空と夢と星と青春   作:イメージの裏切り

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Ep.3 RABBIT小隊の特別作戦演習!
「ラビュリントス作戦」(前編)


「作戦演習ですか?」

 

 ある日の子ウサギ公園で、差し入れを持ってきてくれた先生から、他校との特別作戦演習に参加しないか?と誘われました。

 

「うん、最近は大きな事件もないっぽいし、たまにはこういうちゃんとした作戦の練習とかしてみたらいいんじゃない?って思ってね」

「そうですね、市民のみなさんの頼みを解決するのもいいですが、やはり特殊部隊として鍛錬を積むのはとても有意義だと思います」

 

 RABBIT小隊小隊長として、私、月雪ミヤコは部隊に必要なことを日々考える責務が有りました。その一環として作戦演習というのは、なかなかに貴重な機会だと判断しました。

 

「それにさ、他の学園の人たちと交流するのも、必要じゃないかなって思うんだ」

「交流、ですか……」

「うん、SRTの活動の中でも、現地の人たちがどういう人たちなのかっていうことを知っておくのは大事なことだと思うよ。それに……」

「それに?」

「仲良くしておけば、いろいろ支援してもらえるかも知れないからね」

 

 SRTとして、本来は立場中立的に振る舞わなければならないはず。それなのに特定の学園・企業から支援を受ける、というのは、矛盾した行為です。しかし……

 

 ワチャワチャ!わいのわいの!

 

 差し入れ一つで盛り上がっている、というのは、裏返せば慢性的な物資不足に喘いでいるということも確かです。

 

「……」

「どうかな?ミヤコ?」

「良いと思います。ただ、実際に支援を期待するのは保留しておきます。こちらにも立つべき立場があるので」

「うん、分かったよ。じゃあ演習についてはOKってことでいいね?」

「はい、よろしくお願いします。ちなみに演習の概要についてはもう決まっているのですか?」

「うん、内容は──」

「分かりました、では準備をしておきます」

「それじゃあ、また当日ね」

「はい、よろしくお願いします」

 

 私は小隊のみんなに号令をかけて、演習の準備に取り掛かりました。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

──演習当日

 

「では、改めて本日の演習内容について確認します」

 

 私は先生から受け取った資料を元に、作戦内容を小隊のみんなと共有しました。今回の演習は、建物内にある機密資料の奪取作戦。防衛戦力として、正規軍1個中隊規模の人員が配置されています。対象の建物は今は使われておらず、所々に崩落が見られている状態です。この状況を上手く利用して作戦を遂行することが期待されています。

 

「RABBIT3、建物内の構造を共有してください」

「了解ー、今から送るね」

 

 隊員の端末に建物の図面が表示されました。地上5階建て、地下は無し、階間移動は中央の階段、及び非常階段の2つ、エレベーターは電力喪失により使用不可。

 

「RABBIT1、目標はどこにある?」

「作戦内容には示されていません、目標の捜索も演習課題だそうです。ただ、可能性の高い場所はここ、建物3階のポイントO(オスカー)です」

 

 そう言って、地図上の1点を示しました。

 

「ここは資料室として廊下から1部屋さらに入った位置にあり、他のポイントより進入が難しい場所です。加えて前室がそれなりに広く、防衛部隊を配置するのにも丁度いいポイントです」

「ミヤコちゃん……建物がどれくらい壊れてるのかって……分かる?」

「RABBIT4、コールサインの使用を心がけてください。それで建物の崩落状況ですが……RABBIT3、分かりますか?」

「うーんと、ただいまスキャン中、でもあんまり壁ごと崩れてる場所はなさそうかな?どっちかって言うと床とかに穴が空いてるっぽいから、経路探索には注意が必要な感じかな?」

 

 そう言ってモエ――RABBIT3はいくつかのルートを提示しました。

 

「了解しました。ではRABBIT2、あなたは先行してルート及び射線の管理をお願いします」

「こちらRABBIT2、了解した」

 

 その他いくつかの確認をして、進入準備を整えました。

 

 

 

 

 

 

 時刻1430、進入ポイントに集合して、作戦の開始を宣言しました。

 

「それでは特別作戦演習『ラビュリントス作戦』を開始します」

 

 まずは1階から建物内へ進入、建屋の状況を調査しつつ、目標の3階までのルート、中央階段までの動線を確保に動きました。

 

「RABBIT2、ポイントE(エコー)までの状況はどうですか?」

「こちらRABBIT2、ポイントE(エコー)に到着、ここまでに待機兵、およびトラップは無し、そのまま前進してくれ」

 

 特に建物全体を警備している訳ではなさそうでした。相手は1個中隊規模……多くても20〜30人ほどでしょうから、薄く広く守るよりは良いのでしょう。

 

「こちらRABBIT1、了解しました。それではRABBIT4、ポイントE(エコー)まで前進します」

「こちらRABBIT4、了解……」

 

 そうして中央階段までの移動を開始しました。建物内は確かに人の気配も無く静まり返っていて、まるでここに機密文書などないぞと言いたいような様相でした。

 

 

 

 

 

「RABBIT1、およびRABBIT4、ポイントE(エコー)に到着、RABBIT2、階段ルートの状況を報告してください」

「こちらRABBIT2、所々に寸断された箇所あり。断面の形状から見るに、ごく最近に人為的に破壊されたものと見られる」

 

 進入ルートに対する破壊工作が行われていました。この様子では非常階段側にも同じ工作が行われていると見てよいでしょう。

 

「RABBIT2、経路の確保はできますか?」

「こちらRABBIT2、簡易足場の設置は可能だ。これからクリアランスの確保を行うので、順次上がって来て欲しい」

「こちらRABBIT1、了解しました」

 

 ミユ──RABBIT4と合図を交わして、階段を上りました。2階踊り場付近まで行くと、足場が大きく崩落していましたが──

 

「こちらだ、すぐにロープを降ろす」

「ありがとうございます」

 

 サキ──RABBIT2の手筈のお陰で素早く3階まで辿り着く事が出来ました。

 

「こちらRABBIT1、ポイントM(マイク)に到着。RABBIT3、フロアの分析はどうですか?」

「はーい、こちらRABBIT3、ただいまフロア情報を送信中ー。ついでに4階の情報も送るねー」

 

 送られてきたマップには、赤くマークされた箇所がいくつもありました。

 

「こちらRABBIT1、受信を完了しました。RABBIT3、詳細説明をお願いします」

「OK、じゃあマップについてる赤について、そこは床とか壁に崩落があるとこだよ。自然崩落か破壊工作なのかはこっちじゃ区別つかないから、射線には気を付けてね。それで問題のポイントO(オスカー)についてだけど、赤外線スキャン(サーモ)で見た限りはそこに人手が集中してるみたい。だから目星としてはビンゴって言っていいんじゃないかな」

「了解です。それで、ポイントO(オスカー)の丁度真上の所ですが……」

「あっ気付いた?そう、そこの天井の部分、穴が空いてるっぽいんだよね。そこから進入するのは厳しいと思うけど、狙撃するには十分だと思うよ」

 

 なるほど、ではミユが上から敵戦力を無力化しつつ、私とサキで突撃する、というプランで行きましょう。

 

「RABBIT4、単独で行けますか?」

「うん、大丈夫」

「では、目標地点の前まで向かいましょう、以上、散開」

 

 

 

 

 

 そうして、ポイントO(オスカー)の前まで移動して、周囲の偵察に入りました。しかし、そこまでの道は目立ったトラップなどもなく、不気味なまでにスムーズに到達出来ました。まるで、侵入者を誘い込んでいるように感じられました。

 

「RABBIT2、室内の様子はどうですか?」

「こちらRABBIT2、予想通り、部隊の待機が有り。人数は16名、携行火器は自動小銃」

「了解です」

 

 どのみち機密文書が狙われるなら、その前に全戦力を投入して特殊部隊を迎え撃つ、という算段のようですね。

 

「RABBIT4、狙撃で排除は出来ますか?」

「こちらRABBIT4、狙撃ポイントは確保できたけど、中の人たちは影になってて、直接は狙えない……かな」

「了解です」

 

 安々と狙撃されるような場所には入らない、ということですね。

 

「RABBIT3、敵の武装の詳細は分かりますか?」

「こちらRABBIT3、うーん、ちょっと待ってね……見た感じあんまり外に出回ってる武器じゃないっぽい?プレローマ高専銃砲科……ってとこの設計らしいよ。あっでも一応民生品があるっぽいから、それでよければすぐ送るよ」

「お願いします」

 

「こちらRABBIT2、続報だ」

「こちらRABBIT1、続けてください」

「敵に小隊長級と思しき人間が3名、3部隊合同編成と見られる。隊列は前後に2列だ」

 

 聞いたときは戦列歩兵かと思いました。随分とクラシカルな隊列です。しかし狭い空間に突っ込んでくる曲者を迎え撃つ飽和攻撃を取るなら、有りな戦術でしょうね。

 

「はーい、こちらRABBIT3、民生品のやつだけどデータ送ったよ。弾丸は.30-06(サーティ・オー・シックス)、装弾20発、発射レートが300って感じかな、5秒もあれば撃ち切るね」

「分かりました、ありがとうございます」

 

 さて、では具体的にどう乗り込むかを考えましょう。敵はおそらく射撃部隊を2つに分けているのでしょう。1部隊が装填をしている間にもう1部隊が射撃を行い、切れ目なく攻撃を続ける戦術です。挑発するのも有効だとは思いますが……、

 

「──ここは、射撃部隊の交代の隙を狙って飛び込みましょう」

「役割はどうする?」

「RABBIT2は敵の陽動、および退路の確保をお願いします。私が単独で奥に行くので、注意を引き付けていてください」

「了解」

「RABBIT4は現在のポイントで狙撃の用意をしてください。捕縛のために前に出た敵兵の無力化をお願いします」

「了解……」

「RABBIT3は撤退ルートの安全を確保してください」

「はーいりょうかーい」

「では、行きましょう」

 

 

 

 

 

 私はサキの待つポイントO(オスカー)に向かいました。そこには既に準備を整えたサキがいつでも突入できる姿勢で待機していた。

 

コクリ……

コクリ、スッ

 

 お互いに頷くと、私は突入を指示しました。

 

ダッ!!

 

スタタタタタタッ!

 

 サキが飛び込んで発砲すると、敵の部隊もそれに呼応するように弾幕を展開しました。ですが撃ち方は前列のみで、予想通り2列交代での射撃態勢であるようでした。

 

──5、4、3、2、1──

 

 5秒──連続射撃の効果時間を、頭の中でカウント、そしてそのカウントが0を打った瞬間──

 

ジャキッ!

 

 敵の前列部隊が射撃をやめてリロードに入りました。それと同時に私はサキの横から飛び出して奥の部屋めがけて走り出しました。サキも敵の動きを牽制するために飛び出して、2人一緒に突撃に移りました。ほんの十数メートルの距離、何秒もないうちに決着が決まる状況は、あらゆる油断が命取りになります。私たち──SRTの特殊部隊はその想定の総てを、手の内に収めていたはずでした。しかし──

 

 

 

 

「ほう、なかなかにやるみたいですね」

 

 

 

 

 発せられたかも分からない声に、刹那、背筋に緊張が走りました。

 

スタタタタタタァーン!!

 

「ぐああっ!!」

 

 突如としてサキの呻き声が片耳を突き抜けて行きました。前面を撃たれたのではない……ならば後ろか……。私は足を止めず、それでいて自分も後ろを取られないように、神経を張り巡らせて背後に注意を向けました。なのに……、

 

 

 

「私はこちらですよ」

 

 

 

 幻聴かのように響いた声の主を必死で探しました。すると視界の下に、屈んで脚のバネを縮めている人の影を見つけました。しかしそれに気づいた時には遅かったのです。

 

ドガアァッ!!!

 

「ゔっ!!」

 

 その影は飛び上がって私に蹴りを食らわせました。足の裏は真っ直ぐに私の腹部を捉え、ボディアーマー越しにも強烈な一撃を見舞いました。

 

 しかし、それもまた作戦のうち……。

 

──ミユ!、今です!!──

 

 

 

ズキューーーン!!!

 

 

 

 狙いすました一撃が私の眼前を刺し貫きました。前に飛び出した憐れな突撃兵……それを無力化する銃声が鳴り渡ったのですが、

 

ドガアァン!

 

 後に残ったのはコンクリートの床が穿たれた音だけでした。私に一撃食らわせた影は、一瞬のうちに姿も手応えも消してしまいました。

 

 

 

クルッ!スタッ!

 

 

 

 衝撃を受け流すように飛び退いて着地すると、私は再びつま先で地面を蹴って走り出しました。あの一瞬のうちに敵の部隊は交代を完了させて、次の射撃の構えを取っていました。万事休すか?いや、そんなことはありませんでした。

 

 

 

Foxtrot(フォックストロット)!!」

 

カッ!!

 

 

 

 サキはあの攻撃にも屈せずにスタングレネードを放ちました。私はそのチャンスを最大のものとして一段と大きく跳躍し、先への扉に向けて飛び込みにかかりました。

 

ドサッ!

 

「ゔあっ」

「確保」

 

 嫌な言葉が聞こえてきました。ですが私は前進を止めることはしませんでした。扉を蹴破って先の部屋に入ると、机の上に置かれていたディスクを掴みました。これで目標は確保、後は無事に撤退するだけ、体重を移動して向きを転換し、再び人の列を飛び越えて行こうと、膝を曲げようとした時……

 

 

 

「この先へは行かせない……」

 

 

 

 小隊長と思しき1人が立ち塞がりました、スタングレネードの有効時間を過ぎていたのか……いや、彼女も任務を果たすため、最善の方法を取っていただけなのか……何にせよ、その手から放られたスタングレネードの存在は、私の──RABBIT小隊の敗北を物語っていました……。

 

カッ!!

 

 轟音と閃光を防げたか、それは関係ありません。僅かな隙を見せてしまったが最後でした。

 

「確保!」

 

……私は無力にも両手を上げるしかありませんでした。

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

またしばらくは小エピソードを挟んでいこうかなと思います。前は5話完結でしたが、ここからは前後編くらいでまとめていこうと思います。

ブルアカは生徒側にあんまり正規軍っぽい戦いのイメージが無いので、そこら辺に活用できるように安全科の設定を組んだつもりです。でもアニメ版の風紀委員会とか正義実現委員会とかは大部隊っぽい感じはしましたね。

とはいえ私はそんなにミリタリには詳しくないので今回の描写はぶっちゃけ想像です。真面目に調べたのはフォネティックコードくらいですね。俺たちは雰囲気で小説を書いている……。

次回もよろしくお願いします。感想などもお待ちしております。
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