転生したら美少女VTuberになるんだ、という夢を見たんだけど?   作:蘇芳ありさ

14 / 81
第二回、Mカート配信の悲喜交々

 

 

 

 

 

 2011年11月29日(火)

 

 

 今日は大好きなMカートの配信をやるんだけど、サブちゃんに企画を任せたらとんでもないことになってしまった。

 

 なんたってタイトルが『アーニャVSサーニャVSダーク◯イ 〜Mカート三国志緊急告知! どっちが本当のお姉ちゃんか分からせてやる〜』だもんね。

 

 勝手にダー◯ライさんを巻き込んでるし、怒られるんじゃないかと思ったら、お父さんから「構わず続けなさい」とメールが来た。

 

 もしかしてアーニャ(わたし)のマネージャーとして、アニメ版の版権を持つS学館に頭を下げに行ったのかな?

 

 だとしたら申し訳ない。本人にはよく言って聞かせますので、どうかご勘弁を。

 

「まあ、それも狙いの一つですね。お父さまも次の配信ではマネージャーの存在を匂わせておけと言っておられましたし、ようは実績作りですよ。ゆかりはその辺りの大人の事情は気にせず、子供らしく気ままに遊んでくださいな」

 

「だったら安心できるように配慮してほしかったな。わたしが小心者だって、サブちゃんも知ってるでしょうに」

 

 もっとも、本人はこんな感じでどこ吹く風なので、効果のほどはあまり期待できなかったが……。

 

「ところでルールはどんな感じ? 前もってWisperで告知したいんだけど?」

 

「ルールは昨日も説明したように、基本はアーニャ陣営VSサーニャ陣営の総合ポイントで勝負します。人数は公平に割り振りますが、ダーク◯イさんが通りすがった時のみこれが崩れます。ダーク◯イさんは陣営を持たず単独での勝負となり、勝利条件は優勝以外ありません」

 

「随分と複雑だね? 枠が埋まってるのに入ってこられたらどうするの?」

 

「参加者の割り振りは調整するから大丈夫ですよ。それとダーク◯イさんが参加した時は、各陣営の人数は5人となります。参加希望者は一目でそれと分かる名前を使うことも含めて、告知するようお願いします」

 

「はいはい、お願いされましたよっと」

 

 まあ宣伝用の絵をノリノリで描いているあたり、口ではなんだかんだ言っても楽しみではあるのだ。Wisperの宣伝が終了しても、いかにもマリMカートの配信らしい背景を描いてみたり、サブちゃんに頼まれたわけでもないのにね。

 

「うん、そろそろ時間かな? それじゃあサブちゃん、行ってくるね」

 

「はい、どうぞ行ってらっしゃいませ」

 

 いつものようにお母さんの手伝いに行って、夕食後にお風呂に入ってから配信する。はたして視聴者のみんなは楽しんでくれるだろうか?

 

 わたしの頭にあるのは、そんな配信者の意気込みだけだった。

 

 

 

 

 

 時間になり、サブちゃんが流してくれたオープニングをみんなと一緒に視聴する。

 

 今回も主題歌の『Non-stop parade 〜いまも地球を七周半〜』をアーニャの3Dモデルが熱唱するのは変わらないが、枠内のアニメは変更してる。

 

 前回は故郷を離れて日本に到着するまでを描いていたから出番がなかったが、もう日本は冬になりかけだからね。遠慮なく雪を降らせて雪だるまさんに登場してもらった。

 

 あの人の知識によると、VTuberはブサイクなマスコットに自身の視聴者を当てはめることが多いようなので、わたしも真似してみようと試みたのだ。

 

 故郷の国でお別れした友達と合流して、大喜びのアーニャは仲良く追いかけっこするも、うっかり転んで自分まで雪だるまに。仲間が増えたと大喜びして羽根つきのようにラクガキする雪だるまさんたちと、なぜかちゃっかり参加するサーニャ。フフッとなったところでライブスタートである。

 

「みんなこの前はありがとー! 電子の世界からこんにちは。インターネットの妖精。北の国からやって来たアーニャです。今回もよろしくお願いします!」

 

「飼育員のサーニャです。本日はメスガキを分からせてやりますので、よろしくお願いします」

 

[待ってました!]

[サーニャたんいきなり辛辣w]

[二人ともきゃわわ]

[アーニャたんだ!]

[アーニャたんええな]

[Mカートの配信超楽しみ]

[また進化したオープニングが凄すぎ]

[ラストで雪だるまにラクガキされててワロタ]

[あの雪だるまってもしかして俺ら?]

 

 おっ、サーニャ(サブちゃん)に物申したい気分だったけど、さっそく気づいてもらっちゃった。気分がいいので毒舌メイドは放っておいてみんなに説明しよう。

 

「そうだよー、みんなはアーニャのお友達の雪だるまさんたちなの。生まれたときからずっと一緒。みんなこれからもよろしくね」

 

[何それ初耳www]

[まーワイら雪国民やけど]

[もしかしてアーニャたんエゴサしてるん?]

[マジか]

[雪国民なら雪だるまでも納得だな]

[転んで雪だるまになった友達に落書きする俺らw]

[何その設定かわゆす]

[そう言えばWisperの絵も雪だるまがいたな]

[そんなことを言い出すところも可愛いな]

 

 うんうん、視聴者の側にも配信者と会話してるって意識が芽生えると、拾いやすいコメントが増えてくるね。いいことだ。

 

「アーニャは北の国の女の子だからね。雪だるまさんたちは友達だよ。それとアーニャはバーチャルな存在だからエゴサしないよ。マネージャーさんはしてるかもだけど」

 

[つまり俺らは雪だるまだった?]

[アーニャたんマネージャーいるんだ]

[良かった、ちょっと心配だった]

[そりゃ1人じゃできることじゃないですしおすし]

[マネさんいるなら安心だわ]

[どうりでしっかりしてるはずだよ]

[ええやん、サンキューマッネ]

[うん、エゴサはしないほうがいいよ]

[ていうかバーチャルな存在ってどういう意味?]

 

 おお、さらっと食いついた人を発見。いい機会だから正式名称を名乗りますか。

 

「アーニャがバーチャルな存在っていうのは、YTubeにしか存在しないから。つまり非実在人物。バーチャルな存在ってわけ。ま、バーチャルなYTuber、略してVTuberだね」

 

[ドヤ顔かわゆすwwww]

[そういえば最初から電子の妖精とか言ってたよね]

[アーニャたん可愛すぎんぞw]

[頭文字が乗っ取られたwww]

[とりあえずどういう意味かは把握w]

[アーニャたんが実在しない悲劇wwwwww]

[実在しないアーニャたんのために働くマネージャー大丈夫か?w]

[ああ、そういうことにしたのか]

[二次元の存在を発掘したマネージャー有能すぐる]

 

「うん、みんなも感謝してたって、わたしからマネージャーに伝えとくね。わたしがデビューできたのも、みんなのメールに対応してくれたのも、メーカーさんからゲーム配信の許可をもらえたのも、ぜーんぶマネージャーさんのおかげだから、わたしも感謝しなきゃだね」

 

 なんか隣のサーニャ(サブちゃん)が物申したそうな顔になった。でもお願い、さすがに説明できないから言い訳は後でさせて? っていうか分かっててジト目してるんでしょ?

 

[サンキューマッネ]

[予想以上に仕事してるし]

[えっ、もしかしてあたしのメールもマネージャーに見られた?]

[メーカーからゲーム配信の許可まで貰ってくれるんだ]

[これは有能]

[安心しすぎておしっこちびりそう]

[これは安心して見ていられますね]

[マネさん有能すぎひん?]

[アーニャたんの負担が少なそうで安心したわ]

 

 うんうん、わたしのお父さんは頼りになるのだ。これにはわたしもにっこり。隣の女の子は不満顔だけど。

 

「わたし宛に届くメールは、お仕事を頼みたいっていうのが多いからね。基本的にマネージャーさんが管理してるの。でも普通のファンレターは転送してくれるよ。半分くらいはアーニャたんぺろぺろだから消去したって言ってたけど」

 

[草wwwwwww]

[草草草ァ!]

[これは大草原不可避の流れですね]

[おいお前ら反省しろよ!]

[あ、サーニャたんが芝刈り機の準備始めたw]

[俺らのメールを黙々と処理するマネージャーかわいそすぎんだろw]

[反省しろwwww]

[オマエモナーwwwwwww]

[待って、芝刈り機で尊い命が刈り取られちゃう!]

 

 おお、サーニャが芝刈り機でウィーンとやった!

 

「こんな出番しかないのは悲しいので、そろそろ出番を作ってほしいのですが」

 

 うん、色々とごめんね! ほどよく場も温まったことだし、そろそろ画面を切り替えようか?

 

 視線の意味を理解したAIが風雲急を告げるBGMとともに画面を切り替える。大きく映し出されたMカートは、すでにマルチの待機画面。サーニャの枠も右上に小さく表示される。

 

「というわけで、マネージャーさんが頑張って許可を取ってきてくれたWeのMカートをオンラインでやっていくよ。我こそはという猛者はかかってきてね」

 

「ルールはすでにご存じの方もいらっしゃるでしょうが、基本は6対6のチーム戦で、合計ポイントを競う形式です。参加希望者はメスガキ陣営か、真の主人公陣営か、一目で判るような名前を付けてください」

 

[待ってました! アーニャたんを分からせ隊!]

[陣営名テラヒドスwwww]

[N社から許可取ったんなら安心だね]

[やはり有能]

[まーN社は頼んだら普通に許可くれそうだけど]

[ちゃんと筋を通すのが大事なのよ]

[公認取れたのはすごく大きい]

[あれ、ダー◯ライさんは?]

[それができない人間が多すぎてなぁ]

 

「ちなみにダー◯ライさんは飛び入りですね。参加枠は1名のみで、優勝が勝利条件。そんな感じです」

 

「まあ勝利条件が厳しいし、無理して参加しなくてもいいかな? 空気を読んで最後まで影に徹するのもダーク◯イさんっぽいしね。それと枠が被ったときは、申し訳ないけど後から入ってきた人をこちらで弾かせてもらうね。代わりにその画面をWisperで報告してくれたら、アーニャのお絵かきリクエスト権をあげるよ。でも誰かさんのようにエッチなイラストはダメだからね」

 

[孤高のダークラ◯さんカッコイイなぁ]

[これは納得の設定]

[やるからには勝つ。はっきりわかんだね]

[おお。追い出された人のフォローもあるのか]

[これはいいフォローだね]

[おい社畜ネキ言われてんぞw]

[やべぇ怒られた! アーニャたんごめんね!]

[まったくレース前だというのに……ふぅ]

[雪国民自重汁]

 

 ふふ。コメントも一体感が出てきたというか、ちゃんと噛み合っていていい感じだね。

 

 それではMカート歴7年。弟たちと磨いた腕前を見せるとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と思ったけど、サーニャには勝てなかったよ」

 

「当然の結果ですね。それともまさかアーニャの勝機が微粒子レベルで存在するとでも?」

 

 都合5戦全敗で分からせられる寸前のわたし。ふぇーんと泣きたい気分だったけど、フフンと鼻で笑ったサーニャにトドメを刺された。

 

「まあこのまま終わらせるのもなんですから、最後にリベンジの機会を差し上げましょう。誰かが私より上位につければアーニャの勝利で。まあそんなことはあり得ませんが」

 

 うー、これは怒ってるな。いや全部お父さんのおかげと言ったのは悪かったけど、この場じゃサブちゃんのことを説明できないんだし仕方ないじゃんかさ。

 

 なのに本気を出して、適当に割り振ると言ってたメンバーも微妙に偏らせて。おかげでアーニャ陣営はお通夜の雰囲気だよ。

 

 まぁ責任の大半はTAS(ツールアシスト・スーパープレイ)を使ってるとしか思えないほど1位を独占するサーニャと、毎回最下位争いをしているわたしにあるんだけど、本当に大人気ないなぁ……。

 

「ううっ、最後に一矢報いたいけど……敵は情け容赦のないサーニャだから、みんな無理はしないでね」

 

 あまりの実力差にアーニャ陣営の集まりも悪くなり、このままわたしが分からされて終わりかなと思ったら、なんかとんでもない人が入ってきた。

 

 

[ダー◯ライ@公式]

[くだらん争いはやめろ。このオレを本気にさせるな]

 

 

「おや、6戦目でダー◯ライさんの参戦ですか。いいでしょう、所詮はなんでもかんでも闘わされていることを証明して差し上げますか」

 

 あくまで強気のサーニャは返り討ちを宣言するが、はたしてその結末や如何に……?

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。