筋金入りのコミュ障ラスボスがRPGの無口系主人公だと思われる勘違いモノ。   作:勘違いモノ大好き!

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第一話

 

 選定の儀式から数日。

 俺とマオは王城に足を踏み入れていた。

 

「本当に、俺も着いてきて良かったのか?」

 

「…………!」

 

 マオはこくりと頷く。

 本人がそう訴えるのなら大丈夫なのだろうが……本来、王様が召集したのはマオ1人。

 不法侵入とか不敬罪で、打ち首になったりしないだろうか。

 どうしても、不安は拭えない。

 

「城に入るのは初めてだが、想定してたよりも遥かに煌びやかだな」

 

 使用人に案内されて辿り着いた客室。

 家具は最高級のもので、テーブルの上に置かれた菓子類も豪華。

 如何にも、貴族御用達って感じで慣れない。

 それはマオも同じなようで、ひたすらにキョロキョロしながらソワソワしていて。

 気持ちは痛いほど分かる。

 普段の環境と違いすぎて、居心地が悪いというか何というか。

 落ち着こうにも、落ち着けないのだ。

 

「失礼します。皆様……そして、ユーシャ様。こちらの部屋でもう暫しお待ちください」

 

 使用人と共に現れた少女には見覚えがある。

 肩ほどに切られた黒髪。

 ぱっちりとした青い瞳。

 素朴そうな衣服に見合わない華のある容姿を有しているのは……マオと同様に聖剣に選ばれた勇者、ユーシャ・ククルシカ。

 おずおずと部屋に入ってきた彼女は、こちらの様子を伺いながらソファに腰を下ろす。

 それを見届けた使用人は、深く一礼した後に部屋を後にした。

 

「こんにちは。君も王様に呼ばれてきたのか?」

 

「あ、あっ……はい、そうです。えっと、あの……貴方は……?」

 

「俺はセンシ・ノーキンナ。隣に座ってるこいつ……マオの付き添いで来たんだ」

 

「な、なるほど……お互い大変ですね。まさか、勇者なんかに選ばれちゃうなんて……」

 

「…………?」

 

 マオはこてんと首を傾げる。

 恐らく、ユーシャちゃんの口ぶりに疑問を抱いたのだろう。

 勇者になりたくない、と言いたげな口ぶりに。

 

「ユーシャちゃんは勇者になるの、嫌なのか?」

 

「……あ、えっと、その……」

 

「心配しなくて大丈夫だ。君が何と言おうと、俺もマオも言いふらしたりしない。それでも嫌なら、答えなくたっていいぞ」

 

「…………大きな声では言えないですが……正直、嫌です。わ、私、ただの村娘で、戦いの経験なんて無いし、魔王が物凄く恐ろしいし、勇者になる事が夢だった親友の女の子からは嫌われちゃうし、知らない人から声をかけられるようになるし……もう、あの日からずっと踏んだり蹴ったりでぇ……」

 

 ユーシャちゃんは泣き出してしまう。

 本当に勇者になるのが嫌なんだろうな。

 華奢な体躯に、内気そうな言動。

 戦いも目立つ事も向いてなさそうな彼女にとって、勇者になるのは誉でも何でもなく。

 寧ろ、やりたくもない魔王討伐の使命なんか与えられて、迷惑なだけなのだろう。

 代われるなら、代わってあげたい。

 ……いや、俺達なら代われるに違いない。

 

「安心してくれ、ユーシャちゃん」

 

「……え?」

 

「魔王は必ず、俺とマオの二人で倒す。だから、君は何もしなくていい。いつも通り、平穏な日常を過ごすだけでいいんだ……そうだろ、マオ」

 

「……、…………!」

 

 マオへと視線を送る。

 すると、彼女はこくりと頷いた。

 俺の言葉を肯定するかのように。

 心なしか、ちょっと焦り気味で。

 

「……センシさん、マオさん。あり、ありがとうございます。お二人は、とても良い人ですね……!」

 

「まぁ、そんな事あるかもな。俺はともかく、マオは聖剣に選ばれし者。魔王とは正反対な清く美しい心を持っているに違いない」

 

「私……陰ながら応援します。もしも、二人が魔王を討伐したら、英雄譚を執筆します。そして、印税は全額譲渡しますね」

 

「流石に全額は悪いから、折半でいいぞ、折半で」

 

 冗談を交えながら、二人で談笑する。

 何故か、マオは俺達を遠巻きに眺めていた。

 どこか複雑そうに3mmほど目を細めながら。

 

「お待たせしました、皆様。国王様がお呼びです」

 

 ほどなく、使用人がやって来る。

 俺達三人は彼について行き、あっという間に謁見の間へと辿り着いた。

 無言で鎮座する甲冑を着た騎士団。

 高そうな椅子に座って、俺達の様子を伺う人達。

 そして、目の前の玉座に座っているのは、ミグドレニア王国で最も偉い人間。

 このような機会でないと、一生お目にかかれない人物……国王ライカイ様だった。

 確か、年齢は25歳。

 先代の国王が病死した事から、異例の若さで国王の座についた彼は……。

 

「君達が噂の勇者かい? 僕はずっと君達のような存在が来るのを待っていたんだよ……なんて、このセリフ、人生で一回は言ってみたかったんだよね〜。マジで君達には感謝だよ!」

 

 凄まじく、ノリが軽かった。

 なんなら、パーマのかかった金髪に所々に身につけているシルバーアクセサリーなど、外見もチャラチャラしていて。

 ちゃらんぽらんな若者、という印象を受ける。

 正直、国王とは到底思えない。

 

「どうやら一人多いみたいだけど……二人のお友達かい? 賑やかなのは良い事だ。何人連れてこようと問題ないからね!」

 

 良かった。

 この様子だと、打首にならずに済みそうだ。

 というか、マオは事前に許可を取っていたのではなかったのか。

 ……いや、はいといいえすら言えない彼女に、そこまで求めるのは酷だったな。

 

「本来なら、ここで1000年前の魔王と勇者の戦いについて語るのが決まりなんだけど……めんどくさいから飛ばしちゃっていいよね。僕、偉い人の長い話とか無理なタイプでさ。君達だって嫌だろ?」

 

 気軽に「分かる〜」とでも言いたい所だが、そんな事は口が裂けても言えない。

 俺も前世では、校長先生の話を聞かずに睡眠時間に充てるタイプだったからな。

 この王様とは気が合いそうだ……なんて、悠長な事を考えていると。

 

「それじゃあ、そろそろ本題に入ろっか」

 

 不意に空気が引き締まる。

 今まで、お気楽そうな雰囲気を醸し出していた国王が真剣な表情に変わったのだ。

 それに釣られて、俺もマオもユーシャちゃんも息を呑む。

 謁見の場が重苦しい空気に支配される。

 勇者二人をこの場所に呼んだ理由。

 それは間違いなく、魔王討伐に関する事の筈だ。

 何故なら、勇者が生まれるのと同時に魔王も生まれるから。

 選定の儀式によって、勇者が見出されたということは……世界の何処かで魔王が生きている事の証左になってしまうから。

 そう考えると、全身に緊張が走った。

 

「端的に言うと、君達には旅に出て欲しいんだよね……その名も『ワクワクドキドキ! 聖剣を手にするのはどちらの勇者になるのか!? レース形式で世界各地を巡り、勇者パワーで世界中を盛り上げちゃおうツアー』だよ!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 王様の発言を聞いた全員が黙する。

 騎士団や高そうな椅子に座る人達はうんうんと頷き、俺達三人は驚きで声が出ない。

 この人は今、なんて言った?

 『ワクワクドキドキ! 聖剣を手にするのはどちらの勇者になるのか!? レース形式で世界各地を巡り、勇者パワーで世界中を盛り上げちゃおうツアー』って言ったのか?

 

 ……何なんだよ、これ!!!

 タイトルがほぼあらすじのなろう小説か?

 せめて、もっとマシな名前をつけろよ!!!

 

「あれあれ、反応が薄いな〜。面白そうだと思わない? この企画。因みに、内容はシンプル。文字通り、二人の勇者がレース形式で、世界各地のチェックポイントを巡って行って、世界一周した後に先にこの城に辿り着いた人の勝ち! 僕が考えたんじゃなくて、女神様がお告げしてくれたんだけどさ……どう思う? やっぱり、面白そうだよね、これ!」

 

 TV番組の企画内容を説明するようなノリで言われても、反応に困る。

 こんなの、思ってたのと違う。

 魔王討伐の為の修行の旅、とか。

 世界各地で魔物の被害に遭っている人を救う為に各地を巡る、とか。

 もっと、こう……何とか出来ただろ!!!

 そもそも、今この瞬間も魔王が暗躍してるかもしれないのに『勇者パワーで世界中を盛り上げちゃおうツアー』をしてる余裕があるのか!?!?

 ……そう、大きな声で言いたいけれど。

 

「よーし、なんか楽しくなってきたぞ。家来のみんな、例のブツを持ってきて!」

 

 そんな事、口が裂けても言えない。

 何故なら、俺は平民で彼は王様。

 圧倒的な身分の違いがあるから。

 あまりにも恐れ多い上に、下手に水を差したら打首られるかもしれない。

 バカな事を言った友達の頭を軽く叩く感覚で、口を挟んだりは出来ないのだ。

 唯一、物申せそうな勇者の二人は……。

 

「う、うう……競争とか、ツアーって何なの……? いきたくないいきたくないいきたくないいきたくない……助けて……ヤミちゃん……」

 

 ユーシャちゃんは小声で泣き声を言ったり、友達の名前を呼んで助けを求めたりしており。

 目からハイライトが消え失せていた。

 とても可哀想で、ちょっと可愛い。

 

「……………」

 

 マオは無言で無表情。

 この状況でも、平常運転。

 肝が据わりすぎていた。

 

 これでは、物申すもクソもない。

 理不尽な現実を受け入れる他ない。

 俺は無力で、地位も権力も金もない。

 無い無い尽くしの人生だった。

 

「勇者くん達、お待ちかねのプレゼントタイムだよ!」

 

 国王がそう告げると、使用人の人達が丁寧に包装されたプレゼントボックスを持って来る。

 それを見た騎士団の人達や偉そうな人達は、にこやかに笑いながら手を叩いていて。

 この場所に、まともな大人は一人も居ないのだと確信した。

 誰でもいいからこいつらの暴走を止めてくれ……と、思ったのを最後に俺も。

 

「わーい! どんなプレゼントがあるんだろう。楽しみだな、二人とも!」

 

「…………もう、帰りたいよぉ」

 

「…………………」

 

 その場の勢いに身を任せる事にした。

 そもそも、初代ドラ○エだって、たった一人に竜王討伐を任せる世界。

 次の作品は、ひのきのぼうと50Gしか渡さない世界であって、ゲームの設定にいちいちツッコミを入れてもしょうがない。

 どうせなら、細かいことは気にせずに楽しんでしまおうと、そう思ったから。

 俺はプレゼントボックスを開ける。

 その中に入ってたのは……。

 

「…………何これ」

 

「…………???」

 

 そこら辺に落ちてる棒と、少額の小銭。

 要するに、ひのきのぼうと50Gだった。

 

 

 時は暫し遡る。

 勇者達が『ワクワクドキドキ! 聖剣を手にするのはどちらの勇者になるのか!? レース形式で世界各地を巡り、勇者パワーで世界中を盛り上げちゃおうツアー』の説明を受ける数日前。

 ミグドレニア王国の議会にて、話し合いが行われていた。

 

「どういう事なのですか、国王! 勇者二人に監視役すら付けず、冒険の旅をさせるなんて!」

 

 私こと、カンスルド・スグオチールは異議を申し立てた。

 ……王は乱心している。

 そう確信した故に。

 

「どちらかが本物の勇者か精査できていない以上、手元から離すべきではありません。ましてや、行動の自由を与えるなど言語道断。『勇者パワーで世界中を盛り上げちゃおうツアー』は今すぐにでも取りやめるべきです!」

 

 先日、勇者が誕生した。

 それ自体が既に喜ばしくないというのに、あろう事か二人も聖剣に選ばれてしまったのだ。

 現存する文献によると、勇者も魔王も一人ずつしか存在し得ないとされていて。

 選ばれた二人の内、片方の勇者は偽物という可能性があるにも関わらず、国王は両者を旅立たせようとしている。

 世界中を盛り上げたい……なんて頭が湧いているとしか思えない、ふざけた理由で。

 ……到底、容認することはできない。

 

「どういう事も何もないよ。僕の夢の中で女神様からお告げを頂いたんだから。今までも女神様の言う通りにして王国は成長して来たんだから、今回もそうするべきってだけ」

 

 退屈そうに前髪を弄りながら、国王はそう告げる。

 ……何が女神様だ。

 前々から、疑問に思っていた。

 この国の王は先祖代々、夢の中で登場する女神様とやらに従って、あらゆる政策を押し進めた。

 その結果、世界の中でも随一の立ち位置を手に入れたとされているが、そんなのは嘘八百。

 女神様とやらのお告げは有効的に作用する時もあれば、失敗する事もある。

 要するに、全てはまぐれに過ぎない。

 運任せの博打に勝ち続けたに過ぎないのだ。

 だからこそ、合理的に。

 不完全な要素を排除すれば、この国はもっと成長できると言うのに。

 近代兵器なるものを産み出し、圧倒的な国力を有する帝国にも太刀打ち出来るというのに……。

 

「ですが、今回ばかりはリスクが高すぎます。下手したら、片方の勇者が魔王という可能性すらあるため、決して旅立たせてはなりません。慎重に真偽を精査し、必ずや存在するであろう魔王の行動に備えるべきなのです!」

 

 少しでも提案を聞き入れて貰えるように、折衷案を投げかけた。

 嘘偽りなく述べると、私はあの二人の中に魔王が隠れていると考えている。

 選定の儀式後に行われた身体検査によると、両者の右手の甲には不思議な紋様が刻み込まれていた。

 その紋様は、過去の魔王や勇者に刻まれていたものと酷似していて。

 

 どちらかが生まれた途端に、もう片方も生まれる。

 それも、全く同じ紋章を持って。

 

 という学説があるため、疑念は膨らむばかり。

 だが、それ以上に、私の勘が告げているのだ。

 二人目の勇者たるマオこそが魔王であると。

 

「……聞くに値しない意見ですね。カンスルドさん」

 

 静まり返っていた議会の中で響き渡るのは、知的な青年の嫌味ったらしい声。

 私の意見に否定的な言葉を投げかけたのは……忌々しい相手、イヤミダ・ツンデレーラだった。

 オールバックの黒髪と四角いメガネが印象に残る彼は、冷徹な視線をこちらに向けている。

 ……私はこいつが大嫌いだ。

 

「カンスルドさん。あなたの勘と王が信じる女神のお告げ。根拠がないという点ではそう変わらないのでは?」

 

 同じ学校に通っていた時からずっと、ネチネチネチネチと嫌味ばかり。

 

「勘を全面的に信じるのではなく、論理的思考も磨き、自分の意見に説得力を持たせなさい。そうでないと、私のように賢くなれませんよ」

 

 ちょっと人より頭が良いからって、上から目線のマウントばかり。

 きっとこの先、イヤミダの事が好きになる機会なんて一生訪れないと断言できる。

 

「大方、お得意の勘とやらで二人の勇者の中に魔王が存在すると考えているのでしょうが……その可能性は0に等しい」

 

「……何で、そう言えるの?」

 

「これまで、聖剣が勇者を選び違えた事例はありましたか? あまつさえ、魔王を選定した事例は? もちろん、ありません。仮に、貴方がその可能性を追うのであれば、聖剣が二人の勇者を選んだという、今までにない可能性も追うべきでは?」

 

 納得はできない。

 その通りだと、絶対に言いたくはないが、イヤミダの言葉に一定の説得力がある事は認めなければならないだろう。

 突かれたくない点を突かれた私は、僅かに反論を言い淀んでしまう。

 ……その隙を突いた彼は。

 

「そして、何よりも! 私達は国王が賜った女神様のお告げを信じるべきだ! 我々は女神の加護を受けた選ばれし者達、ヘレティアの民なのだからああああ!!!!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 他の議員達の支持を一つに集め、自らに有利な雰囲気を作り上げる。

 こうなったらもう終わり。

 私が何を言おうと、意味がないだろう。

 聞き入れる事すらしなくなるのだから。

 ……また、こうなるのか。

 理屈を抜きにした感情論で、ありとあらゆる全てを押し進める。

 女神様のお告げとやらで、自国の可能性を潰していく。

 そんな状態を変えたい一心で努力して、政治に携わる立場にまで成り上がったというのに。

 私は、何も変える事が出来ないのか……。

 

「ですが、カンスルドさんの意見にも一定の正当性があるのは事実。ここは、二人の勇者に監視をつける……というのはどうでしょうか」

 

「……え?」

 

「二人の勇者のパーティに我々が選抜した人間を加入させ、行動を逐一監視させるのです。そうすれば、怪しげな行動を抑制する事が出来る上に、悪事に手を染めた場合には始末する事も出来ます」

 

「おお、流石はイヤミダ。とてもいい意見だな。よし、採用しよう!」

 

 気分を良くした国王は、提案を快く受け入れる。

 それを確認したイヤミダはニヤリと笑い……私はただただ呆然とする事しか出来ない。

 そうすると、あっという間に議会は終わり。

 

「……いいですか、カンスルドさん。理不尽に抗い、自らの意見を通すのはこうやるのです」

 

 イヤミダは耳元でそう呟き、去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そして、時は戻る。

 

「お姉様……お姉様! どうされたのですか!」

 

 イヤミダの姿が、脳裏に刻みついて離れない。

 でも、しっかりしなくては。

 私には、やらねばならない仕事があるのだから。

 あの後、私に一つの命が与えられた。

 それは、二人目の勇者、マオさんに同行させる監視役を選定すること。

 

「……ごめんなさい。もう、大丈夫だから」

 

「なら良いのですが……それで、私に何の御用でしょうか?」

 

 淡々と問いかける少女。

 彼女は私の実の妹であり、国内最高峰の魔法学校を飛び級で卒業した天才でもあって。

 ……私は、この子を例のパーティに潜入させようと考えている。

 

「単刀直入に言うわ。貴女には、勇者パーティに加入して貰いたいの。国が送り込む監査役として」

 

 仮にマオが魔王だった場合、命が脅かされる危険な仕事だ。

 しかし、成し遂げるに違いない。

 彼女は、私以外に心を開かない冷徹さを有しており、任務の遂行に躊躇がない人間。

 今までにも、決して表沙汰に出来ない仕事を何件もこなしてきた逸材。

 私が、手放しに信頼できる唯一の存在。

 文字通り、世界の命運を握る……この任務は彼女にしか任せられない。

 

「分かりました。お姉様に絶対の忠誠を誓う……チョロイラ・スグオチールにお任せください!」

 

 きっと彼女なら……私を裏切ったりはしない。

 冒険の旅に出て、同じ時を過ごしたからといって、情に絆されたりはしない。

 マオが魔王であっても、情け容赦なく首を断ち切ってくれる筈だ。

 ……そう、心の底から信じているけれど。

 どうにも嫌な予感がして、不安が拭えなかった。





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