転生したら美少女VTuberになるんだ、という夢を見たんだけど? 作:蘇芳ありさ
【さすがC社】アーニャたんの経済効果を検証するスレ part8【業界の寝技師】
341:名無しの論客さん ID:ipQOf1cvW
いやいや、今やってるゲームだって
よかったら配信で使ってくださいってレベルじゃないよな?
いつものことっちゃいつものことだが
毎回どんだけ金かけてるんだよアーニャの配信は?
342:名無しの論客さん ID:5r3kUqOuh
別にいいんでない?
この完成度なら、いつか製品化したときの宣伝も
兼ねてると考りゃ余裕で回収できるやろ
アーニャの宣伝効果は3Gで実証済みだし
今後もN社は発売前のゲームを好きに遊ばせる方針なんやろな
343:名無しの論客さん ID:1Tqzod6ZH
3Gなぁ
発売日に全世界で500万本が完売って
これ普通に考えたらとんでもないことだよな?
344:名無しの論客さん ID:m1l1382dW
しかも開発用の機材として使ったPC版を渡したら
フルHD版として返ってくるオマケ付き
こっちのPC版はDL専売だから実数は不明だが
国内でも3Gが動くPCが品薄になる騒ぎだから
最終的にどこまで売れるか予測すら立たないのが現状だよ。
345:名無しの論客さん ID:xfN64ODYF
道理でC社の株価もN社に続いて昇竜拳をするはずやわ
346:名無しの論客さん ID:pUM3aQ4gu
昇竜拳は草。上昇中完全無敵で落ちてこない昇竜拳とか極悪すぎるw
347:名無しの論客さん ID:HrAup5Im1
こりゃ株価がどこまで上がるか分からんね。
しかしG社の株価もN社とC社ほどじゃないが
エグい上昇を決めてるのはなんでだ?
348:名無しの論客さん ID:a5mhx4WTw
そりゃアーニャが選んだプラットフォームだからだろ。
上手いことやったC社を見りゃ、どんだけ頭の固い企業だって広告塔としての価値に気づくだろうし、今頃G社にはスポンサーが殺到してるんじゃないの?
349:名無しの論客さん ID:UyuhUhhmg
まあアーニャちゃんねるは広告がオフになってるから無駄な努力だと思いますが
350:名無しの論客さん ID:xMZmI1ft1
収益化もまだだしなぁ……条件はとっくに満たしてるだろうに、何をグズグズしてるんだか。
351:名無しの論客さん ID:3OmwARr6T
本人もN社のガードが完璧だから、今さらあやかりたいって企業は本当に幸運の女神に選ばれる立場だよな。
352:名無しの論客さん ID:m268bWPqW
まぁね。これまでのN社を見れば子供を案件漬けにすることはまずないし、どれだけ本人の興味を惹けるかが勝負の分かれ目だろうな。
353:名無しの論客さん ID:NH6ze4iLH
なるほどねぇ……
そうなるとマスコミが急に持ち上げるようになったのは
スポンサー企業の圧力もあるかもな
今までネットの話なんざSNSの誹謗中傷がどうとか
ネットを悪者にする報道しかしなかったのに
急に手の平を返したからおかしいと思ったんだよな
354:名無しの論客さん ID:N301WaCHI
それもありますが、アーニャさん本人をネットから取り上げる意図もあると思いますよ。ようは自局の番組を持たせる代わりにネット配信を辞めさせるつもりですね。これならアーニャさんを自分たちでコントロールできると思ってるのでしょう。
355:名無しの論客さん ID:xSkobCK9u
ああ、いかにもやりそうだわ。
356:名無しの論客さん ID:WCgIID5jN
でも仮に本気でそう思ってんなら救いようのないアホだな。
そんなことをしたら天真爛漫なアーニャの魅力が半減だし、お前らじゃ世界中に放送できんだろ。
357:名無しの論客さん ID:SMO7cABtU
そういう意味で言うなら、アーニャという配信者が登場した時点で既存のメディアはYTubeに完敗してるんだよな。
ああ、書いてて思ったけど、だからネットから取り上げようとしてるって表現になるのか!
358:名無しの論客さん ID:kQFmZs4H9
ははぁ、YTubeやネット潰しを兼ねての引き抜きねぇ……
まぁ国内に何のしがらみもないN社をだし抜けるとは思わんが
本人と周辺の子は心配やね。社畜ネキとか言う昭和の怪物以外の。
359:名無しの論客さん ID:TnWLCCaDT
昭和の怪物は草w
いや本人自称27やけど口に出す話の元ネタを考えたら37でも済まんやろw
360:名無しの論客さん ID:N301WaCHI
社畜ネキさんが学生時代に作ったというゲームも興味深いですが、どちらにしても子供たちが大人の事情に振り回されないように注視しないといけませんね。
◇◆◇
2011年12月10日(土)
都心からだいぶ離れたワンルームのマンションに、彼女の自宅はあった。
乱雑に散らかっているように見えて、どこか居心地がいいと感じる不思議な部屋。使った物はその場に放置されているが、その中に生ごみや洗濯物は見当たらず、掃除もきちんと行き届いているために、清潔だと錯覚しそうになるそんな部屋に、浴室から出たばかりの彼女の姿はあった。
異様な熱気に包まれた配信の汗を流した直後に、社畜ネキのハンドルネームで知られるその女性は、物分かりの悪いスレ民の態度に憤慨してる様子だった。
「だからお前らいい加減にしろよ。このスレはアーニャたんを愛でるスレだろ? お姉さんの自作ゲームの話なんてスレ違いもいいとこだろうが! だから止めろって! ここは×ちゃんねるだ、それ以上でもそれ以下でもないってさっそく真似するなァ!? は? だったらお姉さんの個別スレでやるからカモン? いらんわ! 誰だよそんなスレ立てたヤツ……えっ、ぺこらのもある? それはちょっと見てみたいけど……」
スレ民の反撃に多少は消沈したものの、全身に精気をみなぎらせたその女性は若く、そして美しかった。
ギラついた眼に濡れた唇。タンクトップとホットパンツから露出した肌は、激しい運動した直後のように上気して。髪は黒く艶があり、目尻のシワが存在しない彼女は、部外者が無責任に論じるような年齢では断じてない。
「ったく、この内側からはち切れんばかりのアーニャたんへの熱い想いを消化しなきゃ、寝ることもできないっていうのに、どうでもいい話ばっかりしやがって。どうすんだよ、お姉さんに一線を越えろってか? いやさ、お姉さんわりと理解のあるほうよ? 女の子同士の恋愛にも。でもさ、社会人としての立場もあるわけじゃない? お前らがお姉さんの絵を使うのは勝手だけど、なんていうの? 自分で使うために、そんな、ねぇ……? 仕方ない、またアーニャたんと、マナカたん……あくたんと、ついでにぺこらも入れてやるか。四人で仲良くお風呂でキャッキャうふふをする絵を描いて、この高ぶりを解消しよっと。R-18にするとアーニャたんのお父さんに怒られるから、外部には健全に見える方向でなんとか……」
もっとも、当事者には聞かせられない独り言からも、噂通りの性癖の持ち主であることは否定できなかったが……ともかく彼女は液タブを引き寄せて、専用のアプリケーションを起動したところで気が付いた。既存の連絡先にない差出人が不明なメールの存在に。
「誰だこれ……? 迷惑メールならオートで処理されるから違うだろうし……」
正直なところ、自身の情熱に水を差された彼女は無関係のメールに付き合う心境になかった。だが、最近になって急激に広まった交友関係を考慮するに、見覚えがないという理由で無関係と断じることもできなかった。
「面倒だけど、アーニャたんの知り合いだったらマズいもんね」
観念してメールを開封した彼女は程なく仰天した。
「マジかよ、これ……」
差出人はキー局の不二テレビ。内容は自局の番組への出演依頼ともなると、しがないOL兼見習いVTuberの彼女としては望外の脚光に有頂天になってもおかしくなかった。だが……。
「あー、ハイハイ、なるほど、そういうことね」
彼女の瞳が深い理性と知性の色を帯びる。
「アーニャたんのガードが堅いから、代わりにチョロそうなお姉さんを引っ張り出そうってか? 自分たちの番組でチヤホヤして、頭の弱そうなお姉さんを言い包めて、次はアーニャたんと一緒に出演しますって言わせるのが魂胆だろ? そうだよね、これって要するにそういうことだよね? そうじゃなきゃ、こんなメールが来るわけないもんね!」
そのような算段を立てた者たちは知る由もないだろう。この社畜ネキと呼ばれる女性は、普段の軽薄な言動からは想像もつかないほど思慮深く、世知辛い社会の闇を噛み締めて生きてきたなど……。
「人のことを無知な小娘だと思って舐めやがって! でもこうなるとちょっとマズいかもね……似たようなことは他のヤツらも考えるだろうし、白上たち……クッソォおおお、白上のヤツ、許せねぇえええ……っていうさっきの怨恨はこの件には関係ないから置いとくとして。とりあえず擦れた女子大生のフブあやはともかく、マナカたんとかあくたんとか、ぺこらは特にマズいな。今日の配信でも目立ってたし、感動しましたっておだてられたら、コロッといっちゃうかもしれんし。まだ未成年だし、本人の一存で決められることじゃないけど、深みに嵌る前に何とかしてやらんと……」
生まれつき情が深い彼女は、まだ顔も知らない少女のために真剣に悩み、そして最善と思われる結論を出した。
「よし、こういうときは報連相だね。とりあえず磐っちと、頭脳労働担当のサーニャたんにメールを転送して、これこれこういう狙いがあると思うから注意してあげてねって報告しとこう。これで小汚いオッサンどもに弄ばれたぺこらが不幸になることはない、ハズ」
社畜ネキは直ちに取り掛かったが、少し遅かった。実は彼女がメールを開封する前に、同様のメールが懸念する少女の元に届いていたからだ。
白状すれば、華やかな芸能界に憧れていなかったと言ったら嘘になる。
子供の頃から憧れていた芸能人が多数同席するバラエティー番組への出演依頼は、その少女にとって悪魔の誘惑にも等しかった。
なぜ自分に? 絶対なにか裏がある! そう思いつつも、その文面に交換条件となる魂の提出は書かれておらず。すっかり頭の中が真っ白になった少女は、何かに急かされるようにキーボードを叩いた。
「その話、とても興味があります。良かったら返事をください……これでいいかな?」
だが彼女はそのことを直ちに後悔することになる。
◇◆◇
2011年12月11日(日)
日曜の朝は家族のんびり過ごす。そう、
お父さんは昨日の狛村さんと相談してもう決めたらしく、朝からあちこちに電話してドッグランの完成を急いでるようだ。
別にユッカがワクチンを接種したからって、すぐに外で遊ばせなきゃいけないわけでもないのに、お父さんってばせっかちなんだから。
……そんなふうに思ってる時期があったよ、わたしにもね。
「ごめんね。もっと遊んであげたいけど、疲れちゃったから少し休ませてね?」
「キュウン?」
わたしがソファーに寝そべりながら謝ると、ユッカは不思議そうに首をひねった。さっきまでユッカと追いかけっこをしてた妹も寝ちゃったし、弟もぐったりしてる。わたしも疲れちゃったし、このままお昼寝してもいいかな。
いや、まだ小さいからってシベリアンハスキーの運動量を甘く見てはいけなかったね。
階段の上り下りができるようになったユッカを追いかけて、家の中を走り回ったら、体育の成績が5の弟ですらこの始末……なるほど、お父さんがドッグランの完成を急ぐわけた。
ユッカがわたしたちの匂いを嗅いで、顔をペロペロ舐めてくるけど、相手をしてあげる余裕がない。
……午後になったら出かける予定だし、配信の打ち合わせは帰ってきてからでいいかな。
どうせ今夜の配信は0期生のみんなと3Gって半分以上決まってるし、今はゆっくりさせてもらおう……と思ったらスマホが鳴って、お母さんが呆れたように覗き込んできた。
「ほらゆかり、携帯が鳴ってるわよ? ゆかりが出ないんだったらお母さんが出るから、もう少しシャキッとしなさい」
「はぁい……」
ユッカの件で大見得を切った手前、お母さんにだらしないところを見られるのはよろしくない。
階段を二十往復するなど酷使し切った足腰の痛みを我慢して体を起し、テーブルの上に置きっぱなしにしてたスマートフォンを確認する。
「相手は、うん、やっぱり」
9時半から10分おきに呼び出してきたのは、例に漏れず
「……まさかユッカに妬いてたりしてね」
「クゥン?」
さすがにそれはないと思うが、あんまりユッカに構いすぎると誤解を招くか。
お母さんが眠気覚ましの珈琲を淹れてくれたので有り難く受け取ると、わたしは膝の上の愛犬をソファーに下ろして、いい子にしてるように言い含めてから自分の部屋に向かったが、階段の辺りで振り返ると、申し訳なさそうに追いかけてくる銀色の毛玉を発見した。
言いつけを守らなかったのは減点だけど、まぁ、両親も忙しそうにしているし、弟たちも疲れて寝ちゃったしね。放置するのも忍びないか。
「わかった、一緒に行こう? その代わりわたしの部屋を荒らしたらダメだからね」
「ワン」
嬉しそうに尻尾を振ってスリスリしてくる愛犬を抱き上げて自分の部屋に向かうと、パソコンのモニターに表示されたサーニャが不機嫌そうに頭を下げてきた。
あ、やっぱり。思いっきり拗ねてやんの。
「お帰りなさいませ、ゆかり。なるほど、その子がユッカですか」
「ウゥ〜ッ」
そしてユッカも初めて敵愾心を露わにする。
シベリアンハスキーという犬種は、空き巣でも歓迎すると言われるゴールデンレトリーバーほどじゃないだろうが……余程のことがなければ初対面の人間にも愛想を振り撒くから、番犬には向いていないって話だけど、どうしたのだろうか?
「どうやら勘違いしているようですね。たしかに私はゆかりをボスとする群れの中で一番の下っ端ですが、貴方の立場はさらに下です。何故なら貴方は愛玩以外の目的でゆかりの役に立っていないからです」
「グルル」
まあ、何故こんな戦いが始まったのかはどうでもいい。サーニャとユッカの行動に責任を持たなきゃいけない立場のわたしとしては、不毛なケンカを仲裁してしっかりと反省させる必要がある。
わたしは「こらっ」とちょっと強めに呼びかけると、途端に恐縮したユッカの頭を撫でながら説明するのだった。
「ダメだよ、威嚇しちゃ。仲良くできないんだったらわたしの部屋は出入り禁止だからね。はい、わかったら『クゥーン』って返事をして」
「クゥーン」
とりあえず机の上にクッションを置いて、その上に寝かせたユッカの背中を撫でながら反省を促すと、次は微妙に勝ち誇るサーニャの番だ。
「サーニャもユッカに嫉妬とかやめてよ。いつも一緒なんだから、たまに帰りが遅くなった程度で妬いたりしないの」
「はい……申し訳ありませんでした」
よしよし、二人とも反省してくれたし、お説教はこれくらいで切り上げるか。
「ところであんなに何回も呼び出すなんて珍しいけど、また緊急事態が発生したわけじゃないよね?」
わたしは冗談めかして訊ねたが、サーニャの顔色はお説教の直後ということを差し引いても優れているとは言い難かった。
「それなんですが、私も全貌を掴めているわけではありません。ただ社畜ネキさまの報告を考えると、前もってレンタルVTuberの全員に通達しておいたほうがいいと判断して、まずはこれを」
珍しく歯切れの悪いサーニャが表示させたのは、以前に預けてそれっきりになっていたソフトだった。
「それサーニャが大谷部長に預けたディスコもどきだよね?」
「はい、先ほどゆかりのお父さまを経由して、大谷部長より特許申請が受理されたので、レンタルVTuberの皆さまに配布して利用していいとの連絡が。ちなみに特許申請の際に使われた正式名称は
おおっ、それはなんという一文字違い……でも以前のに比べたらマシかな?
なんたって以前はcord:DMYで、勝手に変更された
「まあ『私の親愛なゆかり』なんて意味の込められた名前じゃ、ちょっと語呂も悪かったし使いにくかったんでしょ? サーニャの気持ちは嬉しいけど、名前を変えられたからってそんなに拗ねないの……ね?」
「いえ、あれは開発コードに過ぎませんから、変更の判断に不満はありません。それよりも皆さまへの配布と招待は完了していますから、まずは社畜ネキさまの話を聞いてやってください」
なんだろう……サーニャは取り急ぎ対処すべき問題が発生したわけじゃないって言ってたにしては、妙に急かしてくる。その原因は社畜ネキさんから持ちかけられた相談にあるようだけど、いったい何があったんだろうか?
「でさー、義父さんったら、今の仕事を辞めてVTuberになるって言ったら、すごい心配しちゃってさー。早まるな、世の中はお前が考えているほど甘くないって、完全に子供扱いなんだよね。だから言っちゃったの。わたしが義父さんの大好きなアーニャたんの配信に出てくる社畜ネキだって教えたら、義父さんってば、しばらく無言でアーニャたんの配信と聴き比べて、ほんまやって。そこまでは良かったんだけど、ほら、アーニャたんの配信で社畜時代のエピソードを披露しちゃったもんだから、義父さん涙ぐんじゃって、お前も苦労してたんだなぁ……気づいてやれなくってごめんなぁって、もう大変で」
「あはは! よいお父さんじゃありませんか! 白上なんて、学費を出してるんだから卒業しろ、とこれだけですよ!?」
「もう露骨につまんないことで連絡してくるなって感じだったよねー。でも余の見たところ、おじさんかなり動揺してたね。受話器を置くときも一度別のところに落としてたし、今ごろアーカイブを確認してるんじゃね?」
……なんだこれ? 入室した途端に流れてくるマリン船長とフブあやの声、朝からべろんべろんに酔っ払ってないかな?
うん、Live2Aも表示されたけど、三人とも顔が赤いのがバレバレで、頭上には酩酊状態特有のマークまで表示されているから間違いないね。
さすがにその手に持っているものまでは表示されてないけど、それが仮に缶ビールの類ならかなりのハイペースだ。
まさかサブちゃんってば、わたしにこの酔っ払いどもの相手をしろとでも……?
「ンンッ、お三方とも、少しよろしいでしょうか?」
そんな疑惑の視線に気付いたのか、必死に頭を振って否定したサーニャが尖った声を出す。もちろんその矛先はディスコで仲良く飲酒中のマリン船長たちだ。
「あっ、そこにいるのは愛しのアーニャたんだぁ」
だが、さすがは酔っ払いというべきか、サーニャに睨まれても何のその。
ディスコの画面に
「もうね、アーニャたんのことが好きすぎて、お姉さん夜も眠れないの。んー、アーニャたん慰めて、チュッチュ」
「ウゥ〜」
そんな社畜ネキさんを敵と見なしたのか、ユッカが立ち上がってモニターにパンチしようとしたが、わたしに止められて喉を鳴らすにとどめた。
「いやぁー、アーニャさん。このディーエスコードですか? これは革新的な便利さですねー! これさえあればいつでもオンラインの人に声をかけて飲めるんですから、重宝しますよぉー!!」
「っ、貴女も未成年でしょうに、昼間から飲酒など……いいですか? この国の法律では、20歳未満の飲酒を禁止して……」
「えーっ、サーニャちゃんってマジうけるぅ〜! 今どきの大学なら、新歓で駆けつけ三杯はジョーシキだって、ジョーシキ! まあ飲める人限定やけど」
「こ、この不良学生ども……」
うん、まあ、暇を持て余してる大学生と社会人にこんなものを渡したら、こういう使われ方をされても仕方ないよね。
「で、これがわたしに見せたかったもの?」
「……違います」
わたしが訊ねるとサーニャは悔しそうに唇を噛んで否定したが、それだとどうなるんだろうか。サーニャはマリン船長の話を聞けって言ってたけど、本人はこんな調子だし、ハルカさんたちも楽しそうに笑うだけで会話が成立するとは思えない。
「はぁ……もう結構です。又聞きになる上に、マリン構文の翻訳に不安があるから本人の話を聞きたかったのですが、これなら私の分析結果を聞かせたほうがマシです」
サーニャが失望の表情を隠そうともせずそう嘆くと、アーニャに抱きついてよだれを垂らした社畜ネキさんの様子が一変した。
「ちょっと待って……うん、飲まなきゃやってられない気分だったけど、目が覚めたわ。自分の口から説明するね」
なんかすごい音がしたけど、アレは自分の顔を叩いたのだろうか。
アーニャを地獄の苦しみから解放したマリン船長の顔が腫れてるけど、これがLive2Aの漫画的な表現じゃないならちょっと心配だな……。
「…………どうぞ」
そんなマリン船長の頬っぺたに湿布を貼り付けたサーニャが場を譲ると、白上さんたちもお酒以外のものを飲んで酔いを覚まそうとして、明確に場の空気が入れ替わった。
その中心にいるのは、先ほどまで酔っ払っていたマリン船長さんだった。わたしはもちろん、多少は事情を知ってるはずのサーニャでさえ、マリン船長の言葉を今か今かと待ち受ける。
「実はね……昨日、配信が終わったあとに、不二テレビからメールがあったんだよね。自分たちの番組に実演しないかって」
それは──本当ならすごいことだ。だって一流の芸能人を抱えているはずのテレビ局が、彼女のトークと芸風を評価して出演を依頼したんだから。ちょっと寂しい気もするけど、ここはおめでとうと祝福するべきだろう。
「マリン船長なら当然かもしれないけど、やっぱりすごいね。おめでとう。向こうでも頑張ってって言いたいけど、あまりハメを外し過ぎないでね」
わたしがそう言うと、マリン船長は疲れたように頭を振ってみせた。
「人を疑うことを知らない純粋なアーニャたんにこんな話はしたくないけど、あいつらは最初からお姉さんなんて相手にしてないよ。頭も股も緩そうな馬鹿女をおだてて、最終的にアーニャたんを引き摺り出して利用することしか頭にないと見て間違いないんだよね」
マリン船長が自嘲するようにそう言うと、白上さんも遠慮がちに口を開いた。
「似たような話は白上たちのところにも来ましたね。さすがに在京のキー局ではありませんが、そのときは磐田社長に声を掛けられて、正式なVTuberとしてやっていくつもりでしたからお断りしましたが……」
「余もそこまで裏があるとは思わんかったから、マリンの話を聞いてびっくらこいたわ。マリンもよう気付いたね。さすがは伊達に44年も生きとらんわ」
「あはは、百鬼ちゃんってば、それはあくまで設定の話だよね? お姉さんの実年齢は永遠に17歳なんだから、人のことを勝手にとんでもない年増にするのはやめてくれる?」
三人とも暗い雰囲気を吹き飛ばすかのように努めて明るく笑ったが、大事な人が利用されるところだったと知ったわたしの心は重く沈んだままだった。
そんなわたしを心配して、モニターの前に行儀良くお座りしてたユッカが身を寄せてくる。優しく抱きしめると、愛犬のぬくもりに勇気づけられるものがあった。
そうだった、わたしはみんなのお母さんになるんだった。だっていうのにこの程度でへこたれちゃダメだよね。
「そこまでは事前に聞いていましたし、いずれそうした話も出てくると対策を練っていましたが……本題はその先ですよね?」
サーニャが促すと、よほど言いづらい話なのか、マリン船長はしばらく黙っていたが、やがて俯いた顔を上げると重い口を開いてくれた。
「……そう。お姉さんね、すぐに似たような話がみんなに行ってないか心配になった。ほら、曲がりなりにも大学生で、男に二、三回は騙されてそうなフブあやはともかくさ、他の子は良くも悪くも純真な子が多いじゃない? で、みんなにメールを飛ばしたんだけど、あくたんとマナカたんから返事がないから心配なんだよね。ねぇ、これって大丈夫だと思う?」
「湊あくあさまは、いま起きたけど何かあったのと、先ほどメールがありましたので大丈夫でしょう。マナカさまは……」
「マナカは教会の子だからね。今メールしたら、ごめんミサの最中なの。また午後にねって言ってるから、心配いらないよ」
サーニャの言葉を引き継いだわたしにも判っていた。問題は、いま名前が出てこなかった子に起きてるんだって。
「そっか。……でね、ぺこらとはケンカしちゃった。ほら、ぺこらってば昨日の配信で大活躍だったでしょ? だから真っ先に目を付けられるとしたらあいつだって思って連絡したら、案の定でね。しかも間が悪いことに、ちょうど詳しい話が聞きたいって返事をしたとこらしくて……つい馬鹿かお前って配信中のノリで噛みついちゃって、そうしたらあいつも意固地になって、本当に年の功ってなんだろうねって話よ」
こう言ってはなんだけど、今のどん底まで沈んでいる社畜ネキさんを見て、わたしはようやくこの
センシティブかつエネルギッシュで、手の付けられない問題児のように感じていたこの女性の素顔は、本当にどこにでもいる普通の女の子だと判ったからだ。
「アーニャたん……?」
だからだろうか。わたしは気がつくと社畜ネキさんのようにLive2Aの位置を調整して、愛犬と一緒に彼女を抱きしめて勇気づけるのだった。
「大丈夫だよ、社畜ネキさん。ぺこらちゃんもきっと分かってくれる。きっと仲直りできる。だから今回のことはわたしに、ううん、わたしたちに任せて」
自身の思い上がりを訂正して微笑むと、
「なるほど。急に泣きつかれたときは何事かと思いましたが、ようやく合点がいきましたよ。ですがご安心を。いつかこのような問題が起きると想定して、事前に最強の助っ人を味方に引き入れていますからね。私に抜かりはありませんよ」
サーニャが芝居がかった仕草で薄い胸を張って踏ん反り返ると、白上さんが「おおっ」と少し大げさに感動してくれた。
「さすがはサーニャさん、頼りになりますねぇ」
「それで最強の助っ人って、やっぱり磐っち? それとも最強法務部?」
「いえ、ほとんど仮病と言っても過言ではありませんが、一応はガンの経過観察で入院していることになっている磐田社長を大っぴらに動かすのはよろしくありませんし、明確な法令違反を行ったわけでもない相手に最強法務部の出番はありません。よって今回はテレビ業界に対して特攻効果のあるこのカードを切ろうと思いますが……」
ちょいちょい、とサーニャが手招きしたので身を寄せるとゴニョゴニョととんでもない内容を耳打ちされた。
「サーニャたん鬼! 悪魔! サーニャたん!」
「いやぁ、そのお二人は特設サイトの協賛企業の中にもありましたが、確かに動いていただけるのでしたら効果は抜群ですねぇ!!」
「いや、どう考えてもオーバーキルやろ? HPが四桁しかない相手に、億はおろか兆に達するほどのダメージを叩き込むようなもんやわ。さすがに惨すぎひん? ナキリ、ドン引きやわ……」
たしかにみんなの言う通りだ。白上さんの言うように効果は抜群だろうし、あやめ殿やマリン船長の言うように、サーニャの容赦のなさにドン引きするのも分かる。
……しかしこれは売られたケンカだ。本気でみんなを引き抜こうとしているならともかく、N社とお父さんに守られて手が出せないわたしを引き摺り出すためだけに、わたしの大事な子供たちを使い捨てようとするなら、母親として容認できない。
「サーニャ。今回の落とし所は、公式に記者会見を開いての謝罪だよ。できる?」
「はい、お任せを」
がっちり握手するわたしたちを、他の三人は楽しそうに、それでいてすこしだけ心配そうに見守るのだった。
なんだろう……わたしは成功の可否に不安があるのかと思ったけど、違った。
「アーニャたんってば頼もしい、って言いたいんだけど……怒ると容赦しないタイプだったんだね。さっきどさくさに紛れて胸を触ったりしてごめんね」
「いやぁ、サーニャさんが武闘派なのはなんとなく想像してましたが、まさかアーニャさんまでそうとは……将来が心配になりましたね」
「うん、まあ、いいんでない? 女だからって舐められたらおしまいだし。キ◯タマのひとつやふたつ蹴り潰せるようにならんと、やっていけんって」
いやいや、さすがにそんなことはしないからね!?
◇◆◇
午前中にN社の磐田肇社長から内密に相談されたD2の
ここまで鶴見はほとんど無言で、部下にも説明らしい説明をせず、中村も聞けるような雰囲気ではないと判断して何も聞かなかった。それほどまでに体育会系の社風と言われるD2のトップを務める男の怒りは凄まじく、その顔は鬼も一目で逃げ出すほどだと中村は震え上がると同時に、呆れ返りもするのだった。
(まったく、怒るのは解るけど、必要事項の伝達くらいはきちんとして欲しいわね。私が磐田社長から大筋の話を伺っていなかったらどうするつもりだったのかしら)
だが知ってしまったら理解せざるを得ない。鶴見の怒りが正当なものだと判断した中村は、これから落ち合う人物も似たような怒り具合だろうと想像して、憂鬱な気分になるのだった。
その二人の怒りに比べれば、この話を知ったときの自分の怒りなど子供の癇癪のようなものだ。東京の支社に到着するなりヘリを降り、出迎える社員たちを恐慌状態に陥らせる上司に呆れつつも、緩衝材として愛想を振り撒き手配済みの社用車に乗り込む。
目指すは業界の二代巨頭を怒らせた不二テレビ本社ビル──その手前で目当てのリムジンを発見した中村は、怒れる上司にそのことを報告すると、運転手に社用車を停止させるなり後部座席から降り、同じくこちらに気付いて下車した人物に深々と頭を下げるのだった。
「本日は突然お呼び立てして申し訳ありません、鯉戸会長」
「いえいえこちらこそ、今回の不始末をどうお詫びしていいか、謝罪の言葉も出でこないこの老いぼれを、どうかお許しください中村さん」
そんな中村に杖を手にした老人がぎこちない動作で礼を返す。白く染まった髪に包まれたこうべを垂れ、身内の恥に唇を噛むこの男こそ、J事務所の現会長にして、業界の
「どぉ〜も、どぉ〜も、鯉戸会長。お久しぶりです」
そんなテレビ業界の事実上の支配者に、D2の鶴見社長は旧知の間柄ということもあって陽気に挨拶したが、その目はまったく笑っていなかった。
「これは鶴見社長。今回の不始末、誠に申し訳ありません」
「いえいえ、いいんですよ僕のことは。それに鯉戸会長は不始末とおっしゃいますが、今回のことはタレントに出演を依頼するときは事務所に話を通すという、業界のルールを破っただけですからね。業界の外にいる僕らには関係ありませんよ」
「これは手厳しい。ですが今回はそれではすみませんな。何故ならN社のVTuber事業には、私の事務所も、鶴見社長のD2も協力しているわけですから、知らなかったでは済ませませんよ」
そして表面上は友好的な笑みを浮かべた鯉戸の目もまったく笑っていなかった。
「まして未来ある未成年の少女を騙くらかして利用しようなど、誰がそんなことを認めたのか、話を聞くのが少々楽しみでしてな」
「いやぁ、まったくもって鯉戸会長のおっしゃる通りで。僕はね、昨日の配信を見てすっかりぺこらさんの大ファンですよ。初めてやるゲームなんだから、なんの盛り上がりもなく終わっても誰も責めないのに、アーニャさんの配信でいい加減なことはできないと、最善を尽くして大勝利ですからね。あの若さで大したプロ根性ですよ」
「ええ、さすがは私たちも協力するN社が期待を寄せるVTuberの卵ですな。いずれ孵化して羽ばたけばどこまで飛べるか楽しみで仕方ないというのに、雑草のように引き抜いて踏み躙るなど許されることではありません。世が世なら、関係者の首を斬り飛ばしてるところです。……無論わたし自身の手でね」
まさに凶相──ここまで好々爺の印象の強かった鯉戸が浮かべた笑みは、さながら肉食獣が牙を剥いたとしか思えないものだった。
無論、中村はこの男の経歴を知っている。戦後の高度成長期にテレビが普及し始めた時代から、芸能界を取り仕切っていたこの男が何をしてきたかを。
何かと
……そんな男が目の前で激怒しているのだ。
しかも他業種間の架け橋である広告代理店のメンツを潰されて、怒り狂う上司と意気投合する形で。
なんということだろうか……? 広告・出版・テレビ局からなるマスメディア産業の頂点に君臨する二代巨頭をここまで怒らせようとは、今ごろ不二テレビの経営陣は震え上がっているに違いない。
そして中村は疑問に思った。ここに自分がいる意味は何だろうか。まさかこの二人のやり過ぎを諌めるためではないだろうなと。
「まあ一番許せないのは、僕らのアーニャたんを悲しませたことなんですがね。ほら、二人とも年齢が近いこともあってとっても仲良しだから、これはもう許せることではないと」
「はっはっはっ、鶴見社長は正直者ですな。それでは私も鶴見社長に倣って正直になりますが……私もね、今夜の配信でまたアーニャたんたちの笑顔が見れるものと楽しみにしていたわけですから、赦すつもりは微塵もありませんな」
これは確実に血を見ることになる──二人の笑顔からそう判断した中村みゆきは咄嗟に口を開いた。
「あの、N社の磐田社長は公式の謝罪を求めていますが、誠意ある回答が得られなかった場合はどうなるのでしょうか?」
中村の問いは愚問というものだが、問わずにはいられなかったのだ。あの心優しい少女が断罪まで望んでいないと信じ、どうか穏便にという想いから出たものだが、少々言葉を選び損ねたようだ。
「その場合、不二テレビに私の手がけたタレントは出入り禁止になりますな」
「僕のほうは広告を全部引き上げますね。代わりに白鵬堂さんが引き受けてくれればいいんですが、そうなったらことの経緯を公開しますから、引き受けてもらえないでしょうね」
「もしそんなことになったら、不二テレビは……」
「消えますな。己の非を認めて謝罪することもできない。そんな不道徳な輩に、マスメディアの一端を担わせるわけにはいきません」
「厳しいですね。でもまぁ自業自得ですよね。僕だってこんな仕打ちを受けて怒り狂ってますもん。いい気味ですよ」
なるほど……ここに来て中村みゆきは己の役割を正確に把握した。ようするにこれはすでに決着のついた戦争の後始末にすぎない。戦う前に全面的に降伏をした敗戦国をしっかり謝らせつつ、怒り狂う戦勝国を宥めてなんとか両者が妥協できる講和条約をでっち上げなければならない。
なんとも難儀な仕事だが、保有する軍事力にここまで差がある以上、相手に蹴られるということはないだろう。目の前のビルから、こちらに気付いた不二テレビの経営陣が血相を変えて飛び出してくるのを見て、中村みゆきは背後の二人がこの上なく物騒な兵器のように思えて泣きたくなった。
『えー、つい先ほど不二テレビの会見が終了したようですが、今回の問題点はどこにあったのでしょうか?』
『はい、一つは未成年に虚偽の契約を持ちかけた件です。今回不二テレビは、N社の動画配信事業に出演する未成年の少女に、架空のバラエティー番組への出演を持ちかけましたが、これが虚偽の内容であることは、出演予定とされる芸能人の所属事務所によって証明されています。そしてもう一つは──』
その報道をぼんやりと眺めて、彼女は自分が騙されそうになっていたことを認めた。
会見の中で不二テレビの担当者は、自分に出演を依頼した番組はこれから立ち上げる予定だったと釈明して、虚偽の契約ではないと口にしたが、直後に激怒した不二テレビの社長に会場から強制排除された。正義がどちらにあるか、自分のような子供にも判別は容易だった。
騙された──そう認めるのは辛かったが、本当は騙されたのではなく信じたいだけだった。
人見知りのコミュ障を自認する彼女にとって、アーニャはまさに輝ける地上の星だった。
そんなアーニャに憧れて、幸運にも得られた機会に歯を食いしばって食らいつき、確かな手応えを掴み取ることができた。
だから、これからは恩返しの時間だ。自分が率先して道を切り拓いて、ネットだけじゃなくテレビにも登場して、いつかは全国ツアーのライブにみんなを連れて行くと、そんな夢を思い描いたのに。
「馬鹿だね。そんな夢、他力本願で描けるわけないのに……」
そうポツリと呟いたとき、彼女の携帯が鳴った。
相手は一番話したくない相手であると同時に、何故か一番話を聞いてもらいたいと、そう感じる女性だった。
「もしもし、マリン? うん、不二テレビの会見を見たよ。……けっきょくマリンの言う通りだったね。わたしは最初から相手にされてなかった。だからごめんね。マリンの言うことをムキになって否定して……わたしね、みんなとテレビに出たかった。みんなはこんなにすごいんだぞって、テレビで言ってやりたかった。もちろん言うほど簡単じゃないけど……そこはわたしが頑張ってさ。うん、たぶんそこから間違ってたんだね。どうしてみんなに一緒にやろうって言えなかったのかなぁ……」
ポロポロと涙とともに内心を吐露する少女に、通話相手の女性はただ静かに聞き役に徹した。そうすることが一番の良薬になると自らの経験で知っていたからだ。
だから今だけは叱りも慰めもせず、傷ついた少女に無言で寄り添った。
◇◆◇
「ということがあったんだよね」
いつもの図書館の近くにある喫茶店で、注文したパンケーキを頬張りながら報告すると、マナカことアーリャは心配そうに微笑むのだった。
「そう、それは大変だったわね……」
いまもテレビの中で死にそうな顔をする不二テレビの社長を不憫そうに見遣って、アーリャは「ぺこらさんも大丈夫かしら?」とため息をついた。
「ぺこらちゃんのことはマリン船長に任せたから大丈夫だよ、ほら」
スマホのアプリからWisper起動して、該当する書き込みを見せたらアーリャが安心したような表情になった。
「よかった、これなら安心ね」
ホッと胸を撫で下ろしたアーリャの視線が、若干戸惑ったように新たに来店したお客さんに移り、そこから店内を一周すると。
「ね、ねぇ……なんだかハリウッドの映画で見かける軍人さんのようなお客さんが多いんだけど……?」
「サーニャが頼んだ護衛だって。話しかけると迷惑になるから、見かけても気づかないふりをしてもらえると有り難いかな」
「そ、そうなんだ……ゆかりも大変ね……」
「うん。わたしもちょっと大袈裟だと思うけど、最近不審者も多いし、あんな事件もあったからね。ある程度は仕方ないのかな?」
と言ってもさすがに多すぎるね。
店内に10人以上。店外に至っては、アンテナを生やした大型のバンも停まってるし、最終的に駆り出された人員は何名に上るのだろうか。
サーニャは経費のことは心配しなくていいって言ってたけど、これまさか全員未来の世界から送り込まれた
「それより今夜の配信なんだけど──」
今さらながらに胃が重たくなってきたわたしは、努めて明るい口調で嫌な話をごまかすのだった。
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兎田ぺこら@レンタルVTuber フォロー済み
今日もアーニャちゃんたちと3Gをやっていくぞ!
スネ夫とマリンは覚悟しとけよ、マジで。
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マリン船長@アーニャたん大好きぺこらも好きぃ フォロー済み
ぺこら? マリンを討伐対象のモンスターに含めるのはやめて!?
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