Milk Tea ~あなたが教えてくれたこと~ 作:ナナシの新人
中間試験よりもいい結果だった期末試験が終わり、夏休み前最後の登校日は、終業式とロングホームのみ。普段通り予鈴の10分ほど前に登校。昇降口で靴を上履きに履き替えて、教室へ。横開きのドアを開けて入った教室には既にクラスメイトの半数くらいが登校していて、長期休み直前独特の浮ついた空気に包まれていた。左肩に担いだスクールバッグを教室後部のロッカーに置いてから自分の席に着き、本鈴の前に教室へ来た担任の
各学年クラスごと整列して座り、定時から数分遅れで始まった終業式。幕が上がったステージの演台のマイクの前に立った校長先生の話の最中「校長の話しってなんで長いんだろう」とか「昼どうする?」などの私語、雑談がぽつりぽつりと聞こえる。そろそろ生活指導の教員の注意がありそう、と思っていると、つんつんっと軽く背中をつつかれる感触。極力顔を動かさない様にして少し体を捻って、背中をつついてきた人の正体を確かめる。顔よりも先に視界に入った頭の左側で結んだポニーテールで、それが誰かわかった。
「話したいことあるんだけど、お昼空いてる?」
どうしてこのタイミングなのかな、と若干疑問に思いつつ「いいよ」と
怒鳴り声は昔から、苦手。不特定多数に対してで個人的に向けられた声じゃなくても、どうしても気持ちが沈んでしまう。少し憂鬱な気持ちを引きずったまま、終業式終わりの一学期最後のホームルームは巻気味で進んでいる。
「校長先生も言っていたけど、長期休みで気が緩みがちになるけど節度ある行動を心がけること。はい、それじゃあここまで。クラス委員」
「起立、礼」
女子のクラス委員
「仕度できてる?」
「ちょっと待って」
呼びに来た
「お昼行くけど一緒に行く?」
「パス。用事ある」
「女子とのランチ即答で断るくらい重要な用事なわけ?」
「補習」
「真面目なのだった。じゃあ、月末ね。待ち合わせ場所と時間はあとで連絡するから。いこ」
「またね」
小さく手を振った私に微笑みながら手を振り返した
「
「午後から練習~」
「大変だね」
「地獄の始まり⋯⋯ということで、お昼行こー」
「えっと⋯⋯」
和解したことは伝えてるとはいえ、
「お待たせ」
「ん? なんだ先約いた――」
やって来た
「あらかじめ言っておくけど。あたしは、納得してないから」
「先に飲み物行っていいよ。荷物は私たちで見ておくから」
「あ、うん。じゃあ、行って来る。二人の分も取ってくる?」
「あたし、コーラ」
「この後部活あるんでしょ? 炭酸はやめておいたら」
「⋯⋯じゃあ、オレンジジュースにする」
「私も、オレンジジュースお願い」
「わかった」
席を立って、ドリンクバーへ向かう。オレンジジュースを注いだコップ、ストロー、手拭きを三つずつ載せたトレイを持って、テーブルに戻る。二人にして大丈夫かな、そんな私の心配は杞憂で終わった。二人は、談笑していた。
「あ、おかえりー」
「ありがと」
トレイを置いて、
「何を話してたの?」
「部活の話し。体のケアとか、スポーツ用品とかね」
「てか、
「中学まで、サッカーやってたの」
「それでかー」
種目は違うけど同じ球技をしていた者同士、お互い共感できる話題があるみたい。思えば前に街で偶然会った時も、二人はすぐに打ち解けていたし。
明日から始まる夏休みを話題の軸にして、運ばれてきた料理を食べた。会計を済ませて、お店を出る。
「食べたー!」
「食べ過ぎじゃない。動けるの?」
「だいじょうぶだいじょーぶ。じゃああたし、学校戻るから」
そう言って私たちに背を向けた
「二人もね。それと、お盆休みの観賞会忘れないでよー」
「⋯⋯ホントにするわけ?」
「当たり前っしょ。
ピッ! と、
「気進まない?」
「嫌ってわけじゃないんけど、小説読み終わった?」
「あともう少し」
「読み終えたら貸してもらえる?」
「花火大会に持っていくね」
「ありがと」
何か特別な事情があるみたい。詮索はせず、電車に乗ってから別の話題を振る。。
「そういえば、話しって?」
「あっ、忘れてた。花火大会のこと。浴衣着る?」
隣町の駅から花火大会の会場まで2キロくらい歩かないといけない。当日どの辺りで観るかはまだわからないけど、長距離の移動は大変そう。でも、こうして聞くということは、きっと。
「着ていこうかな」
「そ。じゃあ、私も着てく」
予想通りの反応に思わず笑いが溢れてしまう。
「なに⋯⋯?」
「なんでも。ねぇ、時間ある? 浴衣見に行こ」
「うん」
自宅の最寄り駅に到着。駅前のバス停から市内巡回のバスに乗り、ディスカウントショップが入るショッピングセンター前で下車。ディスカウントショップに入ってすぐの場所に設けられた夏祭り、花火大会の特設コーナーで、浴衣や小物を1時間くらい見て回り、市内巡回で最寄り駅前でバスを降りる。
「やっぱり、素敵なのは結構いい値段した。予算ギリギリ」
「だね。私は、家にあるのにしようかな」
「どんなの?」
「えっと、こんな感じの」
スマホで画像検索で似た系統の柄の浴衣を着たモデルさんの画像を見せる。
「ちょっと大人っぽい」
「着てるのがモデルさんだからだよ」
「そうでもないと思うけど」
バス停隣接の在来線の駅前の歩道を駅前の大通りへ向かって歩いていると、駅の南北を結ぶアンダーパスの出入り口に整備されている噴水近くのベンチに、同じ学校の制服を着た男子生徒を見かけた。
「あれって、
「あ、ほんとだ。
「そう――待って。こっちっ」
「えっ?」
何かに気づいた
「どうしたの?」
訊いても
「――行こ」
「
手を放した彼女は日陰を出て一目散に、駅前の大通りへ。私は一度噴水の方を見てから、
「ねぇ、
「ちょっと驚いただけ。なんでもないから」
「そっか」
私は、知ってる。あれは、私と
「⋯⋯なに?」
「別に」
「あっそ」
素っ気ない返事。でも、握り返してきた。その手は冷たい。
歩行者専用の信号が青に替わる。ピヨピヨと青信号を知らせる音が響く中を渡る横断歩道の真ん中を過ぎたところで、
「あの人は、
――