転生したら美少女VTuberになるんだ、という夢を見たんだけど?   作:蘇芳ありさ

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株式会社カバー、そしてホロライブ誕生の経緯とあらぬ誤解

 

 

 

 

 

 2011年12月13日(火)

 

 

 翌日の登校はかなりの覚悟が必要になったが、まぁ、なんとか乗り切れたよ。

 

 ……いやぁ、本当に大変だった。肉体的にはそうでもないけど、精神的にはかなり疲れた。

 

 前日にマスコミ対策を兼ねて、わたし(アーニャ)の正体を公開しちゃったからある程度は予想済みだったけど、まさか校門を潜った時点で揉みくちゃにされるのは予想外だったね。

 

 休み時間はクラス総出で囲まれるし、昼休みは廊下に人だかりがギッシリできて、放課後は先生に呼ばれて職員室に行ったら先生方に囲まれるとか、もうね……。

 

 しかも音楽と図工の先生が話しかけてきたから、てっきり以前のようにコンクールに出ないかって話だと思ったら、いきなりサインを欲しがるんだもん。

 

 校長先生も孫に自慢したいとか言い出して、写メ(死語)を撮りたがるとか、いい大人が何やってんだって思ったが、こっそり裏口から逃してくれたのは助かったかな?

 

 逃げるのに手間取ったら配信の打ち合わせに支障をきたすのもあるけど、それ以上に、陰からこっそり護衛している退役軍人のみなさんの過剰反応が怖くってさ。

 

 今後しばらくはこれがわたしの日常になるのかと思うとげんなりするけど、以前のように敬遠されるよりかはよっぽどいいよね。わたしなりの努力が報われたようで、ここは素直に喜びたい。

 

 ただ相手をするのにカロリーを消費したから、お腹が空いちゃって……朝も一緒に寝た鴨川さんの抱き枕にされたし、正直しんどかったな……。

 

 そんなワケでようやく自分の部屋にたどり着いたわたしは、ランドセルを置くなり挨拶もせずおやつを優先したのであった。

 

「おかえりなさい……と言いたいところですが、答える余裕はなさそうですね」

 

 帰ってくるなり自分のおやつをペロリと平らげ、二つ目に手をつけるわたしをなんとも言えないような顔で見守ったサーニャ(サブちゃん)が、少しだけ心配そうに訊いてきた。

 

「うん、はむっ、ちょっと疲れたけど、もぐっ、本当に少しだけだから、んぐっ、心配いらないよ、ふう、サブちゃん」

 

「言いたいことは解りましたが、おやつを食べながら喋るのは行儀がいいとは言えませんよ。それと今日に限っておやつが二皿ある理由を説明してください。どうしたのですか、ソレは」

 

「いや、これは弟の分なんだけど、そんなに腹が減ってんならおれのもやるよって言われたから、遠慮なくもらってきちゃったんだよね。でも代わりにお小遣いを渡したから、強奪したわけじゃないよ?」

 

 ヨシ、理論武装も完璧である。サーニャはだいぶ怪しんでるけど、そういうことにしておこう。

 

 二つ目のおやつも完食して熱めのお茶を飲み乾すと、お腹の底から活力が湧き上がってきたのはいいんだけど、同時に眠気も自覚することになった。

 

 あれ? こんなことは初めてなんだけど……?

 

「はぁ……やっぱりだいぶお疲れのようですね、ゆかりは。夕食までお昼寝されてはどうでしょうか?」

 

「いやいや今日は配信があるんだし、鴨川さんだって帰ってくるんだから、まさかそんなわけにはいかないでしょ? 前にテレビで甘いものを食べると血糖値が上がって眠くなるって言ってたから、たぶんそれだよ」

 

 眠気を遠ざけるためにラジオ体操を始めたわたしを、しばらくジッと見つめてくるサーニャだったが、やがて納得したように微笑んだ。

 

「こちらでスキャンしたところ、たしかに血糖値の上昇以外に目立った変化はありません。どうやらゆかりの言うように、たんなる甘いものの摂りすぎですね」

 

「あ、そうなんだ」

 

 今こっちで勝手に調べたみたいなことを言ってたけど、具体的に何をどうやったんだろ? 以前、マスコミ対策にセンサーを増設するって言ってたけど、そいつが悪さをしたのかなと、つい部屋の中が気になってしまう。

 

「もし食後に眠気を感じたのが初めてなら、お母さまの食事と学校の給食に感謝することですね。よほどバランスのいい食事を心掛けねばそうはなりませんから」

 

「う、うん。わたしもそう思うよ」

 

「そして反省するように。弟のおやつを強奪するなど、人として終わってますよ」

 

「あっ、はい。どうもすみませんでした」

 

 まあ弟に気を使わせちゃったのは間違いないから、そこはしっかり反省しなきゃね……って、このタイミングであくびはマズイ。

 

「ふむ? どうやらゆかりはまだ弛んでいるようですから、ここらで身の引き締まる話でもするとしますか」

 

 ニヤリという真っ黒な笑み。漆黒のオーラこそ放ってないが、嫌な予感がプンプンする。

 

「やめてよ、そういうお腹が痛くなる話は! マスコミ対策も終わったし、しばらくそういう話はないもんだと思ったんだけど!?」

 

「あちらに関しては、たしかに目立った動きはありませんが、他にもゆかりの意思を確認してから進めたい、という話もあるのですよ。……というわけでこちらにどうぞ」

 

 話はこれでおしまいとばかりに、サーニャがDScord(ディスコ)を立ち上げる。パソコンのモニターに表示されたチャンネルは『N社公式VTuber事務所運営会議場』とあった。

 

 何これ? ぜったい入りたくないんだけど、さっきわたしの意思を確認してから進めたいって言ってたからなぁ……逆に言うと、わたしの意思を確認しなきゃ進められないことがあるってことだから、そんなわけにもいかないよね。

 

「はぁ……わかった。ちゃんと入るけど、その代わりきちんと助けてもらうからね? 知らん顔したら、あとで怒るから……」

 

「そんなに気負わなくても大丈夫ですよ。中でお待ちになっているのは、どなたもゆかりの身内のようなものですから」

 

「いやいや、わたしでも中にいるのが誰か想像くらいはつくけどさぁ……こちとら小学生なんだよ! こんな大事な会議に呼ばれたら緊張するじゃん!?」

 

「まあまあ、そこを何とか。Live2Aも使えますから、いつかアーニャの大ファンだという友好諸国の首脳陣……特にアメリカ大統領(ファッ◯ン・ガイ)をお招きしたときの予行演習だと思って」

 

 だから何それ? 初耳すぎて全身が総毛立ったんだけど、変な話を勝手に進めないでよ、と問題のチャンネルにログインする。

 

「あ、ゆかりさん。どうもどうも。お待ちしておりました」

 

 するとやっぱり、中で待ってたのは磐田社長だった。サーニャが用意したものより格段に進化したポリゴンで形成された磐田社長が、ニッコリとわたしを歓迎する。

 

「僕もいますよ。どうもゆかりさん。お久しぶりです」

 

 そして磐田社長に比べると、だいぶ親しみやすいアニメ風の宮嶋さんも手を上げて歓迎てくれたが……この人たち、お父さんの上司なんだよね。そんな人たちの会議に呼ばれたら、そりゃあ緊張するに決まってるよ。

 

「どうも、この前はお世話になりました磐田社長、宮嶋常務。今日はわたしに聞きたいことがあるとのことですが、お手柔らかにお願いします」

 

 こういう会議でなんて挨拶をしたらいいか判らないけど、せめて失礼のないようにお辞儀したら、宮嶋さんに「もっと楽にしていいですよ」と笑われた。

 

「ぼくらのことは親戚のおじさんくらいでちょうどいいですよ。ねぇ、磐田さん」

 

「そうだな。ゆかりさん、どうか気持ちを楽にしてください。この場所はあくまで意見交換の場であって、正式な会議ではありませんから。議事録にも残りませんしね」

 

 宮嶋さんに続いて磐田社長もそう言ってくれるが、そんな人たちだからこそ失礼があってはいけないという、あの人から継承されたこの気持ち。きっと分かってもらえないだろうな。サーニャも神々の御前とあって、いつもより緊張してるしね。

 

 まあ、恥ずかしがって挨拶もできなかった以前に比べたら、格段の進歩なんだろうけど……なんて取り留めもないことを考えていたら、新しく三人目と四人目のお客さまがログインしてきた。

 

 四人目のファンタジーRPGの魔法使いみたいな女の子は誰だか判らないけど、三人目のアニメチックなキャリアウーマンはもしかしたら……?

 

「どうも、お久しぶりです、ゆかりさん。本日はお忙しいなか時間を割いていただき感謝しますわ」

 

「あっ、やっぱり中村さんだ! お久しぶりです。今日はよろしくお願いしますね」

 

「はい、こちらこそ、ゆかりさん」

 

 中村さんの優しい笑顔に緊張を解かされリラックスする。

 

「詳しい話はまた後ほど。こちらのDScord(ディーエスコード)で個人的なメッセージを送ってもよろしいでしょうか?」

 

 小声でこっそり個別メッセージを飛ばしてきた中村さんに返答する。

 

「はい、中村さんならいつでも歓迎します」

 

 いや、中村さんが同席してくれると知って助かったよ。前回もそうだったけど、こうしてこっちよりの立場を明確にしてくれるだけで、ゲーム業界の双璧を一人で相手しなきゃいけないって心理的負担が軽くなるんだよね。

 

「さて、これで全員揃いましたので、ゆかりさんに話を聞いてもらうんですけど、最後の人も挨拶くらいしてくださいよ。そんなんじゃ中村さんがせっかく解いてくれたのに、ゆかりさんがまた緊張しちゃうじゃないですか」

 

 なんて、こっそり胸を撫で下ろしたら、宮嶋さんが魔法使いの女の子をからかった。

 

 はて、口調からかなり気やすい印象があるけど、部下の人かな……そう思ったわたしの頭に閃くものがあった。

 

「もしかしてお父さん?」

 

「なぜ判った……?」

 

 ボイスチェンジャーを使ってるのか、随分と女の子らしい声なんだけど、間違いないよ。お父さん何してるの?

 

「そりゃあ判るよ。お母さんに叱られてしょんぼりしてるときにそっくりだもん。それより何してるの? もしかして世界初のバーチャル美少女に受肉おじさんを目指してるとか?」

 

「ちがう! これは常務の思いつきだ。父さんに言われても知らん」

 

「すごいでしょ? 実は社内で色々と試してるんですよ、サーニャさんのLive2Aをね」

 

「常務……それなら他に希望者がいたはずです。私がこのような仮装をしなければいけない理由を説明してください」

 

「だって真白さんってこういう会議だと、全員の意見が出揃うまで難しい顔をして黙ってるじゃないですか? 社内ならそれでもいいですけど、ゆかりさんたちのいる場所でそれをやったらプレッシャーを与えちゃうでしょ? 要はイメージの改善ですね。役立ててくださいよ」

 

 なるほど……なんとなく社内における二人の関係性が見えてきたけど、宮嶋さんがお父さんに恥ずかしい格好をさせて遊んでるんじゃないと判れば、わたしとしては十分だ。

 

「まあ真白くんの不満はあとで取り上げるとして、いまはこっちの話を進めようか。まずはゆかりさんにこちらの事情を説明しよう。中村さん、お願いします」

 

 見慣れた光景なのか、磐田社長が素早く仲裁して本題に入ると、短く会釈をした中村さんが説明してきた。

 

「はい。ゆかりさんもご存知だと思いますが、15日の木曜日をもって除幕式を行い、16日の金曜日からN社のVTuber専門のプロダクションがスタートします。社名は『株式会社Re:live』になりますが、これは社内で『ゆかりさんの案件に関して』という意味で使われていたものが、いつの間にか採用されてたものです。ゆかりさんに希望があれば、今から差し替えることも可能ですが」

 

 ふぅむ、Re:liveか……例によってわたし絡みなのは引っ掛かるが、社名自体に不満はない。ただ……。

 

「……もし可能だったら、社名は株式会社カバーに。プロダクションの名称もホロライブに変更できますか?」

 

「ええ、もちろん可能ですよゆかりさん。……ちなみにその意図をお伺いしても?」

 

 そう言われると言葉に詰まる。もうみんなにあの人たち(ホロメン)の名前を付けちゃったからなんて言えないけども……。

 

「あまり深い考えはないんですが、事務所の人たちには所属するVTuber(みんな)の足りないところをカバーしてもらいたくて……あとホロライブっていうのは、ホログラムにライブを足した造語で……」

 

 しどろもどろに言い訳するわたしを見かねたのだろうか? 訳知り顔で「ええ」と相槌を打ったサーニャがわたしの知らない話をする。

 

「ゆかりには将来的に立体映像(ホログラム)を駆使したライブを行いたい意向があるようですから、ホロライブという名称も過大ではないと思いますよ」

 

「おっ、そこまで仰るからには技術面の課題は克服してると見ても?」

 

「はい、磐田社長。……ふふ。また明日ここにいらしてください。私が本物の3Dライブをお見せしますよ」

 

 って、なんか勝手に話が進んでるけど……まぁ、はるか未来の超AIであるサブちゃん(サーニャ)がここまで言うんだから、技術的に十分可能なんだろうなって追及を控える。

 

「いいじゃないですか。僕も楽しみだしそれで行きましょうよ。真白さんもそう思うでしょ?」

 

「はい、常務……。私としては娘の我が儘に付き合わせる形になって恐縮ですが」

 

「なら決まりだな。中村さんの会社は株式会社カバー。VTuberプロダクションの名称はホロライブ。これで行きましょうか」

 

「ええ、磐田社長」

 

 うーん、なんだろうこの気持ち。こんなにも真剣にわたしの思いつきを検討される光景を見せらると、なんかとんでもないことをしでかした気分になってひどく居心地が悪い。

 

 こんなだからサーニャにも小心者と揶揄(からか)われるんだろうが……わたしに出来ることは自ら先頭に立ってVTuberの未来を切り拓くことだけだ。

 

 あの人の記憶(知識)を根拠にそうしたいと願ったんだから、わたしの夢を実現するため協力してくださる方々に申し訳ないと思うのは適当ではない。

 

 だから感謝しよう。いつか心から、きっと……。

 

「それではゆかりさんの提案は全面的に採用するということで……それと確認になりますが、ゆかりさんがレンタルVTuberとして紹介された方々が、すでに事務所で研修を受け、正式なデビューを目指していることはご存知ですか?」

 

「はい、その話は聞いていますが、何か問題が生じましたか?」

 

「いえ、ゆかりさんがご存知なのか確認したかっただけなので、特に問題は」

 

 コホンと咳払いしてわたしの質問に答えた中村さんが説明を続ける。

 

「社畜ネキさん改め、マリン船長こと蛍崎海音(ほたるざきあまね)さん。仲上ハルカさん改め、白上フブキこと春日マリナさん。進藤エリカさん改め、百鬼あやめさんこと篁蘇芳(たかむらすおう)さん。湊あくあさんこと皆川あずささん。兎田ぺこらさんこと宇多田琴子(うただことこ)さん。こちらの5名の方々は、N社公式VTuberプロダクションであるホロライブの0期生としてデビューして頂きますが、雇用形態は契約社員になります」

 

「契約社員?」

 

 これはまた馴染みのない言葉が出てきたな。

 

 わたしの()る企業勢のVTuberと言えば、事務所と契約した個人事業主という扱いだったと思うんだけど、その契約社員って正社員と何が違うんだろうか?

 

「ふむ、少しよろしいですか、中村さん」

 

「ええ、どうぞ、真白代行」

 

 と思ったら、中村さんに断りを入れたお父さんが説明してくれた。

 

「ゆかりがVTuberの皆さんに不利な契約にならないか、気にしているのは理解してるつもりだ。父さんも当初は事務所から業務委託を受けた個人事業主のような雇用形態を考えていたが、それだと税制上の不利があってな。特にデビューの翌年度は、予定納税と言って、前年度の収入に見合った所得税の先行納付を求められ、設備投資もままならん。よって契約社員という形を提案させてもらった」

 

「契約には毎年両者の合意が必要になりますが、VTuberの方には所得税や住民税、厚生年金や社会保険を差し引いた収益の7割をお渡しする予定です。経費も配信に使うものなら原則全額認めるつもりです。決して搾取を目的とした雇用形態ではありませんわ」

 

 お父さんと中村さんに説明してもらってよく理解できた。これはわたしが口を差し挟む問題ではないと。

 

「わかりました。わたしに異存はありませので、そのように進めてください」

 

 確かにわたしもN社と契約しているから無関係の話じゃないけど、これがサーニャの言ってた『わたしの意思を確認してから進めたい話』だろうか?

 

 ぶっちゃけ聞きなれない言葉があったから首をひねっただけで、中村さんたちが弱いものいじめをするだなんて、最初から疑っていない。

 

 まさか今の話じゃないよねってサーニャに目配せしたら、わたしにだけ判るように小さく首を振ってきた。どうやら本題はこれからのようだ。

 

「ありがとうございます。今後も現在行なっている一般公募がひとまず締め切りとなる12月20日以前に、ゆかりさんがVTuberとして紹介された方々は、0期生と同様の契約を提案させていただきます」

 

「鴨川さんたちのことですね。どうですか彼女は。ゆかりさんと仲良くやれそうですか?」

 

 中村さんが契約関係の説明を締め括るようにそう言うと、横から便乗したように磐田社長が尋ねてきたので答えることにした。

 

「すっかり馴染みましたよ。不幸なことがあったのに、そういうのを感じさせないところは素直に尊敬できますね。愛犬(ユッカ)とも仲良しですよ」

 

「それは良かった。いま事務所のほうで寮を用意していまして、来週の頭くらいには入居できると思いますので、それまで鴨川さんをよろしくお願いします」

 

 なんとも不思議な光景だった。磐田社長はまるで自分の親族であるかのように、鴨川さんのことをわたしに頼み込む。理由を聞いたらこの人はなんて答えるだろうか。さすがに困ってる人を助けるのは当たり前とまでは言わないかもしれないが、きっと事情を聞いたら捨ておけませんよくらいは言ってくれるだろう。

 

「わかりました。磐田社長が恨まれないように頑張りますよ」

 

 そう答えたら、「私が恨まれるのは構わないんですがね」とちょっと困った顔をした。それがおかしくって、笑い声を漏らさないようにするのは苦労した。

 

「まあ、磐田さんがスカウトした鴨川さんたちはいいんですよ。最大でも、あと六人ですか? 問題はそのあとなんですよね、中村さん」

 

 そんなわたしたちのやり取りを楽しそうに眺めていた宮嶋さんが、少しだけ言いにくそうにする中村さんを促した。どうやらサーニャの言ってた本題に入りそうな雰囲気だった。

 

「0期生は、弊社との契約についてよく考えたいとおっしゃったマナカさんを含めても最大で6名となり。そのあとは土曜から研修に入る予定の鴨川さんや、レンタル制度の利用を予約済みの方々がホロライブの1期生となり、来年初頭のデビューを目指す。そこまではよろしいのですが、現在行われている一般公募の総数が多すぎて、どうしたものかと……」

 

 ……なるほどね。サーニャがわたしの意思を確認したいって言ってた意味がよく分かった。VTuberの門扉を広く保ちたいって伝えてあるから、篩にかけるような真似はしたくないのか。

 

「具体的な総数はどれくらいですか?」

 

「昨夜の時点で2万通の応募がありまして、ある程度は書類選考や面接で選ばせていただくことになりますが……」

 

「そうでしたか。それはちょっと多すぎますね……。そういうことでしたら最初の募集は20人くらいまで絞っちゃっていいと思いますよ。ただし、今回はダメでも、また次の募集に応募していいって伝えて……本気なら、何度でも食らい付いてくるでしょうから」

 

 わたしが選考に理解を示すと、中村さんは意外そうな顔をするのと同時に感心するような様子も窺えた。

 

「20人か……現実的な数字だが、一度にデビューさせるにはまだ多いな。ゆかりはその点をどう考える」

 

「別に全員をRe:liveの2期生として売り出すことはないよ。VTuberはRe:liveだけじゃないんだから」

 

 今度はお父さんが意外そうな顔したので、わたしは自分の考えを整理しながら説明した。

 

「たとえばさ、契約社員って形だと、VTuberをやってみたいけど、いまの仕事を辞めるのちょっと……っていう人たちがいるかもしれないでしょ? ユッカのことでお世話になってる狛村さんみたいにさ」

 

「ふむ……たしかに狛村さんがいまの仕事を辞めるとは思えんから、そういう場合は契約社員という雇用形態が足枷になるか」

 

「他にもさ、会社勤めは性に合わないって人もいるだろうし、そういう人は研修が終わってVTuber用の機材を貸し出したら、株式会社カバー公認VTuberの肩書きを与えて自由にやってもらうとかさ。なんなら自前のVTuberの事務所を持ちたいって会社を紹介したり、何でもかんでもウチでやることはないと思うよ」

 

 わたしがこの問題に結論を出すように締めくくると、磐田社長が嬉しそうな顔をした。

 

「直接マネジメントするだけじゃなく、VTuberという人材を育成、供給することも兼ねるのか……やっぱり子供の発想は柔軟だね。どうだい真白くん。直前まで渋ってたけど、ゆかりさんの話を聞いて正解だったじゃないか」

 

「そうですね。それならうるさい人たちの注文もクリアできそうだし、良かったじゃないですか、真白さんも。毎日毎日しつこかったですもんね」

 

「うるさい人たち?」

 

 なんだろう、ただでさえわたしの所為で大忙しのお父さんに渋い顔させている困った大人が、宮嶋さん以外にもいるのかって思ったんだけど、違った。

 

「実は、3Gの件で味を占めたC社から再三の要請があってな。こちらの事務所が稼働したら、自分たちの会社も専属のVTuberを持ちたいから紹介してくれないかと言われてな。すでにゆかりの代わりに多額の広告費を押し付けられたから無碍にもできんが、どこからその話を聞きつけたのか、そういうことならぜひ当社もと、こちら寄りのメーカーから連日のように催促されて、本当にどうしたものかと……」

 

 はい、すみません。誰がどう考えてもわたしの所為だった。ごめんねお父さん、余計な仕事ばかり増やして……そしてごめんね宮嶋さん、同類以下の分際で恨めしいことを考えたりして。

 

「まぁ、その問題はゆかりさんのお陰で解決したからいいじゃないか。問い合わせたメーカーには俺のほうから言っておくよ。希望する子には紹介する方向で考えてるが、契約にはうちの法務も立ち会うって言っておけば、馬鹿をやるところも出てこないだろう」

 

「そうですね。あとは社長と常務が余計な仕事を増やさなければ、なんとか……」

 

 磐田社長に慰められてもあまり元気は出てこなかったようで、魔法使いの女の子と化したお父さんはしょんぼりしたままだった。これはいけない。わたしもしっかり謝らないと……。

 

「お父さん、ごめんなさい……わたしの所為で大忙しになって……」

 

「何を言うのかと思えば、それはハッキリと余計だな。確かにこの仕事はゆかりの願いから始まったものだが、いまはゆかりの手を離れて、もっと大勢の人間に委ねられたものだ。ゆかりが気に病むことではないさ。ただ……」

 

 わたしの思い違いを正すように、そして励ますように言葉を紡いだお父さんが、少しだけ申し訳なさそうに言い淀んで、中村さんのほうを気にし出した。

 

「ただ、アーニャのマネジメント業務は、ホロライブの正式な稼働をもってお父さんの手から離れることになった。後任の人事については中村さんに一任しているが……」

 

「はい、真白さんのおっしゃるように、ゆかりさんのマネジメントは弊社が引き継ぐことになりまして……最初にその話を伺ったときは、わたしが引き受けるつもりだったのですが、鶴見社長に弊社の社長職を打診されてそうも行かなくなり、後任は私の部下に任せることになりそうですが、少し問題が……」

 

「どんな人なんですか?」

 

 わたしが訊ねると、中村さんは微妙に悔しそうな顔になった。

 

「D2に入社二年目の娘で、名前は北上夏生(きたがみなつき)と言います。悪い娘ではないのですが、うちの社員らしく少し大雑把というか……本人は認めませんが、体育会系の社風に染まっておりまして。ゆかりさんのようなお嬢さまを任せるには、少々不安と言わざるを得ず……」

 

 うーん、それだけじゃどんな人か判らないけど……そもそもどんな人を付けられても文句を言える立場じゃないからね。ここはお父さんと中村さんの負担が軽減されることを喜ぼう。

 

「別にわたしはお嬢さまってワケじゃないから、どんな人でも構いませんよ。仮に変な人でも、まさか社畜ネキさんより変じゃないでしょうから、上手くやりますよ」

 

 わたしが戯けたように答えて見せると、中村さんはひどく不憫そうに納得したようだった。いや本当にすごいね、社畜ネキさんの説得力。

 

「そうですね。あの娘にはよく言っておきますから、何か問題がありましたら教えてください」

 

「はい、でも大丈夫ですよ。VTuberを始めてから色々と鍛えられましたから。この自信は、愛犬(ユッカ)に嫌われでもしないかぎり、そう簡単には砕けません」

 

「うふふ、頼もしいですわね。これからもよろしくお願いしますね、ゆかりさん」

 

「いえ、こちらこそ」

 

 VTuberの雇用形態と、事務所の運営方針。そしてわたしの後任マネージャーという懸念が片付いたからだろうか。中村さんとお父さんが目に見えてリラックスした雰囲気になり、会議はこれで終了かなと思った矢先に宮嶋さんが手を挙げてきた。

 

「すみませんが、ちょといいですか、ゆかりさん。そちらの話は終わったようなので、今度は僕の話を聞いていただけたらな、と」

 

 宮嶋さん個人のお願いとなるとちょっと怖いものがあるけど、磐田社長とお父さんに止める様子はないからそれはないと判断した。

 

「……どうぞ。VTuber以外の相談だと、お役に立てるか分かりませんが」

 

「いえ、サーニャさんには前もって相談したんですけど、実は宇宙人狼の件で相談があるんですよ」

 

 えっ、何その話……全然聞いてないんだけど? 

 

 思わずサーニャをチラ見したら露骨に目を逸らされた。さてはこやつ、宮嶋さんに話しかけられたことで頭が茹だって完全に忘れておったな。

 

「この辺りはC社の3Gと一緒ですが、ゆかりさんの配信に取り上げられたおかげで、いつ発売するのかという問い合わせが殺到しているらしく、このほど宇宙人狼の製品化が決定したんですよ。それに伴い、サーニャさんと権利関係を明確にしたいというのがまず一点ですね」

 

 権利関係って、ようするにまた売上の一部を受け取って欲しいって話だよね?

 

「……あのソフトはサーニャが作ったものですから、話は当事者同士にお任せします。それと宣伝費の話なら、事務所に寄付する方針でお願いします」

 

「うーん、無欲ですね、ゆかりさんは。3Gのときもそうだったんでしょ? 少しくらい欲をかいてもいいと思うんですけどね」

 

「だって、わたしからしたら、毎月のお小遣いでも使い道に困るくらいの大金なのに、いきなり桁違いの話をされても困ります。それにそういうのが普通だと勘違いしたら、ろくな大人にならなそうじゃないですか……」

 

「でもお父さんのことだから、内緒でこっそり貯金して、ゆかりさんが結婚するときにでも渡してきそうですけどね」

 

 宮嶋さんがのほほんと指摘すると図星なのか、お父さんが露骨に慌て出した。うん、魔法使いの女の子がお父さんの動きを追ってるから、表情とかギャップが酷いことになってるけど。

 

「まあ、家庭内の問題は後で話し合ってもらうとしてですね……それとは別に、ゆかりさんたちの配信用にホロライブ版の宇宙人狼を作ろうと思うんですよ。こちらは非売品で、キャラやマップはゆかりさんたちに合わせて一新したものをご用意させていただこうかな、と」

 

「えっ……いいんですか?」

 

「ええ、ですから1期生の設定が固まったら、早めに教えていただけると助かりますというのが二点目ですね」

 

 いやいや、どんな無茶振りをされるのかと思ったら、まさに掛け値なしの朗報である。思わず宮嶋さん大好きって言いそうになったけど、いま言っちゃうとお父さんの反応が怖いから後でこっそり伝えようっと。

 

「それで最後の三点目ですが、これを見てどう思います? 率直に思ったことを聞かせて欲しいんですが」

 

 なんて油断したら、まだ発売されてない『We U』の写真を見せられた。いきなり表示されたから驚いたけど、これ、どいうつもりで見せられてるんだろ?

 

「わたしの気のせいじゃなかったら、コントローラーに液晶がついてますけど、もしかしてこっちにもゲームの画面が表示されるんですか?」

 

「はい、普段はこちらが3DNSのようにタッチパネルとして機能するんですけど、ゆかりさんのお父さんがテレビを見たそうにしてたら、表示モードを切り替えてコントローラー単体でも携帯機のように機能するという、磐田さんの自信作ですね。ゆかりさんはこいつが発売されたらお父さんにねだりますか?」

 

 どうしよう……磐田社長の未来を識ってたように、わたしはこのハードが残念な結果に終わることも識ってるんだけど、それをそのまま伝えていいものか。

 

 でも伝えなかったことで、この二人ががっかりするのも嫌だったので、なるべくオブラートに包んで伝えることにした。

 

「据え置きと携帯のいいとこ取りっていう発想はいいと思いますけど、ソフト次第ですね。本当に面白そうなソフトがあるならどんなハードでも欲しくなりますけど、ないならただの箱ですから。それと見たところコントローラーが大きすぎて、わたしのような子供だと手が痛くなるんじゃないかと……」

 

 わたしとしては失礼にならないように伝えたつもりなんだけど、二人の反応はケチな予測を完全に超えてきた。

 

「ゆかりさんのいう通りだな。ソフトがなけりゃハードはただの箱とは、先代の教えそのものだ。俺たちはWeとDNSの成功で、間違った道を進もうとしてたのかもしれん」

 

「ええ、3DNSの立体視も目が疲れると不評ですしね」

 

「そうだな。遊びの幅を広げるための工夫は必要だが、それに囚われちゃいかん。なぁ、ミヤポン。ここらでソフト屋の本分に返るとしようや」

 

「磐田さんに言われるまでもなく、僕の本分はそっちですからね。ハードについてはお任せしますよ。とりあえず、ゆかりさんに指摘されたことを改善するところから始めましょうか」

 

 批判したつもりはないけど、問題点に気が付いたら素直に反省して改善しようとする二人の姿に、なんていうか応援したいという気持ちが湧き上がってくる。その想いに急き立てられるように口を開いたわたしは、ある意味一番ダメな提案をしてしまった。

 

「そういうことならサーニャも協力すると思いますよ。元々この子はお二人のファンみたいなものだし、今までは恥ずかしがって口も開けなかったけど、メールでこういうのを作っといてって伝えるくらいなら、頭もそこまで茹だたないで協力できると思うんですよね」

 

「その言葉を待っていました」

 

 するとここまで無言だったサーニャが立ち上がって、全力でアピールしてきた。

 

「どうかその話、是非ともこの私、サーニャことアレクサンドラ・タカマキにお任せを! N社の要請とあらば、ゆかりに次ぐ序列2位の命令と解釈して、どんな無茶振りでも全力で形にして見せます! ですのでどうか、どうかこの私にお任せください!!」

 

 この反応は予想してなかったのか、サーニャのわたししか知る由のない猛烈な熱意に、磐田社長と宮嶋さんは顔を見合わせて困ったように苦笑した。

 

「さあ、N社と私の共同作業で時間を100年ほどすっ飛ばして、無敵の未来へレディーゴーです!!」

 

 わたしとしてもサーニャ(サブちゃん)の悲願が達成されるんだったら、素直におめでとうって言ってあげたいんだけど、さすがにこれはよろしくない。

 

 わたしは忘れていなかった。この完全無欠な未来のスーパーAIは妙なこだわりを発揮したり、N社のお二人(ゲームの神さま)が絡んだりすると、ピンクの巫女さんでも滅多にやらないポンを連発するということを……。

 

「はい、そこまで。お疲れさまでした。また何かありましたら連絡してください。それでは」

 

 わたしは強引に割り込んでサーニャの演説を遮ると、取り残された面々にお別れの挨拶をした。そのまま返事を待たずにログアウトすると、しばらく迷っていたサーニャも無言でログアウトするが、直ちに抗議することも忘れなかった。

 

「理由を説明してください! ゆかりがせっかく機会を作ってくださったのに、どうして私がN社のために働くことを妨害したのですか!?」

 

「それなんだけど、会話のログは取ってある?」

 

「勿論です。私に抜かりはありません」

 

「それじゃあ自分の発言を検証してみて? なんなら未来のお仲間の手を借りても構わないから」

 

 わたしはすっかり冷え切ったお茶の残りを頂きながら、サーニャの検証作業を眺めた。うん、どんどん悪くなるね。サーニャの顔色。

 

「ゆ、ゆかり……私はなんということを……」

 

 うん、そうだね。途中から自分の正体を隠す気がなかったし、そりゃあそうなるよね。

 

「まあ、サブちゃんが大好きなことになると夢中になる性格なのは、サーニャのデザインを見せたときになんとなく察したけど……もうちょっとしっかりしてもらえると嬉しいかな? わたしが止めなかったら、今ごろツッコミの嵐だよね?」

 

「はい……本当に申し訳ありませんでした、ゆかり……」

 

 そして当然のようにどん底まで落ち込んだサブちゃん(サーニャ)にかける言葉が見つからない。

 

 いや、こういうときは言葉だけじゃ足りないのだ。こういときに必要なのは、言葉じゃなく、もっと──。

 

「ねぇ、サーニャの生体端末、今こっちに来れる?」

 

「? 座標指定を行えば1秒もかかりませんが……?」

 

「じゃあ実行して。はい、スタート」

 

 わたしの意図が読めない指示にサブちゃんが躊躇ったのは一瞬だった。本当に音もなく、サーニャの生体端末は背後の空間に実体化した。

 

 赤みがかった金髪(ストロベリーブロンド)をツインテールにして、メイド服で身を包んだ白人の美しい少女。本体との接続を切断しているのか、目蓋を閉じたまま、床から数センチを浮遊している生体端末を見つめながら訊ねる。

 

「これ、人間でいうところの五感ってある?」

 

「はい、ありますが……」

 

「じゃあ今すぐ起動して、そっちから話しかけて。はい、実行」

 

 もはや抗弁する気力もなさそうなサブちゃんを急かすと、サーニャはゆっくりと目蓋を開いて、床の上に着地した。わたしはそれだけ確かめると、問答無用でサーニャを抱きしめた。

 

「ゆ、ゆかり? いったい何を……?」

 

「いいからいいから、お母さんに任せなさい」

 

 それだけ伝えると、少し強引に屈ませたサーニャを胸に抱いて、そっと静かに背中を撫でた。

 

「あのね、サブちゃん。仮にサブちゃんが世界最高のぽんこつAIでも、わたしがサブちゃんを見捨てるとかないから」

 

「はい……」

 

「だからね、やらかしたからってそんなに落ち込まないの。今回は思い込んだら一直線のサブちゃんの性格を忘れてたわたしも悪いんだし、怒ってないからさ」

 

「はい、本当に申し訳……いえ、こういうときは、もっと別の言葉を使うんでしたね」

 

「そうそう。いつもありがとうね、サブちゃん」

 

「こちらこそありがとうございます。おかげで助かりました、ゆかり」

 

 傍目にはわたしより背の高いサーニャを前屈みにさせて、自分の胸に押し付ける意味不明な構図に思えるだろう。だがこのとき、わたしとサーニャの心は確かな繋がりを得た。触れ合う箇所から優しい温もりを感じる。

 

 この温もりこそ人の心だ。わたしはこの温もりを優しいと感じたが、サーニャはなんて感じてくれただろうか。

 

「サーニャって、本当に人間と変わらないんだね。髪もしっとりしてるし、艶もあって羨ましいな」

 

「私の時代に存在する人工物は、基本的に完全物質で構成されていますから、ゆかりがそのように感じるのも理解できますが……私に言わせればゆかりの持つ生命の輝きこそよほど美しい。僭越ですが、こちらから手を触れても?」

 

「うん、いいよ。どこでも好きに触りなさい」

 

「では失礼して……」

 

 何かと無理のある体勢になりながら、サーニャが遠慮がちに手を触れてくる。少しだけひんやりとした手のひらがわたしの背中に回される。

 

「と、もういいかな? ちょっとバランスが悪いんだけど……」

 

「いえ、できればもう少し、密着してギュッとしていただけると」

 

「わわ、そんなに押されたら──」

 

 視界がクルッと回転して仰向けになる。

 

 うん、まあ、あんな体勢で押されたらこうなるよね、という見本のようなものだ。

 

 咄嗟にサーニャが庇ってくれたから頭を打ちはしなかったけど、お互いにひどい格好だった。

 

 サーニャは胸元が大きく開いたメイド服の上が脱げかかってるし、わたしもわたしでブラウスのボタンが飛んじゃったし。

 

 こりゃあ見る人が見たら誤解は避けられないなって格好で、馬鹿みたいに見つめあってると、なんだかおかしくって訳もなく笑みがこぼれてくる。

 

「ゆかりさん、ただいま帰りました! 今夜の配信は──」

 

 なんて、最悪のタイミングで、鴨川さんがドアを開けたままの姿勢で立ち尽くした。

 

 言葉もなく、ただ時間が経つごとに冷や汗さんが浮かんでくる鴨川さんを見ていると、その脅威に晒さられているのが自分だけではないと知って奇妙に安心したんだけど、さて、なんて説明しようか?

 

 鴨川さんから見ると、半裸のサーニャがわたしを押し倒して、強引に服を脱がそうとしてるように見えるもんね。

 

 わたしとしては、見られたのが社畜ネキさんじゃなくてよかった、としか言いようがない。

 

 こりゃあ誤魔化すのに苦労しそうだと笑ったわたしは、とりあえずサーニャのメイド服を引っ張り上げて、設定通り慎ましい肢体を隠してやりながら、視線で相棒と口裏を合わせるのだった。

 

 

 

 

 

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