ブルーアーカイブ ―宇宙に輝く黄金の螺旋― 作:まさみゃ〜(柾雅)
現状、カンナはキリノと共に西ヒカルという少女が逃げないように拘束をし、フブキは大翼クロウと呼ばれていた少女に声をかけている。
「“とりあえず……君の名前は大翼クロウ?で良いのかな?”」
「ああ。そういうアンタは……なるほど、連邦生徒会関係の例の組織か」
私を一瞥しただけで何かを察したクロウ。
第一印象は白っぽい装いと黒色混じりの銀髪の影響で謎めいている。
「おっと、アタシの名前はさっき言ってた大翼クロウで合ってる。そんでアタシは探偵業をやってんだ」
「“そうなんだ。じゃあ推理とか得意なんだ”」
「いや、どちらかというと物探し。それでも依頼があまり来ないから生活キツキツなんだよな」
そんな答えにフブキが少し疑問を抱く。
「でも見た感じ結構良い服着てるけど?」
「一回の仕事に対して報酬が美味いからな。あと、いつも水道やガスが止まった時にお世話になってる教会のおかげでもある」
「自信満々に言うことじゃないでしょそれ〜」
どうやら色々と濃い人物のようだ。
そして今度は西ヒカルの方を見る。
「☆HA☆NA☆SE☆」
「ええい、暴れるんじゃない!!」
地面にうつぶせの状態でその上にカンナが取り押さえている。
状況の割にはどこか余裕そうだが流石に可哀想なので助け舟を出したほうがよさそうだ。
「“それで君は……”」
「──フッ、よくぞ聞いてくれた!
我輩は
「ミレニアムで何度も街の破壊活動で指名手配されていたんです。最近はそのような話はありませんでしたがまさかここに潜伏していたとは……」
どうやらこの子も濃い。
というよりクロウの方が比較的にまともに見えるほどに台詞の密度がすごい。
「潜伏とはなんだ! 我輩は大導師直々にスカウトされてここに居るのだ!! あとそれとそんじょそこらの破壊活動ではなくそう、我輩が我輩の我輩のための、あとついでにドリルの素晴らしさを知らしめるための崇高な活動である!!!!」
「アレが一時的にとはいえ此処を離れた……? あ、あり得ません」
「“そんなにすごい人物なんだ……”」
すると、急に場の空気が、例えるなら空気が重くなる。
そして同時に響き渡るヒールの音。
「やはり貴公を招いて正解だったようだ、先生」
鈴を転がしたような声。
背後から聞こえてきたため、振り向いて迎えたいのに身体が動かない。
それは彼女たちもそうで──。
「大導師〜っ!!」
「ふふふっ、貴公も相変わらずだな、ウェスト」
訂正、西ヒカル以外の私含めた人間がこの場から動けない。
「おっと、すまない。どうやら余が思っていたよりも余は先生との邂逅が楽しみであったようだ」
「“──え、えっと、君が私に手紙を?”」
急に身体が軽くなると同時に、汗が噴き出てくる。
それでももっと大変であっただろうカンナ達の前では平然を装って手紙について聞く。
「嗚呼そうだ。貴公を招待したのは余だ。さて、気になることは山ほどあるだろうが話の続きは学院で行うとしようではないか」
返答のために振り向く。
そこには金髪金目の、大翼クロウと真逆に黒い装いのヒナとそう変わらない背丈の少女が立っていた。
一見ドレスのように見えるが、それにしては妖しさが強い。
また、風になびく腰までの髪はどこか生きているように錯覚させる。
「てぇっめ、出やがったな!!」
クロウが銃を構える。
少女は彼女の突き付ける銃を見ると目を大きく見開き、笑う。
「クックックッ、クハハハハッ!! そうか、遂に、遂に契約したか大翼クロウ!!
だが……残念だが今回は貴公と戯れるつもりは無い。故に銃口を降ろせ」
笑みを浮かべたまま彼女はクロウに近付き、自身に突き付けられている銃口を指でなぞる。
そしてその様子をヒカル以外の私たちはただ見ているだけしかできない。
「大導師!? そんな冴えない貧乏探偵よりも我輩まだ拘束されたままなんだけどぉ!? 絶賛ピンチ!! ヘルプミー!!」
「おっと、すまないなウェスト。貴公らも余に免じて彼女を放してくれまいか?」
身体が動かせるようになったのか、彼女たちのヒカルを拘束する力が緩み、ヒカルは拘束を抜け出す。
そして彼女が大導師と呼んだ少女に態とらしく泣きついた。
「おーよしよし、可哀想に。やはり我が怨敵は鬼畜だな、ウェストよ……チラッ」
「よよよ……全く以ってその通りでございますよ大導師ぁ〜……チラッ」
「てめぇら……!!!!」
「“お、落ち着いて……”」
先程までの威圧感は無く、普通……とは呼べないがまだ学生らしい雰囲気。
けれど、何処か私には違和感が残っている。
「おっと、
「“今回……?”」
「その話もこの後必ずしよう。
さて、余は
尊大な態度。
けれど何処か退屈と諦めを孕んだ瞳が私を覗く。
そしてシシネは私に歩み寄る。
カンナたちはそれに割って入ろうとするが、私にはシシネから悪意も敵意も感じなかったため彼女たちを制止する。
「余は貴公を招待して本当に良かったと思っている。どうかこの戯れに殺されてくれるなよ、センセイ?」
「“君は──”」
目の前にはさし伸ばされた手。
握手を求めているのだろう。
私はその手を握ろうとした。
『──待て、その手に触れるで無い!』
──瞬間、私の視界は暗転した。
「先生? 大丈夫ですか?」
「長旅で疲れちゃったのかな、センセ?」
知っているやり取り。
見覚えのある街並み。
私は今の状況がイマイチ飲み込めていなかった。
まさか先程までのやり取りは夢だったのだろうか。
それにしては妙に現実味があった。
自分の首を触る。
視界が暗転する瞬間に感じた触感がまだ残っている。
「──そこの人退いてくれーーっ!!」
誰かの……いや、知っている人物の声が上から聞こえてきた。
私はその声の人物を確認しながらその場から少し右に避ける。
それと同時に私の知る人物が姿を現した。
「ふははははっ!! アーイム、ロックンロール!!」
しかし、全てが私の知る展開では無かった。
あの時は確か、笑い声の主は堂々と目の前に現れて空から落ちて来た少女と言い合いになっていた筈。
けれど
「クソッ!! アル!!」
『応ッ!!』
何者かの声がクロウの掛け声に呼応する。
そして彼女が一瞬光に包まれたかと思うと、すぐに発光が収まる。
そこには先程まで立っていたウルフカットの少女ではなく、腰まで伸びた銀髪の少女。
片手には飛んできたミサイルが掴まれており、彼女はそれを投げ返す。
「おらよ!! ッと」
「ふぁっ!? え、ちょ──」
まさかミサイルが返されるとは予想できなかったのか、デスペラード撃ちの体勢でヒカルは被弾する。
大きな爆破と煙が視界を遮るが、至近距離の爆発によってヒカルは気絶しており、煙が晴れてもまだそこに倒れていた。
「ふぃ〜助かったぜ、アル」
『成り行きとはいえ契約したのだ。当然の事であろう?』
姿の変わったクロウと謎の声。
私は彼女に声をかけようとした。
「
突如隣から聞き覚えのある声。
視線だけをそこに移すと、刻門シシネがいつのまにか私の隣に居た。
「“……これは一体”」
「かの渾沌がどうも貴公を警戒しているようでな、この様な形で余の加護……擬きではあるがそれを体験してもらった。
それにしてもやはりウェストはいつも見て飽きぬよな。毎回違った結果を余に見せてくれる」
彼女の口ぶり的に1名の行動を除いて何度も同じような光景を見てきたのだろう。
まだ年端もいかない少女がここまで暇に殺されたような顔になるとは……想像もしたく無い。
私は彼女が私をここに招待した理由を改めて問うことにした。