった

 

 >きちんと私を目に収めたスバルは、ようやく受け入れられた

 

 >そして足元にしがみつくカヤのことも、見付けたようだ

 

 >何の意思も無く生きているなんてことはない

 

 >ただ気付いていないだけ……

 

 >気付くことさえ出来れば、どこへでも行けるだろう

 

 >2人なら、大丈夫だ

 

 

 

 

 フッ……トサッ

 

 私を持ち上げていた腕が降ろされる。私は立つ準備が出来ていなかったために、バランスを崩して転げる。そんな私に、スバルが質問する。

 

「先生、私は、負けたのでしょうか?」

 

 私は立ち上がって、その問いに答える。

 

「いや、君は一歩踏み出したんだ。その手を降ろしたのは君の意思、君の旅路はここから始まるのさ」

「ははっ、クサいですね」

「まだ子供なんだから、これくらいでいいでしょ?」

「子供ですか……まあそうですね……」

 

 本当に自分の道に責任を持てるのは、大人になってからだろう……だから──

 

「生徒の責任は、私が取るからね」

 

 スバルは小さく笑って、未だにしがみついているカヤに手を差し延べる。

 

「カヤさん、立って下さい。自分で踏んでおいてなんですが、あなたのお顔の手当をしなければなりませんからね」

「はい……グスッ……ありがとうございます」

 

 私たちの夜は、荒れた空が晴れるのを待ちながら更けていった。

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

カヤには友達を作ってあげたいと思ってスバルを生やしたのでここまで書けて良かったです。

それはそれとして戦闘描写は難しいですね、メタ描写も手探り感満載です。大人のカードを使わせて戦闘に負けるのはどうよ?とも思ったのでクライマックスながら試験的な1話でした。

次回本章最終回です。よろしくお願いします。
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