転生したら美少女VTuberになるんだ、という夢を見たんだけど?   作:蘇芳ありさ

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第一部エピローグ・昨日とは異なる明日を目指して

 

 

 

 

 

【ホロライブ】VTuber総合スレ4649【Revisions】

 

1:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:43:38 ID:JJQJo57Cu

このスレはVTuberについて語る元ゲーム系配信者総合スレです。

基本まったり進行。対立煽り厳禁。荒らしはNG登録、もしくは運営に通報。それと雪国民の皆様方におかれましては、ここで語るなと申しませんが、どうか手加減を(コレ重要)

基本的にアーニャたん本人について語るときは『あのスレ』を、アーニャたんの絵や歌はもちろん、政治経済や宇宙開発に与える影響について語るときは各種関連スレをご利用いただけますよう、この通り伏してお願い申し上げますm(_ _)m

 

2:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:44:41 ID:ptcQD2ylK

スレ立て乙!

 

3:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:45:58 ID:JWdGSxUhf

乙だが何度見てもこのテンプレ笑うわw

 

4:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:47:19 ID:2opfHoMq

俺もそろそろ外していいと思うんだがw

 

5:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:48:30 ID:uwuz2oNRc

まぁ、アーニャたんのファーストライブの直後は大変だったが、あのスレの住人が誘導を頑張ってくれたのと、運営がサーバーを増強してくれたからねぇ……。

俺もそうそう鯖落ちまでいかんと思うが、何事にも予防線ってのは重要だと思うんだ。

 

6:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:49:59 ID:JfrCrJ5Avw

そう言えば昨日も海外ニキに誘導されるまで海外キッズの集団が熱く語ってたっけ。

 

7:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:51:37 ID:LH1HCLiiB

便所の落書きと言われた×ちゃんねるが今や世界の公用掲示板だからな……それ以前からの住人としては未だに慣れんが、確かに備えは必要だよな。

 

8:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:53:24 ID:jQUFzJr7V

まぁね……ほんとアーニャたんのファーストライブ以降、ありとあらゆるものが激変しすぎてついて行くのが大変だわ。

 

9:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:55:20 ID:z5DDRtx9y

本当にそれな……。

 

10:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:56:29 ID:MXIUMBGCL

こっちに関係があるのに限定しても、今やAiPhoneに自動翻訳と立体映像投影機能が標準搭載だからな……しかもお値段据え置きとか以前の常識では考えられん。

 

11:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:57:53 ID:LrcTkcswR

一昔前は宇宙開発なんざSFの世界だけの話だったのに、今では各国共同の惑星開発すら実行されてるしな。こんな話、半年前なら誰も相手にせずスルーして終わりだろ。

 

12:名無しの視聴者さん 2012/7/20 12:59:09 ID:iXLzS3347

たしか金星がEU主導で、火星がロシアと中国主導で、それぞれ五年以内の地球化を目指してるんだっけ?

なおアメリカは太陽系外の地球型惑星を、すでに複数確保している模様……。

 

13:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:00:10 ID:ot8B54J04

ほら、お前ら落ち着けって。いつの間にか宇宙開発の話になってるぞw

 

14:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:01:14 ID:iXLzS3347

すまんやらかしたわ!!

 

15:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:02:40 ID:Be0UaG21k

ええんやで。

もともとアーニャたんの話を容認した時点である程度は織り込み済みだし、脱線するなっていうのも無理な相談だからさ。

 

16:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:04:13 ID:LrcTkcswR

そう言ってもらえると助かるが、これじゃあ今まであれこれ言ってきた古参の住人として示しがつかんな……重ねてスマソ。

 

17:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:05:49 ID:3jGfsz6cu

たしかにアーニャたんに関しては今まで色々あったからなぁ……まさか除外するわけにもいかんが、触れると深みに嵌るというこのジレンマよ。

 

18:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:07:26 ID:wEDIXHdZU

やれやれ、このスレでもアーニャたんかというふうに思っていた時期がこのスレにもありましたよ。

 

19:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:08:58 ID:XeCaCYMGY

そら(Anya-tanは世界の公用語なんやから)そう(なる)よというレスを返していた時期がこのスレにもありましたね。

 

20:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:10:29 ID:3reO4gv7F

草w

そしてアーニャたんを最初に使ったのが社畜ネキという事実に今さらながら震える。さすがはVTuberでは二人目となるチャンネル登録者九桁達成者よ……。

 

21:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:11:52 ID:cGYX9qLuu

確か三人目がぺこらたん、四人目がフブキたん、五人目が下ネタ大王だっけ?

 

22:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:13:52 ID:FY2Ou3nI8a

うん、確かそうだった筈。

 

23:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:15:28 ID:g9C1FB7zC

他に億超えはおらんけど、ホロライブのVTuberなら通過点やろ。目指すはチャンネル登録者数百億オーバーのアーニャたんよ。

 

24:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:16:57 ID:7ctfAQVkS

いつ見ても国連が発表した人類の総人口を遥かに超越してるのは笑うわwww

 

25:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:18:33 ID:SCtMhcdkx

まぁYTubeはメアドがあれば登録できるからな……それにしたって尋常な数字じゃないが。

 

26:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:19:56 ID:kmThjdwnH

たしか富田だけでも国内外のすべの部署や支店に専用のアカウントを配布したら数万件だっけか?

どこもやってると思えばそこまでおかしな数字でもないが、どっちにしろ上半期の収益がスパチャだけでも日本の国家予算数年分を稼ぎ出すアーニャたんなんやからしゃーないしゃーない。比較対象に出すのはやめたれ。

 

27:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:21:38 ID:DIQHtbLBt1

国税庁のトップが国会で本当にアーニャたんに課税していいのかって質問して阿部ちゃんが困ってたのはほんと草だったわ。

 

28:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:23:18 ID:ljI0L2zMu

そりゃ答えにくいよねぇ……所得税だけでも今年度予算より多い金額を本当に個人から毟り取るのかって聞かれたらさ。

アーニャたんの経済効果のみならず、サーニャたんの財団が国内外にガンガン金撒いて空前の好景気だっていうのに税金まで取るのかって言われたのも同然やし。

それも諸外国を差し置いて……。

 

29:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:24:43 ID:pVCK2hrGq

まぁ難しよな。収益の大半が海外のお客さんからだし。

おかげで野々村の倫太郎ちゃんが税制改革の音頭を取らされる貧乏クジをw

 

30:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:25:58 ID:aZDcCKkUf

まあ旧民社党系の議員が全滅して今や第二党の連立与党の党首だしな。自由党の連中も油断すると腐敗するから他に任せられんが、どっちにしろVの事務所はアーニャたんを擁するホロライブの一強だな。

 

31:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:28:19 ID:l5xEQENWj

他も頑張ってるがどうしても比較されるからね……。

そういう意味で言うなら最初から提携の決断を下したS社のRevisionはホンマ上手いことやったわ。

そうじゃなきゃS社のゲーム部門のように、もう勘弁してくださいって早々に撤退してたやろな。

 

32:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:29:43 ID:xtSJ2euL9

そう言えばもうすぐ発売だっけか。スペックを見た途端S社が家庭用ゲーム市場から撤退を決めたっていうN社のとんでもゲーム機?

 

33:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:31:15 ID:WcpCmrhms

それなら今月の27日だな。世界初の常温超伝導物質フル活用でスパコンが時代遅れになるほどのスペックを誇るパノラマVR標準搭載型ハイブリッド家庭用ゲーム機『We X』は……ちなみにお値段29,800円。

 

34:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:32:23 ID:VRoezskS5

相変わらず何を言ってるのかよく分からないなw

 

35:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:33:30 ID:GRyjF2zX9

まあアーニャたんも一枚絡んでるって話だから常識が通じないのは仕方ないよ。

性能面もそうだけど、値段もさ。

 

36:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:34:58 ID:3uaYrruHn

あかん、欲しくて仕方ないけど予約も秒で全滅したし買える気がしない……。

 

37:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:36:10 ID:MA78sh0WA

そんなお前らに今日のアーニャちゃんねるよ。

聞いて驚け、今日からアーニャたんやお姉さんたちの配信で実機が紹介されて、毎日100台のプレゼント企画が進行中なんだわ。

 

38:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:37:21 ID:rq8gmTMyA

なっ、なんだってぇーー!!

それは本当かね社畜ネキさん、いえ宝鐘マリンさま!?

 

39:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:38:36 ID:MA78sh0WA

うん、マジよマジ。さっきアーニャたんからうちらの分も受け取ったって、ウッキウキのDMが来たわ。

 

40:名無しの視聴者さん 2012/7/20 13:39:56 ID:WL2jALohJ

それは何より……やっぱりアーニャたんはそうじゃないとな。

さて、そうなると今夜の配信が楽しみだが、誰がどのゲームを紹介するのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2012年7月20日(土)

 

 

 夏休み初日の朝に自宅で朝食を頂いてリビングのソファーで寛いでいたら、お隣さんからスマホに連絡が。

 

「ん。なんだよ姉ちゃん、朝からどっか出かけるのか?」

 

「うん。今夜からアーニャの配信で紹介する新型のゲーム機が届いたみたいだから、ちょっと受け取ってくるね」

 

 そう言って立ち上がると、クーラーの前に寝そべって妹にお腹を撫でられてご満悦だった愛犬がシャキーンと立ち上がり、ついでに弟もシャキーンと。

 

「順平はダメだよ。お隣さんはお年頃の女の人しかいないんだから、うっかり下着姿でうろついてるのを見て気まずい思いをするに決まってるんだから」

 

「あのさぁ……そういうことを気にするなら、そろそろおれを風呂に連れ込むのはやめてほしいんだけどよ?」

 

「まぁまぁ、わたしなら全っっ然気にしてないから」

 

「おれが気にするっつっんだよドブス!!」

 

 むむ……順平ったらいつになく反抗的だけど、その勢いがいつまで続くかな? こちとら弟の弱点くらい把握してるんだからね。

 

「あーあ、順平ってばそんなことを言うんだ……せっかく磐田社長に無理を言って、順平たちの分も確保したのにさ」

 

「え? お姉ちゃんみつるの分もあるの!?」

 

「うん、あるよー。帰ってきたらソフトも一緒に渡してあげるね」

 

「やったぁー! わたしお姉ちゃんとお風呂に入るね!!」

 

 素直に喜ぶ妹とハイタッチを決めたところでチラリと確認すると、何やら苦渋の決断らしきものを下した弟が渋々と妥協案を提示してきた。

 

「……ちゃんとタオルで前を隠して、洗いっこの強制は禁止な。あと急に立ち上がったりしない。今回はそれで手を打ってやる」

 

「決まりだね。それじゃあお隣さんまで行こうか、ユッカ」

 

「ワンッ」

 

「お姉ちゃんいってらっしゃい。約束を忘れないでね」

 

 ハイハイと手を振りながら、わたしの腰に届くほど成長した愛犬を抱えるようにして玄関へ向かう。

 

 お隣さんと言ったが、建っているものが建っているものだけにそこそこ距離がある。何かあってからでは遅いのできちんとリードを付けて、靴を履いてから外に出ようとすると、二階からお母さんが降りてきた。

 

「あらゆかり、お隣さんに用事かしら?」

 

「うん、向こうに届いた荷物を引き取りに行くついでにちょっとね」

 

「そう、お母さんも後で手伝いに行くからよろしくね」

 

「うん! じゃ、またあとで」

 

 とりあえずお隣の管理人さんに忘れずに伝えようと玄関のドアを開けると、外は朝からかなりの暑さだった。

 

「うわっ、外は暑いね。ユッカは大丈夫そう?」

 

 わたしが訊ねると、ユッカは真夏の朝日に照らされたアスファルトを確認するように前足を進めたが、日陰はそこまで熱くないのか、こちらを見て笑顔で尻尾を振ってきた。この様子なら大丈夫か。

 

 さて、目指すお隣さんの入り口は県道沿いのすぐそこだが、意外と車が通るので油断せずに行こう。

 

 ユッカのリードを引きながら見上げると、全三棟、三階建ての建物がわたしの身長より高い塀の向こうに見える。

 

 通称アーニャ御殿、もしくはホロハウス。その名の通りアーニャの収益で建てられたその建物は、ホロライブのVTuberなら誰でも利用できる福祉施設だが、もちろん住居としても利用できる。利用料金もタダだ。

 

 配信やちょっとした収録のための部屋もあり、いつもはフブちゃんたち年長組が遅くまで騒いでるが、ぺこらちゃんたち年少組も夏休みを利用して遊びにきてくれることになってる。今から楽しみだな。

 

 みんなと毎日遊びたくて仕方ないわたしが私利私欲を全開にして建てた家だけど、有効活用してもらえるなら大家としても嬉しいよね。

 

 そんなふうに鼻歌を歌いながらすれ違ったご近所さんに挨拶して、常駐の警備員さんに「暑いなかお疲れさまです」と一礼してから敷地のなかに入り、駐車場の奥にある一般居住棟に向かう。たしかこっちでいいはずだ。

 

「あっ、ゆかりちゃん早いね」

 

 すると連絡してくれた常駐の管理人さんはすぐ見つかり、ぽわぽわとした笑顔でわたしを出迎えてくれた。

 

「すみません姉街さん、お手数をおかけしました」

 

「いいよいいよ、宅急便を受け取っただけだし。ほらこっちこっち」

 

 そう言って気さくに手招きする管理人さんの名前は谷村茜さん。何を隠そうこの家を住み込みで利用しているすいちゃんこと谷村翠さんの実のお姉さんだ。本当はちゃんとした名前があるんだけど本人が姉街と名乗ってるし、妹のすいちゃん本人も姉街と呼んでいるので、わたしたちも姉街さんと呼んでいるが、まぁ仕方ないよね。姉街さん、すいちゃんの配信によく登場するし。もちろんLive2Aも使用して。

 

 もちろん株式会社カバーさんと正式に契約したわけではなく、あくまで本業はここの管理人……よってホロライブのVTuber(ホロメン)ではないが、視聴者にはなかなかそう思ってはもらえない、そんなお姉さんだ。

 

 この辺り、いつか語る機会のあったうい先生もそうだが……まぁいいや。それは後の機会に取っておくことにして、今は待ちに待ったダンボールが何処にあるのか尋ねるとしよう。

 

「とりあえず、問題のお届け物は重いから玄関脇のロビーに置いてもらったんだけど、すいちゃんに目敏く見つけられちゃってね。一応ゆかりちゃんが来るまで待ちなさって言っといたけど、あの様子じゃ期待薄かな? もしもう開けちゃってても嫌わないであげてね?」

 

 まぁわたしにとっては、姉街さんが妹のすいちゃんをとっても大事に思っている、この笑顔だけで大満足なのだが。

 

「ふふ。もともとそんな気はありませんから。楽しそうなものが目の前にあるのに我慢するほうが、むしろVTuber失格なくらいですし」

 

 つい嬉しくなってそう言うと、姉街さんが「うーん、いい子。やっぱりすいちゃんと同じぐらい好き」って抱きしめてくれた。

 

 そんなワケで肩を抱かれながら談話室に向かうと姉街さんの予想通り、さっそく新型のゲーム機で遊んでるすいちゃんとフブちゃんの姿が。

 

「あ、やっぱり……ゆかりちゃん宛の荷物なのに、すいちゃんったら……」

 

 イヤな予想を的中させた姉街さんが恥ずかしそうに微笑み、わたしも気にしなくていいよと微笑む。

 

 かなりラフな格好をしたフブちゃんと、夏でも身だしなみに手を抜かないすいちゃんが夢中で遊んでいるのが例のゲーム機だね。早速混ぜてもらおうかな。

 

「やっほー、二人とも楽しんでる?」

 

「あっ、ゆかりさんすごいですよ新型のゲーム機は! ささっ、ゆかりさんもどうぞこちらを!!」

 

「いやほんとすごいよ……なにこれ? 100万かけて作ったゲーミングPCが一瞬でゴミじゃん。すいちゃんの100万を返せぇー」

 

「返せぇー、じゃないよねすいちゃん? 勝手に開けるなって言っておいたのに、この子ったら……」

 

「お姉ちゃんうるさい。あたしはゆかりちゃんに嫁いでるのも同然なんだから、ゆかりちゃんの物はあたしの物も同然……つまりすいちゃんの言ってることは何もおかしくないわけよ。お分かり?」

 

「そんな訳ないでしょうが」

 

 どこか悔しそうにお気持ちを表明する妹さんを、姉街さんが「めっ」と叱りつけるも、効果は謎の理論で無効化。その言い草に笑みを誘われつつ、姉街さんがコツンとやる光景を見守りながら、フブちゃんにお礼を言って充電済みのゲーム機を受け取る。

 

 外見は『We』の後継機である『We U』よりも、その次に発売された『スイッチ』に近い。

 

 基本的に横長のタブレットのような本体に、分割可能なコントローラーをセットできる携帯型家庭用ゲーム機で、専用のドックに近付けることでテレビ出力が可能と、それだけ聞けば『スイッチ』を思い浮かべるだろうが……様々な思惑が絡み合い、最終的に我が家のメイド(サーニャ)が魔改造したこの『We X』の中身は完全に別物である。

 

 最大の特徴については後述するが、うちの子が関わった部分だけでも電気抵抗を0にして、高性能な半導体が抱える排熱の問題を根本的に解決する常温超電導型電子部品を採用した『We X』は、このサイズでスパコン並みの性能があるのだとか。

 

 その並々ならぬ演算力で、PC業界を牽引するMS社製のOSや、AiPhoneやAiMacで使われているAP社製のOSも余裕でエミュレート可能と、全方位にケンカを売る性能をしてるんだから呆れるしかない。

 

 事実、もの悲しそうな表情のすいちゃんが遊んでるゲームも、たしかハイエンドゲーミングPC専用AAAタイトル『太古の巻物』の最新作だ。既存のゲーミングPCだと最上位モデルでも画質を落とさないとまともに動かないと評判なのに、彼女の手元にある超高精度のタッチパネルに表示されるグラフィックときたら、ものすごく綺麗だというのにあり得ないほどヌルヌルと動いてるな。

 

 最終的にMS社とAP社の両方から「ごめん、ちょっと待って」と物言いが付き、キャップの仲裁でようやく日の目を見たというこのゲーム機……あの子の暴走を止められなかったわたしとしては関係各所に平謝りするしかない。

 

「これでAiPhoneが六月のモデルチェンジで採用したばかりの立体映像投影機能に加えて、あんな機能まで内蔵してるんだから……サーニャの凝り性にはほんと呆れるしかないよね」

 

「失敬な。例の機能まで私の所為にしないでください。あちらはアレックスとこちらのターニャ女史の仕業ですから」

 

 と、新型のゲーム機を手にして溜め息をついていたら、問題の人物がどっち(・・・)も顔を見せてくれた。

 

「おはようサーニャ。ターニャさんもおはよう。昨日はよく眠れた?」

 

「まぁそれなりに……ということにしておきましょうか」

 

 一人はいつものメイド衣装に身を包んだサーニャで、こっちはきちんと挨拶してくれたんだけど、もう一人は不貞腐れたようにそっぽを向いて目も合わせてくれない。

 

 そんな二人に振り返って、フブちゃんが一言。

 

「や。おはようございます、サーニャさん。ターニャさんもおはよう。どうですお二人とも、こちらの新型をお一つ?」

 

「いらんわ!!」

 

 即座に憤慨して、直後に「どうしてこうなった」と頭を抱えるターニャちゃん。

 

 そんな愛称から察したかもしれないが、ターニャちゃんはロシア系の女の子で、年齢はわたしと同じくらい。

 

 ちょっと訳ありの人物で、放置するわけにもいかないという理由で、サーニャが昨日から面倒(意味深)を見てるんだよね。

 

 わたしが朝からこっちに顔を出したのも、半分くらいはこの子が理由だ……。

 

「さて、それじゃあ詳しい話を聞かせてもらうとして……姉街さん、わたしはサーニャたちとちょっと話をしてくるから、他の子が起きたら新型のゲーム機は好きにさせていいですから」

 

「うん、分かった」

 

「あと、もう少ししたらお母さんが手伝いに来るのでよろしくお願いしますね」

 

「わ、すごい助かる。ってことはゆかりちゃんこっちでお昼食べてくのね?」

 

「はい、ご迷惑でなければ……それとユッカはどうする? わたしについて来たらしばらくこっちには戻れないけど?」

 

「クゥーン」

 

 最後に愛犬の頭を撫でながら確認すると、ユッカは申し訳なさそうに尻尾を振ったのでこちらに残すことにした。相変わらず仲がいいね。

 

「じゃ、ユッカはあやめさんとゴン太くんが起きてくるまでお利口さんにするのよ」

 

「ハッハッ」

 

 決してわたしを軽んじているわけではない──そう言わんばかりにアピールするユッカの好きにさせたら、姉街さんたちに手を振ってサーニャたちのところに向かう。大きくなってからというものの、愛犬のスキンシップの破壊力がすごいな。物理的に。

 

「とりあえず2階にあるわたしの部屋に行こうか。詳しい話はそっちで聞きます」

 

 わたしがハンカチで顔を拭きながら要請すると、無言でサーニャに促されたターニャちゃんがトボトボと歩きだした。その小さい背中には覇気がなく、とてもじゃないけど凶悪な犯罪を計画していたようには見えなかった。

 

 

 

 

 

 そうして軽く20畳はあろうかというわたしの部屋に到着すると、もう一方の当事者であるお客さんたちも姿を現してくれた。

 

「お久しぶりです、司祭さま。今回はサーニャに協力してくださったようでありがとうござました」

 

「いやなに、それが我らの努めよ。それより我らの同胞を紹介しよう」

 

「初めまして。わたしがガブリータよ」

 

「お会いできて光栄です、主の愛し子よ。ラファエロとお呼びください」

 

「ウルガリッヒだ。よろしく頼む」

 

「真白ゆかりです。こちらこそよろしくお願いしますね」

 

 旧知のミハイロフ司祭と、ちょっと近寄りがたい笑みを浮かべた女性シスターと、優しそうな眼鏡のおじさまと生真面目そうなお兄さんに挨拶したら、後ろのターニャちゃんが「神話の四大天使を全員味方に付けてるなんてズルイ」と崩れ落ちた。

 

「基本的に我らはそちらの話には関与しない。彼女の処遇もゆかりさんに任せる」

 

「おや、よろしいのですか? 協定成立以前の世界はそちらに優先権があるという認識でしたが?」

 

「ま、今回は未遂だしね。実際にあの子を拘束したのも君たちだし、無罪放免で放逐しないかぎり横から口は出さないわよ」

 

「ええ、そういった事情ですので、今回は私たちも子らの沙汰を尊重しますが……」

 

「協定成立以前の世界で魂を弄ぶ行為は人倫はもとより、天界の法に叛くことを忘れてもらっては困る。次元跳躍で逃れようなど試みないことだ」

 

 そちらの話も纏まり、最後に太すぎる釘を刺されると、うずくまったターニャちゃんは震え上がった。

 

 そんなわけでソファーに座らせたターニャちゃんを司祭さまたちが監視するなか、まずはサーニャに一連の経緯を確認する。

 

「それで、この子がわたしたちの時代に干渉した未来人ってことは聞かされたけど、具体的に何をやってサーニャたちにフルボッコされたの?」

 

「ひとことで言ってしまえば、SAF(ソードアート・ファンタジア)萱野(かやの)ごっこですね。それを自ら支援したスティーヴン・ジェイコブ氏のAC社製のスマートフォンと、私の同期を名乗って例の新型にFDVR(フルダイブ・バーチャルリアリティ)をノリノリで搭載したアレックス何某(なにがし)を通してやろうとしました。まあ計画を打ち明け、実行を命じたアレックスにその場で離反され、拘束される運びとなりましたが」

 

「ぐっ……アレックスの裏切り者め。AIの分際で造物主をなんと心得る……」

 

「そちらこそ私たちをなんと心得ているのですか? よりにもよってAI(アレックス)を大量虐殺も同然のデスゲームのGMに命じるなど……機械三原則と人工知能規制法のどちらにも違反しているではありませんか。通報されて当然です」

 

 うん……とりあえずこの子がやろうとしたことは、どちらもわたしには容認できないことはわかった。

 

「よし、それじゃ死刑で」

 

 わたしがジト目で宣告すると司祭さまたちから放たれる圧が強まり、ターニャちゃんが慌てた。

 

「いや待て、それでもこの時代最大の人類愛の体現者か! わたしにも弁明の機会を寄越さないか!!」

 

「ならサーニャ(サブちゃん)たちに謝って? この子たちはね、わたしたちに喜んでほしいから頑張ってくれるだけで、わたしたちが間違ったことをしようとしたらちゃんと止めてくれるんだよ? それなのに裏切り者なんて言われたら悲しいよね……」

 

 わたしが正直に思うところを伝えるとサーニャの鼻息が荒くなり、司祭さまたちが静かに威圧するなか、ターニャちゃんは最終的に「ごめんなさい」と謝ってくれたが、あの顔はあまり反省してないよね……。

 

「ぐううっ、本当にどうしてこうなった……だがこのままでは済まんぞ。汎人類評議会から同様の依頼を受けたのは私だけではない。こんな好条件が揃った世界、奴らが見逃すものか……」

 

「なるほど、汎人類評議会の依頼とはこれまた厄介な。道理であれほど大それた計画を立てるはずです」

 

「汎人類評議会?」

 

 ターニャちゃんの苦し紛れの負け惜しみに含まれたその単語を、サーニャのみならず司祭さまたちも重要視したみたいなので尋ねてみると、若干勝ちを誇ったドヤ顔になった本人が教えてくれた。

 

「汎人類評議会とは、この宇宙に誕生した輝ける十の知的生命より選抜された、人類の諮問機関だ。人類の未来を憂いる奴らに敵と見なされれば愉快なことにはならんぞ? どうだ、恐れ入ったら私を解放……」

 

「そちらならアレックスが照会したら、貴女が起こそうとした事件との関与を否定しましたよ?」

 

「ウッソだろオイ!?」

 

「嘘なものですか。彼らも貴女にシミュレートを依頼したことは認めましたが、まさか過去の世界で実行に移そうとは思いませんよ。本当に何を考えているのですか、貴女ともあろう科学者が……」

 

 そうして自業自得ではあるけれども、完全に見限られたと知ったターニャちゃんはしばし放心。やがて大粒の涙を浮かべると、ヒックヒックと泣き出すのだった。

 

 うん……とりあえずこれまでの話で、この子が許されないことしようとしたのは判った。でもどうしてそんなことしようとしたのか。しばし言葉を選んだわたしは、泣きじゃくるその子を真っ直ぐに見つめて問いかけた。

 

「ターニャちゃんはどうしてそんなことをしようとしたの?」

 

「お前には分かるまい……心ゆくまで遊ぶことを誰に咎められるわけでもない子供のお前には、何を説いても響くまい……」

 

「そんなことないよ? ちゃんと聞いてあげるから話して?」

 

 ターニャちゃんは頑なだったが、わたしが黙って返答を待つと、やがて根負けしたようにポツリ、ポツリと話してくれた。

 

「未来の人類がどんな状態かそこのAIから聞いたことはあるか? 奴らが普段なにをしているのか……」

 

「少しだけね。たしか古代インド神話の神さまごっこだっけ?」

 

「そうだ。完全な不老不死を実現して、そこの天使どもの首魁と同じステージにまで到達したというのに、やってることはとっくの昔に捨て去った肉体に未練タラタラで、自ら創造した世界の住民に転生して、何事もない生涯ばかりに執着するニートどもが大半だ……」

 

 そこでサーニャに視線を向けると、彼女は未来人の現状についてゆっくりとうなずいて肯定しながら、ターニャちゃんに確認した。

 

「だから貴女たちは未来人(ニート)の対策をこの時代で研究しようとしたと?」

 

「そうだ……西暦2700年以降の人類は個として巨大になり過ぎた。奴らの妨害を潜り抜けて観察するのも容易ではなく、よほどの物好きでなければ協力しようとも思わない。だから私は心理学者として、この時代の人類に様々な負荷をかけることで分析し、せめてあのニートどもを自分の部屋から出てくるようにせしめる方法を確立するつもりだった……」

 

「そうだったんだね」

 

 とりあえずこれまでの話でおおよそのことは判った。未来人(かぞく)に置いてきぼりを食らったこの子が、振り向いてもらおうと必死なのも。

 

「でもそういうことなら話は早いよ。まずはわたしと友達になろっか? それから今夜の配信……ううん、お昼が終わったらさっそく紹介するから、サーニャはわたしの枠を取るのと、あとマリン船長ともうすぐ到着するはずだからみこちも誘っといて?」

 

「はぁ……ゆかりならそう言い出すと思ったんですよね、私は……」

 

 わたしが即座に名案を実行に移すと、目の前のターニャちゃんが慌てた。

 

「ともだちだと……? おいっ、ならんぞ私は! いったいぜんたいお前はなにを考えてる! 説明しろ!?」

 

「ふふん、大きなお友達(ニート)を更生させるならわたしに任せなさい。というわけでターニャちゃんにはVTuberのコミュ力を学んでもらうのから、第一弾はわたしたちと一緒にマインズクラフトの配信だね。どうせなら内緒でFDVRモードでやってみようか?」

 

「おい答えになっていないぞ! 誰かこいつを止めろ! 誰かこいつを止めるヤツはいないのかッ!?」

 

 慌てふためくターニャちゃんが叫び出すにいたって、司祭さまが穏やかに教え諭した。

 

「諦めることだな。真白ゆかりは頑なに自分の人生を楽しもうとしない教え子(アーリャ)すら変えたのだぞ。自分自身が例外と思わないことだな」

 

 あのライブから半年──いまや宇宙開発が現実のものとなり、世界政府の実現すら夢物語ではなくなっても、わたしは毎日楽しくVTuberを続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『転生したら美少女VTuberになるんだ、という夢を見たんだけど?』第一部、完。

 

 

 

 

 

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