転生したら美少女VTuberになるんだ、という夢を見たんだけど?   作:蘇芳ありさ

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家なき娘の卒業準備と、グループ配信に秘められた真意

 

 

 

 

 

 2011年12月15日(木)

 

 

 18歳の女子高生にも拘らず胡座を搔き、妹を抱っこした鴨川さんを視界に入れることに耐えられないのか、隅っこで縮こまった弟は頑なに浴室の壁以外のものを見ようともしない。

 

 サーニャも遠慮したのか浴槽に腰掛け、邪魔にならないように気を使ってるけど、さすがにここまで大所帯となると我が家のバスルームもだいぶ手狭だ。

 

 鴨川さんの強い熱意とお母さんの仲裁で始まった今日のお風呂は、ご覧の通りツッコミどころが満載のバカ騒ぎになってしまったが……素直に楽しいなって、そう思うのである。

 

 もちろん、鴨川さんと一緒のお風呂は相変わらず気恥ずかしいが、今回は弟がいてくれたからね。本当に良い生贄、もとい精神安定剤になってくれたものだと心から感謝する。

 

 まぁ顔を真っ赤にしてる弟じゃないけど、恥ずかしいのは本当だ。弟と同様に自分の体を見られるのはへっちゃらだけど、鴨川さんの肢体(からだ)がちょとでも目につくと途端に申し訳ない気持ちになる。

 

 本当に相棒(サーニャ)のは平気なのに、なんでだ……?

 

 まぁ、わたしこと真白ゆかりは所謂(いわゆる)チート転生者らしく、前世に相当する男性時代の記憶も部分的に保持しているから、その辺が悪さをしているんじゃないかと睨んでるんだけど……実際には思春期(ただ)の気の迷いかもしれない。

 

 もともとわたしは、年上の兄姉(きょうだい)に憧れてるところがあったからね。

 

 こんなに美人のお姉さんに仲良くしてもらえたら、そりゃあ好きになるなというのは無理な相談っていうもので……そんな鴨川さんの生まれたままの姿を見てしまったら、お互いの性別とは関係なしに罪の意識も覚えるだろう。

 

 ようするにそんな悩みを抱えているわたしは、身体だけではなく心も成長の真っ只中っていうことかな?

 

 誰かに多感なお年頃と言われたら、いやいや、そんなことはないからって否定できても、ずっと子供のままでいられないのも確かな話だ。

 

 わたしもいつか大人になる。大人になって自立しないといけない。そんなふうに考えて寂しくなるあたり、わたしは本当にいい両親に恵まれたんだな……。

 

 というわけで、そんな両親をガッカリさせないためにも入浴後の一仕事である。

 

 とりあえず、脱衣所で騒いでいる弟と妹に身体をきちんと拭くように申し渡して、こっちの手伝いをしたそうに待機してるメイドとナイスバディのお姉さんを追い出しにかかり……そうして専念するのは、浴室内の再清掃である。

 

 あんないい両親にお風呂はもう少しきれいに使ってほしいと思わせたら、それだけで長女失格まである。さすがにピカピカに磨き上げるとまではいかないが、それに近いところまで仕上げるのが腕の見せどころ。

 

 未だに脱衣所からこっそり様子を伺う二人に顔を見せ、「すぐ終わるからリビングで待ってて」と伝えること数分後。自分の仕事ぶりに満足したわたしは身体に巻いたタオルを使って全身の水分を拭き取り、替えの下着と衣服を身につけ、ドライヤーを使って髪を乾かしたらみんなの待つリビングに向かい、そして目撃した。

 

 ソファーから身を乗り出し、こちらに向かって元気いっぱいに尻尾を振る愛犬の姿をである。

 

「ユッカぁー! よかった、元気になってくれたんだね!!」

 

 思わず大きな声を出して駆け寄るが、そんなわたしを出迎える家族の視線はなんというか生温かった。

 

 ユッカ自身もわたしなど見ておらず、むしろわたしの背後を気にしており……みんなの表情もまるでご愁傷さまと言わんばかりとなると……。

 

「ゆかり? ちょうどユッカのご飯ができたところだから食べさせてもらえる?」

 

「あっ、はい」

 

 やっぱりそうかと思いながら受け取って、いつもの定位置で食べさせる。もちろんユッカはソファーから降ろしてあげるときに暴れたりせず、待ての合図にきちんと従ってくれたから十分いい子なんだけど、しかめ面のサーニャの採点は辛辣を極めた。

 

「所詮は畜生ですね。空腹に我を忘れ、己が主人に礼を失するなど、メイドの風上にもおけぬ所業です」

 

「いや、ユッカはメイドじゃないんだけど」

 

 相変わらず妙なライバル意識から辛口の評価を突きつけるサーニャに答えると、分厚い毛皮に包まれたユッカの背中を撫でてやった弟が、わりと同意できる意見を口にした。

 

「まぁ母ちゃんのメシは旨いからな。今日は鶏肉の竜田揚げだってよ」

 

 添加物の類が嫌いなお母さんは、わたしたちのご飯がそうであるように、ユッカのご飯もトレーナーの狛村さん指導のもと完全に手作りである。愛犬の胃袋がしっかり鷲掴みにされたのも納得のいく話だ。

 

「ユッカって本当にお兄ちゃんそっくり。ほら、もうご飯しか見えてない」

 

「おれはそこまで食い意地が張ってねぇよ。というかむしろお前だろ? いつも待ちきれなくてよだれを垂らしてんのはよ」

 

「ちがうもん、みつるそんなことしてない」

 

 そう言いつつも不安になったのか自分の口元を確かめる妹に、弟はほれ見ろと言わんばかりに勝ち誇った。直後に頬を膨らませる妹と、即座に応戦の構えをとる弟。

 

 些細な軽口からケンカに発展しかける幼い二人に呆れつつ、仲裁の必要性を認めたわたしが口を開くよりも早く、その前に立ちはだかったのは湯上がり美人の鴨川さんだった。

 

「おいおい、食い意地選手権を開催するならスバルも黙っていませんよ? 自慢ではありませんが、この不肖鴨川スバルは、すでにお母さまの料理に想いを馳せてソワソワしていますからね」

 

 自分で言っておいて直後に爆笑する鴨川さんを前に渋面を保つのは難しい。三人同時に吹き出し、鉄面皮のメイドですら感心したように口元を緩める。

 

「争いなど所詮は同レベル帯でしか発生しませんからね。自らの格の違いを誇示することで争いを事前に収める。見事な仲裁かと」

 

「まあね、スバルは三杯目のどんぶりもそっと出さず、お母さまに業務用の炊飯器をポチらせた豪の者ですからね。なんて言われても仕方ありませんよ」

 

 わたしが鴨川さんのことをすごいなぁと思うのはこういうところだ。

 

 基本的に周囲を自分のペースに巻き込む術に長けているが、相手によっては自分自身を笑いの種にもできる。鴨川さんに振り回された人が感じるのは、気持ち良かったという爽快感だけなのだ。楽しそうに笑い転げた下の子たちは、ついさっきまでケンカしてたことも覚えていないだろう。

 

「それほんとに自慢になんねぇのな。おれよりよく食う女なんて初めて見たよ」

 

「さすがのお兄ちゃんも、スバルちゃんには敵わないよね。みつるもあんなにたくさん食べないと大きくなれないって分かって、ちょっと複雑……」

 

「いやぁー、さすがにスバルの場合は特別ですよ。スバルはこれでも運動部の一員でしたからね。今でも通学はダッシュが基本で……止めたら確実に太ると、内心恐々ですわ」

 

「まー、あんなに食ってたらな……走るのはいいけどあんまり脂肪を揺らすなよ」

 

「おい、いまスバルのどこを見て揺らすなと言った?」

 

「あー、お兄ちゃんのエッチ! お姉ちゃんとサーニャちゃんのはあんまり見ないくせに、スバルちゃんのは気になるんだぁー!?」

 

 腕まくりをする鴨川さんに失言を悟った弟が慌て、妹が楽しそうにはしゃぐ。

 

「スバルも見るなとは言わん。むしろ見ろ。だが女の胸を脂肪のかたまりと言ったのは許さん」

 

「ギブギブ! それに脂肪のかたまりとか言ってねぇよ! 女なんだから、少しは人目を気にしろって言っただけで……!!」

 

 遠慮なんて欠片もなく、笑顔で関節技を仕掛ける鴨川さんを見て観念する。やっぱりわたしはこの人のことが好きだ。

 

 底抜けに元気で明るい笑顔のお姉ちゃん。鴨川さんはわたしだけじゃなく、下の子たちだってこんなにも慕っている。

 

 でも……そんなお姉ちゃんと一緒にいられる時間にも限りがある。

 

 お父さんが帰宅した夕食の席で、お母さんのご飯しか目に入らなかったことを思い出した愛犬が足元でしきりに媚を売ってくるなか、卓上の話題に上ったのは鴨川さん本人が切り出した近況報告だった。

 

「というわけで、サーニャさんの紹介でなんとか新居を確保できる運びになりまして、ようやく家なき娘を卒業できそうなんですよ」

 

「そう、それはよかったわね……サーニャさんもありがとう。わたしからもお礼を言わせてもらえる?」

 

「恐縮ですが、私は大したことはしていませんよ。偶々、合衆国が日本に滞在する政府高官のためにこの近くに確保した物件の空き家に心当たりがあり、偶々、合衆国大統領とメールでやり取りをする伝手があっただけですから」

 

「どんなツッコミ待ちだよ。公私混同もいいところだし、それってぜったい偶然じゃねぇだろ? なぁ、父ちゃん?」

 

 二回も偶然を強調して、どんな家なんだろうと心配になるような話をするメイドに弟が鋭く切り込むが、長男に同意を求められたお父さんは「うむ、まあ、いろんな意見があるな」と具体的な言及を避けた。

 

「ねぇお姉ちゃん、どうしてお父さんは困ってるの? お母さんに怒られたわけでもないのに……?」

 

「んー、お父さんはね、色々と責任のある立場だから、あんまり軽はずみな発言はできないんじゃないかな?」

 

 とりあえず常識的な社会人であり、家庭人でもあるお父さんに背負わせるにはこの爆弾は大きすぎる。

 

 合衆国の要人でもあるメイドを自宅に招き入れた責任から、お父さんの面目が立つように話を纏めたけど……まったくわたしの相棒(サブちゃん)ときたら、サーニャの経歴に凝るのも程があるでしょ?

 

 本人はLive2Aや自動翻訳といった、各種ソフトの出処に説得力を持たせるためって言ってたけど、ぜったい内心ウッキウキでサーニャに擬似チート転生ライフを送らせてきたよね。お母さん(わたし)はお見通しなんだから。

 

 露骨にホッとしてみせたお父さんにだけ判るように軽く頭を下げると、この件に関してはサーニャに振り回されたであろう鴨川さんがしみじみとぼやいた。

 

「いやスバルもですね、こんな自分を拾ってくださった磐田社長や、とっても親切にしてくださったみなさんは当然として、サーニャさんにもね、心から感謝しているわけなんですよ。本当に一時期は卒業目前の高校を中退して、スバルも今すぐ働かにゃいかんと自分を追い込んでるところがありましたから。家族ともども、以前よりよっぽどいいお家で暮らせるようになるわけなんですし、そりゃあ感謝するのは当然なのですが……もう少しだけスバルたちの身の丈にあったお家を紹介していただけたらなぁーと……」

 

 まるで今からでも再考の余地はないものかと、チラチラとメイドの顔色を窺う鴨川さん。合衆国が政府高官のために、高級住宅地として有名な小金平に確保したとなると、やっぱり半端ない豪邸なんだろうな。

 

 わたしもあんなに大きなドッグランを建てられる、庭付きの一戸建てに住まわせてもらっておいてなんけど……根は庶民なので、豪華すぎると逆に落ち着かないという小市民根性は理解できるつもりだ。ならば……。

 

「ねぇ、そういうことなら小金平のお家は仮の住居にして、近くに手頃なお家を建てるっていうのはどうかな? ちょうどいいことに、今なら何に使ったらいいか判らないお金が20億円くらいあるから──」

 

「──とりあえず決まった話にウダウダ言うのは女らくないと、スバルはそう思う次第でありまして」

 

 わたしとしては絶妙の助け舟を出したつもりなのに、まさかのスルー!?

 

 鴨川さんってばこの程度の川幅なら問題ないと言わんばかりに、水面を蹴って向こう岸に行っちゃったんだけど……?

 

「それで、もうご家族と入居する日は決まってるの?」

 

 そんなわたしにクスリと微笑(わら)ってみせたお母さんが、向こう岸の鴨川さんに訊ねる。わたしのせこい魂胆を見抜いたかどうかはさておき、心に恥じるものが何もない鴨川さんは、屈託のない笑顔で「そうですね」と自分の考えを整理しているようだ。

 

「引き渡しはいつでもできるそうですが、ちょうど両親も仕事に復帰したばかりみたいなので……まだ本決まりではありませんが、今度の土曜に内装を確認したら、足りない家具を買い集めて、日曜には新居に移れるよう調整するとのことですが……」

 

 この辺り、引越し一つとっても火災で自宅を失った鴨川さんの事情は複雑だ。単純に引越しを得意とする業者さんに連絡すればそれで解決とはならない。

 

「大統領……いえ、知人の話によれば、最低限の家具は備え付けられているそうですが……」

 

 サーニャの話によれば洗濯機や冷蔵庫、主寝室にベッドくらいはあるようだけど、それ以外の家具がほぼ全焼した鴨川さんのご家族は、自宅の焼け跡から持ち出せた荷物を手に移り住んでから、足りない物を発注しなきゃいけないわけだ。はたして鴨川さんのご家族が落ち着いた生活に戻れるのはいつの日か……。

 

「火事で持ち出せた家具が少ないとそうなるだろうけど、大変だわ。……ねぇあなた、なんとかしてやれない?」

 

 うん。気持ちは分かるけど、お母さんって鴨川さんのことを親戚のお嬢さんとしか思ってないよね。無茶振りされたお父さんはだいぶ苦しそうだったが、それでもその口から鴨川さんを突き放す言葉は出てこなかったった。

 

「む……そういうことなら事前に新居を確認して、不足している家具類をご家族の方に報告、相談の上で、不足しているものを手配することはできるが……」

 

「いえいえ、幸い親戚一同が協力的で人手には困っていないようですので、ここはお気持ちだけ有り難く」

 

 みんながみんな鴨川さんたちのことを心配して、力になろうとしている。そう答える鴨川さんの眼にも熱いものが浮かんでいて、こっちまで涙脆くなりそうだ。

 

「本当にお世話になりました。このご恩は不肖鴨川昴、一生忘れません」

 

 そんなことを言うもんだから下の二人も感動しちゃって……もうね、弟の箸から落ちた竜田揚げをユッカが口を付ける前に拾いに行ったら、テーブルに頭をぶつけちゃったよ。

 

「ふーむ……ここでその好意は恵まれない誰かを目にしたときこそ返すべきだと言うのは簡単ですが、鴨川さまのお気持ちは分かるつもりです。実際に困窮して苦しんでいらしたからこそ、ゆかりたちご家族の親切が身に染みたのでしょうから」

 

 なんてもっともらしいことを口にして満足そうに首肯したメイドだけど、こんな話の最中なのに「実は私もそろそろ自宅に」と切り出さないあたり、追い出されでもしない限り居座る気満々で少しだけおかしくなる。

 

「そうね。でも忘れないでちょうだいね。困ったことがあったらいつでも頼っていいんだから」

 

「そうだぜ、スバル姉ちゃん。おれたちは頼りにならないかもしれねぇけど、それでもスバル姉ちゃんが困ってたらいつでも頼っていいんだぜ」

 

「みつるも大したことはできないけど、スバルお姉ちゃんの力になりたいって気持ちだけはホンモノだから……」

 

「まぁお前たちの気持ちも分かるが、先走るのはやめなさい。鴨川さんには鴨川さんの都合があるわけだし、あまり押し付けがましくなってもな……」

 

 そして竜田揚げの前で正座してる愛犬に、人間の食べ物を口にしないようにあらためて注意してから顔を上げると、頼りになるはずのお父さんが随分と小さく見えた。

 

 常識的な事柄なら無類の強さを発揮するお父さんも、磐田社長に寮の買取手続きを早めるよう催促された話をお母さんにぼやいたら、その日の夜にはご両親の承諾を得る前に家なき娘を預かってしまったという非常識な事態となり、対応に苦慮する様子が見てとれる。

 

「とりあえず……ご親戚の方々のお世話になっている鴨川さんのご家族が、可能なら1日でも早く地に足をつけた生活に戻りたいと願っていらっしゃることは理解していますが、性急に進めなければならない話でもないはずです。先ほどのゆかりではありませんが、当家には経済的な余裕もあります。社長の了解もありますし、鴨川さんのご両親さえ承諾して頂けるなら、今後も援助を惜しむつもりはありません」

 

 それでも常識的な立場から援助しようとするお父さんも、若い娘が野宿まがいの生活を送っていると知って放っておけなかったお母さんも、体当たりの関係を築いたパワフルな友人との別離に涙ぐむ弟も、いつもの我が儘を堪えて応援する妹も、みんながみんな、誰も間違っていない。

 

 みんな他人(ひと)の痛みを自分のことのように感じることのできる自慢の家族なのだ。

 

「ねぇ、みんな考えすぎて頭でっかちになってない? 鴨川さんが困ってたら困ってたらって言うけど、今の鴨川さんが一番困ってる気がする」

 

 そんな家族がいつになく深刻になっているものだから、わたしは自然とこう言うことができたのかもしれない。

 

「鴨川さんの新居の小金平はそんなに離れてないんだから、その気になったらいつでも会いに行けるんだし、そのときに鴨川さんが困ってそうだったら、あらためて話を聞いてあげればいいんじゃないかな」

 

 わたしが拾い食いを我慢した愛犬を抱き上げて食卓に戻ると、なんていうか感動的な雰囲気を台無しにされたように、それでいてどこか楽しそうに失笑してみせたお父さんが話を締めくくった。

 

「まぁ、ゆかりの言うとおりだな。実は父さん、しんみりした空気に困ってたんだ」

 

「あー、実はスバルもです。なんか薄幸のヒロインになったみたいで、内心そんなキャラじゃねぇだろって頭を抱えてたんですよね」

 

 お父さんのちょっと情けない告白と、どこまでも明るい鴨川さんの自虐ネタに食卓が笑いに包まれる。

 

 いつもの食卓、いつもの家族の姿に、わたしは明日もいい日になるだろうと確信するのだった。

 

 

 

 

 

 さて、まだ見ぬ明日への予感はさておき、夕食後の恒例行事と言えばVTuber(アーニャ)としての配信である。

 

 しかも今宵は念願の視聴者参加型の3Gであり、サーニャ自ら刷新したYTubeの新機能を駆使するとあらば、DScord(ディスコ)での打ち合わせにも気合が入るというもの。

 

 ちなみにDScordの参加者は4名。わたしとサーニャと鴨川さん(スバルちゃん)、そしてアーリャ(マナカ)であり、残念ながらパソコンの前であくびをしている愛犬はそのなかに含まれない。

 

「そう……つまり今夜は別々に配信しなきゃいけないわけね?」

 

 オンラインのプチ会議で、ピッカピカの3DNSを胸に抱いたマナカのLive2Aがしょんぼりと肩を落とす。

 

「今日はアーニャたちと……ええと、もんすたぁはんたぁ、とらいじぃだったわよね?」

 

「うん。でも日本での正式名称は怪物狩人3Gだから、できればそっちで呼んでほしいな。版権とか色々あるみたいだしね……」

 

「? よく分からないけど、そのゲームを初めて一緒に遊べると思って、教会のお手伝いを頑張って貯めたお小遣いで、これを買ったんだけど……」

 

 これ、ときれいな緑色の3DNSを手に涙ぐむ。

 

 ううむ。教会のお手伝いを頑張ってることは知ってたけど、まさか一緒に遊ぶゲーム機を買うためだったとは……。

 

 なんだろう、まるで楽しみにしていた初めての遠足の当日に風邪をひき、ガン泣きする妹を布団に寝かしつけたときと同じ罪悪感がする。

 

「ねぇ、サーニャ……さすがに可哀想だから何とかしてやれない?」

 

「私もここまで星の巡り合わせが悪いと何とかしてやりたいと思いますが……ここでお二人が一緒に遊ぶことを認めたら、参加できる視聴者の枠が大幅に減りますからね」

 

 そうなのである。わたしと一緒に遊びたいがために教会のお手伝いを頑張ってくれたマナカには悪いけど、今夜の主役はオンラインのマルチプレイでわたしたちと一緒に遊んでくれる視聴者(リスナー)なのだ。

 

 もともとマナカはアーニャ(わたし)の友人枠であり、正式にカバーさんと契約したホロライブのVTuberではないから、これまでもスバルちゃんや1期生のみんなを紹介するときなど、色々と遠慮させちゃったから何とかしてあげたいんだけど……。

 

「まぁまぁ、そういうことならゆかりさんのお家に遊びに来ればいいんですよ」

 

 ありもしない知恵を絞ろうとするわたしたちとは対照的に、底抜けに明るい笑顔の鴨川さんは何の迷いもなく断言した。

 

「もともと配信用のパソコンをお持ちなのに、頑張って貯めたお小遣いで外でも遊べるゲーム機をお買いになられたということは、当然そうした用途も想定していますよね?」

 

「え、ええ……いつかアーニャ(ゆかり)と肩を並べてゲームをできたらいいなって、昨日なんて枕元にこれを置いて寝たくらいだもの」

 

「いいですね。欲しいものは自分のお小遣いで買う。実にいいと思います」

 

 うんうん。なんか最近ね、わたしの金銭感覚が狂いそうになる話ばっかりだったから、マナカの素朴な庶民感覚、わたしもいいと思います。

 

「そう言われると照れくさいわね……。いつも使ってるパソコンは教会の備品だから外に持ち出すのを禁止されて、仕方なくそうしただけなのに褒めてくれるだなんて、なんだか気恥ずかしいけど……でもありがとう。ゆかり、大空スバルさんってとっても善い人なのね」

 

「うんうん、自慢のお姉ちゃんだよ」

 

 共通の話題で盛り上がるわたしたちに「おい、やめろよ」と爆笑してみせたスバルちゃんが折衷案を提示する。

 

「まぁスバルの話はさておき、マナカさんの気持ちは分かりますので、ここは今日の配信は個別で行う代わりに、お二人が冬休みになったら存分に遊んで頂くというのはどうでしょうか? ゆかりさんのご家族はみなさんとっても親切ですから、マナカさんの来訪を快く歓迎してくれると思うんですよね」

 

 するとどうしたことだろうか? マナカってば途端に仰天して、わたしとサーニャの顔を交互に見比べながら訊いてくるではないか。

 

「いいの? わたし、ゆかりの家に遊びに行っても……?」

 

 なんだろう……そこまで疑問に思われると、何か事情があるんじゃないかと確認したくなるが、マナカがチラチラと顔色を窺っているサーニャときたら相変わらず素知らぬ顔だ。

 

「うーん、なんか警備の人が困ったりしちゃうとか、そういう問題はある?」

 

 わたしが訊ねると、サーニャは「いえ、来客ぐらいで困惑するような警備会社とは契約していませんので」とすっとぼけたが……なんだろう、今のサーニャはわりと地の部分が出てるような気がする。

 

 なんというか、頭を撫でても構わず寝ている愛犬を本気でライバル視しているときの、かなりしょうもない部分だけど……もしかしたらアレか? ユッカが主従関係のライバルなら、アーリャは友人関係のライバルとか、そういう子供っぽい理由か?

 

 ……まったくサーニャ(サブちゃん)ときたら、いつになっても甘えんぼさんなんだから。でもそういうことなら確認するのはこの子を安心させてからにしようと、見えないところで手を握る。

 

「マナカはわたしの友達なんだから、自宅に遊びに来てもいいよね?」

 

「……私は最初から反対しておりませんので、どうぞお好きに」

 

 するとサーニャはかなり困っている様子だったが、なんで困ってるかまでは読み取れなかった。

 

 うーん、気になるけど、8時まで30分を切って時間的にも余裕がない。ここはサーニャがマナカ(アーリャ)に含むとこがないことを確認できただけでもよしとするか。

 

「じゃ、そういうことだから、お互い冬休みに入ったらさ、遠慮しないで遊びにきてくれると嬉しいかな」

 

 とりあえず忘れないうちにそう伝えると、マナカの呼吸が怪しくなった。利用者の表情や身体の動きを再現するLive(ライブ)2(トゥ)A(アニメーション)は、彼女の興奮ぶりを正確に伝えてきた。

 

「い、いいの? ほんとにいいの?」

 

「うん、両親の許可も取っておくから、なんだったら泊まっていってもいいんじゃないかな?」

 

「う、うん、そうする。本当に今さらダメって言っても聞いてあげないんだからね」

 

 コロコロとよく変わる表情に裏表のないリアクション。これだけで彼女の素直な人間性が分かろうものだ。

 

「その代わりうちに来たら弟と妹に懐かれることを覚悟するんだね。もちろん、この仔にもね」

 

「えっ? ゆかりの弟さんたちに懐かれたら何か問題があるの?」

 

「そりゃあこの不肖大空スバルも随分と懐かれまして、思わず涙腺がウルッとするようなことを言われるようになりましたからね。おかけで盛大に勘違いしたスバルは、自分のことを薄幸のヒロインと勘違いして醜態を晒したばかりですよ」

 

「ええ、参ったわね……わたしそういう話にまるで耐性がないのよ」

 

「あー、それとたぶんお風呂も一緒だと思うから、そっちのほうでも覚悟しなきゃね」

 

 そんなマナカが打ち解けるまで時間がかかるわけがなく、わたしたち三人はまるで十年来の友人のように家族の話で盛り上がった。そんなときだった。

 

「ンンッ」

 

 わざとらしいほどの咳払いと、心底バツが悪そうな表情に何事かと目を瞬かせる。

 

「……ここで口を挟むと皆さまの仲を妬いているように思われるかもしれませんが、配信まで時間がありません。説明を続けさせていただいても?」

 

 本当に申し訳なさそうに懇願するサーニャに、わたしたち三人は異口同音に「はい、よろしくお願いします」と赤面するのだった。

 

「ご理解いただけたようで正直助かりました。さすがはこの時代のVTuberと申しますか、線路を必要としない暴走列車と、撮れ高の神に愛されたリアクション芸人に、『震撼』の固有結界持ちを同時に相手取るのは御免ですからね」

 

 内心で「誰のことを言ってるんだ?」とお互いに視線を飛ばして確認するが、ここで余計なことを言ってしまうと、なんの説明も受けられないまま見切り発車になりかねない。

 

 わたしはそういうのにも慣れているが、他の二人が苦労するのは目に見えているので、線路を必要としない暴走列車という評価がわたしのものじゃないことを祈りつつグッと我慢。

 

「さて、今夜はそれぞれ個別に枠を取って配信してほしいと申し上げましたが、孤立無援で放り出すつもりはありません。もしそう思われているなら心外です。今回はYTubeの新機能であるグループ配信の利便性を周知するために、仕方なくそうしたのだとご理解いただければ幸いです」

 

 しみじみと嘆いてみせたサーニャがようやく一息つけたようにいつもの教鞭を手にする。表示されるのは、こちらもいつもの配信画面に少し手を加えたものだ。

 

「まずグループ配信機能とは、こちらの『アーニャちゃんねる』のチャンネル登録一覧から、大空スバルさまの『スバル⭐︎ちゃんねる』をクリックすると、共同配信者の申請を行うと表示されましたので、こちらもクリックして……次に『スバル⭐︎ちゃんねる』のチャンネルを表示すると、先ほどの『アーニャちゃんねる』からの共同配信者申請を承認するか訊かれましたので、こちらを承認。これで両者のチャンネルは共同配信者としてグループ配信が行えるようになりました」

 

 すでに概要を把握しているわたしは別にして、今回が初耳となる二人は耳慣れない言葉を消化するのに手間取っているようだが、口に出しては何も言わなかった。

 

 別にサーニャがピリピリして怖いとかそんなんじゃなくって、むしろだいぶ参ってるようだから、スバルちゃんも「サーニャさん、星マークは発音しないんすよ」って言いたいのを我慢して普通に気遣ってるのだ。さすがスバルちゃん、もう大好き、と寝返りを打った愛犬のお腹を撫でる。

 

「そしてマナカさまの『ドジっ娘聖女の駆け込み寺』も同様の処理をして、お三方が『グループ配信を有効にする』をオンにしたときの実際の配信画面がこちらです」

 

 うん、マナカも「なにそのチャンネル名!? というかそんなチャンネル作った憶えないわよ!?」って言いたいのを我慢してる。ものすごく我慢してる。大好きだからもう少し頑張ってね?

 

 一見、なんの変哲もないアーニャの配信画面だが、よく見るとおすすめ動画や関連動画が(勝手に)表示される場所に、スバルちゃんとマナカの待機画面が表示されている。音声は混乱を避けるために二人の配信画面をクリックしない限りオフにされているが、代わりに利用者の母国語による字幕が添付されるとのことなので、おおよその流れは把握できるだろう。

 

「そしてグループ配信の最大の利点は、いつでも合流してコラボしたり、終わったらいつでも分離して単独配信に戻れることです。もちろんコラボする気がなければソロのままで結構ですし、ネタバレを防ぐなどの理由で、視聴者サイドのグループ配信動画をオンにしたまま、こちらの配信画面のみ一時的にソロと同じにすることも可能です」

 

 サーニャが実際に再現して、みんなで一緒に挨拶してからそれぞれ個別の配信に戻る架空の動画を表示する。

 

 なんというM人狼シリーズの配信支援システム。これなら全員で挨拶したら、ネタバレ防止に他の子の画面をこっちだけ見えないようにするのも容易だし、緊急会議のたびにミュートにしたり解除したりの混乱もない。

 

「──これ、すごく便利ね。わたしも参加したM人狼のときにサーニャさんが使ってたシステムの応用だと思うけど、これなら一回ごとにみんなで集まって感想を言い合っても混乱しないと思うわ」

 

「うん、あのときは手探りの配信だったからだいぶ手こずっちゃったけど、これならね」

 

 やはり考えることは一緒なのか、感動のあまり不満を丸ごと飲み込んだマナカに答えると、サーニャが更なる利点を補足した。

 

「まあ大規模コラボでも便利ですが、普段の使い勝手も悪くないはずですよ。これならコラボのためにスケジュール調整をしなくても、偶々、同じゲームをしているのを見かけたという理由で突発的なコラボも可能ですから」

 

 もしかしてマナカのことが苦手なのかなって思わないでもなかったけど、それにしては随分と機嫌が持ち直した。上機嫌の理由は思わぬ絶賛に技術者の自尊心をくすぐられただけではないだろう。みんなのために心を砕いた工夫を正確に読み取ってもらえたことがやはり嬉しいのだ。

 

「サーニャさん」

 

 と、そこでこれまで沈黙を守っていたスバルちゃんが口を開いた。気のせいか瞳が潤み、その声も日頃の重低音は鳴りを潜め、心なしか上擦っているようにも思える。

 

「ありがとうございました。これはスバルたち後発のVTuberのために実装してくれたシステムですよね」

 

 今の時点でそこまで読み取ってもらえると思わなかったのか、サーニャが驚きに目を剥く。わたしの隣に座る本人も微かに震えて口元を押さえ、わたし自身もスバルちゃんの中の人である鴨川さんの真価を測りかねていたことを恥じた。

 

「どういうことなの……?」

 

 そんなわたしたちに囲まれて困ったように口を開いたのはマナカだった。

 

 いや、説明しないわけにはいかないけど、なんでそれをわたしに訊くかなぁー。

 

 微妙にわたしの口からは説明しにくいことなのに、マナカときたら「ねぇ、ねぇ」と重ねて促してくる。こういうところがポンコツ属性というか、ドジっ娘聖女たる所以なんだろうなと呆れていたら、見兼ねたスバルちゃんが代わりに説明してくれた。

 

「ええと、つまりですね……マナカさんはアーニャさんとスバルのライブ配信が同じ時間帯にやっていたら、どちらを視聴しますかって話ですよ」

 

「えっ……? それはスバルさんには悪いけど、やっぱりゆかりのアーニャよ。友達だし、当然でしょ……って、それがどう関係するのかしら?」

 

 スバルちゃんの指摘は見事にわたしたちの懸念を明らかにするものだったが……さすがマナカだ。ここまで言われても何のことか判らないようで、不思議そうに首をひねる。

 

「……ようするにアーニャさんの視聴者(リスナー)さんも、マナカさんと同じ判断をするってことですよ。アーニャさんとスバルの配信が同時にやっていたら、アーニャさんの配信を優先して、スバルの配信はあとでアーカイブを確認してもらえたら御の字……でもそれが常態化したらさすがに厳しいですよねって話ですよ」

 

「…………なんで?」

 

 その言葉にわたしは、温厚な鴨川昴(スバルちゃん)という女の子が初めて怒る光景を目にした。ドンッという机を叩く音に、わたしとサーニャが咄嗟に耳を塞いだ。

 

「ポンコツかよお前はッ!? 仮にもこっちは商売としてVTuberをやってるんだ!! VTuberはアーニャさんだけで十分と思われたら、そのうちホロライブだって潰れるわッッ!?」

 

「ごっ、ごめんなさいミカエルさま!?」

 

「キャウンッ!?」

 

 なんという物理的な衝撃をともなった咆哮(バインドボイス)──思わず両手でガードを忘れた愛犬が悲鳴を上げ、咄嗟に手を差し伸べたわたしも巻き添えを喰らった。

 

「あっ、すみません。いきなり大きな声を出してしまって……でもそういうことなんです。現状でVTuberのファンと言えば、アーニャさんのファンなわけですから、そういう人たちにスバルたちのファンになってもらうためには、まず見てもらえるようになるところから始めないといけないんですよね」

 

 あまりの惨状に謝罪したスバルちゃんに応える声はなく、サーニャがこの話を締めくくるまでに貴重な時間が無為に流れた。

 

「言いたいことはスバルさまにほとんど言われてしまいましたが……アーニャの演者(ライバー)であるゆかりは、まだ小学生という都合上、夜の8時から最大で10時までという、毎日決まった時間に配信していますが……この時間帯はテレビで言うならゴールデンタイムという、最大限の集客が見込める枠組みですからね。現状、あれほどまでに人気が加熱しているアーニャは、事実上、その枠組みを独占しているわけでありまして……そこに他のVTuberが食い込むのは、スバルさまたちホロライブのVTuberでも容易ではない。そこにゆかりが配慮して活動を自粛したら、今度はスバルさまたちが叩かれる要因にもなり得る。よってゆかりの後輩たちが正式にデビューする前の今の段階で、可能な限りスバルさまたちの導線を増やすためにも、今回のグループ配信は重要な試みだと理解していただけたでしょうか、マナカさま……」

 

「あっ、はい、とてもよく理解できました……それとわたしの無神経な発言で場の空気を悪くして本当にごめんなさいッ!!」

 

 骨折り損のくたびれ儲けとはこういうことを言うのだろうか? 目を回して気絶した愛犬を抱きしめて、ぐったりと疲れきったサーニャの説明を聞いていると本当にそう思う。

 

「いえいえ、スバルこそ短気を起こして申し訳ありませんでした。……しかしさすがは撮れ高の神に愛されたドジっ娘聖女。今のやり取りを笑えるように纏められたら、きっと大成すると思うんですけどね」

 

「わたしの神さまは撮れ高の神さまじゃ……ううん、何でもないの」

 

 あらゆる試みが裏目に出たM人狼でも、際限のない手札のお代わりに涙目になったUNO対決でも、途中で投げ出さなかったマナカは本当にガッツのある女の子なのだ。どうか今回の『震撼』の固有結界の炸裂にもめげず、今後も線路を必要としない暴走列車に乗車して世界の果てまで頑張ってほしいところだ。

 

「まぁ色々あったけど……配信まであともう少しあるから、それまでに少しでも英気を養って笑顔で配信しようね」

 

「あー、それじゃスバルは割れたグラスを片しておきます」

 

「わたしも今のうちに司祭さまに謝っておくわ……今ので本日3回目」

 

 何をやらかしたのか不明だが、どこもかしこも酷いことになってるなぁと、ようやく息を吹き返した愛犬を抱きしめる。

 

 気絶して目を回すほどの被害を受けたのに、目を覚ますと真っ先にわたしの健在を確認して、嬉しそうに尻尾を振りながら顔を舐めるユッカの愛らしさときたら、壊滅的な被害を自力で回避してわたしを介抱してくれたサーニャに劣るものではない。

 

 とはいえティ◯レックスもかくやという高周波が炸裂したばかりだ。サーニャを構成する機器も不調を免れなかったようで、まだだいぶ辛そうにしている。

 

 今回は思わぬトラブルとサーニャの意外な不調──スバルちゃんの雄叫びもあるが、それ以外にも言い出せずに黙っていた気配もあり、本人に気後れしているところがあったので、実は大事な打ち合わせを半分ぐらいしかできていない。

 

 今夜の視聴者参加型の3Gは、未来のVTuberがオンライン上に建てた自分の部屋を公開して、視聴者に入ってきてもらうよくある形式ではない。

 

 一人当たり三つの枠に入ってくるお客さんは、あの社畜ネキさんを輩出したという魔窟のような匿名掲示板でサーニャ自ら募集を掛けたという、歴戦の猛者たちである。

 

 わたしにとってはいつものことだけど、さて、あの二人は上手くやれるのだろうか?

 

 配信の直前まで大事な友人たちの帰還に気を揉みながら、わたしは未来の友人たちの来訪を待ち侘びるのだった。

 

 

 

 

 

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