転生したら美少女VTuberになるんだ、という夢を見たんだけど?   作:蘇芳ありさ

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幕間『世紀の歌姫、理想を抱いて溺死する』

 

 

 

 

 

 2011年12月17日(現地時間15:40)

 

 

 人間は学習する生き物である。

 

 火に触れれば熱く、足元に気をつけなければ転倒する危険があると幼児ですら学習する。最近はやらかしてばかりだから説得力に欠けるかもしれないが、わたしだって同じ失敗はしないように注意するし、より視野の広い人間ならば他人のふるまいから教訓を得ることもあるだろう。

 

 人類(ヒト)は過去から学び、だが、そうあるが故に過去に縛られる生き物であるのやもしれない。

 

 拒絶と躊躇、そして不信と絶望。わたしという臆病な人間を形成する苦い記憶は、しかし、今や完全に克服され、わたしのなかで微笑むべき別離の光景として処理された。

 

 わたしは自由だ。ようやく解き放たれた。心も体もこんなに軽い。もうなにも怖くない──!

 

 そうして過去の束縛から解放されたわたしは2時間前の約束を思い出し、まずはみんなとお風呂にしようと脱衣所に飛び込んだら、下着姿のマリン船長こと蛍崎海音(ほたるざきあまね)さんがわたしを見てひどく狼狽えたのであった。

 

「あっ、アーニャたん! じゃないゆかりたん!?」

 

「今は配信中じゃないから、呼び方はどっちでもいいですよ? お疲れさまです、マリン船長。海音さんもいまからお風呂ですか?」

 

「え? う、うん! もうね、お風呂の用意は琴子(ぺこら)たちがやってくれたから、もうバッチリなんだけど……ええと、ゆかりたんが入るんだったら、お姉さん消えようか? 見えないほうが不安だったら、お姉さんね、警備のおじさまたちにお願いして、どこか適当な個室に監禁してもらうんだけど……?」

 

 何をそんなに気にしてるのだろうってワンピースを脱ぎながら疑問に思うも、上機嫌に弛む口元は変わらない。

 

 まだ胸元が湿っているワンピースをきちんと折りたたみ、これは谷村さん(すいちゃん)がクリーニングを頼むって言ってたことを思い出し……海音さんってスタイルもいいよね、とたわわな果実に目を奪われる。

 

 わたしが言うのもなんだが、この女性(ひと)ってズルくない?

 

 こんなに美人で笑顔と愛嬌もバッチリなのに、絵は本職の人がプロ目線でも上手いと絶賛して、歌のレパートリーも昭和までコンプリート。さらに古のオタクという自己評価に違わずオタク知識にも精通し、芸人としてもやっていけそうなトークとアドリブをも備えておきながら、スタイルまで抜群とは。

 

 見てよあのおっぱいとお尻のいやらしさ……天は二物を与えずってことわざはどこへ消えたのやら。

 

「何を言ってるのかよく分かりませんけど、一緒に入るって約束してくれたじゃないですか? ずっと楽しみにしてたんだから、今さら冗談のつもりだったって言われても聞いてあげませんからね?」

 

 少しだけコンチクショーと思いながらぐっと堪える。キャミソールを脱ぐとわたしもまだまだだなぁって悲しくなったのも我慢。下も脱いで、ついでに靴下もキャスト・オフだ。

 

「あっ、うん! ゆかりたんがいいならいいんだけど……いや、あのね? ちょっとお姉さんの話を聞いてほしいんだけど、実はね……」

 

 もちろん脱いだものをその辺にとっ散らかすというはしたない真似はしない。自分の籠を用意して、ワンピースの下にきっちり保管する。着替えは……しまった。うっかり忘れちゃったけど、ま、あとでいいかなとタオルを確保。

 

「じゃ、お先に失礼して中で待ってますので、ゴージャスなお風呂を満喫しながらいっぱいお喋りしましょうね?」

 

「いや待って! ねぇお願い! お姉さんの話を聞いて……ねーヤダヤダ聞いて聞いて!?」

 

 なんでか必死の形相で止めてくるマリン船長に、つい鬼ごっこをしている気分になったわたしは小兵の利を活かして華麗に回避。そのまま大理石の浴室に突撃するのだった。

 

 そして一斉に振り返る入浴中のあの子たちが硬直し、わたしもまた硬直する。

 

 ……はい、ここで質問です。

 

 とりあえず湯浴み着なんてものがあるのにも気づかず、全裸で浴室内に突貫したわたしの心境を述べよ──。

 

「えちょっ!? ゆかりちゃん!?」

 

「えっ? なんで全裸……?」

 

 うん、はっきりとバカ丸出しだよね。わたしの場合バカだけじゃなく、お尻はおろか前まで丸出しだけどさ。わたしのポンに巻き込んでしまったぺこらちゃんとあくたんにはかける言葉も見つからないよ。

 

 道理であんなに必死に引き留めるはずだと背後をチラ見すると、可愛らしいデザインの湯浴み着を手に、心底申し訳なさそうな顔をするマリン船長の姿が。いや、こちらこそ申し訳ない……。

 

「おー。ゆかりたん、やっぱりいい肢体(からだ)してんね。ゆかりたんならエロゲの妹キャラとしても大人気になれそうだ」

 

「おまっ……おまえちょっとこっち来いよ、みこち……」

 

「おー、ゆかりさんも裸族ですか。まぁね、お風呂は裸がデフォルトでいいんですよ。女同士なんですから」

 

 ま、まぁ、わたしも見られる分にはへっちゃらだからこのまま押し通そうとしたんだけどさ……さすがにさくらちゃんのこの評価と、全裸なのに湯舟のなかで平然とあぐらを掻く蛮族の仲間入りは……。

 

「…………お邪魔しました」

 

 ぺこりと一礼して浴室のドアを元に戻す。足元の愛犬は「なんで入らんのや?」と言わんばかりに首をひねるんだけど、さすがにね、こんなときに平静を保てる無敵のメンタルは持ってないんだよね……。

 

 そんなわけで社畜ネキさんにもしこたま謝ってからすごすごと出戻り。クリーニングに出す予定のワンピースをまた着るのも気が引けたから、下着姿で部屋に戻ったら「なんともゆかりらしい失敗ですね」というサーニャの心底楽しそうな含み笑いに直面して、わたしのメンタルはさらにどん底まで落とされた。

 

 はい、ここで今日の教訓です。とりあえず人の話は有り難く静聴しようか。

 

「ああ〜〜ッ!!」

 

 やらかした、完全にやらかした。せめて前くらいきちんと隠しとけ。出会ったその日に断りもなく丸出しになるな。露出狂かよと茹で蛸になる。横でサーニャがなんか言ってるような気もするけどまるで耳に入らない。

 

「ゆ、ゆかりさん!? その格好は何があったんですかっ!!」

 

 と思ったけど、さすがにこれは聞き逃さなかった。

 

 見れば目の前の白上フブキさんこと春日マリナさんと、相方の百鬼あやめさんこと篁蘇芳(たかむらすおう)さんを筆頭に、驚愕するVTuber(ホロメン)計6名が勢揃い。たしかこの子たちは、機材の片付けをする中村さんたちを手伝ったり、おやつを食べたりしてたはずだけど……戻ってきたのはいいが、どうしてそんな顔をしているのだろうか?

 

 わたしの隣から飛び降りて真っ黒な毛並みに甘える愛犬を尻目に、彼女たちは何に驚いているのだろうと自分の格好を再確認。なるほどと深く納得するのだった。

 

 わたしときたら下着姿のまま膝を抱えて黄昏ていたのか。そりゃあ、この子たちも何してんだって呆れるよね……という暢気な思考は長く続かなかった。

 

「そうか。社畜ネキ(マリン)のヤツ、遂にヤったな。よし、殺すか……」

 

 静かに黒化するハルカさんの言葉にこっちまで気持ちが動転する。いや待って、確かにこんな格好でぼんやりしてたら誤解されても仕方ないけど、マリン船長は何も悪くないから……!!

 

「ううん! あのね、実はわたし……みんなが湯浴み着を着ているところに全裸で突撃しちゃって、ついうっかり蛮族認定されちゃっただけだから……」

 

 立ち上がって説明すると誤解はすぐ解けたんだけど、その代わりになんていうか、とっても生温い雰囲気に……。

 

「いやぁー、そうだったんですか! すみません、白上としたことが、つい昔の血が騒いでしまって……」

 

「こっちこそこんな格好で失礼しました! サーニャにも服をきちんと着るように言われたような気がするんですけど、なんていうかそんな気になれなくって……」

 

 いつものフブちゃんに戻ったことにホッと胸を撫でおろすと、隣で怖い顔をしていたお嬢さまも、両手をゴキゴキ鳴らしていたぼたんさんも、呆気に取られていたココさんとぐらちゃんも、おやつを頬張っているアーリャも次々と慰めの言葉を掛けてくれた。

 

「いやビックリしたけど、女同士の風呂なら別に気にせんでもええんちゃうん? フブキなんぞ風呂以外でもパンツとTシャツがデフォルトやから、裸族の親戚みたいなもんやし」

 

「ええ、そうですねぇ……あやめも白上が着替えを用意してやらなきゃ裸族やむなしの物臭ですから」

 

「あたしも無人島で暮らしてるときは、服を傷めないように全裸で過ごしていたことが多かったからね。ぶっちゃけ初めて救出されたときもほとんど裸みたいなものだったしさ」

 

「私も一人のときはかなりラフな格好ですからね! もちろん入浴中は全裸ですよ!!」

 

「わたしもそう! っていうか湯浴み着って何って感じだよね?」

 

「わたしも湯浴み着があるのは知らなかったわ。それに女の子同士なんだから、気にしなくてもいいと思うわよ。ゆかりの場合は慣れるためにも必要なことだと思うしね」

 

 そう言ってもらえるとわたしとしても安心する。

 

 懲りずにやらかしてしまったのは事実だけど、アーリャの言うように女の子同士だからね。銭湯で女湯に全裸で突撃する小学生なら珍しくないよねって自分に言い訳することはできた。

 

 まぁわたしの場合、相手が湯浴み着だから水着の授業に全裸で突撃したような気分だったけど……もともと見られることには抵抗がなかったので、心に負ったダメージも思っていたより軽傷で済んだ印象かな?

 

「ねぇー、スバルちゃんさぁ! アンタきちんと服を着ろよ、服を! 裸でうろつこうとすんなよ、マジで……!!」

 

 なんてやっていたら、結果的に半々に分かれた先発組がお風呂からあがってきたようだ。

 

「あっ、ゆかりさぁん! 広いから遠慮しなくてよかったのに、これからスバルたちと入れ替わりでお風呂ですか?」

 

 しかも最初に出てきたのが気心の知れた蛮族(スバルちゃん)で助かったよ。

 

「うん、ごめんね? なんか出遅れちゃったような気がしたからさ、つい弱気になっちゃって」

 

「まぁゆかりさんはスバルと違って繊細ですからね。色々と悩みもあるでしょうから、どうかお気になさらず」

 

 そんな話を大声でしてくれたおかげで、脱衣所からパンツ一丁と首タオルだけで帰還した蛮族のを注意ようとしたぺこらちゃんたちは、わたしの様子がおかしかったことに一定の理解をしてくれた印象だった。

 

「というわけで、みんなと入れ替わりでお風呂を使わせてもらいます。出てきたらみんなに話したいことがあるから、もう少しだけ寝るのを我慢してもらえるかな?」

 

「はい、分かりました」

 

 そして冷蔵庫からアイスを取り出す食いしん坊に微笑み、すいちゃんにワンピースをお願いしてから脱衣所に向かう。途中でマリン船長がブツブツと考えごとをしているのが気になったけど、なんだろう?

 

 わたしはさっきの不注意が原因かなって後ろ髪を引かれる思いだったが、後ろの子を待たせでまで確認することでもないかと思い直したわたしは、楽しそうな顔をするアーリャたちと脱衣所のドアを潜った。

 

 それがのちの騒動に繋がるとも知らずに──。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「よし、やっぱりやるか」

 

 すれ違った少女たちの背中を目で追った女性は、やがて心の迷いを振り払いようにつぶやきを発した。

 

 彼女の名は蛍崎海音(ほたるざきあまね)。社畜ネキことマリン船長の演者であり、絵が達者なことでも知られる彼女は、先の入浴で己の浅はかさを思い知らされたばかりでもあった。

 

 現実は小説より奇なりというが、実物は想像を遥かに超越する有様で、ギリギリまで迷ったものの、己が過ちを思い知らされたからにはやはり見過ごすことはできなかった。

 

 入浴中も黙して語らず、明らかに様子のおかしい彼女をずっと気にかけていた少女は、尊敬する先輩の復活を喜ぶ反面、不吉な予感も覚えてその動きを注視するのだった。

 

(社畜ネキはホント、油断だけは出来ねぇからな……)

 

 こっそりと溜め息をついた兎田ぺこらこと宇多田琴子(うただことこ)は、蛍崎海音の動きを目で追いかけ、彼女が自分のバッグからAP社のタブレットを取り出すのを見て「まさか?」と瞠目する。

 

 一般にAiPadとして知られるこのタブレット端末は、ある利点により日本全国の教育機関でも普及している。すなわち、お手軽なお絵かき用のツールとして──。

 

 社畜ネキと言えば、アーニャの名がネットで囁かれるようになったデビュー前の最初期から、センシティブな絵師として名を馳せていた。その彼女が、アーニャの演者である真白ゆかりの生まれたままの姿を目撃した直後にこの行動。宇多田琴子の心は信頼と疑念の間で揺れた。

 

(いやいや、コイツだってゆかりちゃんを止めようとしたんだし、裸を見ちゃったのも故意じゃないんだから……)

 

 だが不慣れな研修生活で親切にされたことを思い出した少女は、尊敬する先輩を問い詰めるのではなく、何をしているのか笑顔で尋ねようとしてその信頼を裏切られる。彼女のAiPadにびっしりと敷き詰められたサムネイルの画像は、やはりそれ以外の何物でもなかったからだ。

 

「何してんだこの野郎! こんなところでアーニャちゃんのエッチな絵を呼び出すとはふてぇ野郎だ、馬鹿たれがぁ……!!」

 

 興奮のあまり思わず手が出てしまった琴子は、海音のタブレットを奪おうとしたが直前で回避された。

 

 そうして振り返った女性の顔はとても真剣なもので、少なくとも(よこしま)な感情でそうしているのではないと理解した少女はたじろぎ、決めつけるような言い方をしたことを内心恥じるのだった。

 

「悪いけど邪魔しないでもらえる? お姉さんね、どうしてもしなきゃいけないことがあるのよ」

 

「あっ、もしかして消そうとしたの? だったらごめんね、酷いこと言ったりして……」

 

「ううん。お姉さんね、最新の知識で過去作をアップデートしなきゃいけないの。具体的にはアーニャたんの全裸を」

 

「ダメじゃねぇか!?」

 

 なまじ二度も信じかけただけにダメージも二倍だった。渾身の怒声に、入浴後のひと時を思い思いに寛いでいた仲間たちの注目が集まる。

 

「ふむ? 随分と興味深いことをされているようですね?」

 

 そのなかに己が主人(アーニャ)に忠実なメイドが含まれているのを見て、宇多田琴子は迂闊にも勝利を確信してしまった。

 

「ねぇー、聞いてよサーニャちゃん! 社畜ネキ(コイツ)ったらさぁ、アーニャちゃんのエッチな絵を描き直すって言ってるんだよ!?」

 

「なるほど? 宇多田さまはこのように申されていますが、何か弁明はございますか、海音さま……いえ、友人A」

 

「ないね。自分でもわかってんでしょ、S子もさぁ」

 

 眼鏡の端を光らせたメイドはかつてのハンドルネームで戦友に呼びかけ、強気の笑顔で睨み返した淑女という名の変態もまたそれに応える。

 

「お姉さんはね、かつて剥ぎコラの要領でアーニャたんをマッパにして、そこから局部を想像して描き足したんだけど、それはあまりに浅はかだったって反省したの。だって実物はお姉さんの想像を絶していたんだから……だったらその記憶が薄れないうちに永遠に明記したいって思うのが創作者ってもんだろぉ?」

 

 真に難儀な性癖の持ち主が魂の咆哮をあげる光景に、このメイド(困ったちゃん)が何を思うか。彼女の私生活を知る真白ゆかりならば見当が付いただろう。

 

 たしかにサーニャことアレクサンドラ・タカマキは、自らの創造主である真白ゆかりの不利益になることしない。そこに例外はない。

 

 だがそれは、真白ゆかりの不利益にならない範囲で自らの性癖を満たすことも有り得る、ということでもあった。

 

「フッ、さすがですね、その揺るぎない魂……手伝いますよ。これでもゆかりの助手として着色には手慣れていますから」

 

「よっしゃ! これは勝ち申したな!!」

 

「ええっ!?」

 

 意気投合する二人の姿に慌てるのも無理はない。天才の名をほしいままにするこの女史が味方したら、もはや自分にできることは何もない。宇多田琴子は必死の想いで裏切りのメイドの翻意に努めた。

 

「お願いだから正気に戻って? 社畜ネキはね、ゆかりちゃんの裸をアーニャちゃんのイラストに反映させようとしてるんだよ? そんなことを許していいの!?」

 

「……何か誤解があるようですね?」

 

 キラリとメガネを光らせて琴子に振り向いたメイドは、お得意の理論武装(へりくつ)を展開する。こうなったらもう勝てる者は誰もいない。

 

「仮にゆかりの隠し撮り画像や、日本の法律に触れるアーニャのイラストをインターネットにアップしようというなら、私もお止めしましたとも。しかし彼女はこちらのイラストをネット上に公開せず、あくまで個人的に楽しむために手直ししようとしているに過ぎません。ならばそれは日本国憲法でも認められた表現の自由の範疇。止める権利は誰にもありません」

 

「さっすが〜、S子は話がわかるッ!」

 

 かくしてさすがS子ルートに転落する舞台裏を、正道に立ち戻す力を持たない少女は、ならばと同志の姿を求める。

 

「おおっ、これがネットでうわさの社畜ネキ自作のお宝画像かぁ……ふーん、エッチじゃん」

 

 だがもともとそちら寄りのさくらみここと御子柴さくらは、共感こそすれ止める気配は微塵もなく、彼女の後ろからAiPadの刺激的な画像を覗き込んでしまった大空スバルこと鴨川昴(かもがわすばる)はというと……。

 

「ほわぁあああ……」

 

 この年齢にしては驚くほど性的なものに免疫のない少女は、仮に入浴目的なら真白ゆかりの完璧な裸身も「きれいな肢体(からだ)ですね」の一言でスルーできたが、明らかにそういう目的で描かれたアーニャのイラストの前には無力だった。

 

 みるみる赤面し、やがて頭頂部から爪先まで真っ赤になった彼女は、完全に茹であがって目を回し、ばたんきゅーと倒れたところを、湊あくあこと皆川あずさに支えられた。

 

「ねぇ、あくたんも止めてよ! コイツが何かしたら一緒に止めようって約束したぺこよね!?」

 

「ぺ、ぺこらちゃんには悪いけど、誰の迷惑にもならないんだったら、あたしもいいと思うんだ……それに船長、なんだかとっても楽しそうだし、邪魔しちゃ悪いかなって……」

 

 そしてもとより軋轢を好まない少女も華麗にスルー。これで真白ゆかりのワンピースのクリーニングを頼みにいった女性以外は全滅。孤立無援の宇多田琴子が「こいつら頼りにならねぇ」と膝を突くあいだも、友人AとS子の手直しは進んでいく。

 

「うん、やっぱりS子の協力があると捗るわ……って普通は書き直しだからね? 例えばアーニャたんがお風呂で正面からちょっと見上げてるこの構図なんだけど、お姉さんとしたことが局部の書き込みを優先するあまり、この角度じゃそこまで見えないはずなのに見せようとして不自然になってたじゃん? それをカメラの位置をもう少し下にするとか、オートでも人力でもできることじゃないのにS子なら一発だもんね」

 

「お褒めに預かり恐縮ですが、このイラストに込められた意図を察すればどんな無理難題であろうと全力を尽くさずにはいられませんね。このイラストはおそらくですが、アーニャが男家族を浴室内に迎え入れている場面ですね。無防備な笑顔とともに、あえてそこまで描くことによって、アーニャの無垢な信頼を表現したかったのですよね?」

 

「そうそう、そうなの! でもさ、さすがに13歳って設定でまるで危機感を覚えないのはどうよって悩んでたんだけど、S子はどう思う?」

 

「いえ、私も不自然とまでは……ゆかりも父親と一緒ならタオルくらい巻きますが、男目が弟さんしかないときは割とこんな感じですよ」

 

「マジかよ弟くん羨ましいな!! あ、あとさ、よく見えるようにしたのも含めて、実用目的で半開きにしたのも不自然だったかなってずっと気になって。位置の再調整は完了したけど、こっちはどんなもんだろうね?」

 

「両足の開き具合を考えると、もう少し控えめにしたほうがよろしいかと思いますが、現状のままでもそこまで不自然では……ただ具のほうは明らかに過剰かと」

 

「うん、お姉さんも本人のを見てそう思った。だからお姉さんね、張り切って修正しちゃうよ」

 

 そうした会話のほとんどを、琴子は極力頭の中から締め出すのだった。

 

 理解してしまったら終わりだ。自分もまた際限もなく転落するという危機感はもはや確信の域だ。それほどまでに彼女たちのイラストと、先ほどの光景は心臓に悪かった。琴子はもはや、真白ゆかりが戻ってくる前にこの悪夢のような光景が終わってくれと祈ることしかできない。

 

「神は細部に宿る、かぁ……」

 

 そんな最中(さなか)に星街すいせいこと谷村翠のつぶやきが届いたとき、宇多田琴子は一縷の望みを抱いた。この問答無用の圧を持つ1期生きっての問題児を味方につければ、もしかしたらこの悪夢を終わりにできるかもしれないと──そんな期待はしかし、恍惚と蛍崎海音の手元を眺める端正な横顔を見て崩れ去った。

 

「すいちゃんはこれでも芸術家(アーティスト)を気取ってたからわかるよ。細部まで妥協しないことが大事なんだよね。あたしの場合はこだわりすぎてグチャグチャになっちゃったけど、ここまで完璧に仕上げるとは、やはり社畜ネキは天才か」

 

「フッ、よせやい星街。そんなに褒めたら照れるじゃないかね」

 

 こいつも同類かぁ〜〜ッ!!

 

 宇多田琴子はこの日何度目かの絶望の叫びを胸中で放った。誰でもいい、誰か、誰か、この悪夢を終わらせてくれ──宇多田琴子の祈りはしかし、唐突に聞き入れられる。

 

「社畜ネキはそう言うけどさ、このアーニャちゃん可愛すぎだろ? こんなに丸出しなのに開けっぴろげな笑顔で……いかん、すいちゃん目覚めちゃならんものに目覚めそう」

 

「恥じるな星街。みこも純愛以外は認めないけど、確固たる信頼関係があるならちょっと無理やりというプレイなら認めてやる。だから恥じらず誇れ星街すいせい」

 

「ねぇ〜? 二人ともわかってるじゃん。そうだよね? この笑顔にはそうした絆があるんだってば」

 

「はい、私も同意しますよ。だからこそ『わからせ』たいと、メチャクチャにしたいと、そう思うのが紳士淑女の心理というもので──」

 

「ふぅん? サーニャってばそんなことを考えてたんだ……?」

 

 その言葉に失神中の鴨川昴以外の全員が、ギクリと身を竦ませる。

 

 見れば入浴中に中座してきたと思われる真白ゆかりが、バスタオルを巻いただけの姿で己が従者を見つめていた。

 

「ゆ、ゆかり? これはですね──」

 

 懲りないメイドがお得意の屁理屈を駆使しようとするが、その手口を知り尽くした少女には通用しなかった。

 

「とりあえずアーニャの著作権はわたしにあるから、二次創作を手伝うなら助手の仕事は頼まないようにするけど?」

 

「すみませんでした!!」

 

 さすがに直属のアシスタントがR-18の同人作家を全力でサポートするのはどうなのと告げると、職業倫理に問われたメイドは直ちに無条件降伏。

 

「マリン船長も個人で楽しむ分にはわたしも何にも言わないけど、せめて人目に触れないところでやってほしいな」

 

「まったくもっておっしゃるとおりで!!」

 

 そうしてもう一人も素直に降参するのをもって、それまで若干冷たかった少女の表情が親愛に満ちたものとなり、満足した真白ゆかりは踵を返して浴場に戻ろうとするが……。

 

「あ、ゆかりちゃんあのね?」

 

「ぺこらちゃんも興味があるならマリン船長からもらってもいいけど、色々と微妙なイラストだから外部に漏らさないようにしてね」

 

「ち、ちがっ!? そうじゃなくって……!!」

 

 たしかに真白ゆかりが引き返したことで、二人のオタクによる狂宴は終わった。だが引き換えにより大きなものを失ったと宇多田琴子は感じた。

 

 なまじ御子柴さくらと谷村翠という積極的な賛同者が二人もいたために、自分もあのセンシティブ極まりないイラストをドキドキしながら見ていたと誤解されたんじゃないかと、琴子は気が気でなかったが……真白ゆかりは全裸とほとんど変わらない姿だったために、無理に引き留めるのも気が咎めた。

 

「あはは……あたしたちも社畜ネキの同類に思われちゃったかなぁ……」

 

「おォノぉおうゥ!! そんなのってないぺこだよ……ッ!!」

 

 足早に立ち去った真白ゆかりが変わってるのは自分だけじゃないと安心したとも知らず、宇多田琴子は遂に魂の叫びを響かせるのだった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「あらゆかり、忘れ物はもういいの?」

 

「うん、きっちりとっちめておいたからもう大丈夫だよ」

 

 お風呂に戻るなり笑顔で訊ねてきたアーリャに、こちらも笑顔で即答する。

 

 なんということはない。唐突に『マリン船長』の正式名称を思い出したので、忘れないうちに伝えようとしたんだけど……あの女性ときたら貴重なオタク仲間とエッチな絵を描いてたから、やっぱり社畜ネキさんはもう少し社畜ネキさんで居てもらおう。

 

 まったく……これだからあの女性は油断ならない。

 

 別に書くのは構わないけど、そういった絵を受け付けない子たちもいるんだから、もっと人目を気にしてほしいというのが正直なところだ。

 

 うん、あれでお金を稼ごうとするならまだしも、そうでないなら二次創作(ファンアート)は好きにやってくださいというのがわたしのスタンスである。

 

 そこにサーニャが加担して半公式のような扱いになったら困るが、もとより目くじらを立てる気はあまりない。

 

 むしろ社畜ネキさんのセンシティブアートにキャーキャー言ってる子たちを見て、自分の狭い常識がいい意味で覆されたような気分になった。

 

 わたしにはああいうのを喜ぶのは男の子だけという先入観があっただけに、そうではないと知って驚くのと同時に、ある種の爽快感がかねてよりの悩みを吹き飛ばしたような気分になったんだよね。

 

 そうしてタオルを解いて見回してみると、みんながみんな裸なのに誰もそのことを気にしていない。

 

 結局のところ、この切なく胸を締め付ける息苦しさと、トクトクと早鐘を打つ鼓動の激しさが思春期特有の気の迷いじゃないなら、美しい物を目にして感動しているということなのだろう。アーリャの言うように、変と言うほどではなかったのだと嬉しくなる。

 

 とは言っても、あんな絵を人目に触れさせておいて全くお咎めなしというのも難しいので、マリン船長の正式名称である宝鐘マリンの採用は見送り。明日のファーストライブは社畜ネキのハンドルネームで乗り切ってもらう……ということで、この話はおしまい。今はこの子たちと一緒のお風呂を満喫しようと、目の前の光景に集中する。

 

「さ、ユッカちゃんはもうええよ。プルプルしたって」

 

 まさに天然の芸術品がズラリと勢揃い──そんな絶景のなか一際(ひときわ)目を惹くのは、洗い場で我が家の愛犬を洗ってくれたこのあやめ殿である。

 

 本名は篁蘇芳(たかむらすおう)さん。もともと綺麗な人なんだけど、こうやって楽しそうに笑うと愛嬌がすごくって、失礼なんだけど可愛らしい人だなって思ってしまうのだ。

 

「すみません、ユッカを洗うのを任せきりにしちゃって」

 

「大した手間でもないから気にせんでええよ。むしろこっちのデカイのを洗うのを手伝ってもらえると助かるわ」

 

「喜んで」

 

 そんな感じで水滴を飛ばした我が家の愛犬が甘えたそうにしているのがエリカさんの愛犬、黒い毛並みのラブラドール・レトリーバーのゴン太くんなんだけど、この子も賢いよね。

 

 ご主人さまがユッカを洗ってるときからお利口さんにお座りして、自分の番になったと気づいたら洗いやすいところに移動して、ニコニコと幸せそうに笑っているのだから、これは名犬以外の何者でもない。

 

 あやめさんに背中を洗われるゴン太くんの前に両膝をついて、首から胸と前足を洗ってあげると感謝のつもりか腕をペロペロしてきた。ふふ、舌がユッカより格段に大きいからくすぐったいね。

 

「うーん、いい子。ゴン太くんってばあやめさん自慢の名犬だね」

 

「いや、少し前まで散歩嫌いの駄犬やったんよ? 少し歩くとすぐ座って動かなくなって、このデカさで抱っこをせがむから大変やったわ。なぁ、フブキ?」

 

「ゴン太を抱っこするとおんぶをせがむあやめがそれを言いますか? でもまぁ、確かに最近異様に聞き分けが良くなって不思議なんですよねぇ……ちょうどアーニャさんの配信に顔を出したときくらいですから、もしかしたら何か関係があるのかも知れませんが」

 

「あはは、どうなんでしょうね」

 

 相方に振られて会話に参加してきた白上さんの言葉にドキリとする。なんでもサーニャによると、わたしにはなんらかの手段で意思疎通を行っている生き物が相手なら、問答無用でコミニケーションを成立させる能力があるらしい。

 

 なのでもしかしたらと思ったんだけど、この賢そうな顔を見るにもともと名犬の素質があったんだろうね。

 

「と、こんなもんでええかな? ゆかりちゃんおおきにやわ。ゴン太の泡を流すから、ブルブルの巻き添えを食らわんように離れたってや」

 

「大丈夫ですよ、ねぇゴン太くん?」

 

「クゥーン」

 

 うん、やっぱりいい子だ。あやめさんがシャワーで流すとブルブルしたんだけど、わたしたちに水滴を飛ばさないように気をつけているように見える。

 

「おー、ゴン太もスッキリしおって……スッキリついでで思い出したんやけど、ゆかりちゃんもなんかスッキリした顔になったね。日本政府の記者会見を見てから気落ちしとるように見えたから安心したんやけど、忘れ物を取りに行ったときになんかええことでもあった?」

 

「あ、やっぱりそう見えますか?」

 

 うん、わたしってぜったいポーカーには向いてないね。こんなに自分の気持ちが筒抜けじゃあ配信のネット対戦でも危ういね、と弛んだ口が滑りそうになる。

 

 言っていいものか少しだけ迷ったけど、わたしの場合は誤魔化すほうがいやらしいか。アーリャにも安心してほしいし、いいや、言っちゃおう。

 

「女の子同士で変かもしれないですけど、実はみんなと一緒に入るのが恥ずかしかったんです。ほら、わたしだけ誰も見向きをしないような幼児体型だから、自分だけみんなのきれいな肢体を見て、一方的に得をして申し訳ないような、自分の胸を見て悲しくなるような……」

 

「ああっ、それならメッチャ分かるわ!!」

 

 わたしがぶっちゃけると、あやめお嬢さまがゲラゲラと爆笑した。

 

「うちも中学で修学旅行に参加したときはそう思ったもん。当時の余は運動不足で今よりぽっちゃりしとったから、アカン、これはなんとかせえへんと女として終わるわって」

 

 わたしとはちょっと方向性が違うけども、あやめさんの赤裸々な暴露はわたしを勇気づけるものだった。

 

「コイツの悩みはゆかりさんとはまた違った感じですけどねぇ……むしろそれを言うなら、ゆかりさんの悩みは白上のそれに通じるものがあるのでは?」

 

 よっこらしょっと湯舟の中で立ち上がった白上さんが、自分の肩を抱いてもの悲しそうに訴えてくる。

 

「見ての通り白上はアフター18組のなかでは貧弱な部類ですからねぇ……正直ココさんの近くにいると居た堪れなくなると申しますか」

 

「私に言われせれば大きくても肩が凝るだけですよ! 何事もやはりバランスが一番。私にはフブキ先輩のように均整のとれたスタイルのほうが羨ましいですね」

 

 すると湯舟の中でまったりしてたココさんが羨ましそうな視線を向けるようになり、隣で首根っこを掴まれたぐらちゃんが便乗してきた。

 

「わたし知ってるよ。女の子の胸は揉まないと大きくならないんだよね。それも自分で揉むのはノーカンで、ベッドで男の人に揉まれないと……つまりおっぱいお化けのココはビッ『だから間違った知識を自慢するなと言ってるんだ!?』」

 

 いたずら全開の笑顔で下ネタを口にした年下の従姉妹をゴチンとやったココさんが、心底申し訳なさそうに謝罪する。

 

「まだジュニアスクールのゆかりさんもいるのに下ネタばかり口にしてすみません! この子も昔はもう少しまともだったのですが、私のオタク友達が要らんことばかり吹き込んで……こんなことではこの子の教育係として切腹ものです! 重ねて申し訳ない!!」

 

「まぁいいんでない? さすがに配信中に放送禁止用語を使われたらどうにもならないけど、仲間内で下ネタを口にしたくらいで目くじらを立てなくても。ゆかりさんもそんなに気にしてる感じじゃないしさ」

 

 そんなココさんに心配無用と伝えたのは、湯舟のなかでストレッチをしていたぼたんさんだったが、もちろんわたしも気にしてないので「うん、むしろガス抜きになっていいんじゃないかな」とフォローしておく。

 

「ほら、みんなもこう言ってるのに、ココったら酷いよ? わたしの背が伸びないのぜったいバシバシ叩いてくるココの所為だからね!?」

 

「そこはおまえがふんぞり返るところじゃないだろうがッ」

 

 一見厳しすぎる従姉妹に反骨精神全開のように見えるが、ココさんに物申す女の子の表情からは隠しきれない親愛の情が滲み出ていて、口では何だかんだ言いつつもその傍から離れようとはしない。

 

「ま、あたしに言わせればみんな羨ましいけどね。ほら、あたしの体なんてこんなだし」

 

 そう言って大きく身体を伸ばしたぼたんさんが、アスリートの鴨川さんより筋肉がついた上半身を見せつける。

 

 長年のサバイバル生活の影響か、日焼けして筋肉のついた身体は所々に傷痕もあったが不思議と似合っていて、彼女の生き様を知るわたしには美しいと思えたのだ。

 

「ぼたんさんも綺麗ですよ。身体もそうだけど、どんなときでも笑顔を絶やさないその精神がたまらなく魅力的で」

 

「そうなの? お世辞でもありがとうね。ゆかりさんも綺麗だよ。いろいろ言われると思うけど、そこは自信を持って?」

 

「まぁゆかりさんに関しては現段階でもそうですけど、このさき末恐ろしいとしか言いようがありませんからね」

 

 はたして言葉を飾っているのは誰なのか。過分な評価に慣れっこのわたしでも、ぼたんさんや白上さんが本音で語っているのは疑いようがなかった。

 

「ふふ、ゆかりったらいつもこうなの。自分の容姿に無頓着で……わたしにも責任のあることだけど、もう少し自覚を持ってくれると有り難いわ」

 

「えっ、ゆかりがこんなに綺麗なのはアーリャの所為なの? ねぇねぇ、どういうことか聞かせてよ?」

 

「うふふ、悪いけど内緒よ。どうしても知りたかったら、もう少し仲良くなってからね」

 

 最後にアーリャが思わせぶりなことを口にして、ぐらちゃんを煙に巻くと「さて」と湯舟を跨いだ白上さんがこちらに向かい、ぼたんさんとココさんの年長組に続いて、謎解きを中断した年少組まで立ち上がってきた。

 

 いや、いやいや、いやいやいやいや。

 

 さすがにそれは刺激的すぎるというか、女の子同士でもせめて前くらい隠そうよとお風呂の最中なのに冷や汗さんが再登場する。

 

「白上たちは洗い場を使わせてもらいますが、ゆかりさんは途中で抜けちゃったからまだ十分に温まっていないでしょう」

 

「うん。気のせいかもしれんが、なんか寒そうに震えとるわ」

 

「それはいけませんね。ユッカちゃんと一緒に湯舟で温まってください」

 

「あ、ワンちゃんは汗をかけないから全身を浸からせないように気をつけてね?」

 

「出てきたらわたしたちがゆかりを洗ってあげるよ。楽しみにしててね」

 

「まぁ、ほどほどにね? 女の子同士でもデリケートゾーンは遠慮しなきゃだけど、頭と背中くらいは構わないわよねゆかり?」

 

「う、うん! な、なんていうか、その……お手柔らかにね?」

 

 にじり寄る笑顔に包囲されたわたしに抵抗の余地はなく、唯々諾々と運命を甘受するより他になかった。

 

 ……というわけで本日最後の教訓は、泳げる気になって水の中に飛び込んでも溺れるだけというものでした。

 

 もうね、観念してあちこち洗われてるときは生きた心地がしなかったけど……少しだけ気持ち良かったというのはここだけの秘密だ。

 

 

 

 

 

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